私たちが取り組んでいる研究の概要を示します。
熱エネルギーと電気エネルギーを相互に直接変換できる熱電変換材料の開発および高性能化に関する研究を行っています。熱電変換材料を用いた熱から電気への変換は「熱電発電」と呼ばれ、未利用廃熱から電力を回収する技術として期待されています。私たちは、広範な熱電発電を可能にするための材料、すなわち、低毒性かつ資源豊富で安価な元素からなる高性能な材料の開発を目指しています。対象は、酸化物、硫化物、プニクタイドなど(無機化合物)です。自分自身で材料合成、結晶構造解析、焼結体作製、物性評価を行います。また、最近では、材料の開発に加えて、実際の発電で用いられる発電モジュールの作製に向けた、電極構成材料に関する研究も行っています。
[代表論文]
J. Solid State Chem., 120, 105-111 (1995).; J. Appl. Phys., 79, 1816-1818 (1996).; J. Mater. Chem., 7, 85-90 (1997).; J. Electron. Mater., 38, 1234-1238 (2009).; Adv. Mater., 23, 2484-2490 (2011).
J. Appl. Phys., 113, 043712 (2013).; Appl. Phys. Lett., 105, 132107 (2014).; Adv. Funct. Mater., 30, 2000973 (2020).; Chem. Mater., 33, 3449–3456 (2021).
私たちが手にする固体材料の熱輸送や電子輸送は、物質の結晶構造や電子構造、試料の構造(組織)などと密接に関係しており、時として予想できない振る舞いを示すことがあります。例えば、熱電変換材料は、半導体のように電気を流すが、ガラスの様に熱を通さない、という相反する性質を併せ持ちます。そのような特異な物性の起源を解明するために、マルチスケール(原子~ナノ~マイクロスケール)構造の解析や観察を行っています。その手段には、例えば、X線結晶構造解析や電子顕微鏡観察があります(共同研究者のご支援に感謝)。研究で得られる知見から、機能性材料開発の指針が得られると期待されます。また、特殊なマルチスケール構造を意図的に作ることで、物性を制御することにも取り組んでいます。
[代表論文]
J. Electron. Mater., 45, 1695-1699 (2016).; Adv. Mater., 30, 1706230 (2018).; J. Mater. Chem. A, 7, 228 (2019).; Ceram. Int., 46, 25964-25969 (2020). Inorg. Chem., 60, 11364-11373 (2021).
私たちは、熱電変換や光電変換などの機能性を有する可能性がある新規物質の探索を行っています。新規物質は、関連物質からの派生として見つかることもあれば、合成した試料に析出した異相から偶然見つかることもあります。その探索や同定には困難が伴いますが、合成条件の検討や結晶構造解析など、様々な経験を積むことができますし、世界で初めてその物性を目にすることができるという面白さがあります。
[代表論文]
J. Mater. Chem. A, 7, 228 (2019).; Chem. Mater., 35, 7554-7563 (2023).; J. Mater. Chem. A, (2025).
ここに示した以外にも、自由な発想に基づいた研究を行っています!