時間:14:00~18:00
方法:Zoomオンライン+対面(琉球大学50周年記念会館1階)
新永 悠人(弘前大学)「宇検村14集落の簡易文法書記述に特化した調査・記述項目リストの提案」
要旨:鹿児島県奄美大島の宇検村には14集落が存在し、互いの集落は山、川、湾などで遮られている。そのため、例えば隣接する3集落間でも、2人称双数形(同輩以下)の形式が/nˀattəə/(田検)、/urattəə/(湯湾)、/urattari/(須古)のように異なる形式を用いるなどの違いを見せる。発表者はこれまで14集落の1つである湯湾集落の方言を研究して来たが、上記のような方言間の違いもできる限り記録に残すべく、残り13集落の簡易文法書の執筆を目指している。その手始めとして、湯湾集落と隣接する須古集落の簡易文法書を書き進めている。本発表では、このような簡易文法書の記述の効率を最大化するための方策として、宇検村の14集落に特化した調査・記述項目のリストを提案する。このリストの第一段階の意義は残りの12集落の簡易文法書記述の効率を高めることである。しかし、その次の段階の意義としては、このリストを拡張することで奄美大島内の他集落の簡易文法の記述の効率を最大化することが可能になることが挙げられる。
金田 章宏(国立国語研究所客員教授)「宮古語大神島方言 対格の4形式」
要旨:宮古語大神島方言の対格には、対格そのままの形式のほかに、焦点化や強調などとされる類似の意味をあらわすいくつかの助辞がつくことで、ぜんぶで4つの形式が存在する。それらは、対格だけの形式、琉球諸語に広くみられる焦点化助辞duに対応する(対格)=tu、他地域ではba(など)であらわれる(対格)=pa:、それにハに対応する(ハダカ形)=jaである。
これらの出現傾向を文のタイプごとに確認したうえで、あらわれなかったタイプについては話者にその適否を確認する。使用した用例は、2019年5月から2023年3月までに収集したデータにあらわれた対格の例、約千例である。これらの作業により、とりわけ(ハダカ形)=jaの位置づけを検討したい。
時間:14:00~18:00
方法:Zoomオンライン+対面(琉球大学50周年記念会館1階)
崎原 正志(沖縄高専)「沖縄北部本部町諸方言の「私たち」について」
要旨:先行研究によると、沖縄北部諸方言には、「私たち」に相当する形式が2種類あり、どの場面でどの形式が使用されるのかについては、除外(聞き手を含まない)と包括(聞き手を含む)の違いのほか、人称対立(3人称との対比)・親密度(親密な集合か否か)・代表性(「私たち」に含まれるメンバーが会話の現場にいるかどうか)といった、さまざまな要因が関わっているようだ。本部町諸方言で「私たち」の使用について調査したところ、除外の場面では、ワッターのみが使用可能という、先行研究と共通する結果が得られたが、包括文脈では、ワッターを含むどの形式も使用可能で、人称対立はなく、親密度がより重要な要因のひとつであった。また、地域によっては、2つ以上の「私たち」に相当する形式があり、その実態を明らかにするにはさらなる調査が必要だが、この機会に予備調査としての結果を報告したい。
狩俣 繁久(琉球大学)「琉球諸語のとりたて表現の概観」
要旨:話し手は、対象的な内容として文の中に取り込まれたものごとを現実世界のものごとに関係づけて文を発する。話し手の立場からなされる関係づけを陳述的な関わりという。とりたては、文の内容として取り込まれたものごとと現実のものごとの間の陳述的な関わりを表現する文法的な手段である 。とりたて表現の中心はとりたて助詞であり、関係づけたいものごとの後にとりたて助詞を付けてとりたて形にする。本発表では、琉球諸語のうち、大和村国直方言、知名町正名方言、今帰仁村謝名方言、読谷村伊良皆方言、宮古島市平良西里方言、石垣市石垣方言の対比、共存、特立、限定、極端、先順を表すとりたて助詞を概観する。
時間:14:00~18:00
方法:Zoomオンライン+対面(琉球大学 文系講義棟104教室)
當山 奈那(琉球大学)「琉球諸語の状況的な副詞と陳述副詞」
要旨:副詞は、動作の内的特徴をあらわし、様態、程度を表現する規定的な副詞と、動作の外的特徴をあらわし、時間や場所などを表現する状況的な副詞、そして、話し手の動作に対する態度や評価を示す陳述副詞とに区分することができる。本報告では、そのうち、状況的な副詞と陳述副詞についてみていく。琉球諸語の状況的な副詞における時間副詞は、テンポラリティーの中で、発話行為時を基準としたダイクティックな時間副詞と先行する文が示す出来事時を基準としたアナフォリックな時間副詞に分けられる。陳述副詞は、モダリティの中で、現実性、可能性、必然性、極性に分けられる。
金田 章宏(千葉大学国際学術研究院)「西表島方言 祖納方言と古見方言を比較する」
要旨:西表島方言のうち、西部の祖納方言と東部の古見方言の語彙と文法について比較をおこなう。祖納方言の資料は金田による祖納地区の話者2名からの聞き取り資料(1997~2008)である。また、古見方言の資料は加治工(1998~2014)をセリックが電子化して整理したものが中心で、一部占部(2024)も使用した。これまで西表島内の方言差については不明な点が多かったが、この比較によって、この2地点には共通点も多いが相違点もかなりあることがわかった。また、古見方言には宮古語諸方言や波照間島方言にみられる特徴と類似する点がみられることもわかった。
時間:14:00~18:00
方法:Zoomオンライン+対面(琉球大学 文系講義棟111教室)
重野 裕美(日本学術振興会/広島大学)「北琉球奄美大島方言における尊敬標識/丁寧標識の選択について―龍郷町浦方言を中心に―」
要旨:奄美大島方言においては、尊敬標識(-iɕor-等)と丁寧標識(-jor-等)が一つの述語形式の中で共起しづらい傾向が見られる。このため、主語と聞き手がともに目上の場合、尊敬標識と丁寧標識のどちらを選択するかが問題となる。この点について、龍郷町浦集落の方言を中心に、主語の属性(聞き手自身/第三者)及び述語の性質(動詞/形容詞/名詞+コピュラ)の観点から検討する。
又吉 里美(岡山大学)「恩納村の形容詞について―辞書の記述に向けての検討と課題―」
要旨:本発表では、『恩納村誌』言語編の一部である方言辞書の形容詞の項目の記述に関する検討と課題について報告する。方言辞書では概説と単語引き(和琉辞典)の構成をとることになっている。概説部分では、おもに形容詞の形態論を中心に述べるとともに、恩納村方言の特徴を示す。また、本辞書は、単語引きにおいて和琉として、共通語引きの体裁をとることになっている。和琉辞典としての単語の立項、意味記述においては多義や例文提示等において、形容詞ならではの特徴や課題を提示しながら、方言辞書のあり方について検討する。
時間:総会 9:30〜 研究発表会 10:15〜
方法:Zoomオンライン+対面(琉球大学50周年記念会館1階多目的室)
2024年度会計報告、仲宗根政善研究奨励賞受賞者報告、後期定例日程報告
カルリノ・サルバトーレ(大東文化大学)
「日琉諸語の手法・程度・質を表す指示語の記述研究
―北琉球沖縄語伊平屋方言を例に―」
重野裕美(日本学術振興会/広島大学)・白田理人(広島大学)
「北琉球奄美大島諸方言の指示詞現場用法に関する予備調査報告 」
荻野千砂子(福岡教育大学)
「与論・城方言の「~てもらう」について-初期報告- 」
司会:白田理人(広島大学)
狩俣繁久(琉球大学)・仲間恵子(大学非常勤講師)
「大琉球語辞典を用いた琉球諸語研究の可能性」
河原達也(京都大学)「首里方言の音声認識と合成音声」
坂井美日(鹿児島大学)「生成AIを用いた日琉諸語対話システムの開発」
中川奈津子(九州大学大学院)「コーパス調査による日琉諸語類型化の試み」
下地理則(九州大学)「談話データの注釈・管理・利用:研究者の視点から 」
時間:14:00~18:00
方法:Zoomオンライン+対面(琉球大学50周年記念会館1階)
新永 悠人(弘前大学)「北琉球奄美大島湯湾方言の指示詞における直示と照応の初期報告」
要旨:本発表は北琉球奄美大島で話されている湯湾方言と須古方言の指示詞の使い分けに関する初期的記述報告である。2023年9月末の調査時点において湯湾方言は70歳、須古方言は65歳の話者にそれぞれ1名ずつ調査した。両方言は地理的に隣接している。その指示詞については、先行研究(内間・中本・野原1976:103-106;Niinaga 2014:111-120)では大まかに3系統(ku/u/a)の指示詞が近称・中称・遠称として機能することが述べられているだけで、その詳細(直示と照応を区別したうえでのそれぞれにおける使い分け)が不明である。本発表では、衣畑(2017;2021)などで提示されている調査項目を利用し、上記2方言の直示と照応の詳細を報告する。結論を先に述べれば、直示・照応のどちらもその使い分けは概ね話し手領域・聞き手領域・それ以外の領域で説明が可能である。ただし、特定の状況(話し手と聞き手が対面し、指示物が1つの場合)では話し手領域でku/uの両方が使用可能であるなどの現象も見られた。
仲原 穣(沖縄言語研究センター運営委員世話人/琉球大学客員研究員)「琉球語の区分について考える」
要旨:琉球語の下位区分には、仲宗根政善(1961)や上村幸雄(1963)をはじめ、琉球諸方言の研究では、これまでおもに「方言区画」が使用されてきた。母音や子音の体系、唇音退化、硬口蓋化などの音韻変化、動詞、形容詞、助詞などの文法、単語など、様々な特徴によって行われてきた類型分類である。一方、欧米では比較言語学による系統分類が主流であり、系統の分岐の根拠となるものは、類型的な特徴ではなく、分岐を証明する「改新」であるという。この系統分類に根ざした琉球語の系統分類が提案されている。琉球語の系統のみならず、琉球祖語、日琉祖語の系統の見直しに言及する論もでてきている。また、あらたな分類方法も提案されている。そこで本発表では琉球語の類型分類、系統分類、その他の琉球語の区分に関するこれまでの研究を整理し、それぞれのメリットについて考え、言語区画の意義について改めて考えてみたい。
時間:14:00~18:00
方法:Zoomオンライン+対面(琉球大学50周年記念会館1階)
崎原 正志(沖縄高専)「本部町渡久地方言のアクセント体系の変遷」
要旨:沖縄島北部・本部町の中央沿岸部に位置する渡久地集落で話される伝統方言(以下、渡久地方言と記す)の基礎語彙について調査したところ、いくつかの語彙にて、同一方言内の通時的な語形の違いが認められ、また、ハ行子音の非円唇化および破裂音の破擦音化などの音韻変化もみられたが、今回、アクセント体系についても分析したところ、下降アクセント化という変化が確認できた。渡久地方言は、新設集落(屋取集落)の方言の影響を強く受け、伊野波などの周辺の伝統集落の方言から「分岐」したと推測されるが、語形や音韻、アクセント体系の変化がその「分岐的発達」を特徴づけている。
荻野 千砂子(福岡教育大学)「竹富町黒島方言の指示詞」
要旨:これまでの指示詞の調査は、単独のものを差し、「コレ、ソレ、アレ」の、どの系統の指示詞が用いられるかという調査が主流であった。もちろん、その調査も必要であるが、琉球語では、「複数のもの」をどう指すか、という調査も必要ではないかと考える。竹富町黒島方言で、「近」、かつ、「複数」のものを指示する場合、どのような指示詞を用いるかを調査した。具体的には、話し手の目の前に、二つの異なる飲み物を用意し、話し手が、対面に座っている聞き手に「これとこれ、どっちがいいか?」と尋ねる調査である。話者の答えは、「kuri(コレ)とhari(アレ)のどちらがいいか?」となった。hari(アレ)は、単独の場合は、遠称のものを指す指示詞である。しかし、このように複数のものを指す場面では、話し手の目の前にある「近」でもhari(アレ)が使用される。このような使い方は、現代共通語の指示詞にはないため、見過ごされがちだが、このような対の用法が、指示詞の根本的な文法と関わるのではないかと考える。
時間:14:00~18:00
方法:Zoomオンライン+対面(琉球大学50周年記念会館1階)
當山 奈那(琉球大学)「与論方言の可能表現」
要旨:与論方言の可能表現の特徴として、以下の2点を報告する。(1)与論方言には、シラリュン可能動詞とシナユン可能動詞の2つの形式が存在する。シラリュン可能動詞は基本的な形式であり、個別具体的な場合でも時間的限定性のない場合でも、内的要因による場合でも外的要因である場合でも、主体が人でも物でも用いることができる。シナユン可能動詞は能力可能を表現する。時間的限定性がない場合のみ使われ(例外として、否定形で非実現を表すことがある)、主体が物には使えない。(2)与論方言の可能構文には、与格主語が現れる。ただし、与格主語の可能構文では、シナユン可能動詞を用いることができない。
白田 理人(広島大学)・重野 裕美(日本学術振興会/広島大学)「北琉球奄美大島笠利町佐仁方言の疑問文について―文末形式を中心に―」
要旨:奄美大島笠利町佐仁方言の疑問文について、文末形式を中心に記述を行う。主に以下の点を報告する。
①聞き手に情報を求める「問い」の疑問文について、真偽疑問文では基本的に文末に助詞=na(異形態=nja)が用いられる。助詞=naに助詞=iiもしくは助詞=urïが後続することもある。②「問い」の疑問詞疑問文では、述語において活用語の非過去肯定形に接辞-rjeが用いられるほか、文末に(随意的に)助詞=urïがつく。③自問など、聞き手に情報を求めない「疑い」の疑問文では、真偽疑問文・疑問詞疑問文ともに、文末に助詞=këiが用いられる。自問では、助詞=këiにコピュラと同形の助詞=dʒaが後続することもある。
※ 白田さん・重野さんのご報告は、中止となりました。
崎原 正志(沖縄高専)「沖縄本部町伊豆味方言の基礎語彙とアクセント」
要旨:沖縄島北部・本部半島の中央部に位置する本部町伊豆味集落で話される伝統方言(以下、伊豆味方言と記す)の基礎語彙について調査したところ、五十嵐(2018)の分類でB類とされている2拍語の語彙の語末が長音化することが確認できた。この特徴は、近隣の伝統的な集落で話される諸方言、つまり国頭語の特徴と共通している。伊豆味集落は、屋取集落(本稿では、新設集落と呼ぶ)であるが、その方言は、伝統集落の特徴もいくらか受け継いでいて、国頭語(北部諸方言)と沖縄語(中南部諸方言)の特徴を併せ持ったハイブリッドな言語・方言であることを主張する。
時間:14:00~18:00
方法:Zoomオンライン+対面(琉球大学50周年記念会館1階)
名嘉眞 智恵(沖縄国際大学大学院2年次)「沖縄中南部地域共通語における場所をあらわすニとデについて」
要旨:沖縄中南部地域共通語(沖縄島中南部地域で話されるウチナーヤマトゥグチ)は、日本語と琉球語の沖縄中南部方言との接触によって生まれた言語である。本報告では、動詞「働く」を述語とする場合の場所をあらわす格助詞ニとデの現れ方に注目して発表する。日本語では動詞「働く」を述語とする場合、場所をあらわす格助詞としては基本的にデが選択され、ニはあまり許容されない。しかし、今回の調査では、沖縄中南部地域共通語では「雑貨店ニ働いた」のように、ニも許容されることがわかった。追加で実施した調査で、場所をあらわすニまたはデの選択には時間名詞(副詞)も関係していることが明らかになった。
金田 章宏(国立国語研究所客員教授)「宮古語大神方言 動詞からの派生形容詞の整理」
要旨:日本語では動詞からの派生形容詞に「したい」「しそうだ」「しやすい」「しにくい」などがみられるが、大神方言にもさまざまな派生形容詞が存在する。たとえば、「しにくい」に対応するものだけでも、~kurikam、~pata: ne:N、~ju:saNがみられる。それらの接続関係や意味を整理することで、大神方言の文法体系の一部として位置付けたい。
狩俣 繁久(琉球大学)・島袋 幸子(琉球大学)「今帰仁村謝名方言の説明を表すシテアル文」
要旨:沖縄語,宮古語,八重山語には客体の変化結果の継続,間接的な結果,間接的な結果を根拠にした推論を表すシテアル形がある。沖縄語今帰仁村謝名方言にも客体の変化結果の継続,間接的な結果,間接的な結果を根拠にした推論を表すシテアル形がある。筆者は,今帰仁村謝名方言のシテアル形を述語に持つシテアル文がどのようなテクスト構造に現れるのか,奥田(1990)に基づいてシテアル文の発話内容と発話場面の出来事がどのような関係を結ぶのか,発話場面においてシテアル文がどのような機能を果たすのかを検討した。検討の結果,今帰仁村謝名方言のシテアル文が日本語のノダ文,ノダロウ文と同じく説明の文として機能することを確認した。
※ 狩俣さん・島袋さんのご報告は中止となりました。
時間:総会 10:00~ 公開研究会 10:30~ ワークショップ 13:30~
方法:zoom併用
場所:琉球大学50周年記念会館1階多目的室
参加費:500円(非会員の会場来場者のみ)
2023年度会計報告、会則の改定、仲宗根政善研究奨励賞受賞者報告
〇「疑問文末形式の通時的変化―喜界島方言の-mï/-miを中心に―」白田理人(広島大学)
〇「『ハもガも使えない文』の方言バリエーション:九州方言と琉球諸語のデータを用いた試論」
廣澤尚之(九州大学大学院)・下地理則(九州大学)
〇「琉球諸語の集団遺伝学が目指すもの」狩俣繁久(琉球大学・戦略的研究プロジェクトセンター)
〇「琉球諸語の語彙類似性に基づいた系統解析」大城璃功(琉球大学工学部)・岡崎威生(琉球大学工学部)
〇「日本語→琉球諸語翻訳モデルの構築に向けての第一歩」當間愛晃(琉球大学工学部)
〇「生成AIを用いた日琉諸語・諸方言の生成対話システム開発にむけて」坂井美日(鹿児島大学・総合科学域総合教育学系)
・ディスカッション 指定討論者 宮川創(筑波大学)
懇親会 17:30~ 琉球大学50周年記念会館1階 交流ラウンジ 一般4000円(学生1000円)
時間:14:00~18:00
方法:Zoomオンライン+対面(琉球大学50周年記念会館1階)
當山 奈那(琉球大学)「石垣四箇方言の可能表現(調査報告)」
要旨:2024年3月、9月に実施した石垣四箇方言の可能表現の調査について報告を行う。石垣四箇方言において、可能表現の文の述語は、-(r)aːriɴ、-busɿɴ、-e:sɿɴを後接させることによって作る。-(r)aːriɴを後接させた可能動詞を述語にもつ文は、人も物も主体になることができ、能力可能、条件可能、規範可能になる。-busɿɴを後接させた可能動詞を述語にもつ文は、能力可能になる。-eːsɿɴを後接させた可能動詞を述語にもつ文は、主体の意志的な実行・不実行を表す。
狩俣 繁久(琉球大学)・島袋 幸子(琉球大学)「今帰仁村謝名方言の説明の文から考えるパーフェクト」
要旨:琉球諸語のアスペクトを論じた先行研究は,シテアル形が客体結果の継続,間接的結果(痕跡,効力等),間接的結果を根拠にした推論を表すことを論じてきた。しかし,それらはシテアル文の表す出来事の時間的な内部構造に関するものであり,シテアル文を発話場面から切り離して分析したものであった。しかし,発話場面から切り離された文は存在しない。本発表は、その原則にしたがって今帰仁村謝名方言のシテアル文を発話場面に位置づけて分析し,シテアル文が日本語のノダ文と同じく説明のモダリティを持った文としても,日本語のノダロウ文と同じく「説明の構造」と「おしはかりの構造」を同時に表す文としても現れることを論ずる。
時間:14:00~18:00
方法:Zoomオンライン+対面(琉球大学50周年記念会館1階)
林 智昭(名桜大学)「沖縄の「しましょうね」に関する予備的研究」
要旨:沖縄本島において、一人称の意志を表すときに「しましょうね」という表現が使用されることがある。例えば、食堂での注文時における「こちらの番号で呼びましょうね。タコライス一丁」の「呼びましょうね」は、東京方言における「お呼びしますね(呼びますね)」に相当する。先行研究である宮平 (2016: 125) によると、この種の「沖縄ことば」は、明治時代以降、沖縄語(ウチナーグチ)が本土で話されていた日本語と接触することにより生じたとされる。本発表では、宮平 (2016) を出発点として、(i) 沖縄本島における「しましょうね」の用法を記述し、(ii)(間)主観性 (Traugott 2003) の観点から考察を試みる。
重野 裕美・白田 理人(日本学術振興会/広島大学・広島大学)「北琉球奄美大島方言における尊敬動詞の形態的特徴の地域差と変化ー過去形を中心にー」
要旨:奄美大島方言においては、おもろさうしの尊敬動詞「おわる」相当の形式を由来として含む尊敬動詞語根/尊敬接辞が見られる。おもろさうしの「おわる」のテ形相当の形は「おわちへ」であり、語根と接辞の境界に現れる子音はtɕであったと考えられる。奄美大島方言の尊敬動詞語根/尊敬接辞に-tで始まる接辞が後接した場合の形態素境界に現れる子音(ただし「居る」相当の尊敬動詞/継続の尊敬補助動詞の場合を除く)は、これに対応しており、tɕに遡るものと考えられる。しかしながら、現在の奄美大島方言においては、これに対応する子音として、地域によって、①tɕ、②ɕ、③ɕまたはtɕ、④ɕまたはtといったバリエーションが見られる。本発表では、過去形を中心に、尊敬動詞の形態的特徴の地域差を報告し、それぞれの地域でどのような変化が生じたと考えられるかについて、一般的な音変化と、個別的な変化に分けて検討する。
時間:14:00~18:00
方法:Zoomオンライン+対面(琉球大学文系講義棟111教室)
又吉 里美(岡山大学)「沖縄県うるま市津堅方言の指示詞の体系と用法について―2024年度の調査報告から―」
要旨:本発表では、北琉球方言に属する津堅方言の指示詞について報告する。これまで、発表者の研究報告において、津堅方言の指示詞はu系とa系の2系列であること、またこの2つの指示詞の違いとして空間情報を持たないu-と空間情報を持つa-との対立であることを指摘してきた。本報告では、指示詞の先行研究である衣畑(2017、2021)などで提示されている調査項目を用いて、改めて津堅方言の指示詞の調査報告をおこなう。また、衣畑(2017、2021)などで報告されている南琉球宮古狩俣方言の指示詞との比較をおこない、その差異について検討する。
時間:14:00~18:00
方法:Zoom オンライン+対面(琉球大学共通教育棟 2-101)
當山 奈那(琉球大学)「与論方言の可能表現」
要旨:与論方言には,シラリュン可能動詞とナユン可能動詞が存在しており,これまでの研究では,両者の使い分けについて,前者は条件可能を,後者は能力可能をあらわすとされてきた。しかし,否定表現の場合は,1人称か1人称以外かという人称性で使い分けられるようになる傾向があり,そのことについて,林2014では「肯定文と否定文の非対称性」として説明がなされている。本報告では,アクチュアルな可能とポテンシャルな可能,また,肯定文と否定文の意味や機能という観点も含めて与論方言の可能表現をみていくことで,その文法的な意味、機能、構造を分析、記述し、明らかにすることを目的とする。
※ 當山 奈那の報告は中止となりました。
重野 裕美(広島経済大学ほか)・白田 理人(広島大学)「地域コミュニティと取り組む奄美大島方言の基礎語彙・談話データの収集・公開II―中間報告―」
要旨:発表者は、2021年度に引き続き、2022年度も言語学会の「言語の多様性に関する啓蒙・教育プロジェクト助成」を受け、「地域コミュニティと取り組む奄美大島方言の基礎語彙・談話データの収集・公開II」というプロジェクトに取り組んでいる。このプロジェクトでは、消滅の危機に瀕している奄美大島方言を対象として、地域コミュニティ(主に「シマユムタ伝える会」及び「あまみエフエム」)とともに①奄美大島方言の基礎語彙調査・談話収集を行い、②調査等から得られた一次資料をHP等で公開・発信することを目的としている。本発表では、このうち、これまで得られたデータの整理・書き起こしを行い、地域コミュニティのニーズに沿って公開・発信する過程について報告し、プロジェクトの効果・今後の課題について検討する。
時間:14:00~18:00
方法:Zoom オンライン+対面(琉球大学共通教育棟 2-101)
目差 尚太(沖縄国際大学/日本学術振興会特別研究員PD)「琉球諸語のモダリティ―可能表現の文―」
要旨:可能表現文の意味的なタイプには、能力可能、条件可能、規範可能、意志可能、実現の可能性、実現があげられる。可能表現文は、これらの意味を表しながら、現実表現文、必然表現文と相互に作用して、ものがたり文、まちのぞみ文、はたらきかけ文として働く。本研究では、琉球諸語の可能形式が、どのような条件のもとで、現実表現文、必然表現文に移行し、はたらきかけ文、まちのぞみ文として使用されるか、その実態について報告する。
Lucila Gibo(儀保ルシーラ)(上智大学)「ブラジルカンポリンポ地区で継承語として話される沖縄語−方言の継承及び変容−」
要旨:本発表ではブラジルサンパウロ市カンポリンポ地区で育った話者が継承語として話す沖縄語の言語的特徴を分析する。カンポリンポはブラジルの他の地域よりも沖縄語の継承に成功した地域であり、第二世代の話者でも日常的に沖縄語を使用している。当該地区には沖縄南部出身者が多く、方言の特徴が維持されやすく、沖縄生まれの親からブラジル生まれの子へ継承されている。ただし、話者は日常的にポルトガル語を第一言語として話しているため、その影響により沖縄語は変容している。例えば、ポルトガル語のテンス・アスペクト・エヴィデンシャリティの影響により過去の出来事を述べる際に話者は「サン」、「スタン」さらに「セーン」という3つの形式を混同し使用している。本発表では、東風平方言を話す話者の自然談話に見られた特徴を分析すると同時に、面接調査を通して得られた用例を基に動詞の使い方について考察する。
又吉 里美(岡山大学)「津堅方言における指示詞の体系的整理と指示詞研究の課題」
要旨:本発表では、津堅方言の指示詞の体系について整理して示す。津堅方言の指示詞はuriとariの2形式のいわゆる二系列の体系である。話し手近くのものを指す近称、聞き手近くの物や人を指す中称ではuriを用い、話し手からも聞き手からも遠い物や人を指す遠称では、ariが用いられる。また、指示詞は時に評価性が加わることが指摘される(cf.共通語の「アノ」について「驚き、意外性」と言った評価性が関わることなど[堤2018])が、このような評価性の観点からも検討する。
※ 又吉さんのご報告は、中止となりました。
時間:14:00~18:00
方法:Zoom オンライン+対面(琉球大学50周年記念会館1階多目的室)
當山 奈那(琉球大学)「与論方言の可能表現」
要旨:与論方言には,シラリュン可能動詞とナユン可能動詞が存在しており,これまでの研究では,両者の使い分けについて,前者は条件可能を,後者は能力可能をあらわすとされてきた。しかし,否定表現の場合は,1人称か1人称以外かという人称性で使い分けられるようになる傾向があり,そのことについて,林2014では「肯定文と否定文の非対称性」として説明がなされている。本報告では,アクチュアルな可能とポテンシャルな可能,また,肯定文と否定文の意味や機能という観点も含めて与論方言の可能表現をみていくことで,その文法的な意味、機能、構造を分析、記述し、明らかにすることを目的とする。
狩俣 繁久(琉球大学)・島袋 幸子(琉球大学)「沖縄語今帰仁村謝名方言のシテアル文のモダリティ」
要旨:沖縄語には客体の変化結果の継続や間接的な結果などのパーフェクトを表す形式がある。沖縄語今帰仁村謝名方言の当該の形式はシテ中止形にaiN(有る)が組み合わさって融合したものである。奥田靖雄(1990)に基づいてシテアル形式を述語に持つ文がどのようなテクスト構造に現れるのかを検討し、シテアル文が日本語のノダ文、ノダロウ文と同じく説明の文として機能することを論じる。
時間:14:00~18:00
方法:Zoom オンライン+対面(琉球大学50周年記念会館1階多目的室)
金田 章宏(千葉大学)「宮古語大神方言 序数詞・助数詞とその周辺」
要旨:辞典作成の一環として、数をあらわす語彙と組み合わさって順序をあらわす序数詞と数量をあらわす助数詞について整理する。そのなかで、とりわけ1、3、6は組み合わさる序数詞、助数詞によってあらわれかたが異なる点が特徴的である。また、「あした」「きのう」を意味する語彙の、発話時を基準とする絶対的な用法(あした・きのう)と任意の日時を基準とする相対的な用法(翌日・前日)など、序数詞、助数詞に関連するさまざまな語彙についてもその意味を整理する。
西岡 敏(沖縄国際大学)「沖縄語の「人名詞」と連体修飾を考える―「~ヌ」「~ガ」「ゼロ」の使い分け―」
要旨:琉球語の連体修飾については、日本語の助詞「の」と「が」に相当する「ヌ」と「ガ」の二項的対立として分析が進められてきた経緯がある。しかしながら、助詞が何も付かない「ゼロ」の言い方が「人名詞」に多く見られる。例えば、沖縄語首里方言であれば、「アヤー ティガネー」(お母さん[士族]の手伝い)、「ヲゥバマー トゥクル」(おばさんの所)といったような表現である。この「ゼロ標識」については、仲原穣(2021)「久米島具志川方言の格標識―有生性階層と各標識の分布―」で「特殊な所有形」とする。そして、「有生性階層」のスケールを使って、「~ヌ」「~ガ」「ゼロ」の分布を示している。その妥当性の可否と「人名詞」に見られる連体修飾のメカニズム、あるいは、その表現法について考えてみたい。
※ 台風接近のため、中止になりました。
時間:14:00~18:00
方法:Zoom オンライン+対面(琉球大学50周年記念会館1階多目的室)
狩俣 繁久(琉球大学)「琉球語の形容詞の特徴」
要旨:形容詞という品詞は動詞と名詞の間にあって連続体をなすが、品詞として形容詞をどのように認めるかを検討する。そのうえで、第二形容詞と名詞の違いを指摘し、第二形容詞を認めるべきことを論じたのちに、琉球諸語の第二形容詞にどのようなものがあるかを概観し、これまで形容詞とは認定されなかった単語を第二形容詞として認めることで琉球諸語の形容詞研究の新たな可能性が見えてくることを論ずる。特性形容詞と状態形容詞の語彙文法的な特徴を時間的なありか限定の観点から論ずる。
又吉 里美(岡山大学)「津堅方言における指示詞の体系的整理と指示詞研究の課題」
要旨: 本発表では、津堅方言の指示詞の体系について整理して示す。津堅方言の指示詞はuriとariの2形式のいわゆる二系列の体系である。話し手近くのものを指す近称、聞き手近くの物や人を指す中称ではuriを用い、話し手からも聞き手からも遠い物や人を指す遠称では、ariが用いられる。また、指示詞は時に評価性が加わることが指摘される(cf.共通語の「アノ」について「驚き、意外性」と言った評価性が関わることなど[堤2018])が、このような評価性の観点からも検討する。
時間:総会 13:00~ 公開研究会 14:00~
方法:zoom併用
場所:琉球大学50周年記念会館1階多目的室
参加費:500円(対面参加者の希望者のみ)
2022年度会計報告、細則の改定、名誉会員の報告、仲宗根政善研究奨励賞受賞者報告
〇「徳之島方言の中舌母音における音響特性・調音運動・弁別素性の比較検討」
加藤 幹治(東京外国語大学大学院/データサイエンス共同利用基盤施設 人文学オープンデータ共同利用センター)
〇「Nature Method の沖縄語諸方言習得への応用」
ハイス・ファン=デル=ルべ(琉球大学他非常勤講師)
〇「北琉球奄美大島笠利町佐仁方言の指示詞について」
白田理人(広島大学)・重野裕美(日本学術振興会/広島大学)
※ 白田さん、重野さんのご報告は中止となりました。
〇「津堅方言における指示詞の体系とその使用について」
又吉 里美(岡山大学)
〇「八重山宮良方言と黒島方言の指示副詞」
荻野 千砂子(福岡教育大学)
時間:14:00~18:00
方法:Zoomオンライン+対面(琉球大学50周年記念会館2階)
白田理人(広島大学)・重野裕美(日本学術振興会/広島大学)「北琉球奄美大島笠利町佐仁方言の指示詞について」
要旨:奄美大島笠利町佐仁方言の指示詞について、以下三点を中心に報告する。①(形式上の)系列の数が、指示対象・品詞によって均一ではなく、基本的な指示代名詞(hurï/ʔurï/ʔarï)・指示連体詞(huɴ/ʔuɴ/ʔaɴ)は三系列であるのに対し、場所指示代名詞(mˀa/ʔaː)は二系列、様態指示副詞(ʔa(ɕ)ɕi)・様態指示連体詞(ʔaɕuɴ)は一系列となっている。②-rï形の指示代名詞に加え、指示連体詞+muɴ(もの)に由来すると考えられる-ɴ形の指示代名詞(huɴ/ʔuɴ/ʔaɴ)が存在する。-ɴ形の指示代名詞は、基本的には人間以外を指し、人間を指す場合には、指示対象を卑下した表現となる。③指示代名詞で人間を指示する場合、話し手/聞き手から近い指示対象であっても、遠称形(ʔarï)を用いることがある。また、指示代名詞末尾が縮約した主格形-kka・属格形-kka(ɴ)について、遠称形(ʔakka(ɴ))のみ、指示対象が基本的に人間に限られる。
重野裕美(日本学術振興会/広島大学)「北琉球奄美大島大和村今里方言の尊敬接辞-tïmor-について」
要旨:奄美大島方言では、一般的に、「居る/行く/来る」相当の尊敬動詞ʔimor-等が、動詞の中止形に後続し、「(〜て)いる/(〜て)いく」/(〜て)くる」相当の、進行や移動を表す尊敬補助動詞として用いられる。大和村・宇検村の一部の地域の方言では、この中止形+尊敬補助動詞に由来すると考えられる接辞-tïmor-が、進行や移動の意味を持たない単なる尊敬標識として、動詞述語だけでなく名詞述語・形容詞述語にも用いられている。本発表では、大和村今里方言を中心に、①接辞-tïmor-及びその由来と考えられる尊敬動詞(及び尊敬補助動詞)の用法を記述し、②尊敬動詞のうち「居る」相当の存在動詞と「行く/来る」相当の移動動詞の命令形・過去形の相違を根拠に、接辞-tïmor-が存在動詞ではなく移動動詞に由来する可能性を検討する。
時間:14:00~18:00
方法:Zoomオンライン+対面(琉球大学50周年記念会館1階)
占部由子(日本学術振興会/東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)「南琉球八重山語石垣島白保方言の可能表現」
要旨:本発表では,石垣島白保方言の可能表現の調査結果を報告する。白保方言は可能表現に,動詞に接辞-ar/-arirを付加するもの,動詞連用形にnar-「できる」が続くもの,動詞連用形にss-「切る」が続くものの3つがある。これらの形式が存在することは指摘されていたが(占部2022),使い分けについては明らかになっていない。そこで本発表では,これらの形式の使い分けについて,談話資料とエリシテーションによる調査結果をまとめ,報告する。
下地理則(九州大学)「除括の区別における包括形の特殊性:琉球諸語の事例報告」
要旨:本研究では、琉球諸語における除外包括の区別に焦点をあて、特に除外・包括それぞれの代名詞が共に1人称複数の下位カテゴリーを構成するかという問題を議論する。琉球諸語22言語を検討し、特に1人称単数(1SG)、除外複数(EXCL)、包括複数(INCL)の間の形態的な関連性に着目する。その結果、琉球諸語のデータに関しては、EXCLは1人称のサブカテゴリーと見なされる一方、INCLは1人称のサブカテゴリーとしてではなく、独立した人称カテゴリーとして見なすべきであるという結果になった。通時的に見ると、元々INCLが1人称代名詞の下位カテゴリーであったところから、様々な改新を経て独自の人称カテゴリーに変化していったことが読み取れる。すなわち、INCLに関して、1人称代名詞に統合される度合いが弱くなっていくという変化が見られる。琉球諸語においては、除外包括の区別の消失がしばしば報告されているが、そこでよく見られるパターンは、INCLが使用されなくなり、EXCLが一般的な1人称複数の代名詞として生き残っていくという通言語的に珍しいパターンである。これは、1人称代名詞としてのEXCLとINCLの統合度の違いから容易に予測でき、また説明できることである。
時間:14:00~18:00
方法:Zoomオンライン+対面(琉球大学50周年記念会館1階)
當山奈那(琉球大学)「琉球諸語の程度副詞」
要旨:副詞は述語品詞と組み合わさって、一定のむすびつきを作りながらその中で、例えば規定的な副詞は、動作、特徴、物の質を示し、状況的な副詞は、状況(場所、時間、まれには原因、目的)の表示によって、動作、特徴、物を性格づける。工藤浩の一連の研究から読み取れるように、副詞の研究の面白さの一つは、動詞・形容詞・名詞・連体詞・接続詞・感動詞などの様々な品詞やアスペクト・テンスやモダリティといった文法的なカテゴリーとその相関と位置づけであるが,同時に分析の難しさとなっている。本発表では,琉球諸語内の数地点を対象にし,述語品詞を限定する程度副詞について整理・記述する。
仲間恵子(琉球大学他)「沖縄島国頭語名護市久志方言の動詞活用について」
要旨:名護市久志方言の動詞は終止形(現在・未来)においてnumiɴ(飲む)、akiiɴ(開ける)のように語尾が-iɴとなり、沖縄中南部で多く見られるnumuɴ(飲む)、akijuɴ(開ける)(語例は那覇市泉崎)というような-uɴとなる語尾とは異なっている。現在、久志方言の辞書編さん作業をしており、意味の記述や用例の和訳のためにも動詞の活用を整理したいと考え、動詞の基本的な活用についてタイプごとに整理を進めてきた。これまでに整理できたことを、沖縄語辞典と対照しながら報告したい。
時間:14:00~18:00
方法:対面(@琉球大学50周年記念会館1階),ストリーミング配信
配信方法:youtubeによるライブ配信 (こちらからご参加ください)
沖縄県では,感染力の強い変異株により感染者数が急拡大し,1,000名を超えました。人と人との接触をできるだけ減らし,感染拡大防止に努める必要があります。つきましては,急遽,今回の研究会をyoutubeライブ配信のみの形式に変更し,会場は閉鎖させていただきます。対応につきまして,ご理解をお願いいたします。(1月7日追記)
今回の定例会は沖縄の感染状況を鑑みて,対面とyoutubeを使用したハイブリッド型で実施しますが,会場にいらっしゃる会員の方は健康観察とマスク着用などの感染対策へのご協力をよろしくお願いします。少しでも懸念のある方やご不安な方は,youtubeのライブ配信でご参加ください。
youtube参加の方の質問・コメントは,「sli.do」で受け付けます。sli.doへのリンク,発表資料へのアクセスURLはyoutubeの概要欄にあります。
目差 尚太(沖縄国際大学/日本学術振興会PD)
「琉球諸語のモダリティ(1)―モダリティ体系における《確認要求文》の特徴―」
要旨:従来の標準語研究と方言研究において,「確認要求」というモダリティは,「質問文」に自明のごとく位置づけられている。しかし,「確認要求」は、言語によっては,質問文としてだけでなく,「平叙文」としても表現されていて、独自のモダリティを持っている。「確認要求」というモダリティが,言語によって,異なった言語活動として存在しているのである。このことから,ある言語を記述する際,「確認要求」を質問文としてだけ記述するのではなく,平叙文など,他の「文の通達的なタイプ」との関係を見ながら,記述する必要があることを述べる。
西岡 敏(沖縄国際大学)「琉球諸語の終助詞について考える」
要旨:西岡敏2002「沖縄語首里方言の終助詞付き用言語彙資料」(『琉球の方言』26号)では、用言の活用形と終助詞との共起関係を示した(アクセント付き)。例えば、沖縄語首里方言の命令形には「ユミ!」(第一命令形)「ユメー!」(第二命令形)の二つがあるけれども、終助詞「ヨー」の後接を考えてみた場合に、「[ユミ]ヨ[ー!(読めよ!)」は言えても、「×ユメーヨー!」とは言えない。終助詞の問題は、かりまたしげひさ2016「沖縄名護市幸喜方言の終助詞とモダリティ」において、叙述文、希求文、命令文、質問文などの文の通達的なタイプや、文の主語の人称の違いなどによって分類することが提唱され、また、崎原正志2018「琉球語沖縄首里方言のモダリティ: 叙述・実行・質問のモダリティを中心に」において、かりまた2016を発展させ、より精密な分類と分析が提唱された。二つの論文に主に学びつつ、琉球諸語の終助詞について考えてみたい。
金田 章宏(千葉大学)「宮古語大神方言の敬語法」
要旨:大神方言の敬語法のうち、尊敬表現について報告する。尊敬表現には尊敬語彙動詞と尊敬派生動詞が使用される。このうち、飲食には三つ(meL/upukeL/NkekiL)、移動と存在には一つずつ(mmeL,uramaL)、尊敬語彙動詞がある。また、移動と存在の尊敬語彙動詞はそれぞれ補助動詞としてはたらき、「していく・してくる」「している」の意味の尊敬組み合わせ動詞をつくる。このほかに動詞一般を尊敬動詞化する接尾辞(-amaL~なさる、~される)がある。また、この尊敬接尾辞はスルの補助動詞(sL)を尊敬補助動詞化(samaL)して、尊敬語彙動詞や動詞一般とともに尊敬組み合わせ動詞をつくる。あわせて、これらの用法について整理する。なお、尊敬対象に対するさそいかけでは、日本語のように謙譲語(参りましょう・いただきましょう)を使用するのではなく、八重山語や八丈語にみられるように、尊敬語(いらっしゃいましょう・召し上がりましょう)が使用される。
※ 都合により発表者・発表テーマ等が変更になることがあります。
時間:14:00~18:00
方法:zoomを用いたオンラインでの開催(要登録)
重野 裕美(広島経済大学ほか)・白田 理人(広島大学)
「地域コミュニティと取り組む奄美大島方言の基礎語彙・談話データの収集・公開ー中間報告ー」
要旨:発表者は、今年度、日本言語学会の2021年度「言語の多様性に関する啓蒙・教育プロジェクト助成」を受け、「地域コミュニティと取り組む奄美大島方言の基礎語彙・談話データの収集・公開」というプロジェクトに取り組んでいる。このプロジェクトでは、消滅の危機に瀕している奄美大島方言(鹿児島県の奄美大島・加計呂麻島・請島・与路島で話されている言語)を対象として、地域コミュニティとともに①奄美大島方言の基礎語彙調査・談話収集を行い、②調査等から得られた一次資料をHP等で公開・発信することを目的としている。地域コミュニティとしては、奄美群島出身の方言話者から構成され、地域で方言の保存・継承活動を実施している「シマユムタ伝える会」および奄美群島に関するニュース等をラジオで発信している「あまみエフエム」から協力を得ている。本発表では、プロジェクトの概要と成果について中間報告を行う。
荻野 千砂子(福岡教育大学)「南琉球石垣宮良方言の謙譲語αの語彙に関して」
要旨:宮良方言の、いわゆる謙譲語として、ujoohuN(さしあげる)があり、この語は、一語で補語だけではなく、主語を高める機能があることを荻野2018で述べた。主語と補語を同時に高める謙譲語は、現在の敬語にないため、謙譲語αと呼ぶことにした。今回は、宮良方言に、他の謙譲語として、ssIsariruN(申しあげる)、kujoomuN(御目にかかる)、sikeehuN(お連れする)があるため、これらの語でも、同様の機能があるかを検証する。結果として、主語と補語を同時に高める機能が見られるため、謙譲語αとしてまとめることを提案する。
時間:14:00~18:00
方法:zoomを用いたオンラインでの開催(要登録)
當山 奈那(琉球大学)「琉球諸語の自他動詞と他動性」
要旨:當山2013では首里方言の他動詞と使役動詞の派生関係と使役文の意味構造への影響から、他動詞派生接辞と使役派生接辞が同じものである可能性を示した。本報告では、琉球諸語内でいくつかの地点を対象に、自他動詞のタイプと使役動詞の派生関係を分析・記述することで、各方言の特徴を取り出し、整理する。琉球諸語の他動化の傾向には使役動詞の発達が背景にあると述べる。
崎原 正志(沖縄工業高等専門学校)「沖縄語(首里・那覇)の「修飾語」および「規定語」について」
要旨:首里・那覇を例にして、沖縄語の「品詞」および「文の部分」に関して、主に「名詞・動詞・形容詞・副詞」が表す「修飾語」および「規定語」の記述を行う。村木新次郎(2012)『日本語の品詞体系とその周辺』に従えば、品詞は、「文の材料としての単語の語彙=文法的な特徴による分類」であり(p.51)、文の部分とは、「当該の文を構成している要素」で、「1つの単語が文の部分になることもあるが、単語の結合体が文の部分となることもある」(pp.50-51)。これらの定義を基に、鈴木重幸(1972)『日本語文法・形態論』も参照し、これらふたつの先行研究の共通点や相違点などの比較・分析を行いながら、日本語の品詞体系とその周辺、および文の部分について再確認する。また、琉球諸語の品詞体系については、下地理則(2018)『南琉球宮古語伊良部島方言』を参照し、全体の整理を行った後、先述の村木(2012)にしたがって、沖縄語の品詞および文の部分について記述する。
時間:14:00~18:00
方法:zoomを用いたオンラインでの開催(要登録)
大竹 芳典(沖縄国際大学卒業生),下地 賀代子(沖縄国際大学)「「ヤイマヤマトゥムニ」の語彙の特徴」
要旨:本発表では大竹2022「「ヤイマヤマトムニ」の研究」(沖縄国際大学日本文化学科令和3年度卒業論文)を基に、八重山地域、特に石垣島で用いられている日本語地域共通語の語彙の特徴を明らかにすることを目指す。高江州1994による「ウチナーヤマトゥグチ」の定義を参考に、日常使用する言語が日本語共通語に移行する過程で生まれた、琉球語八重山諸方言の干渉をうけた八重山の地域共通語を「ヤイマヤマトゥムニ」と呼んでいく。沖縄本島との比較調査によって明らかになった〈主に石垣島のみで使用されている語〉〈両島で使用されているが石垣島の方がよく使用されている語〉〈石垣・沖縄本島共に使用されているが、どちらかといえば石垣島の方で使用されている語〉約70語について、南琉球諸方言の辞書の記述を参照しつつ、品詞ごとに分析・考察していく。
金田 章宏(千葉大学)「宮古語大神方言のとりたてにかかわるいくつかの文法現象」
要旨:とりたてに関連するいくつかの文法現象を(大神方言文法記述の一環として)整理する。とりあげるのは、①日本語でも位置づけが問題になっていた「から」形相当の(とりたて的な)順序の用法の再確認と、同じく「より」形相当のとりたて的な用法の確認、②二つの対格形式(juとjupa:)と強調辞tu(他方言ではdu)との関係、③強調辞tuの終助辞的な用法である。すでに、個別に取り上げた(発表した)ものもあるが、とりたての周辺ということでまとめて整理する。結論としては、①日本語の「より」形に対応する方言形式の比較の用法もとりたて的性格を持つこと、②二つの対格形式と強調辞tuとの関係は単純ではなく、ある種の傾向はみられるもののさらなる調査分析が必要であること、③強調辞tuの終助辞的な用法が大神方言にも(ほかはどこ?)あること、である。
時間:14:00~18:00
方法:zoomを用いたオンラインでの開催(要登録)
荻野 千砂子(福岡教育大学)「宮良方言の使役文」
要旨:宮良方言の使役文は、強変化動詞では動詞の語幹に-ahuNが後接して派生される場合と、-asimiuNが後接して派生される場合がある。一方、弱変化動詞では、語幹2に、-simiruNが後接することで派生される。強変化動詞では、-ahuNでの使役形式の場合、動作主(被使役者)の意向が重視されるが、-asimiruNの場合は、使役者の方の意向が重視される傾向にある。結果として、-ahuNは許可の意味が感じられ、-asimiruNは、強制の意味が感じられることが多い。しかし、自動詞・他動詞と使役形式の関係は、まだ不明な点が多く、-ahuNは使役文ではなく、他動詞を生成している可能性もある。以上の点を、可能な限り整理することを試みる。
高良 富夫(琉球大学名誉教授)「任意の言語・方言の文音声合成システムを作る」
要旨:プログラミングをせずに文音声合成システムを作成することができる汎用の音声合成システムについて述べる。琉球首里方言の音声合成システムであったものを発展させた。モーラデータ、アクセントデータ等を替えることにより、プログラミングをせずに、ほかの方言・言語の文音声合成システムに変えることができるものにした。これを利用して、これまでに、ベトナム語、タイ語、ミャンマー語、バングラデシュ語、スペイン語、アムハラ語のシステム作成が試みられている。筆者は、石垣方言音声合成システムを約1か月で作った。システムは、システム本体、モーラデータ作成システム、アクセントデータ作成システムからなる。今回、これを紹介するとともに、新しいシステムを作る作業の一部を実演する。内容は以下のとおりである。
(1)文音声合成システム
(2)汎用の文音声合成システム
(3)システムのデータ
(4)モーラデータ作成の実演
(5)アクセントデータ作成の実演
Miho Zlazli(ズラズリ美穂)(SOAS University of London)「琉球諸語研究と言語再活性化に関与する様々な当事者の声」
要旨:沖縄県は平成25年度から10年計画で「しまくとぅば普及推進計画」を実施しているが、筆者の印象では、危機言語としての琉球諸語のアウェアネス向上は確実に達成されたものの後期目標である琉球諸語の「積極的な活用」が低迷している。その原因として、言語再活性化に関与する当事者間の横の連携がうまく取れていないことが挙げられると思う。本研究では、Johan GaltungのTranscend Method(2000)を参考に、琉球諸語研究と言語再活性化に関与する様々な背景の当事者一人一人の声を個別に聴取し、そこから浮かび上がる問題点を総括し、創造的な解決法を模索する。
時間:14:00~18:00
方法:zoom併用(状況によっては全オンラインの可能性があります)
場所:琉球大学文系講義棟215教室(アクセスはこちら)
参加費:500円(対面参加者で非会員のみ。オンライン参加者および会員は無料です)
※登録やZoomでの参加について不明な方はこちらをご参照ください。
2021年度会計報告、会則の改定、仲宗根政善研究奨励賞受賞者報告
〇「琉球諸語のモダリティー必然表現の文ー」
目差 尚太(沖縄国際大学/日本学術振興会特別研究員PD)
〇「ブラジルにおける沖縄諸方言の保存及び継承―二世のウチナーグチの特徴―」
GIBO, Lucila Etsuko(上智大学)
〇「北琉球沖縄津波方言におけるいわゆる主格形式と主題形式の承接について」
林 由華(神戸大学)
〇「比較をあらわす助辞のとりたて性について-日本語と宮古語大神方言の検討から-」
金田 章宏(千葉大学)
〇「琉球諸語の中舌狭母音と舌尖母音―宮古語、八重山語に中舌狭母音ïは存在しない-」
狩俣 繁久(琉球大学)
時間:14:00~18:00
方式:Zoom オンライン+対面(琉球大学共通教育棟 2-101)
金田 章宏(千葉大学名誉教授)「目的と移動の構文ー日本語と宮古語大神方言を例に-」
要旨:日本語ではある目的のために移動するばあい、(単文では)基本的には動詞の目的形(副動詞による修飾語)を使用して<目的+移動>の「~しに+行く・~しに+来る」という組み合わせを使用する。しかし、重要なのは述語になった移動動作ではなく、修飾語的な目的のほうである。(複文的な「<場所>に+行って+~する」もある。)大神方言にもこれとおなじ組み合わせの構文はあるが、その際、「行く」と「来る」では目的を表す動詞の語形が異なり、「行く」は目的形~ka(飲みに・numka)と、「来る」は意志形~ti:(飲もうと・numati:)と組み合わさりやすい。しかし、<目的+移動>型よりも使用されやすいのは、<移動+目的>型の「行って+~する・来て+~する」の構文である。さらに、行先が必要な場合は日本語的な「<場所>に+行って+~する」ではなく、「行って+<場所で+~する」という語順になる。<述べかた>の中心が述語にあるとされる日本語との関係でいえば、むしろ大神方言の<目的の動作を述語にする構文>のほうが日本語的であるといえるか。その動作をする場所が移動動作よりも述語に近い位置におかれる点についても同様かもしれない。
狩俣 繁久(琉球大学産学官連携形研究員)「緩やかな声立てか、接近音か―沖縄語に[ji][wu]は実在しない-」
要旨:琉球諸語の沖縄語には語頭に現れる母音単独音節の発声に際して緩やかな声立てで始まることを特徴とする音節がある。この緩やかな声立ては、それを表す国際音声記号が無かったことから、アポストロフィー「’」を補助記号として使用して/’a/[’a]、/’i/[’i]、/’u/[’u]、/’e/[’e]、/’o/[’o]と表記してきた。その中の/’i/[’i]、/’u/[’u]をji、wuと表記することもあったが、報告者は、ji、wuを/’i/、/’u/の代替的な表記だと考える。しかし、jiを[ji]と音声記号で表記し、[ja]、[ju]、[jo]、[je]の[j]と同じく硬口蓋接近音と認定し、/wu/を[wu]と音声記号で表記し、[wa]、[wi]、[we]、[wo]の[w]と同じく両唇軟口蓋接近音と認定する見解もある。緩やかな声立ては、撥音にも見られることが知られている。本報告では、調音音声学の基本に立ち戻って緩やかな声立て、および接近音を検討し、緩やかな声立てが接近音と認定できるか否かを検討し、[ji]にも[wu]にもjとwを特徴づける音響-聴覚的な特徴がなく、したがって[ji]、[wu]という音声が認められないことを論ずる。緩やかな声立ては、撥音/’N/[’m、’n、’ŋ]にも見られることが知られている。後半では/’a/、/’i/、/’u/、/’e/、/’o/、/’N/の緩やかな声立てを総合的に検討し、これらに共通する/’ /には調音点と調音方法を認めることはできず、これを子音と認定することができないこと、母音にも鼻音(撥音)にも現れる緩やかな声立ては、きしみ声と同じく声の出しかたであることを主張する。
時間:14:00~18:00
方法:Zoom オンライン
目差 尚太(沖縄国際大学/日本学術振興会特別研究員PD)「琉球諸語のモダリティ―はたらきかけ文 命令文、依頼文、勧誘文―」
要旨:琉球諸語のはらたきかけ文(実行文)の研究においては、形態論的な研究の対象として、命令形、勧誘形を述語にもつ文が研究されてきた。本研究では、その研究に依頼文を加え、はたらきかけ文の相互関係の実態について報告する。
崎原 正志(沖縄高専)「方言の言語接触とその境界線(中間報告)―本部町東・渡久地・谷茶・大浜方言を例にして―」
要旨:沖縄島北部、本部町の中央沿岸部に位置する渡久地・東・谷茶・大浜の4つの集落で話される諸方言は、語彙的、音声・音韻的、形態・構文的に共通の特徴を持つ。このような特徴は言語接触によって生じたと推測され、「相互に接近し合う収束的な変化」の結果であると仮説を立てた。2022年7月時点での主に語彙的・音韻的分析の結果を報告しつつ、これら4つの諸方言の境界や分類についても論じる。
荻野 千砂子(福岡教育大学)「喜界島方言のテトラスとテクレル」
要旨:共通語の本動詞の授受動詞「ヤル・クレル」に対して、鹿児島県喜界島方言の本動詞の授受動詞は、「クレル・クレル」であり、ヤルとクレルの対立がない。しかし、補助動詞になると、「テトラスとテクレル」という対立が出てくるときがある。本発表では、(1)テトラスに生じている人称制約に関して、集落毎に相違が見られること、(2)テトラスとテクレルの意味の相違、(3)本動詞トラスとクレルの意味の相違についてまとめ、本動詞よりも先に、テ形補助動詞の方に、「授与の方向」に関する文法化が見られる可能性を指摘する。
時間:14:00~18:00
方法:Zoom オンライン+対面(琉球大学共通教育棟 2-101)
金田 章宏(千葉大学名誉教授)「存在動詞uɿ(いる)と組み合わさるいくつかの述語形式について」
要旨:宮古語大神方言の述語形式のうち、存在動詞uɿ(いる)を組み合わせ述語の一部とするいくつかの形式について整理する。存在動詞uɿは本動詞のほかに、広く見られるように継続相の補助動詞としても使用されるが、大神方言ではそれ以外にも、伝聞をあらわす引用形式と組み合わさって伝聞の意をあらわす述語になったり、意志形と組み合わさって、自然現象なども含めて開始過程というアスペクト的意味をあらわしたりする。これらは日本語に直訳すると、伝聞では「~とイル」になるし、意志形のほうは「~しようとイル」になる。またこのほかにも、類似をあらわす形式と組み合わさって、類似・様態をあらわす組み合わせ述語を構成する。
狩俣 繁久(琉球大学産学官連携形研究員)「オモロは何を謡っているのか-反復部の述語形式から考えるモダリティ-」
要旨:オモロの対句部は、後半部の記載が省略されている。その対句部とは異なり、反復部は一まとまりの出来事を表す。その反復部=文の開始と終了を特定し、主語と述語を特定できれば、オモロの構文論的研究を大きく進めることが可能になる。翻って、オモロの言語研究の成果は、1首1首のオモロの解釈に大きな影響を与える。かりまた2015は、玉城1991aのオモロの歌形論や波照間1990、波照間1991の研究成果に基づいて対句部と反復部の境界(反復部=文の開始と終了)を定め、文末を特定できる反復部に現れる動詞の述語形式を整理したのち、対句部の動詞の述語形式を含めたオモロ語の形態論的研究である。本稿ではかりまた2015の成果に基づき、オモロの構文論、特にモダリティについて検討し、オモロの対句部の構造の一つの特徴を明らかにしつつ、オモロが何をどのように謡っているかを明らかにすることを試みる。
時間:14:00~18:00
方法:zoomを用いたオンラインでの開催
横山(徳永)晶子(日本学術振興会特別研究員/東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
「言語継承のアプローチに関する試論:マーケティング理論を参考に」
又吉里美(岡山大学)
「津堅方言の指示詞について」
狩俣繁久(琉球大学島嶼地域科学研究所)
「琉球諸語の発音と書き表し方(暫定版)」
※ 都合により発表者・発表テーマ等が変更になることがあります。
定例研究会の受付は終了しました。ご参加くださり、ありがとうございました。
参加希望者は,下のフォームより申し込みください。
時間:14:00~18:00
方法:zoomを用いたオンラインでの開催
當山奈那(琉球大学)
「首里方言の副詞−琉球語音声データベースの用例から−」
カルリノ・サルバトーレ (九州大学 / 日本学術振興会外国人特別研究員)、下地理則(九州大学)
「北琉球沖縄語伊平屋方言の電子辞書の構築」
ズラズリ美穂(ロンドン大学東洋アフリカ研究学院)
「MAI-Ryukyusプロジェクトのご紹介
新しい話者のための言語リソース作成のご相談」
※ 都合により発表者・発表テーマ等が変更になることがあります。
定例研究会の受付は終了しました。ご参加くださり、ありがとうございました。
参加希望者は,下のフォームより申し込みください。
時間:14:00~18:00
方法:zoomを用いたオンラインでの開催(要登録)
下地 可南子 (琉球大学大学院)「宮古島市平良方言の質問文」
要旨:本報告は、宮古島市平良方言(以下、平良方言)の質問文に関する報告である。平良方言の質問文を表現するのは、補充質問のrjaːの文、gaの文、garajaːの文と、真偽質問のnaːの文、nuːの文、bjaːjaːの文、また、従来確認要求表現とされてきたdaraの文がある。さらに、補充質問においても真偽質問においても、終助辞をもたない文や、述語動詞が質問形にならない文、すなわち、述語動詞が断定形の質問文もある。本報告では、これらの質問文を、典型的な〈質問〉を成立させるための2つの条件《不確定性条件》《問いかけ性条件》を満たすか、主語の人称や文に差し出されている内容は何かといった観点から分析する。また、質問文のイントネーションやとりたて助辞du、ga、nuとの関係性、発話場面なども考慮する。平良方言における終助辞をもつ質問文を中心に、それぞれの質問文の意味・機能や、終助辞をもつ質問文と終助辞をもたない質問文の相違について報告を行う。
荻野 千砂子 (福岡教育大学)「南琉球語黒島方言の使役文の主語と敬語の関係」
要旨:動詞が尊敬語の場合、尊敬語には主語を高める機能があるため、主語が話し手より上位者であることが予測される。使役文「XがYに~をさせる」においては、ガ核相当でマークされる、「X」が主語であり、Xが上位者であることが期待される。例えば共通語では、Xが田中先生だとすると、「田中先生が太郎を次郎のところに{行かせた/行かせなさった}」と非敬語でも敬語でも言える。ところが、黒島方言では、Xが上位者であっても、尊敬語は用いない。話し手を「私」と仮定すると、「(私より後輩の)弘が、(私と同級生の)花子を先生のところへ行かせなさった」となり、弘(下位者)が主語、花子(同位者)が補語なのに、尊敬語waaru(いらっしゃる)を用いる。「弘から見ると花子は上位者である」ために、尊敬語が必須となるようだ。話し手の視点が共通語のように固定せず、主語から補語へと移動することが、尊敬語から検証できるのではないかと考え、この現象を整理したい。
狩俣 繁久(琉球大学)
「琉球諸語の動詞、形容詞の否定形式の形成における存在動詞の役割―琉球諸語の否定文の研究のための前提―」
要旨:動詞の研究は肯定動詞に関するものが多く、否定動詞の研究は見られず、それがどのような活用形をもった単語か、モダリティやアスペクトやヴォイスなどにどう関わっているのか、その解明は手つかずのままだといってよい。日本語の「無い」に対応する琉球諸語の単語は、不規則な活用形をもつ動詞であることが知られ、既刊の琉球諸語の方言辞典が形式面から不規則変化動詞としている。非情物の不存在を表す琉球諸語の当該の単語が動詞であることは、興味深い事実だが、どんな活用形の単語か、モダリティやアスペクト等にどう関わるか、まとまった研究はない。伊江島方言、名護久志方言、宮古西里方言、石垣市石垣方言の否定動詞、不存在動詞、肯定・否定形容詞の活用形を形成するうえで存在動詞と不存在動詞がどう関わっているかを報告する。
定例研究会の受付は終了しました。ご参加くださり、ありがとうございました。
参加希望者は,下のフォームより申し込みください。
時間:14:00~18:00
方法:対面(@琉球大学50周年記念会館1階),ストリーミング配信
配信方法:youtubeによるライブ配信 (こちらからご参加ください)
※ youtube参加の方は質問・コメントをすることができません。ご了承ください。
※ 当日の資料をご希望の方は,問い合わせ先までご連絡ください。
(5月7日追記)
今回の定例会は沖縄の感染状況を鑑みて,対面とyoutubeを使用したハイブリッド型で実施しますが,会場にいらっしゃる会員の方は健康観察とマスク着用などの感染対策へのご協力をよろしくお願いします。少しでも懸念のある方やご不安な方は,youtubeのライブ配信でご参加ください。
それに伴いまして,youtube参加の方の質問・コメントも,「sli.do」で受け付けることに変更いたしました。sli.doへのリンク,発表資料へのアクセスURLはyoutubeの概要欄にあります。
下地 賀代子(沖縄国際大学)「南琉球諸方言の形容詞「語根」のバリエーション 」
※ 下地賀代子さんの報告は, 中止となりました。
狩俣 繁久(琉球大学)「沖縄県名護市字幸喜方言の擬声擬態動詞 -動詞が先か、副詞が先か。擬声擬態語を考える-」
要旨:沖縄島北部の名護市幸喜集落方言の擬声擬態語は、擬声語、擬音語、擬態語、擬情語を総称し、副詞だけでなく、動詞、形容詞にもまたがる単語群である。擬声擬態動詞は擬声擬態副詞と語彙素を共通に持ち、緊密な関係にある。本稿は、沖縄島北部の名護市幸喜集落方言の擬声擬態語についてその文法的な意味と語彙的な意味の両面から検討し、副詞として動詞を修飾する擬声擬態副詞が動詞として述語の位置に現れる擬声擬態動詞から派生したものであることを論ずる。
金田 章宏(千葉大学国際未来教育基幹) 「宮古語大神方言の複数性にかかわる助辞 na:について」
要旨:大神方言の助辞na:は、文の成分としては、これまでのところ修飾語(どんなふうに、どのくらい)、述語動詞につくことが確認された。修飾語につくと、修飾語があらわす意味とは無関係に、その修飾語がかかる述語のあらわす動作の主体や存在の場所が複数であることを明示する。たとえば、<ゆっくりna:歩く>だと、歩く主体が複数になる。 述語動詞につくと、単一動作主体の動作が単純な動作でないことをあらわす。たとえば、<Aしたり、-Aしたり><Aしたりしなかったり><ときどきAする>などである。複数主体の単一動作を明示することもある。また、自然現象が<反復的>であることを明示することもある。これらに共通するのは、なんらかの複数性であるが、名詞について複数をあらわすことはできない。
時間:14:00~18:00
方法:zoomを用いたオンラインでの開催(要登録)
當山奈那†・目差尚太‡・大胡太郎†(琉球大学†・沖縄国際大学‡)
「琉球諸語の使役文とシム相当形式について」
要旨:琉球諸語の使役文は、述語動詞の形態論的な特徴として、ス相当形式とシム相当形式を持つ方言とス相当形式のみを持つ方言がある。また、構文論的な特徴として、間接使役文(二重使役文)を持つ方言と持たない方言とがある。そして、間接使役文を持つ方言では、その作り方に形態論的な違いや、述語動詞の制限の違いがみられる。形態論的な違いは、ス相当形式によって間接使役文を作るか、シム相当形式によって間接使役文を作るかである。本報告では、上記について、琉球諸語のいくつかの方言を取り上げて示す。さらに、万葉集でシム形式を述語にもつ文にも間接使役文とみなせる例が存在すること、また、無意志動作の例が多いことも示し、間接使役文とシム相当形式の関係について考察する。
玉元 孝治 (金武町教育委員会)「複合名詞の前部要素となる非自立形式について」
要旨:沖縄語には、複合名詞の前部要素となることができる非自立形式が存在する。これらの非自立形式には、形容詞や副詞などの語を派生する拘束語根(例:magi+gwi「大声」のmagiなど)と、もっぱら複合名詞の前部要素として生起する形式(例:uhu+gwi「大声」のuhuなど)が含まれる(この発表では主に金武方言のデータを用いる)。これらの非自立形式を語根/接辞という二分法で捉えることは、あまり有意義ではない。たとえば、magi+gwiを語幹+語幹の複合語とし、uhu+gwiを接頭辞+語幹の派生語として区別する合理性は乏しい。むしろ、magiとuhuがいずれも語彙的な意味を担い、後続する要素の連濁を引き起こす(ゆえに複合語幹として機能していると認められる)という共通点こそが重要である。この発表では、これらの非自立形式の形態論的ステータスを表す用語として‘semi-word’を提案する。この用語を導入することで、「複合語」をシンプルかつ厳密に定義できるようになり、magi+gwi、uhu+gwiをいずれも複合語として扱うことができるようになるという利点がある。
崎原 正志(沖縄高専)・松岡知津子(三重大学)
「沖縄語の文の部分と品詞について―首里・那覇を例にして―(覚書)」
要旨:品詞は、「文の材料としての単語の語彙=文法的な特徴による分類」である(村木新次郎(2012)『日本語の品詞体系とその周辺』(ひつじ書房)p.51)。この定義を基に、鈴木重幸(1972)『日本語文法・形態論』(むぎ書房)も参照し、共通点や相違点などの比較・分析を行いながら、日本語の品詞体系とその周辺、および文の部分について再確認する。また、琉球諸語の品詞体系については、下地道則(2018)『南琉球宮古語伊良部島方言』(くろしお出版)を参照し、全体の整理を行った後、首里・那覇を例にして、沖縄語の品詞および文の部分について網羅的に分類・整理を行う。
定例研究会の受付は終了しました。ご参加くださり、ありがとうございました。
参加希望者は,下のフォームより申し込みください。
方法:zoom併用(状況によっては全オンラインの可能性があります)zoomを用いたオンラインでの開催(6月23日追記)
場所:琉球大学50周年記念館(アクセスはこちら)
※緊急事態宣言延長にともない、沖縄言語研究センター総会・研究発表会は、全オンラインでの開催となりました。50周年記念会館での開催はありません。登録やZoomでの参加について不明な方はこちらをご参照ください。(6月23日追記)
2020年度会計報告、仲宗根政善研究奨励賞受賞者報告
〇「琉球諸語の形容詞のク形・サ形・重複形:機能分担に着目して」
占部 由子(九州大学大学院/日本学術振興会D C)
〇「徳之島伊仙方言の与格・処格助詞」
加藤 幹治(東京外国語大学大学院/日本学術振興会D C)
〇「しまむに(沖永良部方言)意識調査の結果報告」
横山 晶子(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
〇「南琉球諸方言の形容詞「語根」のバリエーション」
下地 賀代子(沖縄国際大学)
〇「琉球諸語に見られる双数の起源の解明に向けて:初期報告」
下地 理則(九州大学)
総会・研究発表会の受付は終了しました。ご参加くださり、ありがとうございました。
zoomでの参加希望者は,下のフォームより申し込みください。
なお,総会は会員のみの参加になります。研究発表会は非会員の方でも参加できますが,この機会のご入会を推奨いたします。文書には「総会・研究発表会とも会員のみがアクセスできる」と記載がありましたが,総会は会員のみ,研究発表会は会員・非会員が参加可能となります。 お詫びして訂正いたします。(2021年6月14日追記)
総会・研究発表会両方に参加される会員の皆さまは,お手数ですが,両方のフォームでの申し込みをよろしくお願いいたします。
時間:14:00~18:00
方法:zoomを用いたオンラインでの開催(要登録)
當山 奈那(琉球大学)「与論方言の形容詞述語文」
要旨:本発表では、与論方言の形容詞述語文について,特に時間的限定性と評価性の観点から分析を行う。文の述語にあらわれる形容詞には,チュラサのように語幹に接辞-saが後接した形式(サ形式),チュラサンのようにサ形式に存在動詞anが後接して融合した形式,チュラサイのように存在動詞aiが後接して融合した形式,チュラクのような連用形の同音形式,ギンキ エンのようにコピュラを組み合わせる形式がある。これらの形式は,八亀(2008)における状態形容詞か特性形容詞かという語彙=文法的な分類と,形容詞分類によって特徴が整理できることを述べる。
崎原 正志(沖縄工業高等専門学校)「沖縄語の確認要求文のモダリティ」
要旨:文のモーダルな意味(=モダリティ)の観点から文を大きく叙述文・実行文・質問文の3つに分けるとすれば, 標準日本語で確認要求とされる文に相当する沖縄語の文を分類すると,おおよそ叙述文と質問文(=疑問文,以下「質問文」に統一)に分けられる。崎原(2017)においては,三宅他(2012)で「知識確認の要求」に分類される文は叙述文に,「命題確認の要求」と分類される文は質問文に分類した。沖縄語(首里那覇社会方言)では,狭義の「知識確認の要求」に相当する文は,推量または疑い形式を伴わず,専用の活用語尾を伴った叙述文で表される。一方,「命題確認の要求」に相当する文は,推量または疑いを表す形式に終助詞ネ相当を伴った形式で表され,聞き手に対して念押し的な<問いかけ>を行う質問文である。本稿では,このような沖縄語の文の分析結果から,「命題確認の要求」文は質問文に分類し,「知識確認の要求」の文は叙述文の下位に位置づけ,さらに「共有情報・新情報」および「前置き・働きかけ」という観点で<前提・注目>の文および<思い出させる・気づかせる>文の4つの分類方法を提案する。
※ 都合により発表者・発表テーマ等が変更になることがあります。
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方法:対面(ストリーミング配信あり)zoomを用いたオンラインでの開催(要登録)
場所:琉球大学50周年記念会館
※感染状況を鑑み,11月の定例研究会はオンライン開催に変更となりました。
狩俣 繁久(琉球大学)
「方言研究者の考えるすぐれた“日本語”のにない手に-持続可能な継承活動のために」
要旨:持続可能な方言継承には言語学に裏打ちされた体系的な言語教育(発音指導、文字指導、文法指導、語彙指導)が必要だ。標準語教育と方言教育は補い合う。体系的な言語教育が実現すれば、それを土台にした方言教育も可能で、体系的な方言教育をうけた児童生徒は、方言の運用能力も標準語の運用能力も高くなる。そんな方言教育でなければ学校教育には受け入れてもらえないだろう。方言継承は学校教育の中だけで完結しない。学校教育を修了し社会に出た後も方言の運用能力の研鑽を続けることで真の方言継承が実現する。児童生徒への方言教育は、研鑽を続けていくための土台を作ることであり、学校教育における方言教育の役割は、方言を学びその運用能力を高めていく基礎的な力を身につけさせるものでなければならない。そのような持続可能な方言継承のための方言教育とはどのようなものか、その基本的な考えたかを論ずる。
狩俣 繁久(琉球大学)・島袋 幸子(琉球大学)
「琉球諸語今帰仁方言の形容詞の語彙・文法的な意味と時間的なありか限定-児童生徒のための教材」
要旨:全ての琉球諸語の下位方言が消滅の危機にある状況で、研究者が特定の研究テーマに偏った研究を続けたら、多くの方言は特定のテーマについては分かったが、それ以外のことは不明のまま残され、早晩、方言継承に重大な欠陥を抱えるという由々しき事態に陥るだろう。形容詞は名詞、動詞と並んで重要な品詞であるにも関わらず、琉球諸語の形容詞研究は大きく遅れている。形式的な側面の研究があるにはあるが、形容詞研究に正面から取り組んだ研究は無い。本発表では、時間的なありか限定性の観点からみると、形容詞は興味深い現象が見られ、時間的なありか限定性を理解するのに形容詞は好材料であることを小学校の児童生徒を対象にした教材とその指導手引きという形式で今帰仁村謝名方言について報告し、形容詞研究の一つのあり方を提案する。
※ 都合により発表者・発表テーマ等が変更になることがあります。
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時間:14:00~18:00
方法:zoomを用いたオンラインでの開催(要登録)
ハイス・ファン=デル=ルべ(沖縄国際大学/日本学術振興会外国人特別研究員)
「琉球語鳥島方言の起源・位置・現況」
要旨:琉球語鳥島方言は、硫黄鳥島の住民の子孫が伝統的に話してきている言語である。硫黄鳥島の住民が1903年に久米島に移住し、その子孫の一部が今日でも鳥島方言を日常的に用いている。1903年の移住後、住民の一部が硫黄鳥島に戻り、1958年に沖縄本島へ移住したため、現在、鳥島方言が話されるコミュニティーが久米島と沖縄本島にある。本発表では、硫黄鳥島の住民の集団歴史、言語生活、言語接触などに触れながら、北琉球諸語に属する諸言語と鳥島方言の音声・語彙・文法の特徴の比較をおこなう。
白田 理人(広島大学)・重野 裕美(広島経済大学ほか)
「奄美大島笠利町佐仁方言の準体形について」
要旨:本発表は、奄美大島北部の笠利町佐仁方言の準体形を対象に、共時的な記述及び通時的な分析を行うことを目的とする。主な観察・主張は以下2点である。①奄美大島北部方言は、接辞-Nによる連体形がそのまま準体形として用いられる、いわゆる「ゼロ準体」の方言と考えられてきた。この特徴は佐仁方言にも当てはまるが、分裂文等で準体形に主題助詞=jaが後続すると、-N=jaではなく-N=mjaという形式になる。このことから、佐仁方言の準体形は連体形+*monoに遡る可能性がある。②奄美大島北部方言は、南部方言と異なり、接辞-s(ï)による準体形を持たない方言とされてきた。佐仁方言においても、共時的に基本的には-sïが現れることはないが、感嘆文の文末には-sïを含む表現が見られ、準体形から感嘆表現が発達した可能性が示唆される。
※ 都合により発表者・発表テーマ等が変更になることがあります。
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場所:琉球大学50周年記念館(アクセスはこちら)
2019年度会計報告、運営委員改選、仲宗根政善研究奨励賞受賞者報告
〇「金武方言形容詞述語の形態統語論」 玉元孝治(金武町教育委員会)
〇「琉球諸語における形容詞重複形の方言間比較:形態論的な南北差と重複形の機能の階層」占部由子(九州大学大学院)
〇「個人の言語レパートリーから言語シフトを考える―SCAT分析による琉球諸語の事例研究―」
安元悠子(琉球大学大学院)
〇「琉球諸語の教授法確立に向けて」半嶺まどか(名桜大学)
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なお,総会は会員のみの参加になります。研究発表会は非会員の方でも参加できますが,この機会のご入会を推奨いたします。
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時間:14:00~18:00
方法:zoomを用いたオンラインでの開催
※2020年10月30日追記:報告者が変更になりました。
崎原正志(沖縄工業高等専門学校)、カーマン・マコア・クイオカラニ(沖縄工業高等専門学校)
「沖縄高専「琉球諸語入門」の実践およびQuizletの使用について」
狩俣繁久(琉球大学島嶼地域科学研究所)
「恩納村恩納方言の使役動詞と使役文(中間報告)-間接使役文を中心に-」
-間接使役文を中心に-」
※ 都合により発表者・発表テーマ等が変更になることがあります。
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時間:14:00~18:00
方法:zoomを用いたオンラインでの開催
※2020年11月2日追記:報告者と報告内容にあやまりがありましたので,修正いたしました。大変失礼いたしました。
目差尚太(沖縄国際大学/日本学術振興会PD)
「琉球諸語のモダリティー与那国方言の可能表現の文ー」
陶 天龍(東京外国語大学大学院生/日本学術振興会特別研究員DC1)
「宮古語久松方言における形容詞の動詞化接辞 -kar」
新永悠人(弘前大学)
「奄美大島湯湾方言の尊敬動詞の使用条件」
※ 都合により発表者・発表テーマ等が変更になることがあります。
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