今年度、小学校4年生の皆さんから寄せられた質問です。大変大事な内容で、大人の会でも、まずこれだけの質問が寄せられることはありませんので、ひとつひとつ丁寧にお答えしてお返事いたしました。全ての年代に参考になる内容かと思いますので、ここに残し、必要に応じてアップデートしてゆきます。
今年度、小学校4年生の皆さんから寄せられた質問です。大変大事な内容で、大人の会でも、まずこれだけの質問が寄せられることはありませんので、ひとつひとつ丁寧にお答えしてお返事いたしました。全ての年代に参考になる内容かと思いますので、ここに残し、必要に応じてアップデートしてゆきます。
① 認知症(にんちしょう)の先生になって一番大変に思ったことは?
一番がんばったことはなんですか?
少しずつ進んでいく認知症を確実に止める方法は、まだみつかっていません。医者は「治りますよ」と言えないのがつらい。どうやって、ご本人やご家族を元気づけたらいいか、それが大変。
「治らない病気にこまっている人を元気づけること」。それは医者だけではできません。かんごしさん、ヘルパーさん、歯医者さんや、やくざいしさん、区役所、こうれいしゃしえんセンターの人や、何より高倉学区で住んでる人のりかいや協力が必要です。そのために、みんなで話し合う会や場所を作って、かかわりを深めてきました。これからもがんばります!。
おとしよりは引きこもりがちですが、そうすると、認知症も含め、脳(のう)と心と体のおとろえが、どんどん進みます。認知症という困りごとは、だれにでも起こりうることで、120才まで生きるとすると、すべての人が認知症を持つことになると考えられています。そう思うと、認知症はやっつけたり取りのぞいたりするものではなく、認知症とともに幸せに生きる方法をみつけ、そのために必要なしくみを作ることが、私たちみんなでしていかないといけないことかなと思います。
② 認知症(にんちしょう)のことは、いつから知っていましたか?
認知症は昔『ぼけ老人』と言われていました。昔はよく近所のお母さんたちのおしゃべりで、「もう、うちのおばあちゃんが最近ぼけちゃって」なんていうやりとりがありました。そこには、どこかほのぼのとした空気が流れていたものです。
それが病院で医者にみてもらうことになり、1980年ころから研究が一気に進みます。「アミロイド」というのがわかったのもこのころです。ただ、残念ながら、治す方法は見つかりませんでした。そうすると、「そのうちに、なにもわからなくなる人」とおもわれて、社会からのけ者にされやすい。大きな社会問題になりました。なので、「ぼけ」という言い方をやめようということになり、2004年に「認知症」という言葉に代わりました。
しかし、げんざいはどうでしょうか。「認知症って大変なのでしょ? 急いで病院でみてもらった方がいいんじゃない?」なんて、あいかわらずというか、かえって大変な感じになってしまいました。
認知症という言葉が生まれると共に、社会にどんな変化が起きてきたのでしょうか。
① 認知症を治そう、予防しよう
② 認知症を持つ人を支えよう、守ろう
という二つの流れです。ただ、①にはどうしても「認知症はいやだ、なりたくない」「認知症をやっつけるぞ」という気持ちもでてきてしまう。そうすると②の「認知症を持つ人をサポートしよう」という人と意見がぶつかってしまうこともあります。でも、どちらが正しいということではなくて、この二つを合わせることが大切です。
認知症を持つ人も、持たない人(つまりはこれから持つ人)も、医療(いりょう)も介護(かいご)も、京都市も国も、ともに手をとりあって、社会からのけものにされやすい認知症をもつ人に、その人にあったやりかたをつみ重ねることが大切です。そうしてはじめて、認知症をほんとうに「知る」ことになるのですが、先生もまだ勉強中です。
③ 何がきっかけで、認知症(にんちしょう)をサポートする人になろうとおもったのですか?
先生は、昔はあまりいい医者ではなかったと思います。認知症をもつ人をしんさつしても、「認知症」という病気の名前を伝えるだけで、「これからどうしたらいいか」というアドバイスをすることがあまりできていなかったからです。
それを教えてくれたのは、PJホワイトハウスという有名なお医者さんです。そのお医者さんは世界のアルツハイマー病研究のリーダーで、いまある“ドネペジル”というお薬につながる大きな発見をした先生です。その先生が、急に研究をやめて、子どもたちと認知症のおとしよりがいっしょに学ぶ学校を作りました。
その時作られた本があります。「アルツハイマー病という神話」というものです。『病名で何かわかったように思い込まないで。もっともっと私たちにできることがあるはずだ』というお話です。そこに昔の自分と、今の自分の二人の医者を登場させて、ちがいを説明するのです。
その本を読んでから先生は、患者さんが落ち込まないように、あきらめないように、いっしょうけんめいサポートしています。サポートの中で一番がんばってしているのが、“予防(よぼう)”です。予防は認知症にならない方法ではありません。そうではなくて、認知症のひとも、まだそうでない人も。誰もがとしをとるとちょっとずつ進んでいく『物わすれ』を少しでもやわらげる方法です。私たちはこれを備忘(びぼう、わすれることへのそなえ)とよびます。食のとりかた、成人病(せいじんびょう)への対さく、たばこやアルコールを取りすぎないこと、運動、ゲームや音楽などによる脳(のう)へのしげき、ボランティアなどの社会参加などです。そして、そのためには、地いきのみなさんのささえと、それをささえる国のささえが必要だと思います。
去年、ようやく、認知症基本法という法律ができました。すべての認知症を持つ人を、地域でささえよう、そのためには、認知症を正しく知り、認知症を持つ人の気持ちを正しく理解しよう、という法律です。
④ 認知症(にんちしょう)サポーターの仕事は何をしていますか?
認知症サポーターこうざを受けて、みなさんはどのように感じましたか?
そこで知ったこと感じたことをまわりに伝えることがサポーターの仕事です。
皆さんが習ったこと・感じたことを、お家に帰って、少なくとも二人に伝えてください。そうすればこの高倉学区で、認知症を知っている人がぐっとふえますね。もしおじいちゃん、おばあちゃんがいたら、家族で認知症の話し合いをしてみてください。「私は認知症にはなりたくないなあ」でもいいのです。最初はそこから。でも、自分がなったらどうする。家族がなったらどうする。そんな話し合いにつながったら、りっぱなサポーターのお仕事です。これは、自分や家族に起こりうることを話し合っておく、「人生会議」とよばれる話し合いのはじめの一歩でもあります。
~認知症サポーター~
1.認知症に対して正しく理解(りかい)し、偏見(へんけん)をもたない。
2.認知症の人や家族に対してあたたかい目で見守る。
3.近所の認知症の人や家族に対して、自分なりにできるかんたんなことからやってみる。
4.地いきのみんなでできることを探し、「おたがいにささえあい・協力し・
つながる」というネットワークをつくる。
5.まちづくりをする地いきのリーダーとして活やくする。
⑤ 身近な人に、認知症(にんちしょう)の人はいますか?
先生のおばあちゃんが認知症でした。
もうずいぶん昔ですから、ご近所にも同じようなかたもいて、ご近所さんどうし、「大変ね」となぐさめあったり笑いあったり、“まち”の中で「あれ?」と思うことなく暮らしてゆくことができました。
おばあちゃんがまちがえて家をでていってうろうろしていても、車もあまりないし、顔を知っているだれかにあって、いっしょに帰ってくることができた時代です。
そのころ、みんなの中心にはお寺がありました。
“かんのんこう”という集まりでは、みんなで歌を歌うのですが、おばあちゃんは、とても上手だったそうで、いつも皆に「すごいね」っていってもらってニコニコ顔で帰ってきていました。大きなきもちのささえだったと思います。
⑥ 家族が認知症(にんちしょう)になったら、だれに相談したらいいですか?
もし、かかりつけのお医者さんがいたら、まず相談してみてください。そうした先生がいなかったら、学区にはその学区のおとしよりのサポートをする『地域包括支援(ちいきほうかつしえん)センター』というのがあります。高倉小学校区であれば御池地域包括支援(おいけほうかつしえん)センターになります。おいけ中学校のビルにあります。そこで、「どのお医者さんに相談したらいいか」など、いろいろ相談にのってもらえます。
また京都市には『長寿(ちょうじゅ)すこやかセンター』というところもあって、そこでも相談ができます。あと、『認知症の人と家族の会』という会も京都に本部があり、そこでも色々な相談に乗ってもらえると思います。まずはだれかに相談です。
⑦ どうやったら認知症(にんちしょう)になりますか?
「認知症」は病気ではなくて、いろいろなしょうじょうをまとめて表す言葉です。
脳(のう)の病気などにより、色々なことを理解(りかい)することがむずかしくなっていって、毎日生活していく上での行動がむずかしくなるほどのしょうじょうがずっと続くようになると、「認知症」であるといえます。
どうやったら認知症になるかはよくわかっていませんが、どうすればその進行をおさえられるかについては、さいきんになってちょっとわかってきました。
それは、『マルチモーダルケア』と呼ばれているもので、①運動、②成人病(せいじんびょう)のよぼうとちりょう、③脳(のう)へのしげき(ドリルやゲームをする、音楽、などなど)、④人との交流、⑤社会参加・・・という5つの取り組みをサポートすることで、進行がおそくなることが世界各国でほうこくされていて、「コグケア」ともばれています。
ただ、この①から⑤は、年れいとともに、行うことがむずかしくなることでもあります。
としをとると、運動がへり、成人病になることが多くなり、やりたいことがなくなっていって、人との交流が少なくなり、社会参加のできるチャンスが少なくなってゆきます。こういうことは、自分ひとりではできない。社会のサポートが必要ですね。
⑧ 事故(じこ)で認知症(にんちしょう)になった人はいますか?
「認知症」とは、症状が“ずっと続いていて、すこしずつでも悪くなっていく”もので、きおくのトラブルだけではなく、いろんな脳(のう)のトラブルがいっしょになってでてきてしまうもので、一回の事故で認知症になることはありません。ただ、ボクシングやサッカー、アメフトなどのスポーツでくり返される脳へのダメージは認知症へのリスクとなると考えられています。
⑨ 女の人にはなぜそんなに認知症(にんちしょう)になる人が多いのか。
認知症が女の人に多いのは、女の人が長生きだからです。
長く生きればそれだけ脳の神経細胞(しんけいさいぼう)はへっていきますからね。ただ、80才くらいや90才くらいで、同じ年代で男と女にちがいがある理由はよくわかっていません。一つ言えるのは、この年代の男の人は、へいきんじゅみょう以上の年ですので、へいきん以上に生きるための、何か、老化とたたかう力を持っている人が少し多いのかもしれません。
ただいずれにしても、こうした年代のかたは、戦争があったころの大変だった日本を生きてきた方たちです。日本が豊かになってから生まれて、男女の生き方も違う、これから老人になる人たちとは少しちがうのではないかな。
⑩ 認知症(にんちしょう)にかからないためにはどうすればよいですか?
かぜなら、手洗いうがいをしたり、マスクをつけたりなどの、かぜにかからないための方法がありますが、それですら100パーセントかからないわけではありません。またワクチンという方法もありますが、これも、ぜったいにかからないという方法ではありません。まして認知症は、長い年月をかけて起こってくる脳(のう)の変化ですので、としをとればだれでもなってしまうかもしれないトラブルです。80才以上の人だったら二人に一人、120才まで生きていれば、すべての人がなるといわれています。
残念に思うかもしれないけど、私たちはみな、『生まれてきて成長し、病気やトラブルと出会い、老いて、死ぬ』という生き物の宿命を持っています。これを「生・病・老・死」と古くからの言い習わしてきました。大事なのはそうした認知症と呼ばれるトラブルで、困りごとを持っている人をどう助けるかです。
そのためには、なるべく早い時期に見つけて、進行をおさえる方法をさがすことと、認知症で起こる困りごとを少なくすることです。
⑪ 認知症(にんちしょう)には種類がありますか?
大きく分けて4つの種類があります。
1.アルツハイマー型認知症
脳(のう)の中にアミロイドβなど「脳のごみ」と呼ばれる不要なたんぱく質がたまってしまうことでなる認知症です。それによって、神経細胞(しんけいさいぼう)の形がかわってしまったり、死んでしまったりします。そのうち、脳(のう)の中の海馬(かいば)とよばれる部分や、頭頂葉(とうちょうよう)とよばれる部分などが小さくなって、認知症の症状(しょうじょう)が出てくるようになります。『きおくのつぼ』で体験してみましたね!
認知症のなかでいちばん多くみられるタイプで、症状は物わすれなどの「記憶障害(きおくしょうがい)」から始まり、自分のいる場所や時間などがわからなくなる「見当識障害(けんとうしきしょうがい)」、なくした物がぬすまれたとおもってしまったり、かえりみちがわからなくなってうろうろしてしまったりなどの、よく認知症としてイメージされている症状がでてきたりします。
2. 血管性認知症(けっかんせいにんちしょう)
血管性認知症は、脳(のう)の病気がもととなってなります。脳で血管がつまり、十分にさんそやえいようを送れなくなることで細胞がしんでしまう。もともとの働きができなくなり、血管性認知症となります。
毎日の生活習かんに気をつけることで、脳の血管がつまりにくくなるといわれています。また、血管性認知症はアルツハイマー型認知症と同時になることも多いです。
3.レビー小体(しょうたい)型認知症
本当にはない、まぼろしがが見えてしまう「幻視(げんし)」の症状がでる認知症があります。それがおおくみられるのがレビー小体型認知症です。
後頭葉(こうとうよう)と呼ばれる、みることとつながっている場所にレビー小体というたんぱく質がたくさんできると、神経細胞(しんけいさいぼう)のはたらきがわるくなって、「まぼろし」がみえてきます。「家の中に知らない人がいる」「服の中に虫がたくさん入ってきた」など、本当にはないことを言い出すようなことがあれば、レビー小体型認知症かもしれません。レビー小体型認知症は男の人がなることが多くて、女の人の約2倍とも言われています。アルツハイマー型に比べると、海馬はそんなにちいさくなりません。物忘れはひかくてき軽いことが多いのです。
4. 前頭側頭型認知症(ぜんとうそくとうがたにんちしょう)
脳(のう)のほとんど半分の場所である前頭葉(ぜんとうよう)と側頭葉(そくとうよう)が小さくなり、血が流れにくくなることでなるのが前頭側頭型認知症です。さいしょは、せいかくが変わったような感じがしたり、周りから見るとへんな行動をしたりします。なぜなら、「前頭葉」はひとのきもちや考えることや自分のきもちのコントロール、社会のルールにあわせること、「側頭葉」は言葉のりかいや、聞くこと、味などを感じる働きをする場所だからです。
⑫ 認知症(にんちしょう)の種類に合った薬はあるのでしょうか。
まず、脳(のう)の中には、“アセチルコリン“という、脳の神経(しんけい)を動かす物質(ぶっしつ)があります。アルツハイマー型認知症は、その“アセチルコリン”を使う神経がへってしまいます。
もともと、使った“アセチルコリン”はどんどんそうじされて消えいていきますが、そうじすることを少なくすることで、へってしまった神経からの“アセチルコリン”の信号を強めて、神経の働きを助けてあげる薬があります。また、“グルタミン酸”という物質による信号も低下していて、これをたすけてあげるお薬もあります。
ただ、これらは直すお薬ではなく、「足りない働きをたすけてあげる」というもので、神経系のバランスをくずすと、いろいろな副作用(ふくさよう)と問題・トラブルが出てきます。
特におとしよりの脳は小さく、脳に作用するお薬の副作用が出やすいし、いらなくなったお薬をこわしてすてていく肝臓(かんぞう)の働きも、若いころの半分くらいになっているので、副作用が長引きやすいことには注意が必要です。
⑬ 認知症(にんちしょう)を予防(よぼう)する運動は、どんな運動がいちばんいいのでしょうか。
「認知症を予防(よぼう)する」というのは、認知症になるのをおそくしたり、認知症がひどくなるのをゆるやかにしたりするという考えかたであり、「認知症にならないようにする」ということではありません。
2019年にWHOという集まりが、「認知症はタバコ・不健康(ふけんこう)な食事・お酒をたくさん飲むなどの生活のしかたも関係しているよ」と言っています。これらをよくすることで認知症になるのをおそくしたり、なった後ひどくなるのをゆっくりにできると考えられるのです。
運動についてですが、有酸素負荷運動(ゆうさんそふかうんどう)で1日30分、歩く・自転車をこぐ・プールの中を歩くなどの運動を週3~5回くらい行うとよいでしょう。おとしよりの人は、10分以上の運動を3回でもいいです。運動しながら頭を使うと、認知機能(にんちきのう)が悪くならない効果があるといわれていますので、より認知症予防(にんちしょうよぼう)をしたい場合にはおすすめです。有酸素運動(ゆうさんそうんどう)に合わせて、筋力(きんりょく)トレーニングを行うとばっちりです。筋力(きんりょく)トレーニングは筋肉(きんにく)をつけて、心臓(しんぞう)にもいいです。胸(むね)・背中(せなか)・足の大きな筋肉(きんにく)をきたえることを意識(いしき)してやりましょう。
⑭ 認知症になって、困ることはなんですか?
認知症は認知機能障害(にんちきのうしょうがい)という一つの困りごとです。お話したように、“障害”のことをさいきんでは“チャレンジド”と言います。2006年に、国際連合(こくさいれんごう)という集まりで「障害者(しょうがいしゃ)の権利(けんり)に関する条約(じょうやく)」ができました。日本も、2014年1月にこの条約(じょうやく)を守りますと約束しました。この条約(じょうやく)を決めるときは、世界の障害のある人たちが参加(さんか)していますが、その時のあい言葉が「Nothing About us without us(私たちのことを私たちぬきで決めないで)」でした。
では認知症の人が本当に困っていることは何でしょうか。
毎日することがなく、生活がつまらない、テレビもおもしろくない、ボケーっと過ごすことが多い。方向や場所がわからなくなる、よく行くお店の場所がわからなくなった、お店でトイレに案内(あんない)されても帰り道がわからない。記憶(きおく)に障害が出て、人の名前がおぼえられない、物をおいたところをわすれる、大事なものをすぐなくしてしまう、台所で鍋(なべ)に火をかけていることをわすれる。おでかけの時もサイフやカギをどこにおいたかわすれる、よく行くところでも気を付けておかないと通り過ぎてしまう。あとは音がうるさく感じてしまうことが多い。などがあります。
⑮ 認知症になったらいちばん不便(ふべん)なことは何ですか。
若年型認知症(じゃくねんせいにんちしょう)という、65歳以下で認知症になった、佐藤雅彦(さとうまさひこ)さんという人のお話があります。そこでは、困っていることを6つにまとめておられます。
1,やる気がなくなり、出かけることがめんどうくさくなり、何もかもがめんどうくさいこと。
2,しっている人の名前が思い出せないこと。
3,時間がわからなくなり、ごはんの時間がおそくなる。バスの時間におくれる。
4,今日の日づけがわからない。
5,ちゃんと決められない。まちがえることも多くなる。
6,ねられなくなって、ねても夜おそくの3時に目が覚めてねむれない。
反対に強みもあげておられ、
できることとできないことがわかっている、あまりとくいでないことに対して作戦を考えることができる、自分の考えをインターネットでみんなに伝えられる・・・など認知症でもできることをあげています。認知症があっても、幸せに生きることができるということも話されており、そして、一方的に支援(しえん)されたりするのではなく、いっしょに楽しむ仲間がほしいと言っていました。
⑯認知症になったら、字はおぼえていますか?(飛行機などの)指定席の場所はわかりますか?
認知症という困りごとの一つに「失語症(しつごしょう)」があります。言葉をうまくつかうことができなくなることを「失語(しつご)」といいます。
失語(しつご)は大きく運動性失語(うんどうせいしつご)【ブローカ失語ともいいます】と、感覚性失語(かんかくせいしつご)【ウェルニッケ失語ともいいます】の2つにわけられ、脳細胞(のうさいぼう)がこわれていくなかで、脳(のう)のどこにトラブルがおこるかで、どんな症状になるのかがあるていどわかります。
運動性失語(うんどうせいしつご)では相手のいうことはわかるけれど、言葉がでてこない、文字がかけない、です。感覚性失語(かんかくせいしつご)では、スラスラ言葉がでてくるものの、相手の話がわからない、読んだものもわからなくなります。
ではどうしていくかですが、長い言葉や文章を使うのをできる限りやめたり、かんたんな言葉でゆっくり話したり、ジェスチャーを使ったりするとわかりやすくなります。また、1回でわからないこともあるので、何度も言ったり、少し言葉を変えて伝えるなどもいいですね。認知症の人はものわすれがあるので、指定席の場所もわすれてしまうこともあるかもしれませんね。
⑰認知症の人に暴力(ぼうりょく)をふるわれたら、どうしたらいいですか?
全ての認知症の方が暴言(ぼうげん)や暴力(ぼうりょく)をするわけでも、認知症がひどくなって暴力的(ぼうりょくてき)になるわけでもありません。認知症の人が暴力(ぼうりょく)・暴言(ぼうげん)になってしまうげんいんはいろいろあります。
暴言(ぼうげん)や暴力(ぼうりょく)をふるわれたら、一番よくない方法は、やりかえすことです。自分を守るためにはしかたない時もありますが、おさえつけたり、しかりつけたりすることは、おたがいにきずつくだけで、よくはなりません。たとえば、こんなことをしてみてください。
1,まずは、はなれる!
まずは、暴力(ぼうりょく)をうけないため、はなれてください。他に相手をすることを交代してくれる人がいれば、交代してみましょう。認知症の人は、あなたをきずつけようとしてそのようなことをしているわけではありません。認知症の人にとっても、あなたがきずつくのは悲しいのです。
2,おちつきましょう!
はなれることができたら、少しおちつきましょう。はなれてもまだ認知症の人のことが気になってしまうなら、まったく見えないところに行きましょう。冷静(れいせい)になれる言葉や歌を思い出したり、ちがう気分になれるものを見たりするのもよいかもしれません。
3,だれかに話す・相談する
だれかに話したってなにも変わらないと思うかもしれません。しかし、だれかに話すということは、つらいことからきょりをとり、悲しみをいやしてくれることができます。家族どうしでもいいですし、ケアマネさんなどのかいごのせんもんの人、だれでもいいでしょう。話す人が見つからないなら、日記やノートに書くだけでもすっきりしますし、あとで相談するときの資料(しりょう)にもなります。
⑱ イライラしている認知症(にんちしょう)の人にはどういう風に話しますか?
認知症の人と話すとき、イライラをかるくする方法をわかりやすくせつめいしますね。
1,少し時間をおく
イライラしているときは、深呼吸(しんこきゅう)をして少し時間をおいてみましょう。認知症の人と真剣(しんけん)に話していると、さらにがんばろうとすることがありますが、まずははなれて冷静(れいせい)になることがだいじです。
2,話すのをほかの人にかわってもらう
話がうまくいかないと感じたら、ほかの人にかわってもらいましょう。かいごのしせつなどでは、かわってもらえる人がいるので、認知症の人にとってはいいところと言えるでしょう。
3,イライラをはき出す
イライラした気持ちをはき出すことはだいじです。認知症の人のお相手をしたことのある人に話を聞いてもらうといいですね。同じ気もちの人の集まりに出かけて、いいアドバイスをもらったり、「そうだよね」と言ってもらえることでイライラをコントロールできます。認知症の人をかいごすることはたいへんですが、認知症の人をわかってあげることで、いい関係をつくっていくことができます。
⑲夢か現実(げんじつ)かわからなくなるのは認知症ですか?
「夢か現実(げんじつ)かわからなくなる」ことは、認知症と関係(かんけい)している時とそうでない時があります。
だれもいないはずなのに「人がいて眠れない」と言う。いきなり興奮(こうふん)しておこりだす。夜に起きて昼に寝るような朝と夜が反対の生活が続くなど、家族やまわりの人にこのようなことがおこると、困ってしまう人もいるのではないでしょうか。
このようなことは認知症のせいじゃないかとまちがえられることもありますが、実は認知症とはまったく別の「せん妄(もう)」という病気になっていることもあります。せん妄(もう)は軽い意識障害(いしきしょうがい)で、薬や病気などによる体への悪い効果(こうか)のせいでおこる病気です。特におとしよりに多く見られます。
せん妄(もう)になったときは個人差(こじんさ)があり、いろいろなことがおこります。せん妄(もう)ではなく、認知症やうつ病といった病気とまちがわれることもあります。認知症とせん妄(もう)は別の病気ではありますが、認知症の人がせん妄(もう)に同時にかかることは少なくありません。せん妄(もう)じゃないかと思う人がいたら、せんもんのお医者さんに行くことがだいじです。
⑳自分がわからなくなってしまう人はいますか?
認知症という病気で、いろいろなものをわすれ、わかりにくくはなりますが、自分をわすれたり、自分がわからなくなることはありません。でも、そういう不安を認知症の人がもつことはあります。
その代表というか、そのことを世界で最初に発表したのが、オーストラリアの、クリスティーン・ブライデンさんです。その人が書いた本は『私はだれになっていくの?アルツハイマー病者から見た世界』という名前で、世界でも日本でもたくさん読まれました。4年生のみなさんには少しむずしいかと思いますが、きょうみのある人は読んでみてください。
日本でも認知症の人たちが、いろいろなところで自分の思いを発表しています。京都府では「京都府認知症応援大使(きょうとふにんちしょうおうえんたいし)」さんがお話しされる企画(きかく)をされています。
㉑認知症の人にどうやって自分のことをおぼえておいてもらうのですか?
言葉だけで伝えることがむずかしくなった認知症の人に、自分のことやその気持ちを伝える方法の1つに、「ユマニチュード」というものがあるとお話を少ししました。ユマニチュードは、認知症になっても『(1人の人として)あなたのことを私はだいじに思っています』というメッセージを、私たちからわかってもらうようにすることです。ユマニチュードで大事なことは、「見る」「話す」「ふれる」「立つ」の4つです。一つ一つみていきましょう。
1,「見る」:
「見下ろす」でも「横から」「後ろから」でもなく、その人と「目が合うようにする」をきほんとしています。たとえば、正面(しょうめん)から同じ高さで見る、後ろから声をかけない、後ろにいるときは前に回ってから、ゆっくりと正面から近づく、というようにして、認知症の人と目を合わせることがきほんになります。
2,「話す」:
まずはゆっくりとやさしく話しかけることをきほんとしています。その上で、返事がないときには、今していることの説明をします。たとえば、手にさわるとき、「これから手をさわりますね」とまず伝え、「左手をさわります」といったように、ゆっくりと言葉をつなげていきます。
3,「ふれる」:
「広い部分(ゆびではなく手のひらや手全体で)でゆっくりとやさしくふれて、手をつかまないで下からささえる」というふれ方がよいとされています。いきなりつかまれたと感じたり、連れていかれるようなこわさを感じたりさせないようにするのです。
4,「立つ」:
人はねたきりの時よりも、すわったり、立ったりしている時の方が多くのものが見え「自分がこの場所にいる」という気持ちを持つことができ、気分もすっきりするとも考えられています。赤ちゃんと同じように、ねたきりの方をおどろかさない、こわさや不安をもたれないようにすることが大切なのです。
㉒ なんで脳(のう)の病気のことが「認知症(にんちしょう)」という名前になったのですか?
昭和の時代には、認知症は「痴呆(ちほう)」というよび方をされていましたが、平成16年に国でよび方を見直そうという事になりました。字の意味は、「おろか」とか「ぼんやり」といった、よくない意味の漢字を使っていたり、よくないイメージが大きくなっていました。
なので、よび方をかえよう!ということになって、でてきたのが『認知障害(にんちしょうがい)・認知症・記憶障害(きおくしょうがい)・アルツハイマー症・もの忘れ症・記憶症(きおくしょう)』の6つでした。その中で、認知症というよび方に決まりました。
認知症によって「おぼえにくくなる」「方向や場所がわかりにくくなる」「理解(りかい)・はんだんがむずかしくなる」などがあります。これらは目の前のモノやコトを「認知(にんち)」することと関係しており、「認知症」というよび方につながっています。
㉓ 認知症は、だいたいはおとしよりですか?
「若年性認知症(じゃくねんせいにんちしょう)」という言葉があります。
認知症は、おとしよりに多い病気ですが、わかい人も少しだけみられます。
65才より下のねんれいで病気になった時に「若年性認知症(じゃくねんせいにんちしょう)」といわれます。日本の若年性認知症(じゃくねんせいにんちしょう)の人のわりあいは18~64才の約2000人に1人ぐらいといわれています。若年性認知症(じゃくねんせいにんちしょう)は、仕事をしているねんれい(18~64才。その中でも40才~が多くなってきます)でかかるため、ご本人だけでなく、家族がこまることが多くなります。
病気のために仕事がうまくできなくなったり、仕事をやめることになってお金のことでも大変なことになってしまいます。また、小さな子どもがいるときは、その子どもの人生もたいへんになることがあります。このように若年性認知症(じゃくねんせいにんちしょう)は、社会全体にもかかわる大きな問題ですが、かいしゃやびょういん・しせつでもまだうまくりかいできていないのです。
では、若年性認知症(じゃくねんせいにんちしょう)の原いんとなる病気は?
認知症というのは、一つの病名ではありません。認知症のほとんどは脳(のう)の病気でありひどくなっていきます。 国がしらべたところでは、アルツハイマー型認知症が一番多くなっています。
⑪のお手紙もチェックしてみてね!
㉔認知症に関する薬はありますか?
認知症のお薬はあります。しかし今この国でつかっているお薬は、認知症が悪くなるのをおそくすることはできますが、なおすことはできません。また、おぼえていられないこと・不安になったりこうふんしたりすることなどを、いっぺんによくすることもできません。でも、脳(のう)で生きのこっている神経細胞(しんけいさいぼう)を元気にし、おぼえたり考えたりするのを少したすけることができるかもしれません。また、毎日の生活に元気が出たり、イライラや不安を少なくすることによって、生活をよりよくすることもできます。
今あるお薬は4つです。
アルツハイマー病やレヴィー小体型(しょうたいがた)認知症の人の脳(のう)では、脳の中で情報(じょうほう)をおくるために必要な、神経伝達物質(しんけいでんたつぶっしつ)が少なくなったりして、脳(のう)が上手に動かなくなってしまいます。だから、脳(のう)の中でその物質(ぶっしつ)が少なくならないようにする薬です。
1)アリセプト®
平成11年にでき、一番昔から使われています。水がなくても口の中でとけるタイプや、細かくとけやすいつぶや、あまさがあるタイプや、ゼリーのようなものもあり、ご本人が薬を飲むのをいやがる場合でもうまく飲んでもらえることあります。
2)レミニール®
平成23年にできました。よくある5mmほどのつぶのほか、口の中でとろけるタイプ、液体のものがあります。
3)イクセロンパッチ®・リバスタッチ®
この2つは会社がちがうだけで同じ薬です。他の薬とちがって、はり薬であることが特ちょうです。薬を飲むことをいやがる方でも、はり薬だとうまくいく場合があります。お肌がかぶれる人は、毎日はる場所を変えたりします。
4)メマリー®
平成23年にできました。
メマリーのよいところは、ご本人のイライラした気持ちを少なくし、おだやかにしてくれる働きがあることです。ご本人の気持ちが安定すると、介護(かいご)する方にも気持ちが楽になり、言葉のやりとりがうまくいき、認知機能(にんちきのう)がよくなることもあるからです。
認知症は、なおすことよりもつき合うことが大切な病気です。お薬はあくまで少し手伝うくらいと考えておいて、生活する場所やモノ、コミュニケーションをちょうせいすることが大事です。
ご本人がこまっていることを一つ一つあげていって、何をどうしたらサポートできるかをいっしょに考えましょう。ご本人が大変に感じていることや不安を少なくすることで、元気になったりコミュニケーションがよくなったりすることも多いのです。失敗はできるだけ言わず、さりげなくサポートしましょう。ご本人のプライドやこだわりを大事にして、笑顔でせっするだけでしょうじょうは良くなります。