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言論プラットフォーム “アゴラ”(2019年11月20日)http://agora-web.jp/archives/2042752.html
に引用された2枚の図
経済成長と債務の関係を検証した。四半期毎の国内総生産GDP Yと非金融部門総債務残高M(政府・企業・家計の3部門の合計)から総債務残高対GDP比率(Total credit-to-GDP ratio、マクロレバレッジ比率)L=M/Yが算出される。これらから数学的に更に8個の要因を導き出した。国際決済銀行BISの“非金融部門向け与信統計(Credit to the non-financial sectors)”を用い、40ヶ国の各要因の1999~2012年平均値と2013~2018年平均値を算出し、分析した。
注:金融部門(銀行)と非金融部門(政府・企業・家計)の間に於いて、債務(Debt)とマネー(Money)が無から発生する。これが銀行による信用創造(Money creation)である。非金融部門に累積した債務が債務残高である。注:金融部門と中央政府を除いた、国内の経済主体(economic unit)に累積された通貨が即ちマネーストックである。統計の種類によって、M1 ・M2・M3・広義流動性(日本銀行が算出)がある。 M1・M2・M3は国債を含まず、広義流動性は国債を含む。世界銀行が算出するBroad moneyは概ねM3に等しい。これらは次の関係がある。M1<M2<M3≒世界銀行算出のBroad money<日本銀行算出の広義流動性<債務残高注:新たな債務即ちマネーは固定資産投資へ使用され、その結果固定資産が増加する。国の全体の固定資産を国の全体の債務者が使用して生産活動を行う。生産された付加価値の合計が国民総生産(GDP)である。注:2013年にアメリカのSummers教授が先進国経済の長期停滞(Secular Stagnation) を指摘した。過剰債務がその原因であるとの幾つかの説が散見される。注:企業部門債務には間接金融の銀行借入以外に、直接金融の社債などが含まれる。注:多くの国家の統計が揃うのは1999年前後以降である。日本では、1998年に長期停滞が開始し、2013年にAbenomicsが開始した。中国では、高度経済成長が終了し、2014年に過剰債務低減政策が開始した。その結果、次の結論を得た。
(1)ΔYを Yの増分、y=ΔY/Yを成長率とし、ΔMをMの増分、m=ΔM/Mを増加率とすると、方程式y=σmと方程式ΔY=βΔM=(σ/L)ΔMが数学的に成立する。各国・各期間の80個のデータを分析した。σはLによらず、主にΔMの構成(与信向け先)の影響を受け、 通常0.5~2.0の範囲である。
注:*は掛け算、Δは増分を表す。注:上記方程式が成立するのは概ねm≫1%。注:σ=Σ(σiΔMi)/ΣΔMi 、 iは与信向け先であり、企業設備投資借入・住宅ローン・建設国債・赤字国債・金融経済向け融資・公募等非銀行引受社債などである。注:マクロ経済学ではGDP対マネーストックの比率を貨幣流通速度と呼んでいる。これはLに逆比例する。(2)横軸を α=1/Lとする、3枚のグラフを作成した。それぞれのグラフの縦軸はm、y、βである。Lの上昇に伴い、m、y、βが低下し、低成長に向かっていることが明瞭である。
注:42の国家と地域中で、39ヶ国の2013-2018年のLが1999-2012年に対して上昇し、34ヶ国のmとyが低下し、23ヶ国のβが低下した。(3)mはLや経済状況・政府財政規律などの影響を受ける。
(4) Lの変化率lはl=(1-σ)*mと展開できるので、Lの上昇の原因はσ<1である。
(5)歳入が増大しない状況下でマイナス成長を回避するためにはΔM(国債合計、t)≧ΔM(赤字国債、t-1)-ΔM(民間、t)が満足しなければならない。実績的には概ねm≫1%でなければならない。これが国債発行が増大する原因である。
注:民間とは企業と家計。(6) 以上からLの上昇に伴う低成長を回避するためには、y>m≫1%としなければならない。マネーストックが増大する間接金融からマネーストックが増大しない直接金融への移行を伴う。
注:ΔY=(σ/L)*ΔMに於いて、Globalismはσの上昇とLの低下、NationalismはΔMの増加を重視する。(7)景気変動はL(特に企業L)の長期移動平均線からの乖離によって表現できる。アメリカ・EU・中国はLが2.5へ収斂しつつある。
注:BIS、Steve Keen、Ray Dalioなどがこのような観点から景気変動を論じている。注:日本は1989年Lが2.5に達し、バブルが発生した。1991年に安定成長段階は低成長段階へ移行した。(8)政府債務残高対GDP比率(縦軸)と民間債務残高対GDP比率(横軸)の関係の図に於いて、経済が発展するにつれて西→南→東→北、或いは領域A→領域B→領域C→領域Dへと逆時計回りに推移する。