日本の固有種で、体長はオス3cm-4cm、メス4cm-5.5cmほどで、オスのほうが小さい。畦などの岸辺のくぼみに、ネバネバの液をだし後肢でそれを泡立てながら そのなかに卵を産み 3cm-10cmほどの大きさの卵塊をつくる。モリアオガエルは近縁の種だが 池の水面の上に張り出した樹木の枝に同じような泡の卵塊を産卵する。モリアオガエルではメス1個体の産卵に多数のオスが参加して精子競争がおこるが、シュレーゲルアオガエルではメスがオス1個体をえらび抱接する。
名前(ラテン語の学名 Rhacophorus schlegelii )は シュレーゲル氏のアオガエルという意味である。シーボルトが日本からオランダに持ち帰った標本をもとに生物種として記載され、当時の自然史博物館の館長(シュレーゲル氏)に献名されたのが名称の由来。
写真はメスの上にオスがのって、抱接しているところ。オスがメスをおさえる刺激で、メスが卵を産み、オスが精子をかけて、受精する。下のムービーはシュレーゲルアオガエルのオスの鳴き声。メスは警戒音、抱接解除音を小さくだすだけで、大きな声では鳴かない。オスは産卵場所について他のオスとの縄張り争い、配偶相手のメスを呼ぶメイティング・コールのために大きな鳴き声を 鳴嚢を発達させて出す。眼からすこし尾部側にみえる円盤状の部分が鼓膜である。空気中を伝わる音を鼓膜経由で聴くほかに、地面の振動も肢の骨経由で聴いているといわれる。オタマジャクシの眼は魚のように体の両側についてとても広い視角をもつが、変態すると前方を両眼でみて、見えるものの距離がわかるようになる。カエルは静止しているものは見えなくて、動くものしか視覚でとらえない。
卵塊の泡は紫外線や乾燥から卵を守る。普通のカエルの卵は透明なゼリー層に囲まれ、受精すると暗色の半球を上に向くように回転し 紫外線による障害を低減する。泡のなかで紫外線から保護されるアオガエルの卵は 暗色の半球はなく 全体が淡い黄色を呈する。
発生がすすんで、孵化するころに雨がふると、泡が溶けながらオタマジャクシごと水中に流れ込む。産卵は雨の降るような日にされる。次の雨がふるまでに発生が進んで孵化するよう、産卵時期と雨の季節、発生の速度が降雨周期に合致した種が生き残ったといえる。下の左写真の矢印は白くうつっている卵塊から流れ出た孵化したてのオタマジャクシ。右写真は矢印部分の拡大写真で、孵化したてのオタマジャクシは おなかの消化管のなかにたくさんの卵黄成分を抱えている。卵黄を使い果たすまでは あまり摂食しない。卵塊と水際の間には よく見ると水面にたどりつけなかったオタマジャクシがいる。
水中でオタマジャクシは時々短距離を泳ぐだけで、普段はあまり活発ではない。短距離泳ということから スリムな魚型ではなくオタマジャクシ型をしている。尾の付け根部分のくぼみに変態前にでる後肢を入れて泳ぐという理由もオタマジャクシ型にはある。
変態してカエルになっても、カエルは水分を腹から吸収するので 腹を湿った表面に接してじっとしている。捕食者から逃げるときには両後肢を揃えて すばやく動かし 跳んで逃げる。この運動のために 動物にはめずらしく 尾をなくしたといわれている。餌動物がカエルの目の前にきたときには 舌をすばやく前にのばして絡めとり 捕食する。爬虫類のトカゲなどは 腹を地表から浮かせて活発に移動運動して 餌動物を狩りする。カエルはこのような移動運動や狩りをしないで 餌の来るのを待ち続ける。
指に吸盤があって水辺から離れ 木に登るカエルの種では、体の水分が失われ 半分になっても生存する。ヒキガエルは皮膚が水分を通しにくくなっていて 水辺から離れて生活できる。