恋に浮かれてるダンデへ
お前と恋人のことは自分たちで決めやがれ。キバナさまは関与しません。公式コメントとしては以上。
オレさまは今、招待状の片手間にこの手紙を書いています。……いや片手間っていう書き方良くないな。招待状のインクが乾くのを待ってんだよ。いや、もっと正確に言うとヤドンテールのワイン煮を仕込みながら、ローストビーフをオーブンに任せて、その隙に招待状したためて、で、更にそのインクの乾燥待ちでこれを書いています。ダンデには「タスク詰みすぎじゃないか?」とか言われたけど、でも大半はデリ任せだから全然そんなことないんだよな。全部自分でやろうとすると、それこそコンロもオーブンも全部フルに使っても全然間に合わないくらいだから。スタジアムでバトルするよりも頭使うし動きっぱなしになったりするぜ。今日は楽にやってる方だし、こうやって書きものするくらいの余裕があるってわけ。
招待状って言っても、もう全員の出欠は取ってあるから思い出用みたいな感じなんだけどな。ほぼ記念用のグリーティングカードだ。いっそツリーが飛び出す仕掛けも付けようかと思ったんだが、これを十数人分やるとなると片手間じゃ終わらなくなるから止めた。それにちょっと子供っぽいかなってさ。元は麦酒を美味しく頂こうって会だしな。でもその代わりに形式だけはきっちりしてるぜ。封蝋もする。オレさまお気に入りの、ジュラルドンの横顔の封蝋だ。ダンデの個人のやつがリザードンだから、オレさまはジュラルドン。良いだろ。一応これ特注なんだぜ。ダンデ以外の手紙に封印するのも久しぶりだ。こんなにかしこまった手紙、他の奴に書くことも滅多にないしさ。でもせっかくのクリスマスだしさ、ちゃんとしたいじゃんか。アルバムなんかにこれ挟んでおいてもらえたらなーとか思ってるけど、まあそんなのは皆にお任せだ。でも少なくともダンデとネズはやれよ。アルバムないとかほざいたら作らせるからな。今日の写真でいっぱいにしてやる。覚悟しとけ。
まあなんでこんなタイミングでこの手紙を書こうかって思ったかって言うと、ダンデの家でホームパーティーの準備をしてるからなんだよな。いろいろ滅多に見られないものがあるから、忘備録的に書いておこうと思って。まずやっぱりダンデだ。ダンデがすげー面白い。ダンデはオレさまのすぐ傍でリザードンやドラパルトに手伝ってもらいながら飾り付けをしている最中なんだけどさ、なんか妙に楽しそうなんだよ。アイツのやってることなんか金と銀のモールを部屋に張り巡らせて、暖炉に靴下を下げるだけだって言うのにな。でもなんかずっと笑ってるんだよ。バトル以外でこんなに笑ってるダンデ、珍しいぜ。足取りも軽くて今にも踊り出しそう。上機嫌すぎてバリコオルみたいな足取りだ。意味なく機嫌よく笑いながら飾り付けしてるダンデ、ある意味可愛いぜ。あ、変な意味じゃなくってな。子供っぽくて微笑ましい的な感じ。ホントに他意はない。これはマジで。
他のところではドラメシアやオノノクスがツリーにオーナメントを飾って、ギルガルドは天辺の星を磨いているところ。あのギルガルドがだぜ。ダンデのギルガルドはクールな奴だから、こういうのに興味ないと思ってたんだけどな。でもダンデが真剣にやるなら別らしい。「君には最も重要な飾り付けを頼みたい。一番目立つように、本物の星みたいに輝くまで磨いて欲しい」って言われて、なんだか他の奴より張り切ってるくらいだ。見てて微笑ましいよ。
オレさまのパートナーたちはお掃除部隊だ。床にワックスを掛けたり、窓をピカピカにしたり。みんな揃って雑巾持って頑張ってやってるよ。今ハイテンションなダンデにつられてフライゴンやジュラルドンが歌い出したところだ。ヌメルゴンも踊るみたいにステップ踏みながら雑巾がけしてる。これだけ大型のポケモンが出てるのにまだ余裕があるんだから、今のダンデの家の広さって異常なんだよな。リビング何平米あるんだよ。いや聞いたら怖くなるから言わなくて良いけど。
ダンデの実家から頂いたあのレコーダーも業者の人にお願いして持ち込んだ。レコードも何枚か自前のものを持ち込んでる。皆には「流したい曲があったら持ってきて良いぜ」って伝えてある。ネズはともかく、ばあさんが何持ってくるかは未知数だけどな。
ネズにパーティーの件を打診したら渋々って感じだったけど準備から巻き込まれてくれた。アイツはデリの買い出しと未成年の奴らの送迎係だ。買い出しに送迎にって当日にバタバタ走り回ることになるけど、本人がやるって言い出したし。「お前らに任すと肉に偏るんですよ」って言われたけど、パーティーならずらっと肉並べたくねえ?机一面の肉になんの不満があるのか分かんねえけど。どうせ何も言わなくてもルリナが魚持ってくるし、ヤローが野菜持ってくるだろうからバランス取れるじゃんか。
皆のおかげでホームパーティの準備は順調だぜ。皿もピカピカに磨いたし、飾り付けも大詰めだ。料理も良い感じに出来上がってきてる。ダンデも大張り切りで手伝ってくれてるし、言うことなしだ。ダンデは今回のホームパーティーがよっぽど楽しみなのか、いろいろと考えたり企画したりで忙しい。この手紙が雑誌に掲載されたら皆驚くだろうな。特に未成年の奴らは。
オレさまがパーティーで何やるか考えてたんだよ。クリスマスに近いから、それっぽいレクレーションを取り入れても良いかなと思ってたんだ。まあ、オレさまが何気なくそんなようなことを言ったらダンデが「じゃあ、プレゼント交換は?」って言い出した。プレゼント交換って言ったらアレだろ。誰に当たっても良いようにプレゼント買ってきて、皆で輪になってプレゼントをぐるぐる回して、ストップかける。で、手元にあるやつを貰うアレ。オレさま、ダンデに言われるまでそんなレクレーションがあったことすら忘れてたぜ。懐かしくって震えたね。そんで、そんなことダンデが言い出したのが驚きだった。そんで笑った。「クリスマスって言ったらこれだろ?」ってダンデが小首傾げるからますます笑っちゃったな。
その場では何言ってんだよ、みたいに笑っちゃったんだけど、でも考えたらちょっと笑えないのかもなってオレさまも思い直した。たぶんさ、ダンデのクリスマスって10歳くらいのときが友達とクリスマスを過ごせた最後の機会だったんだよ。それからは仕事とか立場とかであんまり友達呼んでクリスマス・パーティーやるなんてことなかったんじゃないかって。だから大人になってから友達同士で過ごすクリスマスがどんなものか知らなかったんじゃないかって。まあそれはオレさまもなんだけどさ。だから準備の時点でダンデに相談してたんだけど。
オレさまもダンデも、10代前半の頃はリーグ主催のクリスマス・チャリティー・バトルとかやってたんだよな。今は時期をずらす方向性になったけど、今でもクリスマスに子供を働かせてたのはどうかと思うんだよ。まあそんな話は良いや。とにかく当時のオレさまは普通にクリスマスが出来ないのが不満だった。「クリスマスなのにチキンも何もナシかよ」ってぶちぶち言いながらバトルしてたのをよく覚えてる。腹いせにバトル中にフライゴンにジングルベル歌わせようと思ったんだけど、フライゴンはうたうを覚えれなかったのを忘れてて結局出来ずじまいだ。それに、バトルの規定見直したら「バトル中、戦闘効果を伴わない演奏行為の指示を禁ず」ってあったんだよ。なんでそんな細かい規定があるんだと思ってたんだけど、聞くところによるとネズが昔やらかしたんだってな。それでローズさんが次の年からそっと書き加えたらしい。それ聞いてオレさま大笑いしたね。で、ネズ本人にその時の話ねだったら「記憶にないですね。人違いか勘違いしてるんじゃないですか?」とかしれっと言ってくんの。絶対噓じゃん。ギグバトルやりたいって公言してるんだから全然説得力ねえよ。ネズのそういうロックなところ、嫌いじゃねえけどさ。
すげえ話逸れたな。えーっとそう。準備してるダンデがはしゃいでて和むって話だ。いや凄いぜ、ダンデのはしゃぎっぷり。でも「いやプレゼント交換は……しないんじゃねえかな」ってオレさまがやんわり却下したら目に見えてしょげかえってさ。「しないのか……」ってずっと言ってるんだ。膝抱えてなかったのが不思議なくらいだったぜ。でもさ、考えてもみてくれ。ガラルのジムリーダー全員呼ぶんだぜ。それで、それに加えてネズとポプラさんとダンデもいるんだ。そんな人類の坩堝でプレゼント交換はあんまりにもリスキーだろ。賭けても良いが、絶対プレゼントの中身はマフラーとかの防寒具に偏る。他に誰に当たっても大丈夫な無難なプレゼントなんかパッと思いつかねえもん。
でもダンデは「クリスマスなのにプレゼント交換はダメなのか」ってずっと言ってるしな。しょうがないから、「子供たちにプレゼント配るのはセーフなんじゃねえ?」って助け船出しといた。そしたらパッと明るく笑ってさ、「そうだよな、子供にプレゼントあげるくらいは大丈夫だよな!」って言うんだよ。もうニコニコして無邪気なもんだ。プレゼントの買い出しにも付き合ったけど、始終ご機嫌で微笑ましかったぜ。その結果のチョイスがほとんどリザードングッズなのは頂けなかったけどな。リザードンのマグ、リザードン柄のセーター、リザードンカラーのリュック、リザードンモチーフのスカジャン……。未成年のジムリーダーは、これ読んでたらオレさまに感謝してほしい。全力で止めておいたからな。
いや分かるよ。お前が貰って嬉しいっていう観点で選んでるんだろうなって言うのはよく分かる。でも、もうちょっと相手のことを考えて欲しい。お前、オレさまへのプレゼントにリザードングッズ贈るか?……いやごめん。贈るよな。実際に贈られてたわ。それでオレさまも全然拒否してこなかったしな。これがお前の中でベストな選択になっちまってたな。それが全部悪かった。この件はオレさまに非がありました。
ダンデ。この際だからハッキリ言う。厳しいことも言うが、とりあえず最後まで読んで欲しい。オレさまはダンデからプレゼントを貰えるってことに価値を見出してるから中身が何であれ喜ぶけど。でもそれはそれとしてリザードングッズ以外ならもっと喜べるんだぜ。ジュラルドングッズとかな。他のものでも良い。キャラクターグッズや公式グッズから離れてくれるととても助かるときがある。身に着けるものは特にな。カラー系なら「リザードンの瞳の色みたいで綺麗だったから」とかならセーフだ。でもそのままのリザードングッズで「リザードンの横顔がカッコいいから」はアウトなんだよ。分かるか?この繊細なライン引き。分からなかったら都度相談してほしい。サプライズ感はないだろうけど、そうやって覚えていってもらうしかないんだ。頼んだぜ。
まあそれはオレさまへのプレゼントを選ぶときの話だな。子供へのプレゼントを選ぶなら一番無難なのは文房具じゃねえかな。今回はジムリーダーたちが相手だし、サインペンでも良いかもな。消耗品だから箱で贈れば喜ばれること間違いなしだぜ。ペンやノートとかならデザインはシンプルなのが良いと思う。学業に使うものだしな。試験の時にキャラクター系の絵が描いてあったりするものとかポケモンモチーフのものは使用制限がある学校もあるって聞いたぜ。
あと無難なのは図書券か。最近はデザインも選べるようになってるし、選ぶのも楽しいぜ。……もちろんリザードンのヤツもあるけど、渡す相手は考えろよ。アニキを慕ってくれてるホップなら喜んでくれるだろうけど、ビートに贈ってみろ。冷笑されるぞ。
それから、今後のためにもこれだけは覚えておいてくれよな。子供がみんなリザードングッズで喜ぶと思うな。今のブームは現チャンピオンが連れ回してるバドレックスモチーフのグッズだ。でっかい冠におおきな真珠みたいなネックレス付けた5~10歳の女の子たち増えたろ?あれはそういう変身系のアニメが流行ってるわけじゃなくて、バドレックスモチーフが流行ってるからなんだよ。リザードンもそりゃ男の子を中心に根強い人気はあるけど、流行りに敏感で鱗系のポケモンが好きじゃない女の子たちは今バドレックス人形を鞄にぶら下げるのがブームなんだ。サイトウはこの前の試合でバドレックスに3タテ決められてトラウマになってるが、まあアレは特殊例だ。気にするな。こういうふうにな、ブームは結構な勢いで変わってくもんなんだよ。常にアンテナ張ってろとは言わねえけど、プレゼントを選ぶときにはちょっと気を付けておいた方が良いぜ。
……とまあ、今後のためにも色々書いたけど。結局クリスマスプレゼントは文具でもリザードングッズでも、図書券でもないものに決まったぜ。どんなものかはお楽しみに!……って書いといてなんだけど、これ掲載される頃にはもうパーティー終わってるんだよな。また締まらねえ終わり方しちまった。どうすりゃ良いんだろうな。オレさま、自分で思ってる以上に手紙書くのが下手なのかも知れねえな。……次回から頑張る。絶対に頑張ってみせるからな。
お前の家のオーブンの機嫌を取るのに必死なキバナより