造り自体は先ほど目覚めた部屋と変わりはない。
こざっぱりとしていて、これといって目立つようなものはないが、広縁の向うには男女の姿がある。
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そこには塗りつぶされたような黒ではなく、星がまたたく夜空が広がっていた。ぱちぱちという小さな音が響いており、二人の男女が向かい合ってしゃがんでいるのが見える。
女性の手には火を点けたばかりの線香花火があり、儚げな光が浮かんでいる。
「ねえ、美穂。線香花火が燃える段階には起承転結があって、それぞれ違う名前がついているのは知っているかい?」
「はじめて聞いた。どんな名前なの?」
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そこで二人の姿は消え、代わりに、部屋の中心に何かが現れる。それは椅子に縛り付けられた人間だ。
その顔には口をこじあける器具が取り付けられており、本来あるべき舌を失った口内から血が溢れている。足元には大きなハサミのようなものと赤黒い塊が落ちていた。
血の気を失い、白目を剥いたその人間は、もう生きていないのだと分かる。
SANc1/1d3
すると、柊木がふらりとその死体へと近寄り、興奮した声を上げる。
「『舌切り』だ!」
「拷問だよ。こうやって器具で口を開けて固定して、この大きなハサミのみたいなもので引き裂いていくんだ」
柊木が語る通り、これは『舌切り』という拷問を受けた死体である。
彼はSANの減少値にもよるが、恐怖心よりも純粋な好奇心のほうが勝っている。今後、彼は拷問死体を見るたび興奮し、時には勝手な行動も取って探索者を振り回す。
<目星>で、死体にまぎれて紙を見つける。
日付が書かれていることから、日記を破り取ったものだと分かるだろう。
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×月×日
今日から私が女将になった。
お義父さんとお義母さんが残してくださった大切なお宿だから、瑞貴さんと一緒に頑張らなくちゃ。
みんなもついてきてくれるから、きっと大丈夫よね。
評判を落とすわけにはいかないから、ちょっと緊張はするけれど。
お宿やみんなを守るためにも、それから、来てくださるお客様達をめいっぱいもてなすためにも、精一杯頑張ろう。
私にはこのお宿と、みんなと、瑞貴さんだけだから。
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また、机の上に男女カップルの写真を見つける。どうやらこの温泉宿の前で撮られたもののようだ。
裏面を見れば名前が書かれている。カップルはそれぞれ『瑞貴』と『美穂』というらしい。
ここでもやはり広縁の向うに男女の姿を見る。どうやら先程の続きのようだ。
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女性の手の中で、火をつけられたばかりの線香花火が小さな火の玉を作っている。
それを見つめて語り掛ける男性の声はとても優しいものだ。
「今のが『牡丹』。火をつけたばかりで、火の玉になってる」
「ほんとだ。確かに牡丹の花みたい」
そう女性が感心した声を上げたあと、花火はぱちぱちと光を散らし始めた。
「これが『松葉』。沢山の火が散らばって、松葉みたいだろう?」
「いちばん激しい時だよね。すごく綺麗」
灯りに照らされたからか、女性の頬がほんのり色づく。
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そこで二人の姿は消えてしまうのと同時に、酷い悪臭に襲われる。目に入ったのは、血だまりの中に転がる一体の死体だ。
それは全身の皮や、両手足すべての爪が剥がされていた。
即死はしないような傷が全身にあり、非常に長い時間をかけて殺されたのだろうと察することができてしまう。
SANc1/1d3
これにも柊木は興奮を隠さず反応する。
「皮剥ぎだ! 見た通り、少しずつ皮を剥いでいく拷問方法だよ」
「これは拷問というより処刑のほうで有名かな?」
<目星>で、ここでも死体に紛れて紙を見つける。
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×月×日
最近、瑞貴さんの体調が悪いみたい。
ゆっくり休んでって言ったけれど、あのひとったら、無茶して出てきてしまうの。
お客様とお話ししたいからって。もう、しかたない人なんだから。
常連さんたちも瑞貴さんとお話しするのを楽しみにして来るみたいだから、笑顔でお迎えしたいって気持ちは分かるけれど、無理はしてほしくないのよね……。
でも、みんなと楽しそうにお話しする瑞貴さんを見ていると、なんだか私もうれしくなっちゃって。
瑞貴さん、早くよくなってね。
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ここでも広縁の向うに同じ光景がある。やはり先程の続きのようだ。
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女性の手にある線香花火は、激しく散っていた火の勢いが衰えてきていた。
「音が小さくなってきたね。火花が細くなって、垂れさがってきた。これが『柳』」
「もうすぐ終わっちゃう、って、子供のときは焦ったなあ」
「そう。どうやったら続くんだろうって考えたり」
「でもやっぱりすぐに消えちゃうんだよね」
彼女達の見つめる先で火の勢いはどんどん衰えていき、やがて、か弱い火の玉がぱらぱらと落ちていく。
「最後は……」
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そこでまた二人の姿は消え、部屋の様子が変わる。今までのような血だまりはないが、部屋の中央に見慣れないものがあった。
それは高さ2mほどあり、手足のない女性のような形をしている置物のようなものだ。近づくとむわりとした鉄臭さが漂う。
※アイアンメイデン(鉄の処女)という有名な拷問器具である。PLに画像を見せたり、説明をするなどしてもよい。
柊木はそれを見ると何の躊躇いもなく近づいていく。
「アイアンメイデンだ!」
「あ、扉壊れてるみたい! 開けてみようよ!」
探索者が止めたとしても柊木は勝手に開けてしまう。
すると、中からずるりと穴だらけの死体が崩れ落ちてくる。体中に穴が開いて、死体と共に大量の血も溢れ出してきた。
SANc1/1d2+1
※拷問死体によるSAN減少値は徐々に緩和されていくが、KPの裁量や難易度調整で変更していって構わない。
<目星>で、崩れ落ちてきた死体にまぎれて紙を見つける。
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×月×日
瑞貴さんが倒れた。
沢山の検査をして、分かってしまった。
お医者様に言われたの。
瑞貴さんは、もう、
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ここもやはり同じ和室である。
これまでと同じように、広縁の向うにはあの男女の姿が見える。
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女性の手にある花火は、弱々しい火の玉を散らしていた。
「最後は、『散り菊』」
「花弁が散っていくみたいだね」
「そう。僕はここが一番好きなんだ」
「私も」
「子供の頃は寂しく思ったけど、今こうして見ると、この儚さが美しいんだなあって」
「散り菊っていい名前だよね。私、菊の花がいちばん好きなの」
「知っているよ。とくに、赤い菊だよね」
「そう。凛としていて、情熱的で、それでもどこか儚くて」
そうして、線香花火は静かに燃え尽きた。
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そこでまた男女の姿が消え、かわりに部屋の中心にある椅子に男が腰かけていた。
いいや、腰かけているのではない。その足元には血だまりができていて、苦悶の表情を浮かべながら絶命している。
その椅子には無数の棘があり、男の全身を深く刺していた。
SANc1/1d2+1
「拷問椅子だ!」
「見た目ほどは痛くないらしいから、本格的な拷問に入るための前座みたいなものだね」
<目星>で、椅子の隙間に紙が挟まっているのを見つける。
これも日記のようだが、ここから日付がなくなっている。
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瑞貴さんを死なせたくない。
たくさんたくさんたくさん調べた。
それでも何も分からなくて。
いっそ自分も死んでしまおうかと思ったら、不思議な人が私に色々教えてくれた。
この瓶に瑞貴さんの魂をいれれば、ずっと一緒にいられるみたい。
うれしい。
瑞貴さん、約束はちゃんと守ってね。私も守るから。
ずっとずっと一緒にいようね。
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庭の外や空は黒く塗りつぶされているが、不思議と暗闇にはならず、庭の様子を眺めることができた。
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そこには燃え尽きた線香花火を眺める男女の姿があった。
「線香花火はね、人生にも喩えられるんだ」
男性は燃え尽きた線香花火を受け取って、傍にあったバケツに入れる。
「ねえ、美穂」
そう言って、男性はどこか寂しげに微笑む。
「もしも、僕が死んでしまうとしたら、君はどうする?」
「……そんなこと、冗談でも言わないでよ」
「もしもの話だよ。深い意味はないんだ」
「あなたがいなくなるなんて考えたくないの」
「君を一人にするのは、僕もつらいな」
「そうよ。ずっと一緒にいるって約束して」
「そうだね。約束するよ」
「絶対だからね」
「もちろん」
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そこで二人の姿は掻き消える。
その途端、探索者達はこれまでとは比べ物にならないほどの酷い異臭に襲われる。その悪臭にはわずかな甘い香りも混ざっており、それがいっそう吐き気を催す。
庭の中央には黒く蠢くなにかがある。探索者達が動きだすと、羽音と共に一斉にその黒い物が散らばっていった。黒い塊だと思っていたものは、無数の蝿だったのだ。
そこには木製の箱のようなものが置かれており、人間の頭と手足のようなものが生えていた。
また、箱には同じサイズの蓋らしきものが立てかけられている。
近づいてみるといっそうの悪臭と共に、その箱の中身が見えてしまう。
その死体は汚物にまみれた液体の中に横たわっており、何種類もの虫よって食い荒らされていた。
もはや、本当に人間だったのかも疑わしいほどだ。
その強烈な悪臭も相まって、これまで見て来たどの死体よりもはるかに凄惨なものだった。
これまで数々の死体を見て来たとしても、これはあまりにも度を越していた。
SANc1d3/1d6
さらに<CON×5>に失敗するとSANcの成功失敗や発狂の有無に関わらず、あまりの悪臭や不快感に耐え切れず嘔吐する。
箱の傍には何故か壺が二つ置かれた小さな台があり、文字の書かれた板がついている。
今回はさすがの柊木も興奮より不快感が増しているようだ。
「スカフィズムだ……これ……」
しかし彼は空気を読めない男なので、発言が可能な状態であればこの凄惨な拷問について語り始める。
スカフィズムとは、古代に行われていたとされる、最も残虐な拷問方法だ。
まず、犠牲者は木製のカヌーなどの箱に入れられ、そこにくり抜かれた穴から頭と手足だけを出す状態にされる。
そしてしっかりと蓋をされ、炎天下や淀んだ池などに放置される。
その状態の犠牲者に、拷問官が蜂蜜やミルクを大量に与える。それにより犠牲者は下痢を起こし、箱の中は汚物にまみれていく。
やがて臭いに引き寄せられた虫がたかり、晒された頭や手足、汚物に浸かる胴体には無数の虫が湧き、犠牲者の身体を蝕んでいく。
しかし犠牲者には毎日ミルクや蜂蜜が与えられるため、すぐには死ぬことができない。
自らの身体が虫に喰われていくのを感じながら、ゆっくりと地獄を味わい、死んでいくことになる。
*板に書かれた文字
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『月棲獣』
ドリームランドに棲む彼らは、拷問を好む非常に残酷な種族である。
彼らはニャルラトホテプに仕えており、他の種族を奴隷にしている。
彼らに捕らえられたら最後、あらゆる残酷な拷問にかけられる。
拷問椅子、鉄の処女、皮剥ぎ、舌切り、ノコギリ挽き、鍋責め、スカフィズム……その種類は恐らく人間の知りうるもよりもずっと多いだろう。
ほとんどの場合は即死はできず、時間をかけて苦しめられたあとにゆっくりと命を失っていく。
あるいは、彼らは犠牲者を巨大な槍で刺し殺したり、異様な力で肉体を破壊して殺すこともある。
彼らは犠牲者を苦しめ弄ぶことを好んでおり、恐れおののき悶え苦しむ姿を見られるのであれば何をしてもおかしくはない。
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庭に対しての<目星>で日記の続きとなる紙が落ちているのを見つける。
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どうして。
瑞貴さんの魂はここにあるのに、どうして。
こんなの聞いてない。
瑞貴さんの命はちゃんとここにあるのに。
どうして冷たいの。
どうして目を覚ましてくれないの。
どうして。
どうしてどうしてどうしてどうして
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中に入ると、そこはなぜか、一面にたくさんの菊が咲いた空間だった。
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色とりどりの菊が咲き乱れるその中には、蹲る一人の女性の姿がある。
彼女の前には棺が横たわっており、その背は小さく震えていた。
「約束、したよね」
「ずっと一緒だよ、って……」
「約束、守ってよ……」
震えた声を攫うように、強い風が吹き抜けた。
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その途端、景色は急変し、あなた達が食事をとったのと同じ見た目の宴会場が広がっている。
そこには机や座椅子はなく、かわりに横たわる人間……いや、死体があった。その腹には何故か鍋が被せられている。
誰も鍋を取らなければ柊木が勝手に取る。すると酷い腐敗臭がするのと同時に、数匹のネズミが中から飛び出してくる。
そしてその死体の腹は、ネズミによって食い荒らされ、骨と内臓がむき出しになっていた。
SANc0/1d2
「鍋責めだ……」
「お腹にネズミを置いて鍋を被せるんだ。その鍋を熱すれば、逃げようとしたネズミが地面を……犠牲者の腹を掘るんだ」
<目星>で死体の中から鍵と紙を見つける。
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きっとこの瓶が瑞貴さんそのものなんだって、そう思って頑張ってきた。
でも、違う。違うの。
瓶に閉じ込めたって、瑞貴さんと触れ合えないし、話もできない。
何かに魂を移し替えなくちゃ。
でも、何に?
人間だと死んでしまうかもしれない。動物だってそう。
そうだ、死なないものに移せばいいんだ。いい器があるじゃない。
『彼ら』なら死なない。死なない『彼ら』に移せばいい。
私ならできる。私は沢山の力を与えられたの。
瑞貴さんがまた私に語り掛けてくれるなら、笑ってくれるなら、なんでもする。
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中に入ると、何故かそこは外になっていて、見覚えのある光景が広がっていた。
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そこにあったのは、駐車場で花火をしているあなた達の姿だ。
星空の下、まばゆい光を散らす自分達の姿がなんだか懐かしいとすら思うかもしれない。今までの凄惨な光景とかけ離れていて、ここで眺めるにはあまりにも違和感があるものだ。
そんなあなた達を見つめる女将の顔には、優しい微笑みが浮かんでいた。そこに狂気や悪意はなく、ただどこか少しだけ寂しげで、今にもかき消えてしまいそうな儚さがあった。
やがてぽつりと、小さな声が聞こえる。
「瑞貴さん、花火が大好きだったものね」
「見えてるかな。とっても綺麗だよ」
「ねえ、瑞貴さん」
そして彼女の唇がゆっくりと動く。
しかしあなた達は、その声を聞き取ることはできなかった。
********************
そこで景色は厨房へと変わる。
真っ先に見えたのは、天井から吊るされた肉の塊だ。それは逆さに吊り上げられ、真っ二つに裂かれた人間のような形をしていた。
……いいや、かつては人間だったのだろう。しかしあなた達の目に映るそれは、ただの肉の塊でしかなかった。
その傍には大きなノコギリが落ちていて、血と汚物で汚れていた。一体どのようにして殺されたのか、嫌でも想像してしまう。
SANc0/1d2
「のこぎり挽き……」
「首を切る方法が有名だけど、こうやって吊るして股から裂いていくことで、更に苦痛を長引かせることができるんだ」
<目星>で、調理台の上にまた日記の続きが見つかる。
********************
成功した、成功した!
これで瑞貴さんと一緒にいられる。触れ合える。本当にうれしい。
瑞貴さんは遊ぶ場所が欲しいみたい。男のひとって本当に、何歳になっても子供なのね。
瑞貴さんのために、誰にもばれない空間を作った。
おもちゃがほしいって瑞貴さんが言うから、客の中から連れてくることにした。
私の力はまだ未熟みたいで、一度に一人しか連れて来られないけれど、瑞貴さんはすごく楽しそうに遊んでる。
みんな最後には狂ってしまうけど、そうすると別の場所に連れていかれるみたい。だから新しいのをまた連れてこないといけない。
でも、大丈夫。連れて来た人間は存在を消せるから、どこにもばれずに繰り返せる。
瑞貴さんのために沢山おもちゃを持ってくるからね。
瑞貴さんが楽しそうで、私もうれしい。
全部がうまくいってる。
本当によかった。
瑞貴さんが戻って来てくれてよかった。
ずっと一緒にいようね、瑞貴さん。
約束だよ。
********************
ひどく散らかっている。ここには死体はないが、一体の人形が机に座っていた。
それは受付で見つけたあの日本人形だ。
探索者達が中に入ると、唐突に人形が立ち上がって喋り出す。
「やあ! ゲームは楽しんでもらえたかな?」
「今回はちょっと趣向を変えてみたんだ。毎回同じようなことばかりだとアレも飽きてしまうだろうからね」
「もちろんアレは『ミズキ』なんて人間じゃないよ」
「アレに人間の魂を移すなんてできるわけないからね。『ミズキ』の魂は瓶に閉じこめられたまま」
「馬鹿だよねえ。ただのバケモノのためにせっせと人間集めたりなんてしてさ」
「彼女は未熟だから、一度にたくさんの人間をここに閉じ込めるのは難しいんだ」
「だから本当は彼一人が連れて来られる予定だった」
そういって、人形は柊木を指さす。
「そもそも『ミズキ』の頼みなんて、君たちにとったら他人事でしょ? 今すぐにだって帰ったほうがいいんじゃない?」
「まあどのみち、時間が経てば彼以外の全員ここから吐き出されるんだけどね」
「ああ、彼は無理だよ。名簿は見たでしょ? 彼はもう消えかけてるんだ。諦めなよ」
「出口はこの部屋の奥に作るよ。まだ遊びたいなら隣の部屋へどーぞ」
もし柊木を助ける方法はないのかなどと聞いても、彼はしらばっくれる。ほとんど一方的に話すばかりで、探索者からの問いかけにはまともに答えない。
言うだけ言って人形が消えると、奥に扉が出現する。
同時に聞こえたのは、天井をドタドタと走る激しい足音だ。
そして背後にある通路の天井が崩れ落ちる。
振り返った先に立っていたのは、やはりあの化け物だ。
あなた達の行く手を阻むように立ち塞がり、巨大な手をあなた達に向かって伸ばした。
※ここで最初の分岐となる。
①扉に逃げ込む場合はロールなしで逃げ込むことができる。その場合はエンディングDへ移行する。
②廊下(次の部屋)に向かう場合は、それぞれ<DEX×5>に成功することでムーンビーストを潜り抜けて逃げることができる。
しかし失敗した場合はムーンビーストの餌食となる。失敗者の中でも最も出目の高かった者がターゲットとなる。
しっかりと鍵がかかっており、広間で見つけた鍵で開けることができる。
ここも客室とよく似たこざっぱりとした和室になっているが、広縁はない。そのかわりに大きな棚が一つある。
・部屋に<目星>
棚の下に何かを引き摺ったような痕がある。棚はとても軽く、動かすのは容易そうだ。
棚を動かすと人が通れる大きさの黒い空洞のようなものが出現する。その先がどうなっているのかは分からない。
・棚に<目星>
一冊のノートを見つける。ほとんどのページが破り取られており、残ったページにはひどく乱れた文字で何かが書き綴られていた。
<図書館>か<母国語>ロールで読むことができる。
その中から、とある呪文についての記述が目に留まる。
********************
この呪文は本来は対象の魂を容器に閉じ込め、その肉体をコントロールするものだ。魂を閉じ込めるのは蓋が出来る容器であれば何でもいい。
魂を奪われた肉体はじわじわと死に向かい、やがて肉体的な死を迎えると魂は解放される。
また、魂を束縛している器を破壊することでもその魂は解放される。
********************
しかしこのノートには、特別な力によって肉体の死後も魂を繋ぎとめられるようになったと、狂喜じみた言葉と共に綴られている。
美穂はこの呪文を使い、瑞貴の魂を閉じ込めたのだろう。
あなたは『魂の束縛』(基本p271)という呪文の存在を知る。記述を読んだだけなので習得はできないが、あなたは得体の知れない恐ろしい力の片鱗を見てしまった。
SANc1/1d3
また、神話技能を+3得る。
空洞に入ると通路のような場所に出る。
しんと静まり返っていて埃っぽく薄暗い。しかし光源の分からないほんのりとした明かりがあり、歩けないほどではない。
奥に進んでいくと、そのうちに扉が見えてくる。その扉は半開きになっており、隙間から光が漏れていた。