レイシガイ

Reishia bronni (Dunker, 1860)

レア度:いつでも見られる

形態:イボニシとよく似た中型の巻貝。両者の区別はときに難しいが (Zhao et al, 2020)、少なくとも七重浜では、両者は確実に見分けられる:イボニシは黒ベースにクリーム色の縞模様、本種はクリーム色ベースに黒い縞模様がある。また、本種の開口部は濃いオレンジ色を呈する (重要!)貝殻やいぼの形状には個体群間変異があり、例えば同じ函館湾でも、七重浜と葛登支とでは見た目の印象が結構異なる。

生息域:北海道南部以南に分布し、潮間帯の岩礁に生息する。 七重浜では、堤防の岩礁でよく見られ、夏場によく見つかる気がする。

生態:肉食性。七重浜では、ムラサキイガイやフジツボ類を捕食している。本種がイガイ類に用いる攻撃法は、合わせ目に穴をあけるパターンが大半である (Luckens 1970; 阿部 1980; Kim et al. 2021)。摂餌は主に水没時におこなうため、干潮時には休息している個体が多い (阿部 1980)。ただし、1個体のムラサキイガイを食べるために4~8日も要するため (Kim et al. 2021)、干潮時にも捕食を継続している個体も多い。産卵期には、雌雄を問わず産卵場に蝟集する (岡野ほか 2015, 2016)。同科のチヂミボラ属とは異なり、発生過程に浮遊幼生期がある (岡野ほか 2015)。

その他:イボニシ(七重浜産)よりも相対的に開口部が大きく、いぼが大きい?

2021年5月8日 りった上の部分が欠けている個体
2021年5月8日 りった
2021年5月8日 とみよし左:イボニシ、右:レイシガイ 開口部の色味に注目
2018年7月 山上
2018年7月 山上おしゃれ触角
2021年10月 とみよし
202110月 とみよし
2021年9月4日 りった背景への見事な溶け込み
2021年9月4日 りった
2021年9月4日 りった
2021年9月4日 りった殻頂がときんときんにとがっている
2021年9月4日 りった
2021年9月4日 りったエゾチヂミボラと一緒

引用文献:

  1. Luckens, P. A. 1970. Predation and intertidal zonation at Asamushi. Bulletin of the Marine Biological Station of Asamushi, Tohoku University, 14: 3352.

  2. 阿部直哉. 1980. 肉食性腹足類数種の餌生物と食い方 (予報). 日本ベントス研究会連絡誌, 19–20: 39–47.

  3. 岡野桂樹・大石哲也・松山大志郎・中林信康・保坂芽衣・尾崎紀昭・山田潤一. 2015. レイシガイの摂餌行動, 蝟集, 卵嚢に関する基礎的研究: レイシガイ駆除技術の開発に向けて (1). 秋田県立大学ウェブジャーナル B (研究成果部門), 2: 164–170.

  4. 岡野桂樹・松井優弥・松山大志郎・中林信康・山田潤一・Wong Yue HIm・小黒 (岡野) 美枝子. 2016. レイシガイにおける実験室内水槽を用いた卵嚢形成系の確立: レイシガイ駆除技術の開発に向けて (2). 秋田県立大学ウェブジャーナル B (研究成果部門), 3: 177–182.

  5. Zhao, D., Kong, L. F., Sasaki, T.,& Li, Q. 2020. Molecular Species Delimitation of the Genus Reishia (Mollusca: Gastropoda) along the Coasts of China and Korea. Zoological science, 37: 382–390.

  6. Kim, I. H., Kim, J. & Shin, S. 2021. A predatory gastropod as the potential biological control agent of the Korean invasive mussel, Mytilus galloprovincialis (Lamarck, 1819). Journal of Asia-Pacific Biodiversity, 15:9–14.