研究室紹介

東洋史学研究室について

岡山大学東洋史学研究室では、広大かつ多様なアジア諸地域の歴史を研究対象とし、政治、社会、文化、宗教、経済、国際関係などさまざまなアプローチで研究しています。2名の教員が指導に当たり、岡山大学大学院社会文化科学研究科歴史文化論講座に属する大学院生と、文学部人文学科歴史学・考古学分野東洋史学領域に属する学部学生が在籍しています。


現在在籍中の教員の専門分野は、1名が東アジア史(中国史を含む)、1名が南アジア史となっています。該当地域の専門教員がいない場合でも様々な方法で対応しており、学生の卒論のテーマも、中国、朝鮮、台湾、東南アジア、インド、西アジア、北アフリカ、アジアの中の日本など、非常に広い範囲にわたっています。過去の卒業生の中には古代エジプト史の研究や、オランダ語文献を用いた研究に挑戦した学生もいます。近年は世界情勢の潮流を反映してか、異なる文化の接触や交流を題材とするテーマが増えており、東洋史の大きな特徴になっています。


東洋史学領域の授業は、アジア史の基礎知識と流れを紹介する「人文学概説」、教員それぞれの研究テーマにもとづいてより深く講ずる「人文学講義」「文化交流史講義」など、講義形式でおこなわれるほかに、学生が自ら漢語史料や英語文献などを読解したり、各人が興味あるテーマについて発表したりする演習形式のものがあります。そのような授業をつうじて、学生は教員と相談しながら各自で課題を設定し、みずからの研究を深めていきます。そのほか講義以外でも、学生が自主的に参加する各種の研究会・勉強会が開かれています。


また、東洋史学研究室では、教室を飛び出し、アジアの現地へみずから出かけて体感することを奨励しています。現地での調査・研究に豊富な経験を持つ教員のアドバイスを受けながら、学生たちは中国・韓国をはじめとする長期・短期の留学のほか、遺跡でのフィールド調査、個人旅行、ボランティア活動など、さまざまな形でじかにアジアに接し、大きな刺激を得ています。大学院には中国や東南アジアの留学生が在籍しており、かれらと日常的に接触することができることも東洋史学研究室の魅力のひとつです。


研究室にはアジア史の研究に必要な工具書や資料が数多く所蔵されており、所属学生はいつでも自由に利用することができる恵まれた学習環境があります。研究室の気風は学生個々人の自主性と自由を重んじながらも、教員と学生のあいだの垣根は低く、学習や研究の必要におうじて、いつでも教員のサポートを受けることができます。歴史学、アジア、異文化、国際交流などに関心のある方は、ぜひ岡山大学東洋史学研究室の門を叩いてみてください。

卒業論文

最近の卒業生が書いた卒業論文の題目例です。

2022年度

明代における官手工業の変遷について―銀の貨幣化による影響を中心に―

清末中国における教会学校による女子の権力向上と制限

「文明新装」の盛衰と上海の変遷―1920年頃と1925年頃の上海比較―


2021年度

古代エジプト新王国時代第18王朝の王権史におけるティイの影響

王莽の対外政策転換とその背景

朝鮮王朝における『閑中録』作成の背景とその影響

文化大革命初期における青海省造反派紅衛兵の特殊性―造反派紅衛兵と党軍部との関係から―


2020年度

唐代後半期の「追尊皇太后」出現に対する一考察ー帝位継承過程に関連してー

清末民初審定歴史教科書に見る「中国」の創出

馮桂芬の洋務改革案ー上海同文館設立を中心にー

元朝における大都留守司の職掌とその変化ー元朝のケシク制と関連させてー


2019年度

女性表現からみる清華簡『繋年』の編者像 

14世紀前半の東南アジア海域における「中国商人」―『島夷誌略』からの一考察― 

The friend of Chinaから見る1870年代のS.S.O.Tによる啓蒙活動 


2018年度

戦闘の記録からみる二十四長制

後漢時代における社会集団と相互扶助―僤を中心に―

清代嘉慶期における海賊問題とその認識―蔡牽に関する記述をめぐって

洪仁玕のキリスト教思想と儒教思想

第五回内国勧業博覧会における清末留日学生の自己認識

日本統治下台湾の知識人蔡培火による日中親善論―台湾人観に着目しての考察―

ジャヤヴァルマン七世の時代における王権の正統性の示し方

イギリス領インドにおける宣教師ダフの活動―教育方針の決定過程について―

雑誌・新聞とポストカードにおける「黃禍」と日本像―19世紀末から太平洋戦争末まで―

第一次世界大戦後の海底電信線処分問題の性質と外交―ヤップ島問題に関連して―


2017年度

イウヤとチュウヤの人物像――古代エジプト新王国時代の王家の谷第46号墓をもとに

ビルゲ可汗時代の突厥の対唐関係について

『参天台五台山記』に見る宋代渡航僧

ブワイフ朝における知識人サービア教徒――アブー・イスハークとアブー・サフルの数学に関する往復書簡から

ポルトガル人による占領後のマラッカについて――イスラム教徒の動向を中心に

ラーマ4世の英語書簡とバウリングの日記に見るバウリング条約(1855年)の交渉過程

ハワイにおけるフィリピン人プランテーション労働者――1924年のストライキと指導者パブロ・マンラピット


2016年度

『史記』伍子胥列伝における伍子胥の人間像と怨み

五胡十六国時代における匈奴政権の正統観―前漢・前趙・後趙の成立期を中心に―

唐代後半期の賜宴について―節日賜宴を中心に―

『籌海図編』にみられる海防策

ラッバーン・サウマとイル・ハン国の外交

イギリス領ビルマにおける反インド人暴動(1938)について

テル=エル=ダバア遺跡から見るヒクソスとエジプト人の関係

16世紀後半オスマン帝国の書記について―『セラーニキー史』にみるフェリドゥン・ベイの任免―

アメリカ同時多発テロ事件前後のイスラモフォビア


2015年度

ソグド人による東方交易活動のおこりと北匈奴

紅山文化牛河梁遺跡の被葬者に関する一考察

成尋の渡宋から見る日宋貿易における宋海商の働き

殷王朝の北方支配における稾城台西遺跡の役割

バーミヤーン石窟の造営年代論―M窟とI窟を中心に―

古代インドにおける法輪図像について

アウラングゼーブの対ヒンドゥー教政策に関する一考察

現代イランの女子教育と識字率―教育水準差の背景考察―

オグズ族の説話の伝播について―カラコユンル・アクコユンル朝の説話を中心に―


2014年度

北宋官箴書『作邑自箴』における「諭俗文」の研究―県政と郷村統治―

インドのミフラーブにおけるランプ装飾の変化

16・17世紀マカオにおけるキリスト教教会

15・16世紀の朝鮮王朝における儒教教化―『三綱行実図』と『続三綱行実図』の分析を中心にして―

ヨーグルトの行方―ムガル帝国時代の料理を中心に―

イギリス人オスマン大使婦人の書簡集に見る18世紀オスマン帝国の女性像


2013年度

官制からみる孫呉政権成立期

『点石斎画報』に見る清末上海の妓館と妓女

アンコール寺院群の入口意匠の変遷

イギリスの植民地政策における近代インド在地社会の編かと考察


2012年度

ジャヤヴァルマン八世の廃仏について

竹紙から見る福州・琉球・薩摩の技術交流

朝鮮半島における燃燈会の受容とその変容

清末留日学生の日本体験

北魏文成帝の仏教復興

クメール美術におけるガルーダについて

日本の世論における北洋艦隊脅威論の形成

ギルドパレードに見る17世紀オスマン帝国の異教徒

服飾描写から見る高句麗・安岳3号墳の文化的様相

エジプト第1王朝ナルメル王の王権と国際関係

修士論文

2023年度

吐谷渾の支配体制の研究―4-6世紀を中心に―


2022年度

両漢時代における西北辺境防衛に関する研究―出土文字資料を中心にー


2021年度

秦漢時代における刑罰体系に関する研究―秦漢出土簡牘を中心に―

唐代科挙制度の社会史的研究—剣南道を中心に


2020年度

中国人移民とアメリカン・チャイニーズフード:アメリカ社会における中国人移民食文化の歴史と変容


2019年度

17世紀初頭のマラッカ・シンガポール両海峡―「ヨーロッパ人」から見た地政学的意義― 

無錫三等公学堂『蒙学読本全書』研究 


2018年度

バーミヤーン壁画再考―日天月天円文の解釈に関する一考察― 

満洲国における中国人用初等修身教科書に関する考察―修身科時期を中心に―


2017年度

唐朝の婚姻政策―国内外における公主降嫁の比較を中心に― 

北魏の北辺統治政策―孝文帝期以降を中心にして―

明末における福建の地方政府と海賊の関係―鄭芝龍を中心に―

政治家スタン・シャフリルの現実認識―1950年代前半の時事評論をもとに―


博士論文

2021年度

明清時代における蜑民の研究―支配政策と反乱を中心に―


2020年度

Japan-Myanmar Relations in Political, Economic and Cultural Contexts During 1930s


2019年度

清末中国における日本女子教育受容の研究 

Christian Missionary Activities in Irrawaddy Delta During Colonial Period (c.1850-1947)