科研
科研関連イベント情報
ワークショップ 文学批評の再検討――ステファン・コリーニ『懐古する想像力』をめぐって
Reconsidering Literary Criticism: Stefan Collini’s The Nostalgic Imagination
日時:2021年3月15日(月)午後1時〜3時
概要:イギリスの思想史家Stefan Colliniの著作The Nostalgic Imagination: History in English Criticism (2019) の邦訳が2020年11月にみすず書房より刊行されました。本書は、モダニズムの詩人・批評家T. S. Eliotから文化思想家Raymond Williamsまで、20世紀前半から半ばにかけてのイギリス文学批評における歴史認識の問題を掘り下げた研究書です。
今回のワークショップでは、訳者の近藤康裕氏をはじめ、18世紀〜20世紀の英文学・文学研究の専門家をコメンテイターとしてお招きし、コリーニの問題提起を検討します。一方の文学研究や批評、他方の歴史意識や歴史学との望ましい関係性はどのようなものでしょうか。過去の批評言説を吟味しつつ、現代の文学批評の課題や可能性まで考察できればと思います。
司会 秦 邦生(東京大学)
講師 近藤康裕(慶應義塾大学)
小川公代(上智大学)
武田将明(東京大学)
田中裕介(青山学院大学)
主催「モダニズム以降のイギリス文学・文化におけるノスタルジアの情動論的・空間論的研究」(基盤研究(C)研究代表者・秦邦生)
【終了】2021年1月10日(日)
EAA共催「痛みの研究会」第8回ミーティング
【第1部】『肥満男子の身体表象―アウグスティヌスからベーブ・ルースまで』合評会
「肥満のスティグマを覆そうとするギルマンの試み」(小川公代)
【第2部】研究発表
「痛みをもって痛みを制する:18世紀フランスの医療における薬物としての犬と猫」(貝原伴寛)
共催
東京大学東アジア藝文書院(EAA)
科研費(基盤研究(B)):「共感すること」の歴史的変遷―18~20世紀ヨーロッパの感情史(2020年度-2022年度)
科研費(基盤研究(B)):グローバル化と「共感の共同体」ー19世紀後半から20世紀後半を中心に(2017年度-2020年度)
科研費(国際共同研究加速基金):近現代イギリスにおける「人と動物の関係史」ー領域設定による総合的理解モデルの構築(2018年度-2020年度)
【終了】2020年11月26日(木) 17:20〜19:00
オンライン講演会「ジェンダーの観点から読む世界文学ーー男たちが描いてきた女性像」
講演者: 沼野充義教授
*上智大学ヨーロッパ研究所主催/感受性科研共催
*申込締切は11月24日(定員有・先着順)
【終了】2020年10月31日(土)
講演会「言語と自己と患者――精神疾患の症例誌と想像力について」(講演者:鈴木晃仁教授)
講演会「言語と自己と患者――精神疾患の症例誌と想像力について」(講演者:鈴木晃仁教授) を10月31日に開催します。
セミクローズド枠では一旦締め切りましたが、定員まで若干名あります。参加希望の方はお名前、ご所属、メールアドレスをお知らせください。
*10月29日まで先着順。連絡先等詳細はチラシに掲載。
継続中の科研
近代イギリスにおける感受性文学と誤認―女性、言語、社会制度
2019-2021 基盤研究(B)
研究メンバー
代表者:小川公代
分担者:大石 和欣、川津 雅江、吉野 由利、土井 良子、原田 範行
研究概要
「感受性」が「誤認」を生み出す過程を医学や経験論、身体論を含めて多面的に分析し、その文化的、社会的、政治的意味と問題を、18~19世紀初期のイギリス文学、特に女性文学に焦点を当て解明する。事実の「歪曲」や他者への「偏見」も生み出す感受性の「誤認」は「共感」や「想像力」を喚起する原動力として機能する一方で、女性や植民地における被支配者など社会的弱者に抑圧的な社会制度構築を助長した。女性作家らがいかにこの「誤認」を意識しながら、その制度への批判を試みたかを検証する。人工知能が人間的機能を侵食しつつある現代において、人間の創造力の根源にある「誤認」を「人文学」の枠組みで捉え直すことも射程に入れる。
2020-2023 西洋社会における世俗の変容と「宗教的なもの」の再構成ー学際的比較研究 − 基盤研究(A)
研究メンバー
代表者:伊達 聖伸
分担者:増田 一夫、鶴見 太郎、渡辺 優、渡邊 千秋、井上 まどか、見原礼子、小川公代、木村 護郎クリストフ、西脇 靖洋、立田 由紀恵、江川純一
研究概要
本研究は、加速する時代のなかで西洋社会の「世俗」が新局面に入ったという認識の地平 に立ち、多様な地理的文脈を意識しながら、「世俗的なもの」と「宗教的なもの」の再編 の諸相を比較研究するものである。ヨーロッパ大陸とアメリカ大陸の政教体制を規定して いる歴史的文脈の違いを構造的に踏まえ、いわゆる地理的「欧米」地域における世俗と宗 教の関係を正面から扱いつつ、周辺や外部からの視点も重視し、「西洋」のあり方を改め て問う。本研究のレギュラー・メンバーは代表者1名、分担者11名、協力者2名の計14名で 、次の3つの課題に応じた3つの班を組織して研究を進める。(1)「世俗」の進行につ れて、当該地域の「宗教的伝統」がどのように再構成されつつあるのかを解明する。(2 )近現代の西洋において「他者化」ないし「周辺化」されてきた存在、とくにムスリムと 女性の存在に注目し、イスラームとジェンダーの観点から公私の分割線の引き直しの様相 を明らかにする。(3)「世俗」の進展そのものが環境や人間の条件を変えつつあるとい う認識に立ち、西洋社会における無宗教の増大も踏まえつつ、宗教と世俗の再編のあり方 を分析する。
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過去の科研
2016-2019 ヨーロッパの世俗的・宗教的アイデンティティの行方――政教関係の学際的比較研究 − 基盤研究(B)
研究メンバー
代表者:伊達 聖伸
分担者:増田 一夫、見原 礼子、井上 まどか、木村 護郎クリストフ、小川 公代、江川 純一、岡本 亮輔、諸岡 了介、内村 俊太
研究概要
本研究は、ヨーロッパ社会における政治と宗教の関係を解明し、適切な比較の視座を獲得することを目的とする。地域全体および各国における「世俗」と「宗教」の関係を、歴史的に形成されてきた政教構造に照らして理解し、現代の課題を通して見えてくる共通点と相違点を明らかにする。宗教の公共性、社会のアイデンティティの再編などの問題系に特に注意を払い、具体的な事例に多角的にアプローチしてヨーロッパの多元性を提示する一方、それらの連関や緊張関係を体系的に読み解き政教関係の類型化を目指す。これはヨーロッパ内部の多様性を踏まえつつ、世界の政教関係のなかで近現代ヨーロッパの特殊性をどう把握し直すかという大きな問題につながるものである。さらに、共生の実現という困難な規範的課題にも示唆を与えうるものである。
2016-2018 近代イギリスの女性作家たちの言語態と他者―感受性、制度、植民地 − 基盤研究(B)
研究メンバー
代表者:小川公代
分担者:大石和欣、川津雅江、土井良子、原田範行、吉野由利
研究概要
本研究は、感受性言語の矛盾を女性作家がどう意識し、社会的正当化を試みたかを、18 世紀末から19 世紀前半における教育や慈善、医学・科学、文学、植民地支配が制度化されていく文脈で検証する目的をもつ。不道徳で猥らな感受性言語への批判があるなか、女性たちが教育、医学・科学、 動物愛護やチャリティ、植民地問題といった領域に参入して感受性を言語化し、その道徳性や社会的意義の認知を目指す過程は、女性の言語態確立のための戦いでもあり、「文学」という概念の変容とも連動している。また、「共感」に基づいた子供や動物、貧民や奴隷たちの表象や擁護は、抑圧された女性言語の解放への希求に裏打ちされている。その挑戦は各領域で構築される近代的制度に組み込まれつつも抗う矛盾したベクトルを持つ。ジェンダー研究や歴史研究の視点を取り込むことで、他者への共感を軸にすえた感受性文学に社会的意義が付与された過程を明らかにする。
2013-2016 感受性の〈不〉道徳性と教育―イギリス近代文学におけるジェンダー編成の諸相 − 基盤研究(B)
研究メンバー
代表者:土井 良子
分担者:川津 雅江、大石 和欣、小川 公代、吉野 由利、吉田 直希
研究概要
本研究は、感受性に内包された道徳と不道徳の二律背反性を、女性たちがどう意識し、彼女たちの教育的言説の中でどう制御し、表象していたかを考察する。18世紀末、女性たちが風紀改善運動に乗り出したとき、不道徳で猥らな感受性への不安や抵抗が共有されていた。それを言説の上から明瞭にすることで、幼児・女子教育論が飛躍的に前進したこの時代の文学の意義を社会文化史および教育史的観点から検証する。最終的には、感受性が内包する道徳的二律背反性と消費文化とのつながりをジェンダーの観点から解きほぐすことで、他者への共感や思いやりの心の涵養が求められている現代の諸問題へのアプローチを、歴史的考察に基づいた文学批評から試みたい。