隔年で卒業研究生を受け入れています.名古屋大学理学部数理学科の学部生に対して,卒業研究が開講される前年度の秋冬に募集がかけられ配属が決定されます.次回は 2025 年度秋冬に募集がかけられる予定です.他学部や他学科の学生も希望される場合は相談の上セミナーに参加して頂くことが可能です.
修士課程(博士前期課程)・博士課程(博士後期課程)の学生については随時(毎年度,春入学・秋入学)受け入れています.喜多の指導を受けるには,名古屋大学大学院多元数理科学研究科を受験してください.出願の前に面談の上研究興味などの詳細を確認することを強くお勧めします.
グラフ理論およびグラフ上の組合せ最適化問題・グラフアルゴリズムを中心とした,離散数学および理論計算機科学分野の研究テーマの指導が可能です.離散数学と理論計算機科学の両方に強い興味を持ち,高い自主性を持って自分の興味を追求できる学生さんを歓迎します.具体的な題材のレベルで指導学生と興味が近いことよりも,根本的なところで研究に対する興味や価値観を指導学生と共有できることを重視します.理論構築と体系化への気概を持つ方は当研究室をご検討ください.
出身の学部・学科によっては授業で離散数学や理論計算機科学を学ぶ機会がほとんどない学生さんもいると思いますが,募集や出願などの時点でこれらの分野をマスターしていないからといって当研究室への志望をあきらめる必要はありません.この分野の研究テーマに取り組むために必要な(ミニマルな)予備知識はさほど多くありません.配属後に半年から一年程度集中して勉強すれば研究を始めるための基礎は身に付けられると思います.数学系学科の出身でなくても素養と適性があれば取り組めると思います.どの様なテーマを選ぶとしても,グラフ理論・最適化理論・計算複雑性理論の基礎から学んで頂くことになると思いますが,ただし以下の点にご注意ください.
出願などに先立ち,離散数学や理論計算機科学がどのような分野であるか正しくイメージを持ち理解できる程度には勉強して知識を身に付けておいてください.離散数学・理論計算機科学は,その他の純粋あるいは応用数学の諸分野とは,かなり雰囲気が異なる部分があります.専門書を部分的にでも読み進める,あるいは授業を2コマ程度でも履修するなどして,どのような分野であるかを必ずある程度理解しておいてください.特に離散数学についてはグラフ理論の専門書(大学院生や専門家向けの書籍)を読んでおくことをお勧めします.
数学のリテラシーがあり,数学の専門書を読み解く基礎的な力を身に付けていることは必須になります.学部時代に数学をしっかり勉強した経験があり,数学の勉強の仕方を身に付けている学生ならば,配属後に離散数学や理論計算機科学を学び始めても間に合う,という話です.
配属前からグラフ理論・最適化理論・計算複雑性理論などの基礎を習得しておけば,もちろん研究を早く開始することができます.
数学の様々な分野についての知識があると,研究の幅が広がります.また,研究を進める上で様々な分野との関連から,知識を広げる必要は随時生じます.
多元数理科学研究科の大学院入試では数学系学科以外では履修しない数学科目の内容が出題される可能性があります.特に,数学系学科の2年生程度を対象に開講される必修講義科目の内容が出題範囲に含まれます.数学系学科以外に所属する志望者の方には,集合・位相,線形代数続論,複素関数論,解析学再論などを,学部2~3年生のうちに自主的に勉強しておくことをお薦めします.
2025 年現在のところこれまでに(主)指導教員として輩出した学生はいないので,記載できる情報はありません.
基本的にどの年度でも,まずは専門書の輪読を通して,グラフ理論,離散最適化(組合せ最適化),アルゴリズムや計算複雑性理論の基礎を一通り学ぶことから始めます.一通りリテラシーを身に付けた後は,より専門性の高い書籍を新たに選び読み進めるか,あるいは論文を選定し読み進めてもらいます.意欲のある方には是非研究に取り組み新しい成果を出すことに挑戦して頂きたいです.また,当研究室では,数理学科で提出を要求される卒研レポートの他に,研究室独自の到達目標として(理工系諸学科のスタイルに拠った)卒業論文を作成して頂く予定です.
学生の予備知識にもよりますが,修士研究では,専門書の輪読と並行して,あるいは専門書の輪読を一定期間続け基礎を身に付けた後,論文を読み進めて研究に取り組んでもらいます.修士での研究で得た新しい成果を学位論文にまとめ提出してもらいます.修士での研究成果を学会で発表したり論文として出版することを目指してもらいたいと考えています.博士の学生とは随時相談の上研究の進め方を決めていきます.
2025 年度には当研究室に在籍する学生はいません.
輪読で扱う内容の雰囲気をつかむために役立つ図書を紹介します.
Bondy, John Adrian, and Uppaluri Siva Ramachandra Murty, "Graph theory", Springer, 2008. https://link.springer.com/book/9781846289699
Diestel, Reinhard, "Graph theory''. Springer, 5th edn., 2017. https://link.springer.com/book/10.1007/978-3-662-53622-3
Cook, William J., et al., "Combinatorial optimization", Wiley, 1997. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/book/10.1002/9781118033142
Schrijver, Alexander, "Combinatorial optimization: polyhedra and efficiency", Springer, 2003. (輪読で読む本というより百科事典のような本です.)
Frank, Andras, "Connections in combinatorial optimization", Oxford University Press, 2011. (同上.)
Cormen, Thomas, et al., "Introduction to algorithms", 4th edn., 2011, MIT Press.
Kleingerg, John, and Tardos, Eva, "Algorithm design", 2005, Addison Wesley.
Sipser, Michael, "Introduction to the theory of computation", 3rd edn., 2021, Course Technology.
「必要な予備知識」のセクションでも記載した通り,当研究室を志望する段階で離散数学や理論計算機科学の基礎をマスターしていることは要求しません.特定の知識そのものよりも,数学の様々な理論を学ぶ上で身に付く力やリテラシーが糧になりますので,学部生のうちは,卒研や大学院で何を学ぶかを気にせず興味の赴くままに数学の勉強に打ち込んでください.また,題材は何でもいいので,専門書の輪読を学部課程のなるべく早いうちに経験しておくことは,非常によい糧になると思います.名古屋大学理学部数理学科ではフレッシュマンセミナーという学生の有志による輪読ゼミが毎年開かれていますので,こちらに参加することもできます.また,大学での勉強以外にも興味のあることに沢山取り組んでください.
一方で,配属や進路決定に際しては,分野やテーマに対する認識を違えぬよう,離散数学や理論計算機科学についてある程度以上の知識とイメ―ジを持った上で,当研究室を志望してください.「参考図書」のセクションに挙げた文献を読んでみる他,情報学部などで開講される授業を受けてみることをお薦めします.また,ゼミが開講されている年度においては聴講生として当研究室のゼミに参加して頂くことも可能です.名古屋大学で開講されるものならば以下のような講義の受講をお薦めします.
2025 年度秋1期 数理情報学1(計算複雑性理論)
2025 年度秋2期 数理情報学2 (計算複雑性理論)
2025 年度秋学期 数理解析・計算機数学II (最適化理論)
これらの科目を学ぶ前にはプログラミングおよびアルゴリズムとデータ構造の入門となる授業を受講しておくとよいでしょう.このような科目は理工系の諸学科で開講されています.また,余力のある方は是非,情報理論や言語理論など,理論計算機科学の諸科目を他にも受講してみてください.
学部生のうちに,理論系・数理系の内容に比重をおいた勉強に取り組むことをお薦めします.教養課程で開講される微積分や線形代数などの数学科目や,専門課程で開講される様々な数学系および理論計算機科学系科目をしっかり学んでおいてください.また,学生の有志で数学あるいは理論計算機科学の書籍の輪読ゼミを行っておくことは非常に大きな糧になると思います.ゼミが開講されている年度においては当研究室のゼミに参加して頂くことも可能です.大学院入試のための勉強は別途必要になると思います.多元数理科学研究科の大学院入試では,集合論・位相空間論や微積分・線形代数のより進んだ科目が出題範囲に含まれますので,大学院入試対策は早めに始めることをお薦めします.名古屋大学の学生ならば,他学部聴講制度などを利用して理学部数理学科2年生の必修科目を学部2~3年生までに履修しておくことをお薦めします.ただし同様の内容は他学部・他学科などでも開講されていることがあります.名古屋大学理学部数理学科2年生の必修科目には毎年以下のようなものが開講されています.
現代数学基礎 AI,現代数学基礎 AII (集合と位相)
現代数学基礎 BI,現代数学基礎 BII(線形代数続論)
現代数学基礎 CI,現代数学基礎 CII(微分積分再論)
多元数理科学研究科の教員紹介に用いられる原稿です.
名古屋大学理学部数理学科3年生向けの卒研ガイダンスの際に用いられる当研究室の紹介スライドです.
面談に来る学生さんによく聞かれて話題にする事柄についてまとめておきます.
当研究室の卒研ゼミは,大学院で研究を始めるための準備をする場をコンセプトとしています.つまり学生さんが進学後に大学院でやっていけるように研究の基礎を身に付ける場としてゼミが位置づけられています.ですので当研究室は,卒研ゼミにおいても,後期には論文読解と研究に挑戦することを全ての学生さんに強く推奨します.
当研究室では応用研究は扱っておりません.したがって離散数学や理論計算機科学の成果を工学的・社会的問題などの解決に応用するタイプの研究は行っておりません.
離散数学や理論計算機科学は,特に純粋数学(代数・幾何・解析)の成果を応用することで組み立てられるものではありません.もちろん接点や交錯する領域はありますが,全体観として,離散数学も理論計算機科学も,グラフや抽象機械のような第一原理から厳密に組み立てられる数学的対象に対して,定理と証明の積み重ねにより独自の理論体系を構築します.
研究室の輪読では英語で書かれたテキストを用います.研究活動をスムーズに始めるためには輪読を通して英語の文献に早く慣れてもらう必要があります.