マインドフルネスの起源は約2500年前の仏教哲学にさかのぼります。
最近注目を集めているマインドフルネスは、根底にその考えを受け継いでいて、「今この瞬間に起こっていることに、ありのままに気づくこと」と表現することができます。
人間の心は、過去や未来、または特定の場所に縛られることなく、自由に気ままに飛び回ることができます。この特性は、さまざまな人生の物語を紡ぎ、芸術を創造し、文明を築くという素晴らしい面を持つ一方で、心配や不安、羨望、嫉妬、怒り、悲しみといったマイナスの感情に振り回されることも多いのです。
こうしたマイナスの感情の流れを和らげるためには、考えや感情に左右されず、現実に起こっていることにありのままに気づく(=認識する)ことが重要です。また、過去は記憶という思考の中に、未来は想像という思考の中にのみ存在するため、「今、この瞬間」に意識を向けることで、過去や未来の考えに惑わされることを防ぐことができます。
人が生きることの苦しみの本質を見抜いた仏陀の悟りは、現代の人々がマインドフルネスの気づきによってより良く「生きる」ということに受け継がれていると言えるかもしれません。
様々な臨床研究において、苦痛の軽減やうつ症状の再発予防、精神的疾患の症状緩和などにマインドフルネスが効果的であることが示されています。これらの結果は、マインドフルネスをカウンセリングに取り入れることの有効性と可能性を示唆しています。
セッション中に、時折、ご自身の体で感じる感覚についてお伺いすることがあります。また、今、この瞬間の呼吸の状態についてもお尋ねすることがあります。これは、心を少し落ち着けて、考えや感情に振り回されがちなご自身を、今この瞬間に少し戻すことを試みるためです。
セッションが続く場合には、セッションとセッションの間の日常生活の中で、体の感覚や呼吸、あるいはご自身に起こった出来事に意識を向けることを提案することもあります。
今この瞬間に起こっていることにありのままに気づくことは、困難な状況から抜け出す手がかりを見つけるのに役立つだけでなく、ご自身が今ここに存在し、生きていることをより深く感じ、自己肯定感を取り戻す助けとなります。
カウンセリング終了後も、日常生活にマインドフルネスを活かしたいと考える方には、ご希望に応じて、マインドフルネスを学ぶ場としてMBSR(Mindfulness-Based Stress Reduction:マインドフルネスストレス低減法)の8週間コースへの参加をお勧めします。
このコースでは、基本的な知識や練習方法を習得し、「今、この瞬間」に起こっていることにありのままに気づく機会を増やすことができます。これにより、日常生活で直面する問題が深刻化するのを未然に防ぎ、自分の力でそれを乗り越える大きな助けとなります。
なお、マインドフルネスの気づきを体験的に育んでいくには、時間と忍耐が必要であり、それを乗り越えるための強い動機や興味も求められます。ご自身の状態や環境を考慮し、マインドフルネスを学ぶに適した時期を見極めてください。