ミョウバンのクリスタル(結晶)つくり
モールでつくったクリスタルのかざり と テグスに吊るしてつくった大きな結晶
ミョウバンの溶け方や結晶のできかた 過飽和現象
ミョウバンを水のなかに入れて温度をあげても、なかなか溶けません。溶けてからろ紙で溶液をこして カップのなかにいれて 徐々に温度を冷やしていきます。溶かしたミョウバンの量と溶解度と温度のグラフや表をみて この温度以下ならミョウバンが結晶になって出てくるだろうと予想しても なかなか結晶はでてこないことがあります。これを過飽和現象といいます。
その状態でカップを揺らしたり、壁を棒でこすったり、種結晶をいれたりして刺激すると、とたんに液の表面やカップの底、壁で小さな結晶が一度にできはじめてびっくりします。その温度の溶解度よりどれくらい高い濃度の過飽和溶液であるか(濃度の比を過飽和度とよぶ)で、突然結晶になるなり方がかわります。
過飽和度が低いと、できる結晶の数はすくなく ゆっくりと大きな結晶ができます。大きな結晶を作りたい時には 辛抱して過飽和度の低い状態で種結晶をつくり 成長させるのがコツのようです。できる結晶が 形は良くても内部が白濁してしまうのも結晶ができるときにすこしのズレができてしまうなどで結晶の界面や欠陥ができてしまうためであり、過飽和度をひくくしてゆっくり成功させると透明な結晶ができます。短気では良い結晶ができません。
いろいろな物質の水への溶けぐあいと温度の関係
ものを水に溶かそうとするときになにをするでしょうか?
温度が上がるとミョウバンの溶ける量がとても多くなります。高い温度でたくさんのミョウバンを溶かした後に温度を下げると、その温度で溶液の中に溶けていられるミョウバンの量が減るので、その分は溶液のなかから固体のミョウバンとして析出します。析出する条件によってミョウバンは大きな結晶をつくります。
今回の結晶作りに硫酸カリウム・アルミニウム(ミョウバン)を使ったのは、この物質の水への溶け方が温度で大きくかわるという性質があるからです。
ミョウバン以外の物質として ショ糖(ふだん料理につかっている砂糖)と塩化ナトリウム(食塩)、塩化カリウム(減塩食でつかう)の溶け方が温度でどのように変わるかを示しています。ショ糖はミョウバンほどではありませんが、温度が高くなるとよく溶けます。
塩化ナトリウムと塩化カリウムはよく似た物質ですが、溶け方の温度変化を詳しく見ると、塩化ナトリウムは温度が上がっても溶け方はほとんどかわりません。
多くの物質は温度が上がると溶けやすくなります。なぜでしょうか?
水は冷やすと氷になります。氷のなかでは水のとても小さな分子が規則正しく並んでいます。温度をあげると固体の氷はとけて水になります。水のなかでは水の分子がさかんに動きまわっています。水の表面からは 水の分子が周りにあるほかの水の分子から離れて 空中に飛び出して 水蒸気になります。温度が高くなると、空中から水の表面に飛び込んでくる水の分子の数に比べて 水の中で盛んに動き 飛び出していく水の数がどんどん増えます。
ミョウバンははじめ固体ですが、水の分子が温度があがるとまわりの水の分子と引き合うのを振りきって蒸発するのとおなじように、ミョウバンの固体をつくっているイオンがばらばらになって水のなかに出ていきます。水の蒸発と異なるのは、バラバラになったイオンは水の中で水の分子に囲まれるという点です。固体を作っているときに周りのイオンと引き合う強さと、水の中に溶け出して まわりの水の分子と引き合う強さのどちらが強いかは、温度があがったときに溶けやすくなるか あるいは塩化ナトリウムのように 温度が上がってもあまり溶け具合がかわらないかどうかに 影響します。
ミョウバンは複塩の結晶をつくる
実験につかうミョウバンは カリウムとアルミニウムの硫酸塩です。KAl(SO4)2・12H2O が組成です。溶液のなかではK+イオン、Al3+イオン、SO42-イオンに分かれて それぞれのイオンの周りにはH2O分子が取り囲んでいます。
溶液から結晶になるときに K2SO4 と Al2(SO4)3 のふたつの塩結晶ができてもよさそうですが、KAl(SO4)2というように2つの陽イオンが規則正しく混じりあって ひとつの結晶をつくるのです。これを複塩とよびます。
結晶水
実験ではじめに溶かすのは焼ミョウバンです。できる結晶の化学式には12個の水の分子がふくまれています。この結晶を焼いて水をなくしてしまったのが焼ミョウバンです。湿った空気に長い間触れさせておくと 焼ミョウバンの重さが増えていって 水が焼ミョウバンの中に入っていくようです。
ミョウバンの結晶をつくっているカリウムイオン(K+)とアルミニウムイオン(Al3+)の周りには、それぞれ6つの水の分子がとりかこんでいます。水の分子のうち酸素は水素とくらべるとより電子を酸素原子のほうにひきつけているので 周りから見ると酸素がマイナス、水素がプラスにかたむきます。カリウムイオン、アルミニウムイオンはプラスなので、それぞれのまわりの水の分子は酸素がプラスのイオン側に向きます。酸素原子のところにある1対の電子2つは分子の外側に突き出しています。(実は 突き出しているのは2対の電子です。)カリウムイオン、アルミニウムイオンは水分子からつきだしている電子をイオンの空いているところにいれて水分子と引き合います。そのあいているところがちょうど図にしめすような6つの方向にあるのです。水の中に溶けているときも同じようなことが水分子とのあいだでおこります。しかし液体のなかで水分子は活発に動くので、イオンの周りの水分子は入れ替わったりもします。周りをとりまく水の数は 結晶水のように決まった数ではないとみることができます。
ミョウバンの結晶の中に含まれる水は結晶水とよばれます。高温にして焼けば結晶から出ていき、結晶の形もくずれます。たとえば土のなかでは、こまかな結晶に含まれる結晶水、土のつぶつぶの表面にへばりついている吸着水、つぶつぶの接する狭い隙間に入っている毛管水があります。出ていきやすい順番は 毛管水、吸着水、結晶水の順です。