Research

ブラックホールに吸い込まれる物質は、ブラックホールの周囲に降着円盤と呼ばれる円盤状の構造を形成します。また、ブラックホールの周囲では、物質は降着円盤を形成するだけでなく、超高速で噴出されるジェットと呼ばれる現象も引き起こします。ブラックホール降着円盤・ジェットの物理には未解明の謎が多く残されています。

これらの謎を解明する上で重要だと考えられている事項の一つが輻射輸送です。輻射輸送とは、光の放射強度(エネルギーのようなもの)の時間的・空間的な伝播を取り扱う手法のことです。光はブラックホール周囲の物質の動きにも影響を与えますし、光を用いたブラックホールに関わる観測を行う上でも重要です。

そのため、私は一般相対論的輻射輸送コードを独自に開発し、これを用いてブラックホール周囲での光の伝搬や、その観測的性質を調べています。

もし私の研究に興味があれば、気軽に居室まで話を聞きに来たり、ご連絡をいただければ幸いです。

空間3次元一般相対論的輻射輸送コード:CARTOONの開発

Ray-tracing法(光線追跡法)に基づいて、一般相対論的輻射輸送方程式を直接かつ正確に解く新たな一般相対論的輻射輸送計算コード:CARTOONを開発しました。CARTOONにより、ブラックホールの近傍における光の伝播をより正確に調べることができるようになりました。このことは、ブラックホール降着円盤・ジェットの謎の解明や、質量や自転速度といったブラックホールそのものの性質の解明に向けた詳細な理論的研究を行うための重要な第一歩です。

ブラックホールの観測イメージを用いたブラックホールスピンの推定

2019年、Event Horizon TelescopeによってM87中心にある超大質量ブラックホールの観測イメージ(ブラックホールシャドウ)の直接撮像が初めて報告されました。 この観測イメージは、ブラックホールの質量や自転速度で決まる時空構造の情報や、降着円盤・ジェットの情報を含んでいます。そのため、観測イメージの構造を理論的に研究することは重要です。 独自に開発を行なったCARTOONの一部を用いて、ブラックホールの観測イメージに見られる特徴的な構造から、ブラックホールスピン(自転速度)を推定することを目指して、現在研究中です。

機械学習を用いたブラックホールスピンの推定

ブラックホールの強い重力によって光が曲がることで作られる、ブラックホールの重要な観測的特徴である「ブラックホールシャドウ」の形状を決める重要な要素は、ブラックホールスピン(自転速度)と観測する角度の2つです。言い換えると、単にブラックホールシャドウの形状を観測しただけでは、ブラックホールスピンと観測する角度の両方を独立に知ることはできません。そこで我々は、機械学習的手法(Convolutional Neural Network)を用いて、ブラックホールシャドウからブラックホールスピンと観測する角度の両方を独立に決めることを目指して研究をしています。