社会はたくさんの要素から構成され、
それらが互いに影響しあうことで、大小様々なうねり、すなわち社会現象が生まれます。
また、そのうねりによって、社会そのものが変化することもあります。
ところで、社会を構成する「たくさんの要素」は、みんな同じ性質をもっているのでしょうか?
もちろん、そうではありません。私たち一人ひとりの性質や行動は異なりますし、
インターネットにつながる機器も、今やコンピューターやスマートフォンだけではありません。
当研究室は、こうした「構成要素の多様性」が引き起こす現象に注目します。
「世界はおよそ均一な要素から構成されている」という見方から一歩踏み出し、
多様な要素が集団の中でどのように分布し、振る舞っているのか、
また、それぞれの違いが社会全体のうねりにどのような影響を与えているのかを明らかにします。
人間社会は、ルールやモラルによって一人ひとりの行動を一定の範囲に収めることで、
集団の秩序を保ち、効率を高めてきました。
道路の車線や信号も、そうした決まりの一つです。
しかし、現実の社会には、性質の異なる人やモノが混じりあっています。
全員に同じ行動を求める決まりでは、それぞれの特性を十分に活かせないことがありますし、
そもそも、細かな決まりを設けることが難しい場面もあります。
多様性を活かしながら、画一的な決まりだけに頼らず、全体の効率を高める。
そのための仕組みは、まだ十分に明らかになっていません。
ところが世界には、誰かが全体を指揮することなく、秩序を生み出している集団があります。
車線や信号による管理が十分でない新興国の道路、人混みを歩く人の流れ、干潟を移動するカニの群れ。
そこでは、個々が周囲の状況に応じて動く中で、自然に群れや棲み分けが生まれ、
それが全体の流れを良くしている場面があります。
当研究室は、こうした集団がうまく機能する仕組みを明らかにし、
私たちの社会に役立てることを目指します。
どのようなまとまりが、いつ・どこで全体の流れを良くするのか。
流れを良くするまとまりが形成されていないのはいつ・どこか。
それが分かれば、全員を同じ決まりで縛るのではなく、
必要なところにだけ働きかけることで、社会全体の流れを良くできるはずです。
私たちは、自分の周りで起こる社会のうねりを感じることができます。
例えば、渋滞の波に巻き込まれたり、プロジェクトの遅れに振り回されたりします。
しかし、そうした変化を事前に予測したり、
自分の周りでコントロールしたりすることは、容易ではありません。
一方、近年の科学技術の進歩によって、こうした変化を予測し、
望ましい方向に導く方法を提案できるシステムも登場しています。
中には、人間の認知や判断の能力を超えるものもあります。
しかし、機械が提案する方法は、私たちにとって理解しにくく、
時には受け入れがたいものかもしれません。
そんなとき、私たちが機械の意図を理解し、納得したうえで協働できればどうでしょうか。
機械に頼りきるのでもなく、人間の能力だけに頼るのでもなく、
私たち自身の判断によって、人間だけでは実現できない社会を
主体的に作り出せるのではないでしょうか。
当研究室は、人間と機械の適切なコミュニケーションを通じた協働を軸に、
人間だけでは成し遂げられない、社会のうねりの制御を目指します。