訪問診療の対象となられる方

訪問診療の対象者は「一人では通院が困難な方」です。 例えば、歩ことはできるけれど自分では受診できない認知症の方なども対象になります。また家族やヘルパーさんが付き添って通院している方も対象です。 他に脳卒中等で麻痺などの後遺症があって通院困難な方、老衰や末期がんで自宅で養生されたい方、神経難病や脳性麻痺などで障害があり通院困難な方などです。

訪問診療を受けられている方の特徴

厚労省のデータに基づき、全国での訪問診療を利用されている患者さんの特徴を疾患の種類と介護の面からみてみます。


疾患別

対象患者様の基礎疾患は様々であり複数疾患をお持ちの方も多くおられます。特に、高血圧をはじめとした循環器疾患、次に認知症、脳卒中などの脳血管疾患の方の割合が多く占める傾向にあります。又、全体の約1割弱にパーキンソン病などの神経難病の方が占めています。

要介護度別

対象患者様の8割以上は要介護状態にあります。要介護2~5の方が各々2割程ずつ占めています。

*よくある勘違い

寝たきりの方や自宅での看取りを希望される介護度が高い方だけが訪問診療の対象者ではありません。介護度がない方,要支援の方も全体の2割程を占めており対象条件に介護度は全く関係ありません。例えば、大きな病気はなくても膝や腰が悪くて通院が困難な方,体は丈夫だけど認知症があって一人で通院が難しいあるいはご家族のつきそいが難しくなった、こういった方も訪問診療の対象となります。


院で可能な処置、検査

点滴管理(高カロリー輸液管理含)/経管栄養管理(胃管,胃瘻,腸瘻,食道瘻) /尿道カテーテル管理/ 緩和ケア/人工呼吸器管理//胸腔・腹腔穿刺(腹水・胸水管理含)/気管支鏡処置/関節穿刺/創傷処置・褥瘡処置(外科的処置含)/中心静脈カテーテル挿入(大腿部アプローチのみ)/各種カテーテル交換処置(胃管チューブ・胃瘻チューブ・気管切開カニューレ・腎瘻カテーテル・膀胱カテーテル・尿道カテーテル等)/ブロック注射(トリガーポイント注射等)/痔核処置/皮膚生検含む小手術 など

~酸素療法について~

必要に応じて当院から酸素を手配します。通常手配してから2~3時間以内にご自宅に酸素が届き、酸素機器の操作など丁寧な説明を酸素会社の方がしてくれます。


~輸血療法について~

現在は行っておりませんが体制が整い次第行っていく予定です。

専門的な治療が必要となった場合

診療の過程で専門的な治療が必要となる場合もあります。

その場合はご本人、ご家族と相談の上、ご要望に応じて他の医療機関をご紹介いたします。

訪問看護ステーションとの連携

当院では訪問診療を行うにあたり24時間体制の訪問看護ステーションと連携させていただいております。

在宅医療の成功は様々な職種との連携にあります。その中でも訪問看護師は、患者様の健康状態の観察や医療的ケア等を行う面で重要な役割を担っています。病院に看護師と医師がいるのと同じようにご自宅を病院として置き換えるとわかりやすいかもしれません。訪問診療は通常2~3週間に1回の診察です。その間看護師が訪問することで患者様の病状変化等を医師に報告し問題があれば迅速に対応することも可能になります。又、訪問診療の主治医が作成する指示書に基づき点滴や内服管理、褥瘡などの様々な処置、また個々の患者様に応じた医療面、生活面でのサポートやアドバイス、在宅療養全般に関してのご家族へのサポートを行っています。

患者様は看護師さんに対し身近に感じられることも多く医師には言えないことも相談されることも多々あり精神面でのサポートにおいても重要な役割があります

急変時の対応

当院は電話対応及び往診を24時間体制で行っております。

在宅患者様の場合の対応のながれ

①当院は訪問看護ステーションと連携しておりますので、まず担当の訪問看護師へ状況を伝えていただきます

②訪問看護師の判断で必要時は訪問看護師が訪問し医師に状況を伝えます

 *命にかかわる緊急時の場合は救急車を要請していただく場合があります

③医師の判断で往診に伺います

 *到着まで時間を要することがあります

処方について

当院は『院外処方』となっております。

ご希望の薬局がございましたらお知らせください。

訪問薬局(別途料金がかかります)をご希望の場合はご相談ください。

訪問薬局の利点

①訪問薬剤師がお薬をご自宅に届けてくれます。

②お薬についての詳しい説明をしてくれます。

③お薬の服薬状況など薬の管理を行います。

④薬の副作用等による体調変化や生活状況などを確認し、患者様に応じて薬の変更や用法用量などの変更の提案を医師に伝えます。

⑤往診などで臨時処方する場合は時間外でも対応してくれます。


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(注)「北海道薬剤師公式サイト」は当院とは無関係であり内容等については責任を負いかねますのでご了承ください。

訪問診療のメリットとデメリット

訪問診療のメリット


生活の質が向上する

67歳以上の方を対象にした厚生労働省の意識調査では「人生の最期を迎えたい場所」に約8割の方が「自宅」と希望されており、理由としては「自分らしくいられる」「住み慣れた落ち着ける場所」と回答されています。その一方で、約8割の方が病院で亡くなられているのも現状です。経験上、終末期の方が病院から退院し訪問診療を受けながら自宅療養されると不思議と元気になられる方がおられます。入院中の様々なストレス等の精神的負担が軽減され自分のペースで自分らしく生活が送れるようになるからだと考えます。

包括的なサービスを受けられる

訪問診療に加え、訪問看護師、訪問薬剤師、訪問理学療法士、訪問栄養管理士などその患者様にあったサービスの提供が可能になり、ご自宅で病院と同等な健康管理ができます。また、医療サービスは医療保険や介護保険を使うことができます。

通院付き添いの負担が軽減できる

通院に付き添われるご家族は、まず受診日にあわせてご自分のスケジュールを調整し、通院に要する時間や病院での待ち時間の時間的負担、患者様の体が不自由な場合は通院介助などの肉体的負担を負うことになります。又、患者様が通院拒否をされることもあり頭を抱えられる方もおられます。こういった通院に対しての負担や不安を軽減することができます。



訪問診療のデメリット


診療に関して

高度な検査(特に画像検査)はできません。専門的な検査や治療に関しては病院より劣ります。

ご家族の介護に関して

外部サービス(訪問診療・訪問看護・訪問介護・ショートステイなど)を利用されても、自宅での療養をサポートするご家族の負担はやはり増えます。負担の度合いによりますが、いくら患者様が自宅での療養を望まれたとしてもご家族の生活環境が崩れるようなことになるならば在宅医療は難しくなります。

訪問診療の料金に関して

入院するより金銭面での負担は軽減しますが、1割の方で毎月約7000円程度の料金がかかり、それに検査や薬代などが上乗せされます。

『訪問診療』と『往診』~言葉の意味の違い~

『訪問診療』と『往診』を同じ意味で使われている方がおられますが、この2つは意味が全く異なります。

『訪問診療』は診療計画を立てて前もって定めた日に定期的に訪問し診療を行う定期訪問のことをいいます。それに対し『往診』は急病や緊急時(お看取りも含む)等で臨時(不定期)に訪問し診療を行うことをいい訪問回数に制限はありません。

*当院では、通常訪問診療は月2回の頻度で訪問しており、次月の訪問日の予定を当月に案内しております。又、往診は24時間体制で行っております。

ご家族も可能な医療補助行為

医療行為は、医師でなければしてはならないと医師法で定められており、看護師は医師の指示があった場合に診療の補助とし一部の医療行為が認められています。よって本来医師や看護師以外の方が医療行為を行うことはできません。

しかし在宅医療の現場では医師や看護師の指導のもとであればご家族が行うことができる医療補助行為があります。

ご家族も可能な医療補助行為

医師や看護師の指導、指示がある場合に限り行うことができます。


体の管理に関すること

 体温測定(腋下及び外耳道での測定)/血圧測定(自動血圧測定器での測定)/動脈血酸素飽和度の測定(パルスオキシメーターの装着)

 薬に関すること

・軟膏塗布/湿布貼付/目薬点眼/一包化された内服薬の内服/舌下錠の使用/坐薬挿入/鼻腔への薬剤噴霧

 ケアに関すること

・爪切り/爪のヤスリがけ/口腔内ケア/耳垢除去/ストマ(人工肛門等の装具)内の排泄処理、パウチの貼り換え

処置に関すること

・軽微な切り傷や軽いやけどなどの処置(ガーゼの交換を含む)/自己導尿補助/市販の浣腸薬での浣腸

*寝たきりの方や障害者の方等に対して行う痰の吸引は医療行為にあたりますが、一定の条件下であれば例外的に認められています。他に、経管栄養の栄養剤の交換や糖尿病等の方に対して打つインスリン注射などがあります。

これらはあくまでもご家族が可能である行為であって、出来ない、難しいと思われる場合には訪問看護師や当院看護師に任せることができます。

ご自宅でのお看取りについて

『自宅での看取り』はご本人のその意思がまず尊重されます。ご本人にその判断能力がない場合にはご家族の意向となります。『ご自宅での看取り』を決める時は、老衰状態や病状が悪化傾向の末期癌などの終末期で余命が短いことが予測される時が多かと思います。ここでは自宅でのお看取りを行うにあたっての条件をあげてみます。

①患者様とご家族が自宅で最期を迎えたいという意思がはっきりしていること

②介護サービスの利用を含めてご家族に介護力があること

③在宅医療のチーム(訪問診療や訪問看護など)の体制が整っていて24時間体制であること

少なくても最初は『自宅での看取り』の意思があってもご家族の介護疲れなどで途中で『最期は病院で』といったケースもあります。患者様にいくら『最期は自宅』という希望があってもそれをサポートするご家族の負担や不安が大きければ『自宅での看取り』を実現させることは難しくなります。そういう場合は決して抱え込まれず早めに医療スタッフやケアマネジャ―等に相談していただくことが肝要です。

『訪問診療』は各医療機関で特徴が異なる点がある

訪問回数

一般的に在宅支援診療所(病院)が行っている訪問診療の回数は月に1~2回の設定です。他の医療機関ではより複数回のところもありますが、当院では原則月に2回の設定をしております。もちろん病状によっては頻回訪問になることがあります。患者様やご家族のご要望で毎週になることもあります。規定上、週3回までの訪問が認められていますが、癌や悪性疾患の終末期の状態下では訪問回数に制限はありません。病状、患者様のご要望に応じて訪問頻度の変更は可能です。


急病や急変時の対応

医療機関によって体制が異なります。24時間体制の電話対応や往診を行っているかで違いがあります。当院では24時間体制で電話対応及び往診を行っております。


訪問場所

訪問診療が可能な場所は、ご自宅の他、老人ホームなどの各施設(規定上一部できない場所もあります)です.対象者がご自宅の方が多い医療機関、施設対象者が多い機関、どちらも同じくらいの医療機関とあります。当院はご自宅の方が大半を占めております。

訪問診療のすすめ方には3パターンある 

訪問診療を始めると他の病院にはかかれないと思われている方がおられますが決してそういうことではありません訪問診療を受けられている方の診療のすすめかたには大きく分けると3パターンあります。

1.専門的な治療が必要となっても他の病院には受診せず訪問診療だけを利用される方.

2.訪問診療を利用中に専門的な治療が必要となった場合は他の医療機関にその都度受診される方.

3.神経難病や悪性疾患などの方で通院を続けながら訪問診療を利用される方. (ただし、通院されている主治医の許可が必要です).

3の場合、訪問診療でも病状経過をみていくことによって今よりも通院間隔を減らせることが多くあります。当院では定期通院時や病状変化等で受診や入院が必要となった場合には病院主治医へ病状経過の情報提供を行っております。