3つのテーマ

『行政研究のフロンティア』は、国際的な行政研究の最先端を追いかけ、日本語での紹介や、国際的学術誌の論文掲載に繋げることを目的とし、ホームページを通じた情報公開及び年数回の勉強会を開催しています。ここでは、日本行政学の国際化に向けて本グループが取り組む3つのテーマを紹介しています。勉強会資料は、こちらのページで公開されています。また、勉強会の詳細及び参加に関心のある方は、Home から勉強会メールリストの登録をしてください。

テーマ1:人間中心の行政学

従来の日本行政学は、日本の行政制度あるいはシステムとしての役割や機能をマクロ的に論じることに注力し、公共組織内の個人 (つまり公務員) が人間であるというミクロの視点が弱かった。一方、同時期のアメリカ行政学は、個人をシステム内の歯車のように扱い効率性を追求した科学管理論への疑問から、公共組織の統治ルールや管理システムだけでなく公務員個人のニーズや欲求等についても深く分析するようになった。公務員が一様な公共組織の一部ではなく個々に異なる人間という視点から発展した国際的な行政学の主要分野として、公務員倫理・アカウンタビリティ、市民と公務員の相互関係、公共組織内のジェンダー・ダイバーシティ、公務員特有のモチベーション・ニーズ・能力などが挙げられる。本勉強会では、行政学が公共組織内部及びそれを取り巻く人間社会を探究する学問であるという側面に注目し、制度的な側面に偏りがちな日本行政学の国際化・多様化に貢献したい。

テーマ2:行政研究・実務向け方法論の発展

日本の公務員は、国家公務員法及び地方公務員法に基づき、公務あるいは行政を「民主的且つ能率的に運営」することが求められている。政策・公共サービスの計画・実施において民主的価値あるいは効率性が確保されているかを定量分析すると、その方法を数式化し、数で結果を示すことで、比較検証しやすくできる。統計を使用した行政評価の強みは説明責任・透明性の確保であり、公共サービスへの信頼度が先進国最低レベルの日本において導入価値が高い (World Values Survey 参照)。一方で、主に金銭的利益のため効率性を追求する民間組織と異なり、民主的価値と効率性という2つの異なる評価軸を持つ公共組織の目標は曖昧になりやすく、数値化しにくい。現場の聞き取り・観察などの定性分析から、多様な行政業務の成果目標を設定し、公平性やサービス満足度など数値化しうる成果目標の一側面を定量分析するなどの混合分析アプローチも不可欠だが、日本の一般的な方法論の教科書はこのような行政特有の事情を考慮していない。本勉強会では、定性・定量データ分析や社会実験などの科学的証拠に基づく公共経営(Evidence-based Public Management)の本格的導入を見据え、日本人行政研究者間における方法論の発展や、行政実務者にとって有用なデータ集計・分析の導入方法等を模索する。

※方法論に関する勉強会資料は、こちらから入手可能です。

テーマ3:世界に通用する日本行政研究

これまで日本の行政学が、アメリカ輸入の学問から脱し、主に国産の学問としての発展を目指してきたことから、日本行政研究は数少ない例外を除いて国際トップジャーナルに論文掲載されることがなかった (論文の一覧参照)。一方、お隣の韓国・中国の行政学は、国内外の在籍を問わず、国際ジャーナルへの論文掲載を第一の業績として研究が進められており、世界的に知名度の高い学者も多い。本勉強会では、日本固有の歴史や制度に焦点を置く国産行政学の価値を認めつつも、国際化・多様化・デジタル化に対応し変容し続ける国際的な行政学の国内高等教育への反映と、日本行政学の国際的認知度の向上を目指し、日本人行政研究者による英語論文の紹介や国際ジャーナルにおける論文掲載のための協力体制を築いていく。具体的には、行政理論・方法論の最新国際トレンドをグループとして追いながら、英語論文執筆法や国際化に向けた行政研究者育成法などを模索する。

※国際ジャーナル向け行政英語論文の書き方等に関する資料は、勉強会メールリストにて共有されています。興味のある方はHomeより、メールリストにご登録ください。