当研究室では、タンパク質分解を中心に、さまざまな生命現象の制御機構を研究しています。特に、代謝制御、翻訳制御、タンパク質の品質管理機構に重点を置き、その仕組みを分子レベルで解明することを目指しています。
修士課程修了までに独自の研究成果を得ること、そしてそれを学会で発表することを目標とします。
生化学、遺伝学、分子生物学、細胞生物学など、最先端の研究に主体的に取り組む意欲のある方を歓迎します。
研究に興味のある方は、学年を問わず、お気軽にメールでご連絡ください。
3年生で当研究室を志望し、希望順位を5位以内に指定する予定の方は、事前に必ず面談をお願いいたします。
大学院入試情報は全学のページと研究科のページをご覧ください。
新しく加わった学生は、次のように研究を進めていきます。
(1)英語の論文を読む
英語の論文をゆっくり読みながら、研究のバックグラウンドを勉強します(タンパク質の品質管理、ユビキチン、プロテアソーム、オルガネラ、代謝 など)。学術論文に特有の表現も一緒に勉強します。多読・速読することによって、自分に必要な情報を素早く手に入れる訓練も行います。
(2)テーマの設定
研究のバックグラウンドを勉強しながら、テーマを決めていきます。新しい因子を釣り上げる研究、タンパク質複合体の機能を解析する研究、新しい実験系を作る研究など、様々な選択肢の中から、各人の好みに合わせて選びます。多数のオプションから選んでいただけます。
(3)実験をする
当研究室では、微生物を材料とした生化学、分子生物学、分子遺伝学、細胞生物学の研究を進めています。必要に応じて外部の研究室と共同で研究を進めます。微生物は世代時間が短いので、比較的短期間のうちに仮説を検証できるのが長所です。高等生物ですと数か月かかる変異体作製も、微生物では1-2週間で終わります。
(4)データについてじっくり議論する
「実験する」→「議論する」→「実験する」→「議論する」・・・このサイクルは数か月から数年続きます。ある日突然すばらしいデータが降ってくる!!なんていうことは稀でしょう。むしろ木彫りの仏像のように、おぼろげながら結果が見えてくることがほどんどです。「おぼろげながら見えてくる」のが楽しい時間でもあります。
(5)論文にまとめる
データが出そろったら、いよいよ論文執筆です。まず「図(figure)」を用意します。次に、「図の説明(figure legend)」「材料と方法(materials and methods)」などを書きます。そして、「結果(result)」「背景(introduction)」「考察(discussion)」はバランスを考えながら書きます。実験から得られたデータそのものは、事実としてそれ以上でもそれ以下でもありません。重要なのは、得られたデータを、研究分野の中でどのように「解釈」し「位置づける」かです。これによって、論文のインパクトが変わるでしょうし、新しいコンセプトの提案にもつながります。
(6)学会などで発表する
論文で報告すると同時に、学会でも発表します。当研究室では、日本生化学会、日本分子生物学会、日本細胞生物学会、日本農芸化学会、酵母研究会などに参加します。まとまった成果が出たら、国際学会でも発表します(アメリカ細胞生物学会など)。対話によって自分の研究を伝えることも、重要なスキルの一つです。
FAQを記載しておきます(随時更新中)
Q: どのような研究をしていますか?
A. 私たちの研究室では、「タンパク質の分解」を中心に、生命現象がどのように制御されているかを研究しています。とくに力を入れているのは、代謝制御、タンパク質合成(翻訳)の制御、タンパク質品質管理などの分野です。実験には、パンやビール作りに使われる「出芽酵母」という微生物を使用しています。
Q: 卒業後の進路は?
A: 卒業後は、化粧品会社や食品会社の研究職、品質管理部門、製薬会社のMR(医薬情報担当者)、CRO(医薬品開発支援企業)、IT企業、大学の事務職など、多様な進路に進んでいます。いずれも研究室で培った専門性やスキルが生かされています。
当研究室では、大学院への進学を強くおすすめしています。修士課程に進学すれば、核酸・タンパク質・脂質などの生体分子を扱うさまざまな実験に取り組めるほか、英語の論文を読む力や発表スキルも伸ばすことができます。しかし、これらの技術を完全に習得して独自の成果を生み出すには、修士課程の期間だけでは時間が足りません。既知と未知の境界を書き換え、それを体系立てて伝える力を養うには、博士後期課程(博士)の3年間がどうしても必要です。当研究室では、そうした知的探究のプロセスを、共に楽しみながら深めていける環境を整えています。
Q: 研究室にコアタイムはありますか?
A: はい。2025年度は、最低限の活動時間として、1日7.5時間を目安にしています。研究の始まりは朝8:00〜10:00の間と決めています。当研究室が目指す研究を行うには、物理的な「時間」がどうしても必要だからです。また、共通の試薬や培地の準備、掃除など、当番制の仕事もあります。これはチームで協力して研究を進める上でとても大切な作業です。安全面の観点から、深夜や早朝に一人で作業することは原則禁止としています。実験が進みデータが出始めると、次の結果を早く見たくなるものです。そのため、週末に実験を進めたり、次週の準備やデータ解析を行ったりするメンバーもいます。
学部生と修士課程の学生には、毎日「日報」を提出してもらっています。その日に行った実験と翌日に予定している研究について、メールで報告していただきます。
Q: どういう雰囲気の研究室ですか?
A: 各々が最大限の力を発揮できるように、常に話し合いながら研究を進めています。大学院生は毎週、個人ミーティングを行い、実験の結果と今後の予定を話し合い、関連する論文を一緒に読み進めます。「思いっきり研究に打ち込みたい!」という方にとって、やりがいのある、刺激的な環境を目指しています。
Q: 研究テーマは自由に選べますか?
A: はい。学生の希望を尊重しながらテーマを決めていきます。特に大学院生の場合は、新しい現象の発見や、実験手法の開発などにも積極的にチャレンジできます。私たちは、自分の力で仮説を立てて検証し、答えを導くことが「自由に研究する」ということだと考えています。テーマを決めてしばらくすると結果が出始め、内容への理解も深まり、自然と自分の研究に愛着がわいてくるでしょう。
Q: ゼミはどのようなことをやっていますか?
A: 週に1回、研究室内でのセミナー(コロキウム)を行っています。1人が研究の進捗報告、もう1人が論文紹介(Journal Club)を担当します。全体で3~4時間ほどです(2025年度前期は個人ミーティングを中心に進めています)。
Journal Clubで取り上げた論文の一部は研究室のトップページにも掲載しています。論文を1人で発表するのではなく、図ごとにメンバーが分担して説明する形式をとっています。論文の理解を深めると同時に、プレゼン力の向上も目指します。