2017年のノーベル物理学賞は2016年2月になされた重力波の検出に対して授与されました。初めて検出された重力波はブラックホール連星の合体により発生したものと推定されました。いったん重力波の観測に成功すると重力波天文学がはじまりました。これから続々と発見が続くものと期待されます。
2017年8月には 中性子星の連星が合体して発生した重力波が観測されました。複数の重力波アンテナで検出されたために どの方向から重力波がとどいたのかがわかりました。重力波が出てきた領域について 重力波検出の直後から 世界中の天文台や宇宙ステーションなどで ガンマ線から赤外線までの広い波長で観測され 詳しく調べられました。その結果のひとつとして 2017年10月に「金や白金など貴金属が中性子星合体で合成されたのがわかった」というキャッチフレーズがつけられて報道されました。
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/101800401/?P=2
鉄までの元素は軽い元素の核融合反応でできるが、鉄より重い元素の原子核は鉄の原子核よりも不安定なので、どのようにして宇宙で生成したのかがよくはわかりませんでした。中性子星同士の衝突は鉄より重い元素の生成に恰好な条件を与えたのでしょう。
ブラックホールにせよ中性子星にせよ、光を出している恒星が一生を終えた段階の現象です。星をつくるたくさんの物質がとても高密度に詰まり 高エネルギーの状態になります。星がどのような一生をどのくらいの時間でたどるかは星をつくる物質の量で決まっています。
超新星の爆発というのは 星が一生を終えるなかの一つの姿で、突然強い光が出て徐々に消えていくというものです。その際に星の内部で生成した水素やヘリウムよりも重い元素がその周囲に撒き散らされます。2017年にみられた中性子連星の衝突では鉄よりも重い元素が生成されて撒き散らされたことがいろいろな光の出方の時間的な変化から推定されたのです。
このようにして撒き散らされた物質の少し濃いところを中心にして その物質が集まりはじめ たくさんの物質が高密度になると 核融合反応がおこり光を周囲に出しはじめ 新しい星がうまれます。スバル(プレアデス星団)とオリオン大星雲(西緑地会館付近ではみられない)にあるトラペジウムは、新しい星が盛んにつくられているところにある星たちです。
太陽系は私達の銀河系のなかでは かなり端のほうにあります。「天の川」は 西緑地会館付近ではみることができませんが、円盤状の銀河系にあるたくさんの星が光っているのが銀河系の端の方にいる私達の眼に空を横切る帯として見えるものです。私達の銀河系の直径はおよそ10万年光年です。宇宙の大きさは(いろいろな考え方があるのですが)宇宙の始まったビッグバンが138億年前なので、大きさは少なくとも138億光年よりも大きいと考えられます。
プレアデス星団(スバル)は太陽系から443光年、トラペジウムは1600光年という近さです。ちなみにオリオン座の星で一番明るいリゲルは およそ862光年、2番目のペテルギウスはおよそ642光年の距離にあるといわれています。