Research

本研究グループは脳機能の理解や脳病態の解明のため、光操作・測定、電気生理、神経やグリア細胞からの化学物質のセンシング、および薬剤送達などの機能を集積できるデバイスの開発を行なっています。さらに開発した技術を用いて、今まで解明されていない生物学の課題の研究、特に脳科学についての研究を進めています。

私たちの脳は1000億個以上の神経細胞やグリア細胞からなる複雑な回路網を持ち、化学信号や電気信号など様々な信号をやりとりして活動しています。脳回路の中で、神経細胞が電気活動していることを記録する技術は既に成熟しています。しかし、脳内の細胞間コミュニケーションを担っているのは繊細な化学信号であり、その活動を観察する技術は今のところ、細胞や組織を蛍光標識する必要がある光学的なイメージング法に限られています。それ故、脳内で化学信号を高感度かつ非標識で記録できる新たな技術が必要とされていました。私たちは脳機能を記録・操作できる多機能ファイバと半導体センサを組み合わせることにより、生体への適用が可能な化学可視化デバイスの開発を行なっています(Y. Guo* et al, PloS ONE, 2020, Y. Guo* et al, Biosen. Bioelectron., 2021) 。さらに新たな機能を創出するために、素材革新を基に、新規なファイバ (Y. Guo* et al, ACS Nano, 2017)の開発を進めており、未踏の領域である生体内ファイバ電気化学のセンシングおよびファイバアクチュエータにも挑戦しています。

2019年に東北大学で多機能ファイバを製作できる熱延伸装置を自ら組み立て、多機能ファイバの研究を本学で独自に進められるようになりました。「JST 連携型博士研究人材総合育成システム次世代研究者育成プログラム」からご支援いただき、心より感謝申し上げます。

本研究グループは、材料、化学、電気工学、生命科学など様々な分野を融合し、次世代の革新的医工学技術の創造に貢献していきたいと考えています。さらに開発した技術は、基礎研究や臨床応用への様々な展開が期待されています。