宮嶽谷戸の田んぼにいって 若いヨモギを摘みます。
ヨモギは葉の裏が毛羽立って白く 群生しているのでよくわかります。
ヨモギのなまえ
ヨモギは キク目キク科ヨモギ属の一種です。学名はArtemisia indica var. maximowiczii といいます。学名はラテン語なので、英語の文章のなかで学名を書くときにはイタリックにして英語ではないことをしめします。ラテン語で書かれた文の中では イタリックにすることはなかったでしょう。日本語のなかで書くときには 混同することはないのでイタリックにする必要はありません。
属名:ヨモギ属(Artemisia)の後ろにもうひとつ(indica)を加えて種の名前(2名法)となります。ヨモギは Artemisia indica の変種(variety) であるとして var. maximowiczii が種名の後ろに付きます。
キャベツ、メキャベツ、ブロッコリー、カリフラワーは食用に作られた品種です。育種のもとになったのは ヤセイカンランBrassica oleracea なので、それぞれ変種として扱われ、まとめて一つの生物種です。種の定義は(有性生殖する種では)「生殖隔離されている」ということです。
これらはすべて野菜ですが 、ヤセイカンランの変種とされています。
アレロパシー(他感作用)
ヨモギが群生するのは 地下茎などから 他の種の植物の発芽を抑える化学物質を出す性質(アレロパシー)があるためです。アレロパシー(他感作用)の強い植物として ユーカリやハッショウマメ(ムクナ)が知られています。シバにもアレロパシーがあるようですから いろいろな植物を楽しみたかったら 芝生は剥いでしまうのがよいようです。ハッショウマメにはDOPAという わたしたちの脳のなかで神経伝達物質として働いているドーパミンの前駆体がふくまれています。東京薬科大の植物園でハッショウマメの本物をみることができます。植物園のハッショウマメはあまり他の植物の生育を抑制する効果は示していないようです。とても強いアレロパシーを示す植物が薬科大植物園にあるので、どこに生えているか植物園のひとに尋ねてみてください。
ヨモギを食べる
さて ヨモギですが、キク科に特有な匂いを持っています。お灸の原料になったり、生理的な作用を示す成分が含まれています。キク科のシュンギクはキクの匂いや味を楽しむ野菜であり、ヨモギと近い種です。
ちいさな蒸しパン10個分の材料
作り方
ベーキングパウダーに含まれる炭酸水素ナトリウムの働き
ベーキングパウダーにはいくつかの成分が含まれているのですが、蒸しパンをふくらませる働きの主役は炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)です。NaHCO3 は 高温になると つぎの反応により 二酸化炭素(ガス)を発生します。
2NaHCO3 > Na2CO3 + H2O + CO2
西緑地科学クラブでは イーストの働きで砂糖から二酸化炭素を発生させてマンジュウなどをつくったりしました。ヨモギ蒸しパンでは生物のはたらきではなく 化学の反応を使います。顔のみえない小さな生物とちがって 化学の反応は確実です。ただし化学による調理では「風味」に欠けるところがあります。
味覚発達の臨界期
風味の違いがわかるようになるには、味覚の発達の臨界期があるとするなら、その時期にいろいろ美味しい料理に接して 微妙な味を見分ける能力をはぐくむことが重要です。臨界期をのがすと、一生だめということはないようですが、あとから味をみわける能力をつけるには たくさんの努力が必要になります。
臨界期でよく知られているのは 視覚認知です。ヒトにとって眼で見る情報は外界を認知するうえでとても重要です。うまれつき光 の明暗を感ずる能力はそなわっているのですが、臨界期にいろいろな形を見る経験をしないと、そのあとに形をみても それが形として認知できなくなるのです。顔の前に2つの眼があって 視差によりモノの遠近やそれが近づいているか遠ざかっているかを認知します。この能力が発達するときに眼でモノをみせないと、大脳皮質に両眼視するための神経回路が形成されず 一生両眼視できなくなるのが サルを使った実験で示されています。このようなことがわかって、ちいさなお子さんが眼の病気にかかったときに眼帯をかけて治療することをしなくなりました。いまは大人でも眼帯することがまれですね。
西緑地科学クラブでの指をつかったいろいろな細工が ねらっている お子さんの脳の発達についてはこちらのページに解説しています。
味覚の発達の臨界期も考えながらヨモギ蒸しパンの味見をしてください。対照実験として、ベーキングパウダー群と重曹(純粋の炭酸水素ナトリウム)群のふたつのヨモギ蒸しパンをつくって、ブラインド・テストをするのもありかもしれません。