いろいろ考えていることを書きます。
このウェブサイトについて
岡崎の研究所にいた頃は研究室のウェブサイトを運営していたのですが、慶應大に移るとそれもできなくなったので急遽作ったサイトです。毎日SNSを更新するような性格でもないので、まとめて書けるウェブサイト形式が性に合っていると思って作っています。
2025年6月
文科省の政策について
「基盤研究(C)」及び「若手研究」における独立基盤形成支援(試行) っていうのが今年からできました。
若手支援のための良い政策だと思います(方向性という意味では)。
私も今年度、独立できたので申し込もうとしたんですが、制限にひっかかったんです。
『令和7(2025)年度事業として交付内定を受けた「基盤研究(C)」又は「若手研究」(課題番号が25Kで始まるもの)の研究代表者のうち、大学又は大学共同利用機関法人に所属(注)し、新たに准教授以上の職位に就いて2年以内かつ令和7(2025)年4月1日現在で博士の学位取得後15年以下の者(産前・産後の休暇、育児休業の期間を除く)であって、所属する研究機関において研究室を主宰していることを支援対象者の要件としています。 』
私は学位取得が遅かったので、ギリギリ15年経っていません(フッフッフッ)
しかし、『新たに准教授以上の職位に就いて2年以内』というところが問題です。
この制度は”准教授になったけど研究室を主宰できていない人”を想定していないんですね。
前任校で准教授でなく専任講師の職についていれば申し込めたと思います
それから、研究室を主宰するというのも、結構曖昧です。
書類上は独立だけど実際は独立していないとか、書類上は同じ研究室だけど実際は全く違う(何なら建物も違う)とか普通にありますからね。
そういった事例を把握できていないのだと思います。
おそらく、文科省が規制する>実態にあっていないので大学側がやりくりする>文科省が規制する>実態にあっていないので...というサイクルの結果だと思います。研究は会議室ではなく、研究室で行われているということでした。
2025年6月
石川県立大学
しばらく更新しない間にいろいろとありまして、
4月1日付で石川県立大学に着任しました。
これで Principal Investigator + Permanent + PhD supervisor となりました。
ひきつづきよろしくお願いします。
昨年、石川県は大規模災害に相次いで見舞われました。
構造生物学が災害復興に貢献できることは少ないですが、
私の教育・研究が石川県の人材育成の一助になればと思います。
ひとまずは元気に過ごしております。
2024年9月
学術調査官
8月1日付で学術調査官になりました。
政府の特別公務員で"調査官"というとスパイ映画に出てきそうでカッコいいのですが、派手な仕事ではありません。
(スパイの仕事も実際は派手ではないのだろうけど...)
学術変革領域のような科研費制度の運営を研究者の目線でサポートしつつ、文科省の立場から研究者のサポートをするという仕事もあります。調査官という名前ですが、何かを調査するというよりも橋渡しとしての役割です。
まだ始まったばかりでわからないことが多いのですが、がんばります。
2024年6月
学会運営
生体分子科学討論会と生命金属科学シンポジウムは盛会となりました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
結構雨が降っていたので、駅近で開催できて良かったです。
学会運営で責任のある立場になったのは初めてでしたが、無事に終わってよかったです。
2024年5月
LINE
スマートフォンを数年ぶりに機種変更した。前回の機種変更のときにLINEの引き継ぎを失敗した記憶があり、公式サイトの手順に従って更新したのだが...トーク上の画像が消えていた。LINEのトークに投稿された写真は古くなると見られなくなるらしく、アルバムとして別に保存する必要があるらしい。
Linuxのアップグレードよりも、LINEの更新に手こずるとは...
2024年4月-2
Wikipediaの話
新年度がはじまって自己紹介をする場面が増えたのですが、そこで使ったネタの一つ。
「Wikipediaのヘモグロビンの項目には間違いがある」です。
正確にはヘモグロビンの項目にある「他の酸素結合タンパク質」という項目がいろいろとヒドい。ヴァナビンスはvanabinのことであるが、これは酸素結合能が低い。これを酸素結合タンパク質に分類すると他にも入れるべきタンパク質が出てくる。さらに、ピンナグロビンはその存在自体が怪しい(1970年代に報告されたが、その後否定されている。実際はマグネシウム結合タンパク質だったはず)。レグヘモグロビンはあるのに、ニューログロビンやサイトグロビンが載っていない。
以前、どうしてこのようなことが起きたかを調べたことがある。英語版のwikiをそのまま翻訳していて作られていて、英語版もおそらくは40年ぐらい前の古い文献から引用してきたと考えられる。英語版のwikiについては、その後大幅な加筆修正がされている。しかし、それも怪しくて、先述のVanabinsは残っているし、人工的に鉄ポルフィリンをコバルトポルフィリンに置換したCoboglobinが入っている。人工的に再構成したタンパク質まで含めたら、これもまた収拾がつかなくなる。
「そんなに文句を言うならお前が書け」と言われそうなので、以下に 酸素結合タンパク質 をまとめる。
グロビン型の酸素結合タンパク質
ヒトを含む動物が有するグロビン型の酸素結合タンパク質
ヘモグロビン
ミオグロビン
ニューログロビン
サイトグロビン(主として哺乳動物)
環形動物が有する巨大ヘモグロビン
エリスロクルオリン
クロロクルオリン
その他の巨大ヘモグロビン
より古いタイプのグロビン型の酸素結合タンパク質
レグヘモグロビン
短鎖ヘモグロビン
グロビン型ではない酸素結合蛋白質
ヘモシアニン
ヘムエリスリン
ここでは酸素の運搬と貯蔵に関わるタンパク質のみを挙げた。
その他に酸素センサータンパク質や、基質として酸素を利用(結合)する酵素も存在する。
また、ヘモグロビンの中には酸素結合とは異なる機能を有するタイプも報告されている。
2024年4月
新年度
月に1回ぐらいは更新するだろうと、己の力を過信していました。反省です。
”書き仕事”がたくさんあって、こちらにまで書き込む余裕がなかったのです。
ようやく片付いてきました。
先月、学生さんから誕生日プレゼントをいただきました。
このようなことは初めてなので感激しています。
今年度も慶應義塾で頑張ります。
2023年12月
1年をふりかえって
(実は1月になってだいぶ経つのですが、昨年のまとめです)
新しい職場にようやく慣れてきた1年でした。
CryoEMの画像解析について、「良いデータであれば、そこそこのマップを出せる」レベルになってきたように思います。半年以上かかりました。
結晶構造解析についても、数年を費やしたプロジェクトでようやく結晶が得られました。まだまだ課題がありますが、なるはやで仕上げたいところです。
一方で新しいプロジェクトは…課題が山積みです。
2023年は、初心者・学生向けに話をする機会がたくさんありました。
2024年は、さらに活動の場を広げたいと思います。
2023年11月-2
結晶化しやすいタンパク質とは?
めちゃめちゃ簡単に結晶化する試料から、何年かかっても難しい試料まで、いろいろと見てきました。
そこから掴んだ傾向として、
天然における発現量が多いタンパク質ほど結晶化しやすい
(あるいは、天然における濃度が高いタンパク質ほど結晶化しやすい)
ように思います。(注意:個人の感想です!)
一度、統計をとってみたいものです。
2023年11月
結晶化しなくても構造が解ける時代に...
大手結婚情報誌のCMに『結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私はあなたと結婚したいのです。』というフレーズが流れて話題になりました。
ちょうどクライオ電子顕微鏡が本邦でも広がりを見せてきた時期であり、「結晶化しなくても構造が解ける時代に」なってきた頃でした。
さらに数年が過ぎて、今ではAlphaFoldで十分だとおっしゃる方も少なからずいるとかいないとか...
それでも、結晶構造解析法による構造決定にはメリットも多く、特に金属タンパク質の詳細な構造を議論する上では欠かせません。
「結晶化しなくても構造が解けるこの時代に、私は結晶構造解析したいのです」