こんにちは、プログラミング的思考研究グループです。私たちは、プログラミング教育で育成されるといわれているプログラミング的思考の習熟度を測ることを目的とした問題の開発をしています。
2020年からはじまったプログラミング教育では、プログラミング的思考などを育成すると説明されています[1]。
その内容については、「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」と定義されています。
プログラミング的思考のもととなった考え方に、Computational Thinking(計算論的思考)があります。これは、カーネギーメロン大学の Jeannette M. Wing 氏が書いたエッセイ「Computational Thinking」[2] [3] の中で説明されています。
このエッセイの中で、コンピュータサイエンスやアルゴリズムは、コンピュータを用いてプログラミングするのに役立つのはもちろん、普段の生活の中でも役に立つとされています。たとえば買い物をするとか、料理をするとか、ありとあらゆる日常のシーンでアルゴリズムは必要になってくるというわけです。
日本におけるプログラミング教育では、学習指導要綱の中で、コンピュータの使い方やその考え方を知り、教科学習の中に取り込んでいくことが求められており、コンピュータサイエンスやアルゴリズムを教科学習の実践の中で身につけさせようという意図が感じられます。
プログラミング的思考は、コンピュータを使わないと学べないの?と思った人もいたかもしれません。実は、CSアンプラグド [4] といった考え方や、情報科学の学び方などが提案されていて、コンピュータを使わなくても学べるともいわれています。先ほどの計算論的思考の例であった買い物や料理をテーマに、具体的な手続きや条件分岐を考えることで、アルゴリズムやプログラミングが学べるというわけです。
では、ほんとうにコンピュータを用いなくてもプログラミング的思考は身につくのでしょうか?
私たち研究グループは、これらの能力がどの程度身についたかを測定するためのプログライングクイズを開発しています。問題ごとの正答率や、ご意見を反映しながら拡充しています。プログラミング経験のある人も、ない人も、
この研究の目的のひとつは、プログラミング的思考がほんとうに身についているのかを明らかにすることです。プログラミングのスキルのひとつであるコーディング(プログラムを書くこと)のほか、プログラミング的思考の学習のねらいの中にある論理的思考や、生活で役に立つ考え方が身についているのでしょうか?
コーディングスキルを測る問題のほか、論理的な思考力を測る問題、推理パズルや図形パズルなど、さまざまな問題をアレンジして公開していこうと思いますので、力試しに、チャレンジしてみてくださいね。
参考文献
[1] 文部科学省,「参考資料2 小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」(2016)
[2] Jeannette M. Wing:Computational Thinking, Communications of the ACM, Vol.49, No.3, pp.33-35 (2006)
[3] Jeannette M. Wing,中島 秀之:「Computational Thinking 計算論的思考」一般社団法人情報処理学会,情報処理,Vol.56,No.6,pp.584-587(2015)
[4] Brandon Rodriguez, Stephen Kennicutt, Cyndi Rader and Tracy Camp:Assessing Computational Thinking in CS Unplugged Activities, Proceedings of the 2017 ACM SIGCSE Technical Symposium on Computer Science Education, No.6, pp.501–506 (2017)
大学院を卒業して現在会社員。小学校で実際にプログラミング教育の授業を行った経験をきっかけに、プログラミング教育についての研究をスタート。現在はプログラミング教育を通して子供達がどのように能力を伸ばしていくのか、どのような授業内容であれば能力が大きく伸びるのか、という視点で研究活動を行っていました。
大学教員。「プログラミング教育」をテーマに教育分野における子どもたちの能動的に学ぶ力の育成に力をいれている。CoderDojo Tokushimaを立ち上げ、主に徳島で活動を行っている。過去にプログラミングスクールTENTOを手伝ったり、IT企業での研修などを担当してきた経験も持つ。1児の父。