原則、個別指導です。吃音やきこえなどの児童を対象に、グループ活動を行うことがあります。
下記は指導の一例です。児童の実態に合わせて、学習しやすい方法を児童と一緒に考えます。
◆口や舌のトレーニングを行います。
→正しい発音を獲得するためには、口や舌の力を高める必要があります。そのため、児童の実態に応じて口や舌のトレーニングを行います。
大きく口を開けて唇を舐め回したり、平らな舌の形を作って10秒間維持したりします。
◆正しく発音をする練習を行います。
→正しく発音するための舌の使い方や舌の形、息の使い方などを学習します。
カ行音であれば、舌の奥の方を使って発音するように誘導します。
サ行音であれば、舌の先で息を摩擦させて発音するよう誘導します。
イ列音が聞きにくい発音になる場合は、舌を平らにした形のまま発音する練習を行います。
このように、発音の誤り方に応じて、正しく発音するための学習を行います。
一つの音、単語、短文、会話など段階的に正しく発音する練習を行っていきます。
◆吃音の正しい知識を学習します。
→吃音は3種類の症状がある、誰かと一緒に音読すると吃音が出にくくなるなど、吃音の知識について学びます。
◆吃音が少なくなる話し方を学習します。
→ゆっくりと話す、息を吐いてから話す、のどや体の力を抜いてやわらかい声で話すなど、自分にあった吃音が少なくなる話し方を学習します。児童の使いたいときに使えるように練習も行います。学習した話し方を使用する場面は児童によって様々です。「日常生活では吃音を気にしていないけれど、学芸会などの発表のときにだけ使おうと考えている。」と話す児童もいます。
◆自分の吃音について話す場を設定します。
→「最近、吃音が増えてきたように感じる。」「吃音が少なくなってきた。」「友達に吃音のことを聞かれた。」など、吃音について感じたこと、考えたこと、思ったことなどを話せる場面を設定しています。友達の話、遊びに行った話、家族の話など、吃音以外のことも話したり、相談したりしてほしいと考えています。大切なのは、一人で抱え込まず一緒に考え、共有できる相手を作ることです。
◆吃音のある子たちでグループ活動を行います。
→年間数回のグループ活動を行っています。「吃音のある子たちに聞いてみたい。」「僕も悩んだ時期があったよ。」など、吃音のある児童同士の交流の場になっています。保護者の懇談では、吃音への思いから子育ての話まで様々な情報を交換できるような場を設定しています。
◆在籍学校と連携しています。
→在籍校の担任や友達に対して、吃音についての理解を促したり、在籍学級での支援について一緒に考えたりすることがあります。児童本人や保護者と相談して進めています。
◆ことばの数を増やします。
→知っていることばが少ない、ことばの意味を正しく理解できていないなどの場合は、身近なことばから学習していきます。ことばと物・動きなどを結びつけることができるように、実物や写真を見たり、実際に動作にしたりして学習します。
◆学習したことばを使って話す場を設定します。
→学習したことばを正しく使うことができるように、遊びや会話の中でことばの使用を促します。
◆自分のことばで話す学習をします。
→ことばが出てこない(何から話すと良いのか分からない)、たくさん話すが要点がつかめないなどの場合は、話したいことを整理したり、キーワードを書き出したりしてから話す学習を行います。より具体的に話すことができるように、どのようなことばがあると相手に伝わりやすいのかを考えることもあります。
◆文字を読む学習をします。
→ひらがなやカタカナなど、一文字ずつ読むことができるか確認します。文字カードなどを使い、文字を音(音声)と一致させて覚える学習を行います。
◆文章の中で文字を単語のまとまりとして捉える学習をします。
→一文字ずつ読む場合は、文字を単語のまとまりとして捉える学習を行います。様々な文字が並んでいる中から「いぬ」「りんご」などの単語を素早く見付ける学習をすることもあります。また、単語の切れ目が分からない場合は、単語のまとまりごとに区切り線を入れる学習をすることもあります。
◆ことばの数を増やします。
→知っていることばが少なく、知らないことばがあると一文字ずつ読む場合は、ことばを増やす学習も行います。
◆正しく書く方法を学習します。
→平仮名やカタカナ、漢字など一文字で正しく書くことができるか確認します。『「テ」は郵便ポスト』と似ている形で覚えたり、『「日」の下に「十」で早い』と知っている文字を組み合わせて覚えたりなど、覚えやすい学習方法を児童と一緒に考えます。
◆書きたいことを整理して作文する方法を学習します。
→書きたいことを整理できない場合には、まず話してからキーワードを書き出し、文章を組み立てていく学習を行います。また、作文への苦手意識を少なくするために、「もしも作文」「一行日記」など楽しく文章を書く学習を行うこともあります。
◆自分のきこえの状態や、補聴器などの扱い方を学習します。
→聴力図を使用して、自分の聞こえ方の特徴を学習します。聞こえ方の特徴が分かると、「右耳の方が聞こえるから廊下側の席にしてもらおう。」「右から声を掛けてもらうように友達に伝えよう。」など、対応方法を考えることにもつながります。また、補聴器などを使用している場合は、扱い方を学習することもあります。きこえに関してきこえの教室の担当が在籍校へ理解を促したり、支援方法を提案したりする場合もあります。
◆聞こえなかったときの対応方法を学習します。
→「聞こえなかったからもう一度話してください。」「話すときは私の前に来てください。」など、聞こえなかったときの対応や、事前に伝えておきたいことなどを児童と一緒に考えます。在籍校で活用できるように、ロールプレイをして学習します。
◆正しい発音の仕方を学習します。
→よく聞こえないために、発音に誤りが見られる場合があります。舌の動かし方や息の使い方などを学習し、正しい発音に近付けるようにします。
◆ことばの意味を正しく認識する学習をします。
→よく聞こえないために、ことばを正しく理解していなかったり、聞き間違えて覚えてしまったりすることもあります。ことばを増やし、正しく理解する学習を行います。