P-01
井 裕樹(福岡大)「高等学校時間割最適化における量子アニーリングの活用」
高等学校の時間割作成は、授業時数、教員配置、教室利用、合同授業や選択科目など多様な要素を同時に調整する必要があるため、NP困難な組合せ最適化問題として知られている。 近年、このような時間割最適化問題に対して、量子アニーリングを用いた最適化が研究されているが、多くは実際の高等学校時間割が持つ複雑な制約には十分対応できていない。 本研究は、逐次更新の考え方と量子アニーリングマシンの持つ組合せ最適化能力を組み合わせることで、現実の高等学校時間割に適用可能な最適化手法を提案する。
P-02
犬竹 夏樹(法政大学)「アニーリングマシンを用いた量子低密度パリティ検査符号の復号」
量子エラー訂正は、誤り耐性量子コンピュータ(Fault Tolerant Quantum Computer: FTQC)を実現するために不可欠な技術である。 近年、従来の量子エラー訂正符号よりも効率的に論理量子ビットを構成できる量子低密度パリティ検査(Low Density Parity Check: LDPC)符号に大きな注目が集められている。 一方、FTQCにおいてリアルタイムの量子エラー訂正を実現するためには、復号処理をコヒーレンス時間内で高速に行う復号器の実現が必要となる。 本研究においては、量子LDPC符号の復号過程を組合せ最適化問題として定式化することで、組合せ最適化問題専用コンピュータ「アニーリングマシン」を用いて量子LDPC符号の復号を行う方法を提案する。 具体的には、シミュレーテッドアニーリングとシミュレーテッド量子アニーリングを利用して復号シミュレーションを行い、既存手法の信念伝搬法との性能比較を行った。 復号時間の観点では、信念伝搬法が最も高速であったが、問題規模に対する復号時間のスケーリングは、全ての方法がほぼ同じであることが明らかとなった。 本成果は、今後アニーリングマシンハードウェアの性能が進化することで、アニーリングマシンが量子LDPC符号のリアルタイム復号器の有力候補になり得ることを示唆している。
P-03
田中 拓郎(DIC株式会社)「量子Annealingを活用したスペクトルデータの特徴量抽出アルゴリズム」
効率的な製品開発を目標に,マテリアルインフォマティクス(MI)の導入実績数は増加しており, 近年は分析データの活用可能性が注目されている。 分析データのうちスペクトルデータから材料特性の予測精度を向上させるために、 データの中から最も有用な波長の組み合わせを選択する手法に波長抽出アルゴリズムがある。 従来手法である遺伝的アルゴリズムは、選択される波長領域にランダム性が強く、予測精度も高くないという課題がある。 これらの課題を解決するため、本研究では近赤外分光法(NIR)公開データに対しベイズ推定を利用し、 所望の特性と高い相関をもつ波長領域を抽出するアルゴリズムを新規に開発した。 その結果、従来手法と比較して選択された波長領域の再現性および予測精度の改善が確認できた。 ※関連知財は出願済み
P-04
粟井 俊介(慶應大)「拡張ラグランジュ関数による定式化に対するイジングマシン解法性能」
組合せ最適化問題は,制約条件を満たしつつ目的関数を最小化(または最大化)するための決定変数の組を求める問題である.本問題は問題規模に応じて解候補となる組合せの個数が指数関数的に増大するため,大規模な問題を古典コンピュータで解くことは困難である.これに対し,統計力学の数理模型であるイジングモデルの基底状態を探索することで最良解を導くイジングマシンは,組合せ最適化問題を高速かつ高精度に解くことが可能な計算機として期待されている.一般に,イジングマシンで制約付き問題を解く際は,制約条件をペナルティ項として目的関数に加える「ペナルティ関数」が用いられるが,ペナルティ係数への依存性が高く,収束に時間を要する課題がある.本研究では,連続最適化分野で高い優位性を持つ拡張ラグランジュ関数を組合せ最適化問題に適用し,その探索効率,特に収束速度の向上について検討を行った.本研究では,不等式制約付き組合せ最適化問題として知られる2次ナップサック問題を題材とし,ソルバーとしてFixstars Amplify AEを用いて検証を行った.性能評価の指標にはTTS(Time-to-solution)を用い,解の更新過程における目的関数値の推移を詳細に解析した.その結果,拡張ラグランジュ関数を用いることで従来のペナルティ関数と比較してTTSが短縮されることが判明した.特に,適切なペナルティ係数 $¥mu$ およびラグランジュ係数 $¥lambda$ を含む設定では,探索開始直後の早い段階で最良解へと即時収束する挙動が確認された.本研究により,拡張ラグランジュ関数の採用が組合せ最適化問題においても速やかな収束を実現し,探索性能を向上させる有効な手法であることが示された.
P-05
李 明錫(芝浦工業大学)「動的な交通環境下における量子アニーリングを用いた経路最適化」
本研究では、動的な交通環境下における効率的な経路最適化を目指し、バイアス付与リバースアニーリング(BRA)を用いた手法を提案する。従来のフォワードアニーリング(FA)は、環境の微小な変化に対しても初期状態から全探索を行うため、計算資源の浪費と誘導ルートの不連続性が課題であった。提案手法では、前回の最適解を初期状態とし、かつその解を支持するリファレンス磁場を導入することで、解の安定性を高める。シミュレーションの結果、提案手法は交通網全体の最適性を維持しつつ、ルート変更率をFAと比較して8.54%抑制し、かつ突発的な通行止め等の環境変化にも即座に適応できることを確認した。本手法は、リアルタイム性が求められる次世代交通制御システムにおいて、運用上の信頼性と計算効率を両立する有効なアプローチとなり得る。
P-06
小川 涼(慶應大)「避難者密度制約を考慮したイジングマシンによる避難経路最適化」
本研究では,建物内避難経路最適化問題を対象として,イジングマシンを用いた組合せ最適化手法を提案する.避難経路の選択は組合せ最適化問題として定式化でき,決定変数の増加に伴い解候補が指数関数的に増大するため,全探索による最適解の導出は困難である. そこで本研究では,組合せ最適化問題に対して有効な次世代計算機として期待されるイジングマシンを活用する.イジングマシンで最適化するために,各避難者の経路選択をバイナリ変数として表現するとともに,避難時間の最小化および避難者密度制約を考慮した建物内避難経路最適化問題を,quadratic unconstrained binary optimization(QUBO)形式で定式化する方法を提案する. 建物内地図を対象とした数値実験の結果,提案したQUBO定式化により,混雑を回避しつつ避難時間を短縮する経路が得られることを確認した.これにより,イジングマシンを用いた組合せ最適化手法が,建物内避難経路最適化問題に対して有効な解法となり得る可能性を示した.
P-07
髙橋 力丸(東北大)「空港面交通管理における量子アニーリングを用いたスケジュール最適化」
新型コロナ後の航空需要回復により空港地上混雑と出発遅延が顕在化する中,本研究は羽田空港を対象に,出発スケジューリングをQUBOとして定式化し,Fixstars Amplify AEによる量子インスパイアードアニーリングで高速求解する枠組みを提案する.新規性として,時間割当問題を「深度」座標を用いた空間的な組合せ最適化へ変換し,目標分離時間に基づく間隔制御とone-hot/reference-fix制約を統合したQUBOを構築した点にある.得られたスケジュールをエージェントベースシミュレーションで検証し,混雑時間帯の20機最適化,終日逐次最適化,速度変動やスポットアウト遅延など不確実性下でのロバスト性評価に加え,北風運用の離陸専用Runway 05と,着陸機を固定要素として扱う離着陸共用Runway 34Rの離着陸スケジュール最適化へ拡張し,いずれの条件でも総混雑時間の大幅な低減を確認した.
P-08
中澤 汰千(法政大学)「断熱材配置のトポロジー最適化に対するアニーリングマシンの適用」
建築分野において、省エネルギー化や快適性の向上などを目的とした断熱材料配置の最適化は重要な課題である。これまで、断熱材料配置最適化問題の解法として、SIMP (Solid Isotropic Material with Penalization)法による連続最適化問題への変換と、勾配法による単純な最適化手法が用いられてきた。 しかし従来手法においては、離散的な設計変数の扱いと大域的最適解探索の困難さが課題となっている。 本研究においては、断熱材配置最適化問題を混合整数非線形計画問題として定式化し、一般化ベンダーズ分解 (Generalized Benders Decomposition: GBD)法 とアニーリングマシンを用いた最適化手法を提案する。本提案においては、GBD法で分割された部分問題の求解に対して、勾配法よりも大域的探索に優れたシミュレーテッドアニーリング (Simulated Annealing: SA) 法およびシミュレーテッド量子アニーリング (Simulated Quantum Annealing: SQA)法を利用する。 SIMP法、GBD-SA法、GBD-SQA法の3手法を用いて、断熱材料配置最適化問題の数値シミュレーションを行った結果、提案手法はSIMP法と同等の高品質な最適配置を導出できることを確認した。 さらに、GBD-SQA法は、大規模な問題設定においても反復回数が増加せず、従来手法に対して安定して高速に解を探索できるスケーラビリティを有していることを確認した。 本成果は、断熱材料配置などの熱設計問題におけるアニーリングマシンの有効性を示唆するものである。
P-09
岡部 理子(慶應大)「変数削減を適用した量子アニーリングに向けたエネルギー地形変換の有効性検証」
組合せ最適化問題は実社会の広範な領域に内在する重要な課題であるが,変数の増加に伴い計算時間が指数関数的に増大する困難さを有する.量子アニーリングはこの解決手段として期待されているが,変数の増加に伴う求解精度の低下が課題となっている.これらの課題に対し,定式化段階で変数を削減する Spin-variable reduction (SVR) 法が提案されている[1].先行研究では,従来手法に比べてSVR法は制約充足解の獲得確率を向上させることが報告されている.一方で,削減対象の変数の選択が求解精度に与える影響は明らかにされていない. 本研究では,グラフ二分割問題を題材に,SVR法適用後にエネルギー地形変換 (Energy Landscape Transformation of Ising Problem; ELTIP)[2] を適用し,スピン配位を組み替える手法を検討した.数値実験および実機での検証に基づき,ハミング距離の観点から,削減変数の選択が量子アニーリングの求解精度に与える影響を解析した.本発表では,これらの結果をもとに,SVR法における削減変数の適切な選択基準およびELTIPによる有効性について議論する. [1]T. Shirai and N. Togawa, IEEE Trans. Comp. 72, 2151 (2023) [2]T. Fujii, et al., arXiv preprint arXiv:2202.05927 (2022).
P-10
阿部 一貴(慶應大)「量子アニーリングマシン実機におけるスピン対マージの効果に関する研究」
量子アニーリングマシンは,組合せ最適化問題を高精度に解くことができる計算機として期待されている.量子アニーリングマシンを用いて求解する際,対象の組合せ最適化問題をイジングモデルに定式化する必要がある.ここで,定式化したイジングモデルを量子アニーリングマシンに埋め込む際,ハードウェアの制約上多くの物理量子ビットを要するという課題がある.これは,一つの論理量子ビットを表現する際に,複数の物理量子ビットを用いて表現しなければならない場合があるためである.一つの論理量子ビットを表現するために使用する物理量子ビットの集合をチェーンと呼び,チェーンを形成する際に使用した物理量子ビット数を鎖長と呼ぶ.また,論理量子ビットを表現するために使用した物理量子ビット数の平均を平均鎖長と呼び,平均鎖長が長い場合解精度が悪化することが知られている.そのため,量子アニーリングマシンで求解する前処理として,実機に入力する,論理量子ビットの個数を削減することで上記の課題が解決されることが期待される. 本研究では,実機に入力する変数の個数を削減することで,量子アニーリングマシン実機での求解性能の向上を検証することを目的とする.この目的を達成するために,スピン対の相関関数に着目し,一方の変数を他方へマージすることにより変数削減を実現する新手法を提案する.さらに提案手法の性能を評価するために,実機から求まるエネルギー期待値の変化について分析する. 分析したモデルとして,SKモデルを用いたイジングスピングラス問題を対象とした.各スピンにかかる縦磁場は任意のスピンに対して0に設定し,このモデルを問題サイズを変えて10インスタンス用意した.次に,前処理として,元の問題に対して量子アニーリングマシンで一度求解し,アニーリング最終時刻における全てのスピン対の相関関数を計算した.我々の予備検討では,シミュレーション上で,相関関数が1に近いスピン対をマージすると性能が向上し,逆に相関関数が負のスピン対をマージすると性能が悪化した.そのため,相関関数の閾値を設定し,閾値よりも大きい相関関数の値をもつスピン対を全てマージした.その後,各問題インスタンスにおいて,量子アニーリングマシンで10回ずつ求解し,その平均値をとることによってエネルギー期待値を比較した. 実験の結果,提案手法によって,イジングモデルを実機に埋め込む際の平均鎖長が短くなることが,全ての問題インスタンスにおいて確認された.また,複数の問題インスタンスに対して,エネルギー期待値が低下することが確認された.さらに,性能の向上が確認できなかったインスタンスにおいても,マージする相関関数の閾値を上昇させることによりエネルギー期待値が低下した. 今後は,効率的にスピン対の相関関数を求める手法や,モデルのグラフ構造に着目したマージ手法を確立する.
P-11
藤本 幸志朗(慶應大)「大規模近傍探索に基づくイジングマシン向けアルゴリズムの構築と性能評価」
本研究では,大規模近傍探索(LNS)と呼ばれる手法に注目し,部分問題の解探索にイジングマシンを使用した.従来手法における部分問題生成の枠組みに,新たに1つのパラメータを導入することで,部分問題に含まれる変数の個数をより柔軟に制御できるアルゴリズムを提案する.この手法を配送計画問題に適用し,提案手法が,従来手法と比較してより高精度な解を得られることを確認した.また,暫定解の精度が高い場合に,その効果がより顕著になることが分かった.
P-12
富田 馨(Science Tokyo)「量子アニーリングを用いたブラックボックス最適化における事前知識導入による学習効率改善の評価」
機械学習モデルであるFactorization Machineと量子アニーリング技術を組み合わせたブラックボックス最適化手法であるFactorization Machine with Quantum Annealing (FMQA) は,問題に内在する対称性や制約条件などを事前知識として与えることで性能が向上することが知られている.本研究では巡回セールスマン問題を対象として,事前知識の利用がFMQAの学習効率に及ぼす影響を定量的に評価した.各都市を1回ずつ訪問するという制約条件を事前知識として組み込むことで,巡回路を安定的に得られるようになった.さらに都市間距離に関する対称性を考慮することで,より少ないサイクルで最適解へ到達できることが確認された.
P-13
速水 嶺仁(法政大学)「アニーリングマシンを用いたレイトレーシングにおける階層的データ構造構築」
映画・ゲーム・VR などの高精細化に伴い、コンピュータグ ラフィックスにおけるレイトレーシングの高速化が重要な課 題となっている。レイトレーシングの計算時間の大部分は、光 線(レイ)とシーン内オブジェクトとの交差判定に費やされる ため、不要な判定を枝刈りする空間階層構造BVH(Bounding Volume Hierarchy)の品質が描画性能に直結する。BVH の構 築は、シーン内の物体をどのような順序でまとめ、分割するか によってレイがたどる探索経路が大きくが大きく変化する。レ イの探索時間は実行時間に直結することから、組合せ最適化問 題とみなせる。一方、近年組合せ最適化問題専用コンピュータ であるアニーリングマシンに大きな注目が集められている。本 研究では、BVH 構築過程の一部をQUBO(二次制約なし二値 最適化)形式の組合せ最適化問題として定式化し、アニーリン グマシンにより高品質なBVH を探索する手法を提案し、従来 手法との性能比較を行う。その結果、提案手法が並列再挿入を 用いた従来手法と比較して、レイトレーシングにおける交差判 定の削減に有効であることを示した。
P-14
柳澤 渓甫(Science Tokyo)「Frasco-VS:フラグメントに基づく薬剤候補化合物選抜の量子アニーラによる実現」
我々は、量子アニーリング技術の活用事例として、創薬の初期段階において有望な薬剤候補化合物を選抜するバーチャルスクリーニングへ応用する研究を行っている。まず、化合物の部分構造(フラグメント)を複数、フラグメント間の衝突や共有結合を考慮しつつ薬剤標的タンパク質の表面に配置する組合せ最適化問題を設計した。続いて、この問題を疑似量子アニーラSQBM+ で解き、得られたフラグメント配置の組み合わせを模倣するような化合物を検索することで薬剤候補化合物を選抜した。薬剤標的タンパク質Aldose reductaseを用いた実データ実験では、従来法AutoDock Vinaとほぼ同等精度を維持しながら、約8倍の速度で候補化合物を選抜することに成功した。
P-15
後藤康佑(法政大学)「アニーリングマシンの大学時間割作成への応用」
アニーリングマシンの大学時間割作成への応用
P-16
荒井俊太(Science Tokyo)「デジタルアナログ量子計算を用いたグローバー適応探索」
グローバー適応探索(Grover adaptive search;GAS)はグローバー探索をサブルーチンとした最適化アルゴリズムである。 GASは多くの制御演算から構成される誤り訂正付き量子コンピュータ向けのアルゴリズムであり、ノイズに対して性能が大きく劣化することが知られている。 近年、デジタル量子ゲートを用いた量子コンピュータの進展に加えて、デジタル量子ゲートとアナログ量子ゲートを組み合わせたデジタルアナログ量子計算(Digital analog quantum computation;DAQC)と呼ばれる計算パラダイムの研究が進んでいる。本研究ではデジタル演算に比べてアナログ演算はノイズに対してロバストであることに着目し、ノイズに対してロバストなDAQCベースのGASアルゴリズムを提案する。 簡単な2値制約なし2次最適化問題に対して実証し、デジタル演算のみで構成されるGASよりもDAQCベースの方がノイズに対してロバストであることを示す。また、回路の構造に着目したブロック型のDAQCベースのGAS回路の構成法についても紹介する。
P-17
源 勇気(株式会社Fixstars Amplify)「量子アニーリング研究のその先を見据えて ― 量子インスパイアード技術による実問題適用の現在地 ―」
量子アニーリングは将来の最適化計算基盤として大きな期待を集めている一方で、実問題への適用という観点では依然として多くの課題が残されている。本講演では、量子アニーリング研究の「その先」を見据え、量子インスパイアード技術によるイジングマシンを一つの参照点として、現在どこまで実問題への適用が進んでいるのか、その現在地を紹介する。量子インスパイアード技術の分野では、近年の研究開発により、高次相互作用への対応、制約充足性能の向上、制約重みに依存しない定式化、並列性能の強化などが進み、従来は困難であった問題設定にも適用可能性が広がっている。具体的な事例については公開可能な範囲で抽象化しつつ、ブラックボックス最適化を含む最新の応用事例における知見と課題を共有する。これらを通じて、将来的な量子アニーリングマシンの応用可能性について議論するとともに、量子アニーリング研究と産業応用の間に存在するギャップを可視化し、その橋渡しとなる一つの視点を提供する。
P-18
吉原 拓磨(東北大)「量子・古典ハイブリッドソルバーを用いた大規模な混合整数問題の解法」
本研究では、整数変数と連続変数の両方を組み合わせた混合整数二次計画問題(MIQP)に対して、量子・古典ハイブリッドソルバー(D-Wave Systems社Constrained Quadratic Model, CQMソルバー)と拡張ベンダーズ分解を組み合わせた手法を提案する。従来手法を用いると、大規模な混合整数問題では計算時間の問題に直面する。それに対して、我々の提案手法では計算時間は、問題が大規模になるにつれて古典的ソルバーであるGurobi Optimizerと比較して速くなっていくことが示された。 MIQPは整数変数と連続変数を両方含むため、スケールが大きくなるにつれ複雑さが増してしまう。この課題に対処するため、ベンダーズ分解が有効なアプローチとして、拡張ベンダーズ分解というアルゴリズムが知られている[1]。このアルゴリズムは、MIQPにある整数変数を扱うマスター問題、連続変数を扱うサブ問題に分けて、交互に繰り返し解いていく手法である。しかし、マスター問題に整数変数や二次項が大量に含まれる場合、計算上のボトルネックとなることがある[2]。 この問題を解決するため、我々は拡張ベンダーズ分解の枠組みの中で、マスター問題をCQMソルバーで解く手法を提案する。また比較として、求められた解の精度と問題の計算時間について、CQMソルバーと古典的なソルバーを比べたところ、CQMソルバーを利用すると厳密な解を速く得られることがわかった。また、シミュレーテッド・アニーリングや量子アニーリングでも同様の実験を行い、現状の限界についても示す。そして、提案したCQMソルバーによる拡張ベンダーズ分解は大規模なMIQPにも有望なアルゴリズムであることを示す。 [1] Geoffrion, Arthur M. "Generalized benders decomposition." Journal of optimization theory and applications 10.4 (1972): 237-260. [2] Rahmaniani, Ragheb, et al. "The Benders decomposition algorithm: A literature review." European Journal of Operational Research 259.3 (2017): 801-817.
P-19
堀池 由朗(名古屋大学)「熱・量子アニーリングにおけるオーダーパラメータ変化」
量子アニーリングにおいて量子ゆらぎは量子力学的重ね合わせ状態やトンネル効果を引き起こし、熱アニーリングにおける熱ゆらぎよりも局所最適解に対して頑健に求解できると予想されている。これまでにアニーリング過程における量子ゆらぎと熱ゆらぎの違いは研究されてきたが、求解においてどちらが優位性を示すかは問題の種類に依存しており、問題のどういった特徴が量子ゆらぎと熱ゆらぎの差と関係しているのかは明らかになっていない。我々は、ハミルトニアンを ±J 模型に限定し、7体までの相互作用ネットワーク構造を網羅的に生成し、それに基づいたマスター方程式と Schrödinger 方程式を数値的に解いた。その結果ある特定の相互作用ネットワーク構造において熱アニーリングと量子アニーリングの性能に差が生じることが分かった。また、状態空間中の確率流を可視化すると、両者は大域的には似ているが、量子トンネル効果に起因する質的な違いがあることが分かった。また、秩序変数の変化速度を調べると、量子アニーリングは熱アニーリングにおける速度限界を超えることがあるだけでなく、ほとんとそれ自身の速度限界に近い速度で秩序変数が変化していることが分かった。(arXiv:2511.16457)
P-20
西山 健太(ブリヂストン)「ブラックボックス最適化によるロードサービス店舗の選定」
弊社では、ブリヂストンサービスネットワーク(BSN)という大型車向けのロードサービスを展開している。その中で、お客様の待ち時間が伸びないように少数の店舗を選定したいケースがある。過去、静的な距離を指標に古典的な手法を用いて最適化が実施されてきたが、動的な影響は考慮されてこなかった。そこで、シミュレータで出力される動的な時間を指標にし、ブラックボックス最適化による店舗選定を試みた。手法としては、古典的な焼きなまし法(SA)と、量子アニーリングが活用できる探索手法(BOCS)を用いた。結果としては、コスト値の減少速度は両手法ともほとんど変わらなかった。そのため、大域最適を目指す場合にはSAで十分であると考えている。一方、BOCSは解を生成できることから、複数の準最適解を求めたい場合、BOCSの学習とサンプリングに量子アニーリングマシンを利用できる余地があると考えている。
P-21
黄 暁鑫(東北大)「学習に基づく正則化推定によるアニーリング型二値圧縮センシングの相転移」
二値圧縮センシング(Binary Compressed Sensing, BCS)をアニーリング型最適化により解く場合,QUBO 定式化における正則化パラメータの選択が復元性能および相転移挙動を大きく左右することが知られている。しかし,従来は固定または経験的に正則化パラメータが設定されており,測定率やスパース性の変化に対して安定した性能を保証する方法は確立されていなかった。本研究では,測定率およびスパース率に依存して最適正則化パラメータが系統的な構造を持つことを示し,その関係を教師あり学習により推定する枠組みを提案する。数値実験の結果,提案手法はシミュレーテッド・アニーリングおよび量子アニーリングの双方において,相転移境界の安定化と復元精度の向上を実現し,固定正則化手法を一貫して上回る性能を示した。
P-22
沖澤 孝之介(東北大)「スクラップ配合量に対する主成分選択の最適化」
電気炉操業において複数のスクラップを溶かして鉄鋼を製造する際、各種スクラップの配合量のバランスや生産される鉄鋼の含有成分量の規定を満たした上で、可能な限り操業コストを低くすることが望ましい。本研究では、過去のスクラップ配合量データの主成分分析を行い、主成分得点のクラスタリング性能を最大化する主成分組み合わせ最適化を実行することで、操業時に考慮すべき要素を洗い出す手法を提案する。選ばれた主成分と過去の操業データを照合した結果、一部の主成分が配合に重要な要素を示唆することを確認した。
P-23
豊嶋 大翔(東北大)「量子アニーリングを用いたブラックボックス最適化による外れ値除去アルゴリズムの構築」
本研究では、回帰分析の精度を低下させる要因である外れ値を効果的に除去するため、データの選別を組合せ最適化問題として捉える新しいアルゴリズムを提案します 。具体的には、全データに対して学習や検証に使用するかどうかを示す二値変数を導入し、量子アニーリングやシミュレーテッド・アニーリングを用いて、検証誤差を「最小」にするクリーンなデータ群と、「最大」にする外れ値群の二つの側面から最適なデータの組み合わせを探索します。これら二つの探索モードにおける各サンプルの選択頻度の差を「Gap Score」として定義し、統計的に外れ値を特定・除去することで、高精度な予測モデルの構築を可能にします 。実験の結果、提案手法を用いることで外れ値を除去しない場合と比較して回帰精度が大幅に向上することが確認されました 。データの次元数が増加するにつれて改善の幅が縮小する傾向は見られるものの、本手法はデータセットの質を自動的に改善し、予測の信頼性を高める有効なアプローチとなります。