こんにちは。石塚伸一です。私は20年余の間、龍谷大学を中心に刑事司法の研究、教育などに携わってきました。現在は、市民の、市民による、市民のための刑事政策の実現を目指し、一般社団法人刑事司法未来を立ち上げ、日本の刑事司法の未来を考える場をつくっています。
その中で、私自身もこれまでの研究や現在の活動に大きな影響を受けた永山則夫(ながやま のりお)さんについて、彼が残した遺品を保存・整理し、データ化や公開をしていく「永山則夫アーカイブ」を立ち上げたいと考えてました。「永山判決」でも知られるとおり、永山が残した遺品が伝えることは、これからの刑事政策に向けて、特に死刑制度を考えていくうえで重要な資料であると思います。
これまでは、永山さんの最後の面会者であった市原みちえさんが個人で永山さんの遺品を保管し、展示会や関連するトークイベントなどを開催してきました。しかし、その膨大な遺品や資料を個人で保存・活用していくのには限界もあり、次の世代へと引き継いでいく必要性も感じています。「永山則夫アーカイブ研究会」を立ち上げ、永山さんが残した膨大な遺品をデータ化し、そしてWebサイトなどを通じて広く公開することで、法学のみならず、文学や社会学などさまざまな分野から研究いただける資料にもなりうると考えます。
みなさんは、永山則夫(ながやまのりお)という人を知っていますか?
永山は日本の戦後社会に大きな衝撃を与えた人物です。彼は当時19歳の若さで「連続ピストル射殺事件」を起こし、収監後の数々の文筆活動によって有名となった獄中作家としても知られます。戦後の急速な経済発展の裏側にあった貧困や教育格差といった社会構造の問題を映す存在でもありました。
幼少期の永山
極度の貧困家庭に生まれ育ち、中学卒業後は青森から集団就職で上京しました。その後、職を転々とする中で米軍基地から盗んだ拳銃と実弾を使って犯行に及びました。学歴は明治大学付属中野高校の定時制を中退、当時の職業は飲食店のボーイでした。
逮捕当時の永山
1968年10月から11月にかけての27日間で、東京・京都・北海道・愛知において4人を拳銃で射殺しました。この事件は「連続ピストル射殺事件」と呼ばれ、警察庁の広域重要指定事件となりました。永山は1969年4月、明治神宮で逮捕されます。
1969年に起訴され、1979年に一審で死刑判決。1981年に高裁で無期懲役となりましたが、検察が上告。1983年、最高裁が高裁判決を破棄し審理を差し戻します。1987年の再審理で再び死刑判決、1990年に最高裁で確定しました。
永山則夫の裁判は、日本の死刑制度における量刑判断の基準を形成しました。1983年、最高裁は「死刑か無期懲役か」を判断するにあたり、「動機、犯行の残虐性、被害者数、遺族感情、社会的影響、年齢、前科、事件後の態度」などを総合的に考慮すべきとしました。これが現在にも残る「永山基準」と呼ばれています。
約30年間の拘置所生活で執筆活動を始め、詩集『無知の涙』(1971年)を出版。さらに小説『木橋』(1984年)で新日本文学賞を受賞し、作家としても注目されました。獄中で結婚し、被害者遺族への謝罪も行っています。また、日本文藝家協会への入会を申請しましたが拒否され、それに抗議して筒井康隆や柄谷行人らが脱会する出来事もありました。
24歳ごろの永山
1997年7月に執行命令が出され、8月1日、東京拘置所で刑が執行されました。永山は死刑確定前、弁護士に「死刑執行の時は徹底的に抵抗するかもしれない」と語っていました。しかし、永山は面会者に、小説の出版や印税の送り先などこれからの計画を語り、弁護士宛には身柄引受人のことと再審請求の相談を書いて、生きる意志を伝えていました。死刑執行4日前と17日前のことです。遺体は家族に渡されず、翌日火葬されました。
永山さんの遺品は膨大です。訴訟記録、獄中ノート、小説原稿、書簡など、法学、文学、歴史学、政治学などの学術研究対象になるべきものもあります。そしてなにより、日本の戦後を極貧の中で育ち、身を立てようと都会へ出てきて、苦悶・苦闘の中で青年期を過ごし、少年のときの犯罪で死刑が言い渡され、それでもなお、懸命に生きた一人の人間の生きた証(あかし)を残し、次の世代に手渡す責任が、同時代としての戦後を生きた人たちにはあります。
この度、永山の遺品をアーカイブとして残すため、有志が集まりました。アーカイブ化、ホームページの作成、遺品の展示会、研究会の開催などの活動にはそれを支える資金が必要です。みなさま、ご支援・ご協力をお願いします。
2025年10月4日から12月22日にかけて、資金集めのためのクラウドファンディングを実施しました。みなさまのご支援のおかげで、目標金額250万円を達成することができました。
https://camp-fire.jp/projects/878646/view#menu
※クラファンは終了しています。