国立国会図書館デジタルコレクションによる学会誌のオープンアクセス化についての補足説明
2022年5月までに、国立国会図書館デジタルコレクションによる学会誌の公開について、日本歴史学協会に加盟する学会会員より2団体、非加盟の学会より1団体の申し込みがありました。
国立国会図書館デジタルコレクションによる学会誌のオープンアクセス化についてのご案内
いずれも昨年までに、本特別委員会より国立国会図書館の担当者に連絡し、同館でのデジタル化およびオープンアクセス化作業が始まっています。この方式には、刊行から一律5年の公開猶予期間(エンバーゴ)と巻号全体の公開という制約がありますが、学会誌のデジタル化とオープンアクセス化を検討する学会にとって、J-Stageや機関リポジトリとあわせて、選択肢の一つになると考えています。
昨年2月末から3月初旬にかけて、第30期若手研究者問題特別委員会は、学会誌のオープンアクセス化および著作権処理の現状に関する意見交換会を開催しました。参加いただいた学会・研究会には改めてお礼申し上げます。この意見交換会での議論を考慮したうえで、今後の学会誌のオープンアクセス化を推進していくために、皆様にご検討いただきたい論点を、以下の通り、お伝えします。
これまで各学会の著作権処理に際して、対応の細部に様々な違いがあるものの、オープンアクセス化したことによる係争事例は、現在、確認できません。著作権譲渡、もしくは複製権、公衆送信権、翻訳・翻案権に関する規程を定め、一定の期間を設けた後に公開するという諸学会の一般的な対応は、これまでとくに問題なく機能していると評価できるでしょう。
厳密にいえば、法人格のない任意団体の学会では、権利の譲渡や許諾を得ることはできません。法人格をもたない本協会の場合、執筆者に著作権が帰属することを明記したうえで、複製権および公衆送信権を本協会に許諾することを求めています。
日本歴史学協会刊行物の著作権について
http://www.nichirekikyo.com/publication/copyright_policy.html
また、法人格をもたない団体でも、代表者に著作権を譲渡する契約であれば可能であるため、東南アジア学会の著作権規程のように、代表者への著作権の譲渡に加えて、代表者の交替とともに、新たな代表者に規程に定めた範囲の著作権が移譲されることを明記した例もあります。
国立国会図書館デジタルコレクションによる学会誌のオンライン公開は、同館の通常業務の枠組みで対応するものです。国立国会図書館によってデジタル化済みの巻号を別として、国立国会図書館担当者より、既刊のすべての巻号のデジタル化とオープンアクセス化を一度に申請するよりも、段階的に申請いただくほうが対応しやすいとの助言もいただいています。この点もご留意いただければ幸いです。
多くの学会・研究会が著作権規程を設けるようになりましたが、学会・研究会がその刊行物の著作権ポリシーを定め公表することは、著作権者の権利を制約するという側面のみをもつわけではありません。学会・研究会の著作権ポリシーは、著作権者の権利とその利用範囲を明確化するものです。これによって著作権者は、Researchmapなどの媒体を利用して、どのような条件であればインターネット上で自らの研究成果を公表できるかについて、学会の方針を理解できます。著作権ポリシーの明確化によって、学会は起こりうる係争を防ぐことができます。そのためにも、学会は刊行物の著作権に関する方針ないし規程を定め、会員に周知することが望ましいでしょう。
すでに学会誌のオープンアクセス化に取り組んでいるいくつかの学会に問い合わせたところ、それによって会員が減少したという声はありませんでした。会員数は長期的には減少傾向にあるが、オープンアクセス化前よりもむしろ微増した例も聞いています。研究者にとって、学会誌がオープンアクセス化されているかどうかも、投稿先を選択する要件の一つになっている可能性があります。
研究のみならず、講義・演習などで学会誌に掲載された論文などを教材として学生に再配布するためには、二次利用のためのライセンス、具体的にはクリエイティブコモンズライセンスの付与が重要になります。この点について、日本歴史学協会としても今後、取り組むべき課題として検討してまいります。
以上の点について改めてご検討いただき、国立国会図書館デジタルコレクションによる学会誌のオープンアクセス化をご希望する際には、下記の案内をご参照のうえ、国立国会図書館に直接お申込みいただきたく存じます。今後とも、日本歴史学協会の活動にご理解・ご協力くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
国立国会図書館による学協会誌のデジタル化とインターネット公開について
2023年10月30日
第31期日本歴史学協会
若手研究者問題特別委員会