2022年2月19日(土) 10:00-16:40
オンライン開催(Zoom)
遺伝子操作・導入技術は特定の神経細胞種や神経路への介入と大規模な神経活動記録を可能にし、齧歯類を中心に神経ネットワークレベルの機能解明に革新的な展開をもたらしています。とくに光・化学遺伝学による脳回路操作や2光子イメージングなどの技術は、マカクザルやマーモセットなど非ヒト霊長類にも適用可能であることが示され、高次脳機能とその障害の理解にブレークスルーをもたらすことが期待されています。しかし、利用できる個体数が限られることが障壁となり、サルを対象としたこれらの技術開発と利用は齧歯類のそれと比較していまだ大きく遅れを取っています。本研究会はこれらの新技術を利用し、あるいは今後利用しようと考えている研究者に集まっていただき、個々の研究室で得られた経験や結果を共有するネットワークを構築することを目的に掲げ、2018年に国際ワークショップとして開始し、これまで2回にわたり好評を得てきました。
第3回となる今回は、本研究会の名称を「サル脳新技術研究会(仮)」と改め、これまでの研究会で扱ってきた、光遺伝学、化学遺伝学、蛍光イメージング等の遺伝学的手法に加えて、多点電極神経活動記録や解析法など、霊長類脳研究を発展・進化させるより多くの新技術についての情報共有を目指します。
今回は新しい試みとして、各トピックにつき【基礎編】と【応用編】に分けてそれぞれ1名の先生にご発表いただきます。【基礎編】においては、これから新しく技術を導入しようとしている研究者やこれまで挑戦してみたけど上手く行かずに苦労している研究者を想定して、ご自身がラボで行っている「How to」すなわち「基本的な研究の進め方」をお話いきます。このような基本情報は、各ラボでは当たり前として行っていると思うのですが論文にはわざわざ書かれないことが多く、そのため新たに始める研究者の大きな落とし穴となっているかと思います。そこで本研究会では、先生方のご経験を共有いただき、参加者に気づきのきっかけをお作りいただけたら幸甚です。また【応用編】においては、これらの技術を用いた先生方の最新の成果とあわせて、苦労話や失敗例(何がうまくいかないか)、そして今直面している問題など、話していただきたいと思います。また最後に「パネルディスカッション」として、参加者から事前に集めた質問に対して発表者の先生方を中心に参加者を含めてディスカッションしていく時間も設けたいと考えております。
本来であれば皆様お集まりいただいて密な情報交換ができればよいのですが、コロナ感染拡大防止のためオンライン開催といたします。オンラインのメリットを生かして、多くの方に気軽にご参加いただける会になればと考えています。
発起人: 南本敬史(量子科学技術研究開発機構)・井上謙一(京都大学霊長類研究所)
第3回世話人: 武井智彦(玉川大学)
10:00 開会挨拶
セッション1:多点神経活動記録
10:10【基礎編】二宮 太平(生理学研究所)
「多点神経活動記録法の実際」
10:40【応用編】小谷野 賢治(NIMH/NIH)
「Microwire Brush Array電極の留置による長期の多点神経活動記録」
11:00 フリーディスカッション
11:10 コーヒーブレイク
セッション2:光遺伝学
11:20【基礎編】井上 謙一(京都大学霊長類研究所)
「光遺伝学による霊長類脳の回路操作ことはじめ」
11:50【応用編】佐々木 亮(京都大学大学院医学研究科)
「サル脳回路の光遺伝学的操作による意思の制御」
12:10 フリーディスカッション
12:20 昼食(各自)
セッション3:化学遺伝学
13:20【基礎編】南本 敬史(量子科学技術研究開発機構)
「DREADDsによるサル脳活動操作のすゝめ」
13:50【応用編】長谷川 拓(理化学研究所)
「化学遺伝学的手法による視床下核の抑制と不随意運動の神経メカニズム」
14:10 フリーディスカッション
14:20 コーヒーブレイク
セッション4:蛍光イメージング
14:30【基礎編】蝦名 鉄平(東京大学大学院医学系研究科)
「コモンマーモセットの大脳皮質を対象としたin vivo 2光子イメージング」
15:00【応用編】小口 峰樹(玉川大学脳科学研究所)
「マカク大脳皮質における微小内視鏡カルシウム・イメージング」
15:20 フリーディスカッション (集合写真)
15:30 パネルディスカッション
16:30 閉会挨拶
玉川大学脳科学研究所
基礎脳科学研究センター
武井 智彦
E-mail: takei[at]lab.tamagawa.ac.jp