Seminar

外部の研究者を招き、セミナーを開催しています。「公開」のものに関してはどなたでも参加できます。

今後開催予定のセミナー

11回(公開・参加登録必須

Beyond Nature and Nurture: Does Stochastic Noise Change the Cellular Epigenetic Landscape?」(生まれと育ちを超えて:確率的ノイズは細胞のエピジェネティックランドスケープを変化させるか?)


要旨:

While genetic variation frequently drives phenotypic variability, genetically identical individuals still exhibit distinctively different phenotypic traits. This can be because of rare somatic mutations, environmental fluctuations, or stochastic effects in early development. Although understanding these sources of variation is important to understanding incomplete penetrance and heritability in genetic diseases, it has been difficult to trace their relative influence, particularly due to confounding environmental factors.

In this talk, I will introduce our time-course transcriptome analysis on the nine-banded armadillo (Dasypus novemcinctus), which produce litters of genetically identical quadruplets. Analyzing the transcriptome profiles within the siblings indicated the existence of identity signatures under tight control of genetic and environmental factors. Finally, I will discuss our ongoing work, where the transcriptome and epigenetic variability is further assessed on large-scale omics data including hundreds of hPSC lines.


お問い合わせ: Contact 

これまで開催したセミナー

第10回(公開・参加登録必須)

情報科学と力学系理論に基づく遺伝子発現ダイナミクスのモデル推定


要旨:

細胞内における遺伝子発現ダイナミクスを表す数理モデルが得られれば、シミュレーションやモデル解析により遺伝子発現制御に関するさまざまな知見が得られると期待される。しかし、そのようなモデルを限られた知識とデータから構築するのは困難な課題である。本講演では、遺伝子制御ネットワークとそれに基づく力学系理論を利用することで、1細胞発現データからダイナミクスモデルを推定する手法について紹介したい。


お問い合わせ: Contact 

回(公開・参加登録必須)

アカデミアから飛び出してバイオインフォベンチャーつくった

要旨:

本講演は、農学部から工学部への転学部を経験した演者が、研究DXの支援に特化した会社の経営に至るまでの経緯を紹介します。LLMによる論文情報抽出を例に、ライフサイエンスと情報工学の両分野の知識を活用し研究の効率化と社会実装を支援する仕事の魅力を伝えます。自由なキャリアパスを検討するための視点を提供し、この講演を通じて進路について多様な選択肢を考えるきっかけとなることを目指します。


お問い合わせ: Contact 

第8回(公開・オンライン)

「希少疾患ゲノム解析における最近の潮流」

要旨:

個々の希少疾患は極めてまれであるが、その疾患数は5000を超える。その診断にゲノム解析は大きな力を発揮しているが、診断できない症例も多く残されている。診断成績向上をめざしたゲノムデータ解析、情報共有、顔貌解析などにおける最近の潮流を自分の経験をふまえて紹介したい。


お問い合わせ: Contact 

第7回(公開)

「比較ゲノム解析による機能未知遺伝子の機能推定」


要旨:

機能未知遺伝子の機能を推定する情報技術開発はバイオインフォマティクスにおける重要な研究課題である。系統プロファイル法とは、比較ゲノム解析によって、多くの種に共起して現れる遺伝子ペアを検出することで遺伝子機能を推定する手法であり、これまで多くの遺伝子の機能推定に利用されてきた。一方、系統プロファイル法の情報技術開発は十分には発展しておらず、原始的な手法が広く利用されており多くのバイアスが含まれている状況にある。本講演では、近年演者が開発した、進化的バイアス及び擬似相関バイアスを取り除く系統プロファイル法について紹介し、その原理と応用について議論する。


※新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、体調の優れない方は参加を控えていただくようお願いいたします。

第6回(公開・オンライン)

「生命科学研究における人間と機械の役割を再定義する    〜 汎用ヒト型ロボットによる細胞培養の自動化・高度化・共有化 」

要旨:

多くの基礎研究は熟練技術者の匠の技によって支えられており、抱える暗黙知の開放、教育コストの解消が急務である。我々はこれらの問題を解決する手段としてロボットによる実験の自動化・高度化・共有化を提案している。本研究では、モデル実験としてiPS細胞の分化誘導を汎用ヒト型ロボットLabDroid「まほろ」に写し取ることを試みた。まず、ヒトiPS細胞から網膜色素上皮細胞への分化誘導培養のプロトコルをロボットに実装し、播種・培地交換・継代操作を伴う分化誘導操作を自動化を達成した。次に、より最適な分化誘導パラメータを探索し、プロトコルを高度化できるかを試みた。分化した網膜色素上皮細胞の指標のひとつである、分化誘導細胞中の着色した細胞の数を評価値として、実験計画法などを用いて機械的にパラメータ空間を探索したところ、生化学的指標および顕微鏡観察による形態観察において熟練培養技術者と同等の分化誘導効率を示す実験条件を得られた。これにより実装したプロトコルを機械的な方法で高度化する方法が実証された。ロボットが熟練者相当の手技を獲得したということは、熟練した培養技術をもたない研究者でも熟練者相当の品質の分化誘導細胞を用いた研究を実施できる共有環境が実現したと言え、共有化も達成された。このようにロボットへの実験の実装はただ単にその実験だけが自動化されるものではなく、高度化・共有化により全ての研究者の研究が加速されうるものと考えている。本研究のほかにも、すべての研究者がオープンかつフラットに第一線の技術を使うことができる次世代型実験環境「ロボット実験センター・プロトタイピングラボ」の概要とその開発状況を紹介するとともに、その先に拓かれるサイエンスの未来について議論したい。

第5回(公開)

「Zebrafish胚発生における遺伝子発現量の時空間再構築 」

要旨:

一つの受精卵から生物種に固有の形状を獲得していく胚発生現象は、個々の細胞が決まった時空間点で決まった振る舞いをすることで実現される。近年、この細胞の振る舞いを大きく規定する遺伝子発現の観測技術は飛躍的な進歩を遂げており、網羅的な空間発現パターンの観測も行われるようになってきている。しかし、これらは時間的にスパースな観測が多く、空間パターンが形成されるまでの過程を調べることは困難であった。

本研究では、Zebrafishの初期発生における胚形態の時空間的に連続な描像を捉えた三次元立体顕微鏡による動画データと空間的な発現量データ、そしてより時間粒度の高い一細胞発現量データを統合する確率モデルを作成し、ベイズ推定の枠組みで動画上に連続的な遺伝子発現の時空間パターンの再構築を行う。

我々は、本研究の手法が様々な時刻と遺伝子で実データと一貫性のあるパターンを構築できていることを確認した。また、再構築された時空間発現パターンを様々な遺伝子について統合的に解釈したとろ、中脳領域での発現変動が後端より始まっていることが示唆された。 

新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、体調の優れない方は参加を控えていただくようお願いいたします。また、当日は入り口に消毒液を設置しますのでご利用ください。

第4回(公開)

「トランスオミクス:細胞の反応速度論的描像に基づく統合オミクス解析」

要旨:

代謝の恒常性は、ゲノム(DNA)、トランスクリプトーム(RNA)、プロテオーム(タンパク質)、メタボローム(代謝物質)など、複数のオミクス階層にまたがる生化学ネットワークによって実現されている。トランスオミクスとはこれらのオミクス階層から得られた大規模データを用いて階層間・階層内をつなぐ生化学ネットワークを再構築し、分子間の因果関係を網羅的に同定する方法論である[1,2]。本セミナーでは、大規模データを統合する際に前提となる細胞の反応速度論的描像や、実験デザイン上の留意点、数理モデル解析等について論じるとともに実際の研究例を紹介する[3-5]。さらに、トランスオミクスにアクセス可能な研究者人口を増やし分野のさらなる発展につながる方策と考えられる解析プロセスの自動化並びにソフトウェア開発の現状についても触れる。

関連文献:

[1]     柚木, 月刊「細胞」, in press.

[2]     Yugi et al., Curr. Opin. Syst. Biol. 15:109-120, 2019.

[3]     Yugi et al., Cell Rep. 8, 1171-1183, 2014.

[4]     †Krycer, †Yugi et al., Cell Rep. 21:3536-3547, 2017.

[5]     †Kawata, †Hatano, †Yugi et al., iScience 7:212-229, 2018 (Cover Article).

第3回(公開)

「階層ベイズモデルの紹介と腸内細菌叢データへの適用」

要旨:近年の次世代シーケンサーの発達により、膨大なシーケンシングデータが得られるようになった。このような膨大なデータを単純な統計解析で解釈することは困難を極める。そのため、モデルに事前知識を導入することで解釈性の高い結果を得ることがますます重要になっている。その一つの方法として階層ベイズモデルが挙げられる。階層ベイズモデルではデータに階層的な分布を仮定することで注目したパラメタの分布を推定することができる。我々は階層ベイズモデルの一つであるLDA (Latent Dirichlet Allocation) を腸内細菌叢メタゲノムに適用した。これまで、腸内細菌叢研究ではクラスタリングによる被験者の層別解析が主なものであった。しかしながら、クラスタリングでは細菌の共起グループであるassemblageを捉えられない。そこで、我々はassemblageを推定する手法としてLDAを採用した。結果として、これまでのクラスタリングによるアプローチでは得られなかった、酪酸産生菌を含む属が支配的なassemblageを発見した。本発表では階層ベイズモデルについて解説したのち我々の研究を紹介する予定である。

第2回(公開)

「遺伝子発現制御のカイネティクスを読み解く ~転写速度と分解速度の同時計測法の開発~ 」

要旨:遺伝子発現は細胞の状態を決定する基本的な制御因子である。転写物は遺伝子発現産物として生産され、その量は転写やRNA分解を含む複雑なプロセスにより決定される。過去の研究の多くでは転写物量制御として、主に転写因子を中心とした転写速度の調整にのみ主眼が置かれていた。しかし近年の研究で、細胞外環境の変化に応答して、各転写物の分解速度も同様に調節されることが示されている。

今回我々は複数の核酸アナログによる同時標識を用いることで、各転写物における転写および分解速度を同時かつ網羅的に計測する新規手法を開発した。またこれらの転写速度や分解速度の違いが、外部環境変化に応答した転写物量変化にどのような影響を与えるかを解明するため、ヒト子宮頸がん由来HeLa細胞に対する上皮成長因子(EGF)刺激を例とした数理モデルを用いて、転写物量のダイナミクスに転写速度や分解速度が果たす役割について解析した。その結果、EGF刺激に対する転写物量の応答速度や感受性に、それぞれの分解速度が影響を与えうることを明らかにした。本セミナーでは、転写速度および分解速度の同時計測手法および数理解析の詳細について説明し、併せて今後の応用について紹介する。

第1回(公開)

「井の中のバイオインフォ解析にならないために」

要旨:近年の大規模な生命科学のデータ解析においては、用いられた解析手法自体の持つ特異性の理解が、解析結果の解釈の際に手法依存的なバイアスを除く 上で重要である。本講演においては、大規模遺伝子発現データや医療画像解析を通して、データ・解析手法間の網羅的な比較による、データの真のユニ ークネスを推定する重要性について議論する。