日本人国際論文

行政・公共政策分野の国際的学術誌に掲載された日本人を著者とする論文の一覧 (書評やコメントを除く)。国際的に活躍する日本人行政・公共政策研究者の国内認知度の向上を目的にしています。各学術誌の影響力(引用頻度)を示すImpact Factor及びH-indexのランキングをもとに、Social Sciences Citation Index (SSCI)に登録されている20の行政・公共政策系学術誌を選出し、対象にしています (下記対象雑誌は2023年7月~2024年6月発表の論文に適用):

Public Administration Review (PAR), Journal of Public Administration Research and Theory (JPART), Journal of Policy Analysis and Management (JPAM), Journal of European Public Policy, Public Management Review, Regulation & Governance, Review of Public Personnel Administration, Policy Studies Journal, Policy & Society, Policy Sciences, Governance, Policy & Politics, Public Administration, Public Policy & Administration, International Review of Administrative Sciences, International Public Management Journal, American Review of Public Administration, Social Policy & Administration, Local Government Studies, and Administration & Society.

上記に加えて、政治学等の国際的な学術誌に日本人の行政研究が掲載された場合も、一覧に加えさせて頂く予定です。2015年以前の掲載論文については、トップジャーナル3誌(PAR, JPART, JPAM)及び政治学トップジャーナルのみを対象としています。また、著者本人から論文の日本語要約が提供された場合、これらを掲載していきます。要約をご提供頂ける場合は、篠原 (sshinoha△sfc.keio.ac.jp; △=@)までご連絡をお願いいたします。

2024:

2023:

2022:

要約地方行政の実際のパフォーマンスと市民の行政に対する評価の間に因果関係があるのかは、未だに結論が出ていない。市民が実際の行政パーフォーマンスだけでなく元来の信条や以前の経験をもとに行政を評価するとき、因果関係は成立しない。一方で、人間は良いことより悪いことに強く反応するnegativity biasがある。そこで本論文は、財政再建のような悪いことは市民の行政に対する印象を悪くするだろうと仮定し、青森県南津軽郡における疑似実験により検証した。結果は、行政サービスへの満足度、首長・議会・役場に対する信頼は変化なく、決定過程の適切さだけが財政再建後低く変化していた。財政再建の実施にあたり、政治家や公務員はなるべく悪いことを隠し、将来に向けた良い面を強調するため、因果関係が弱くなると理論的に説明しうる。また、混乱した集団決定の過程だけは、政治も行政も隠し切れないため、因果関係が現れたと思われる。

2021:

要約政府の意思決定における公平性は良き政府の質 (quality of government) を決める中心的な概念で、マクロレベルの多くの指標で良い結果につながると先行研究結果で示されてきた。しかし、政府の公平性が公共サービスの質に対する市民の認識にどのような影響を与えているかについての先行研究は限られている。特に、経済・社会的背景が異なる市民の間で、どのように公平性が公共サービスの質に対する認識に影響を与えるかは分かっていない。本研究では、欧州174地域の56,925人の市民を対象とした欧州政府の質指標データを用いた分析の結果、公平性のみでは公共サービスの質の向上にはつながらない、社会的弱者の間では公平性は公共サービスの質の低下につながることが分かった。これらの結果は、市民が政府の公平性から平等に恩恵を受けてはいないことを示唆している

2020:

要約先行研究は公共部門のイノベーションを促進する制度的、組織的、個人的な要因を特定してきた。しかし、官僚機構の種類や官僚の属性と革新的な態度との関連は見落とされてきた。本論文では、ヨーロッパ19ヵ国の官僚機構と上級公務員の大規模比較データを用いて、官僚機構における政治的影響力と法律尊重主義といった要因が上級公務員のイノベーションに対する態度とどのように関連しているかを検証した。分析の結果、政治的影響力の強い官僚機構で勤務する、法律学の教育を受けている上級公務員はイノベーションに対する意識が低いことが分かった。 

要約本研究は「政府の質」研究所の専門家調査データ及びヨーロッパ20ヵ国の上級管理職公務員調査データを用い、官僚制度と公務員の組織コミットメントの関係性を検証した。「善き統治」(グッド・ガバナンス)についてのこれまでの実証研究ではヴェーバー型官僚制度とマクロレベルでの社会経済効果との関係性が検証されている。しかし先行研究では官僚制度の類型と公務員個人の意識や態度との関係については分析が行われておらず、公務員の組織コミットメントの程度やタイプについて国家間で違いがあるかどうかは分かっていない。本研究は、社会的交換理論を用い、ヴェーバー型官僚制度の特徴の一つである公務員の任用・昇進制度の閉鎖性と組織コミットメントとの関係性を分析した。研究結果から、任用・昇進制度の閉鎖性と組織コミットメントとの間で高い相関性が確認できた。 

要約行政改革により、公共部門における民間部門のマネジメントスキルの活用や、民間部門のバックグラウンドを持つ管理職採用が増えている。こうした動きによって、民間経験者の採用が結果志向、効率性、イノベーションに対する態度等を公共部門に持ち込み、公共部門の業績に良い影響を与えるという意見と、民間企業の経験や公正性、公平性等の官僚機構の中核的な価値観を損なう可能性があるとする意見の間で議論が生れてきた。しかし、数多くの逸話的な証拠はあるが、民間部門での経験が公務員の価値観に与える影響についての実証はまだ限られている。本研究では、欧州18カ国の中央政府の上級公務員を対象としたデータを用い、民間部門での経験を持つ上級公務員ほどより中核的な経営的価値観を持っていることが分かった。しかし、従来の見解とは異なり、民間部門経験は公正性、公平性等の公共的価値観を損なうことはないことが分かった。 

要約高齢化社会を迎えた他の多くの社会と同様に、現代日本では高齢者の孤独と社会的孤立が大きな問題となっている。しかし、緊縮財政の継続と高齢化に伴う財政負担のため、地方自治体はこの問題に対処するにあたっていくつか財政的な制約を抱えている。このため、政策立案者は高齢者の社会的孤立に取り組むため、地域社会との協働も含め、費用対効果の高い方法を模索するようになっている。本論文では、住民協働を用いた費用対効果の高い社会的孤立対策の取り組みとして、日本の2つの自治体の取り組み事例を検討する。 

2019:

2018:

要約:本研究は、アルバート・ハーシュマンの"Exit, Voice, and Loyalty"理論を地方行政に応用し、自治体の財政再建が住民の転出意思(Exit)及び行政参加・地域活動(Voice)に及ぼす影響を分析することで、財政再建下における住民の行動原理を解明し、その後の地域再生に資する重要な要因を特定することを目的としている。財政再建の影響を抽出するため、財政再建下の青森県大鰐町と、近隣自治体であるが財政再建の対象にはなっていない青森県田舎館村を財政再建前後で比較する疑似実験の分析枠組みを使用した。本調査では、大鰐町民及び田舎館村民の過去の記憶をデータとして収集し、財政再建前後の転出意思、選挙や地域活動の頻度、地域への密着度等の変化を分析した。 実験結果は、財政再建下において大鰐町民は転出意思(Exit)が、田舎館村民に比べて統計的有意に高まっていた。一方で、財政再建後に大鰐町民のVoice活動 (例えば、町長・町議会議員・役場の公務員との接触、自治会・PTA活動、住民説明会への出席等) の頻度は、田舎館村民に比べて統計的に有意な変化が見られなかった。また、財政再建前後に関わらず、地域活動をしている住民は、大鰐町・田舎館村双方においてご近所に友人が多いと答える傾向にあり、Loyalty(郷土愛)はSocial Capital(地元の人と人との繋がり)と密接に関連していると推測される。

要約本研究は日本の764市において女性首長、議員及び公務員管理職比率と自治体の財政判断との関係を分析することを目的とする。研究の結果、地方議会で女性議員比率が高まると公債発行額、公社・公団・公営企業体への投資額は低くなり、リスク回避型の財政判断が行われやすいことが分かった。しかし、女性首長・副首長と女性中間管理職と財政判断との間に統計的に有意な関係は確認できなかった。本研究は女性議員比率が最も低い先進国である日本を対象に女性管理職比率と財政判断についての既存理論の検証を行ったものである。

要約:本研究は、日本の職場において給与・昇進等の男女格差が国際的に顕著であり、特に公共組織の女性管理職の割合が著しく低いことに着目し、1999年から2011年に実施された労働政策研究・研修機構の『勤労生活に関する調査』のデータを用いて、男女格差に関する認識 を民間就労者と公務員とで比較分析した。分析結果は、(1) 1/3以上の日本の就労者が、「性の違いによる処遇は、公平/ほとんど公平」(つまり、男女格差がない) と回答しており、その割合は1999年から2011年まで上昇し続けている; (2) 民間・公務員に関わらず、女性の方が、男女格差があると答える傾向にある;  (3) 民間就労者間においてのみ、性別に関係なく、年功賃金を支持している人ほど、男女格差はないと答える傾向にある。この傾向は、公務員に見られない; (4) 民間・公務員及び性別に関わらず、仕事に満足している人ほど、男女格差はないと答える傾向にある;  (5) 民間・公務員及び性別に関わらず、日本の職場に国籍・人種による処遇の格差があると回答した人ほど、男女格差もあると答える傾向にある。これらの分析結果は、男女共同参画社会実現に向けた効果的な政策実施に貢献しうる。

2017:

2016:

2015:

2012:

2011:

1995:

1990:

1984: