富士ニュースに井出順子先生の寄稿が掲載されました。以下その寄稿を掲載します。

「年を取るほどに身に染みるのがお礼法」

5回目の寄稿になりますが、最後に私が日本作法会に入会して少しずつ心が変化してきましたその様子を書かせていただきます。

 はじめは「自分が恥をかかないためにこれぐらいは知っておかないと・・」と思い入会致しました。ところが礼法は「自分のため」ではなく「相手の方を大切にするため」と教わりました。例えば「両足を揃える」という動作です。両足を揃えることは簡単な動作の様でいてその足元をよく観察してみると揃っていない姿は傲慢さが見えるものです。実線で向かい合って体験してみますとよくわかります。ある本に「足元にその人の全人格が現れる。恐ろしいことであるが本当のことで、歩き方にもその人の全人格があらわれ、それまでどんな人生の生き様をしてきたかがあらわれる」と書かれてありました。ある日、尾崎先生に「順子さんはそのような歩き方をしてきたんですね」と言われたことを覚えていますが、何を意味しているか全く分からず、私の何十年かの生きざまが出ていたんだと思います。ただ々「両足を揃える」と自分に言い聞かせてきました。

 そして言葉づかいです「おはよう」という挨拶に「おはようございます」ですよ、と先生はおっしゃり「ご家族の中でも言っていますか?」と聞かれ「夫婦間でもですか?」と正直思いました。月一回の作法教室に通って約20年。心の変化は目に見えないほどの速度でしか変えられず「~してあげる」から「~します」そして「~させてください」に変わって行くものでした。それは「言葉は人を幸せにするためにある」という尾崎先生のお父様の教えです。言葉を発する前、この教えが頭に浮かぶようになり、それらの積み重ねで人とのいいご縁をいただいていると感じております。

「年を重ねるほどに身に染みるのがお礼法」と尾崎先生のお母さまがおっしゃり、年を重ねますと確かにお人さまとの縁が少なくなり、寂しい人生を送る人と、暖かい心ある人達の中で生き生きと人生を送る人との幸福度は晩年で決まると先輩方もおっしゃったと聞いております。

三月に尾崎先生の講演会がありますので紹介させていただきます。コロナ禍ではありますが、大人の作法教室も再度開講させていただきます。コミュニケーションの少なくなりがちな時だからこそ月一度「足を揃える」「言葉遣い」からお互いを見直し、御縁を繋いでいきたいと思います。

  井出順子