『プライベート』
ガラルの「週刊GP」愛読者の皆へ。毎年の如く「振り返り座談会」をしていたので自己紹介も不要だと思うんだが、一応。ナックルジムリーダー、ドラゴンストーム、そしてダンデのライバル、キバナ様だぜ。これから六カ月、「GP」で月一回エッセイの短期連載を持つことになった。どうぞヨロシク。もともとは「GP」に連載を持つのはダンデの筈だったんだが、紆余曲折悲喜交々波乱万丈なあれそれがあって、オレさまがプライベートのダンデを紹介するエッセイを書くことになったぜ。なんでだよ。いや、一から十までどういう経緯なのかは知ってるけどな。まあ、その経緯もちょっとだけ書いておこう。企画の発端を知りたい人は昨年十月号の『チャンピオン・ダンデ ファイナル振り返り座談会集』(通称:ダンデ本)発売記念対談で軽く触れてるから、そっち読んでくれ。ついでに座談会集の方も本屋で買ってくれ。オレさまに印税は一円も入ってこないけど。でも一応オレさまも書き下ろした文章があるから是非読んでくれ。そんなに大したことは言ってないけどな。でもダンデファンなら一冊持っておくべき一冊だぜ。
雑誌「GP」の編集さんがオレさまに企画を持ってきたのは二か月前。本当はダンデにエッセイの連載持って欲しかったらしいんだけど、断られたらしい。エッセイ全体のテーマは「プライベートのダンデ」。まあ話が出た時点で嫌だってハッキリ言ってたしな。仕方ない。そこまではオレさまにも分かるんだけど。何を思ったのか、編集さんはダンデに断られたその足でナックルシティまで来て、ダンデに突っ返された企画書をそのままオレさまに渡してきたんだよ。マジで丸っとそのままだぞ。その図太さは十年近く一緒に仕事してただけあるなって感心した。それから一時間かけての怒涛のプレゼン。オレさまがサインしなかったらもっと粘っただろうな。ジムチャレンジ期間じゃないとはいえ忙しいんだぞ、こっちは。押しの強さも十年で大概磨きがかかってるよ。他ではやらないように。
毎月3500文字以上5000文字以内。写真もいくつか載せて、プライベートではダンデはこんな感じですって紹介するエッセイになる予定だ。まあ、あくまでもオレさまから見たダンデの話になるから、別にどうってことない感じにはなると思うんだけどな。
一応、ダンデにはこの仕事を受けても良いかどうかお伺い立てたぜ。流石に事前に原稿チェック入れたりするかなと思ったけど、それもなしで良いって言われた。買って読むまで楽しみにしてるんだと。律儀なことで。
で、なんでオレさまがこの仕事を受けたかって話もしておこうと思う。あいつ、自分でプライベート晒すの嫌がるだろ。だからオレさまが発信しないとダンデってホントにただのバトル狂だよな~って気付いたんだよ。これじゃファンが可哀そうだってな。だからエッセイ引き受けてやりました。アイツ、リーグやバトルタワーではまだまだ暴れてるけど、それ以外の仕事は極限までセーブしてるしな。このまま供給が途絶えていくのはダンデファンが可哀そうだよなってことで、オレさまが一肌脱いでやります。
この流れに全く見覚えがないわけじゃないんだ。SNSに溢れるダンデ不足を嘆くファンの声を聞くのはいつもオレさま。で、その嘆きの声に応えてダンデの写真を上げるのもオレさま。いつもダンデを供給してるのがオレさまだから、オレさまのSNSのフォロワーの半分くらいはダンデファンなんだよなあ。知ってたか?ガラルのポケモントレーナー事情の基本だぜ。まあ、今回もその延長線上みたいな感じで引き受けた。やってる事は普段とそんなに変わらないしな。
あと、ついでだからこれを読んでいるだろうダンデへ。お前のファンへのフォローもここまで来たぜ。オレさまに甘えっぱなしなのもそろそろ考えものじゃないかと思う。そしてお前はオレさまの寛大な心に感謝するように。今度何か奢れ。飯なら極上に高いのが良い。衣服とアクセサリーの類はお前と趣味が合わないから却下。酒でも良いけど、他の奴に選ばせろよ。お前の選ぶモンはやたらに度数が強いから嫌だ。私信は以上。
さて、企画書貰ったのが二か月前で、5000文字以内なら一カ月もあれば余裕でいけると思ったんだよな。いつも仕事で何千文字のレポート書かされてると思ってるんだって高を括っていたらもう締切一週間前。これはまずいと何とかネタを捻り出そうとしてるんだが、これが中々出てこない。プライベートのダンデって言われても、お互いバトルバトルバトルたまにポケモンって感じだったからあんまり面白みのあるエピソードないんだよな。パッと思いつくダンデネタって、ここで書いちゃダメな奴ばっかりだし。そんな訳で、完全身内向けの鉄板ダンデネタでも書くことにする。いやこれダンデネタかな。ダンデ関連ネタではあるんだけど。どっちかって言うとオレさまとダンデのリザードンネタ。
実はオレさま、ダンデのリザードンとめちゃくちゃ仲良い。どのくらい仲良いかって言うと、ハンドサインで意思疎通が可能なくらいに。例えばさ、ダンデが馬鹿なことやらかした時とかに『こいつ殴っていい?』って手振りで聞くと、『OK』って返ってくるくらいには仲が良い。リザードンからも自発的にハンドサインくれるんだぜ。『迷惑かけた』とか『仕事中に申し訳ない』とか『オレは止めた』とか。なんでそんな謝罪文と言い訳がましい言葉ばっかりと思うけど、リザードンの言う事聞かないダンデが悪い。道にも迷うし厄介事に首突っ込むし火に油注ぐから手に負えない。その尻ぬぐいしてるの、主にオレさまとリザードンだからな。リザードンはダンデの相棒として常に一緒にいるから、苦労もオレさまの倍だろうけど。あいつのリザードンは本当に苦労してると思う。正直同情する。プライベートのアイツ、本当に無茶苦茶だぜ。書けないけど。
リザードンとの交流が始まったきっかけは、一番初めはオレさまがカレー作った時だったかな。キャンプでカレー食った後、洗い物してたらリザードンが横に来てなんか必死に身振り手振りでワタワタしてたんだよ。なんだなんだってダンデと一緒に頭を捻って、ようやくそれが『ありがとう』って言いたいんだって分かった時は感動したな。で、オレさまもその身振りを真似したら、リザードン本当に嬉しそうでさ。それからリザードンはダンデには鳴き声で大体のことを伝えるけど、オレさまとのコミュニケーションの主体はジェスチャーになった。最初の内はお互い探り探りジェスチャーで意思疎通してたんだけど、頻出単語が簡略化されていって固定化されてきたら早かったな。本当にポケモンってよく人を見てるよ。
今じゃ結構複雑な文章も伝えられる。とは言っても、オレさまが推理してる部分が大きいんだけど。一単語一単語でジェスチャーしてもらって、それをオレさまが助詞を補って文章にしてるって感じの方が近いかも知れない。例えば『以前(過去)』『色』『ウール―』、『喜び』『走る』『ダンデ』『止める』、『マント』『燃やす』、『怒る』『分からない』とリザードンが伝えてきたとする。そしたらオレさまが
「この前色違いのウール―に遭遇したんだけど、はしゃいで駆け出したダンデを止めるためにマントを燃やしたら怒られた。納得いかない」
と解釈する。で、それを伝えるとリザードンが「ばぎゅあ」って返事をする。違っていたら鳴いてくれない。鼻息で返される。それからリザードンがもう一回ジェスチャーしてくれて、またオレさまが読み取る。この繰り返し。
しかし、主人が主人だからリザードンも傍若無人だよな。そりゃ身に着けてるマント燃やされて怒らない人類はいねえよ。そんなのは特性もらいび持ちのポケモンくらいだ。って直接言ったらリザードンは釈然としないって表情をしてきた。表情筋も豊かだよな、ダンデのリザードン。地図も読めるし、主人の無茶も諫めてくれるし、基本的にビックリするほど賢いんだよ。突然変異かってくらい。色々教え込めば楽しそうだから提案してみたんだけど、ダンデの教育方針は「まずバトルありき」だと却下された。つまんねえの。
オレさまも大概ダンデのパートナー達と仲が良いけど、まあダンデもダンデでオレさまのパートナー達とそれなりに仲良くやってるんだぜ。自分のパートナー達のケアのついでにジュラルドンに錆取りワックス塗ってくれたり、コータスに薪をくべたりしてくれたりな。特にダンデに懐いてるのはヌメルゴン。オレさまのヌメルゴンは面食いなので、ダンデとキャンプをするとダンデにべったりくっついて離れようとしない。普段はオレさまにくっついてくる甘えん坊さんなんだが、ダンデの顔がよっぽど好みらしい。めちゃめちゃハグしに行くし、顔がもう「メロメロ」なんだよなあ。オレさま寂しい。ダンデがいるとオレさまはお姫様に見向きもされない。悲しい。ダンデが好きすぎてダンデがいるとボールに戻るのも嫌がるから、ダンデに口説いてもらってご機嫌とって戻ってもらうのがルーティーンになっちまった。面白いぜ。ダンデがヌメルゴンを口説いてるの。
「君は……あー、素敵な瞳をしてるんだな?」
とか、
「今日も、その、可愛らしい触覚?だぜ」
とか、
「熱烈なハグをありがとう。うん。光栄、だぜ」
とかな。四苦八苦しながらなんとか捻り出そうとしてるのが笑える。それでもガラルに生まれ育った紳士か?乙女一人口説き落とせないでどうするよ。ま、オレさまのヌメルゴンは可憐で初心な乙女だからな。この位の下手糞な文句でも満足してくれるのが幸いだったな。
一回くらい動画に撮ってやろうかと思ったんだが、本人から激しく拒絶されたので断念した。いつか撮ってやろうとは思ってる。撮れたらSNSに上げるから楽しみにしててくれよな!
動画は無理だったけど、写真は撮らせてもらった。今回はオレさまの可愛いヌメルゴンとダンデのキャンプ風景だ。な、べったりだろう?困ってるダンデの顔も見てくれ。こんな表情、多分皆見たことないんじゃないか?結構よく撮れてるだろ。オレさまも気に入ってる。こういう表情のダンデもたまには良いだろ。
実を言うとエッセイなんて初めて書いたから、こんなので良いのかどうか迷うな。次回までにはもうちょっと披露できそうなダンデネタを溜めとくことにする。流石にこれは。うん。がんばりまーす。