NOTE / 雑記帳

いろいろ考えていることを書きます。

このウェブサイトについて

岡崎の研究所にいた頃は研究室のウェブサイトを運営していたのですが、慶應大に移るとそれもできなくなったので急遽作ったサイトです。毎日SNSを更新するような性格でもないので、まとめて書けるウェブサイト形式が性に合っていると思って作っています。

2024年4月-2

Wikipediaの話


新年度がはじまって自己紹介をする場面が増えたのですが、そこで使ったネタの一つ。

「Wikipediaのヘモグロビンの項目には間違いがある」です。

正確にはヘモグロビンの項目にある「他の酸素結合タンパク質」という項目がいろいろとヒドい。ヴァナビンスはvanabinのことであるが、これは酸素結合能が低い。これを酸素結合タンパク質に分類すると他にも入れるべきタンパク質が出てくる。さらに、ピンナグロビンはその存在自体が怪しい(1970年代に報告されたが、その後否定されている。実際はマグネシウム結合タンパク質だったはず)。レグヘモグロビンはあるのに、ニューログロビンやサイトグロビンが載っていない。

以前、どうしてこのようなことが起きたかを調べたことがある。英語版のwikiをそのまま翻訳していて作られていて、英語版もおそらくは40年ぐらい前の古い文献から引用してきたと考えられる。英語版のwikiについては、その後大幅な加筆修正がされている。しかし、それも怪しくて、先述のVanabinsは残っているし、人工的に鉄ポルフィリンをコバルトポルフィリンに置換したCoboglobinが入っている。人工的に再構成したタンパク質まで含めたら、これもまた収拾がつかなくなる。

「そんなに文句を言うならお前が書け」と言われそうなので、以下に 酸素結合タンパク質 をまとめる。


グロビン型の酸素結合タンパク質

ヒトを含む動物が有するグロビン型の酸素結合タンパク質

  ヘモグロビン

  ミオグロビン

  ニューログロビン

  サイトグロビン(主として哺乳動物)

環形動物が有する巨大ヘモグロビン

エリスロクルオリン

クロロクルオリン

  その他の巨大ヘモグロビン

より古いタイプのグロビン型の酸素結合タンパク質 

  レグヘモグロビン

  短鎖ヘモグロビン

  

グロビン型ではない酸素結合蛋白質

  ヘモシアニン

  ヘムエリスリン


ここでは酸素の運搬と貯蔵に関わるタンパク質のみを挙げた。

その他に酸素センサータンパク質や、基質として酸素を利用(結合)する酵素も存在する。

また、ヘモグロビンの中には酸素結合とは異なる機能を有するタイプも報告されている。



2024年4月


新年度


月に1回ぐらいは更新するだろうと、己の力を過信していました。反省です。

”書き仕事”がたくさんあって、こちらにまで書き込む余裕がなかったのです。

ようやく片付いてきました。


先月、学生さんから誕生日プレゼントをいただきました。

このようなことは初めてなので感激しています。

今年度も慶應義塾で頑張ります。

2023年12月

1年をふりかえって


(実は1月になってだいぶ経つのですが、昨年のまとめです)

新しい職場にようやく慣れてきた1年でした。

CryoEMの画像解析について、「良いデータであれば、そこそこのマップを出せる」レベルになってきたように思います。半年以上かかりました。

結晶構造解析についても、数年を費やしたプロジェクトでようやく結晶が得られました。まだまだ課題がありますが、なるはやで仕上げたいところです。

一方で新しいプロジェクトは…課題が山積みです。


2023年は、初心者・学生向けに話をする機会がたくさんありました。
2024年は、さらに活動の場を広げたいと思います。

2023年11月-2

結晶化しやすいタンパク質とは?

めちゃめちゃ簡単に結晶化する試料から、何年かかっても難しい試料まで、いろいろと見てきました。
そこから掴んだ傾向として、

天然における発現量が多いタンパク質ほど結晶化しやすい

(あるいは、天然における濃度が高いタンパク質ほど結晶化しやすい)

ように思います。(注意:個人の感想です!)
一度、統計をとってみたいものです。

2023年11月

結晶化しなくても構造が解ける時代に...

大手結婚情報誌のCMに『結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私はあなたと結婚したいのです。』というフレーズが流れて話題になりました。
ちょうどクライオ電子顕微鏡が本邦でも広がりを見せてきた時期であり、「結晶化しなくても構造が解ける時代に」なってきた頃でした。
さらに数年が過ぎて、今ではAlphaFoldで十分だとおっしゃる方も少なからずいるとかいないとか...
それでも、結晶構造解析法による構造決定にはメリットも多く、特に金属タンパク質の詳細な構造を議論する上では欠かせません。

「結晶化しなくても構造が解けるこの時代に、私は結晶構造解析したいのです」