特別講演

特別講演

ステロール14-脱メチル化酵素 CYP51の研究 41年

青山 由利 先生 創価大学 理工学部 共生創造理工学科

ステロール14-脱メチル化酵素であるCYP51は、多彩な機能を有して超多様な分子種を含むP450の中で、生物界間を通して機能が保存された唯一のP450である。演者は、このP450が真核生物の生育に必須なステロールの合成の一段階に関与することを、酵母P450を用いて明らかにして以来、長年、このCYP51の研究に携わってきた。CYP51研究の流れを軸に、CYP51性質の特徴やアゾール系抗真菌剤の標的酵素としての解析、また動物CYP51遺伝子クローン単離からの研究とステロール14-脱メチル化酵素でないCYP51の存在についてなどの話題を提供する。


植物ホルモンの生合成・代謝に関わるシトクロムP450酵素の阻害剤

轟 泰司 先生 静岡大学 農学部 応用生命科学科

シトクロムP450酵素の阻害剤として機能する低分子化合物は,その構造あるいは阻害メカニズムの特徴から,内生基質型(1)と非内生基質型(2),あるいはヘム鉄配位型(A),ヘム鉄非配位型(B),および自殺基質型(C)などに分類できる。抗真菌剤として広く普及しているアゾール型P450阻害剤は2A型であり,これらのいくつかは植物のP450も阻害する。しかし2A型は,その特性上,酵素特異性が低くなる傾向が強い。本講演では,植物ホルモンの生合成・代謝に関わるP450を阻害する低分子化合物の探索・創出研究の歴史と現状を紹介するとともに,植物P450阻害剤はどうあるべきなのかという視点から,演者らの取り組みと今後の展望についてお話ししたい。


ゴマリグナンの生合成と植物におけるその機能

堀川 学 先生 公益財団法人 サントリー生命科学財団 生物有機科学研究所

ゴマは5,000年以上前から栽培され、健康に良い油糧作物として“Queen of oilseeds“と呼ばれている。その機能性成分の一つとして注目されているセサミンは、ゴマ種子に1%程度含まれるゴマリグナンの主要成分である。種子中には、更に、セサミンの酸化物であるセサモリンおよびセサミノール配糖体も蓄積しているが、その生合成は未解明であった。最近、我々は、このセサミン酸化酵素CYP92B14を同定し、そのユニークな生合成機構を明らかにしたので紹介する1。また、リグナン類の植物における機能についても言及する。

1) Murata, J., Ono, E., et al. Nature Commun. 8, 2155 (2017).