1) Gut morphometry represents diet preference to indigestible materials in the largest freshwater fish, Mekong giant catfish (Pangasianodon gigas)
メコンオオナマズとカイヤンの腸形態(体長に対する腸の長さ)は、他の植物食性またはデトリタス食性魚類に近いことがわかりました。体長2mのメコンオオナマズと体長1mのカイヤンの比較では、カイヤンでより腸が長いことがわかりました。
Medo et al. (2020) Zoological Science https://doi.org/10.2108/zs200047
2) Striped catfish (Pangasianodon hypophthalmus) exploit food sources across anaerobic decomposition- and primary photosynthetic production-based food chains
ダム湖に放流されたカイヤンの栄養段階を調べました。体長1m前後のカイヤンは、光合成一次生産食物連鎖の1-2次消費者と推定されました。これに対して、体長50cm前後のカイヤンは、嫌気環境下で細菌によって分解された有機物を起点とする食物連鎖に属していることが示唆されました。
従来の淡水魚の食性は、光合成一次生産や好気環境で分解された有機物を起点とした食物網のなかで議論されていました。一方、炭素・窒素・硫黄安定同位体比と脂肪酸を組み合わせたアプローチにより、嫌気環境で分解された有機物も淡水魚の食性解析に組み込むことができました。
Medo et al. (2023) Scientific Reports https://doi.org/10.1038/s41598-023-41209-y
3) Trophic niche partitioning of Mekong giant catfish Pangasianodon gigas in a tropical reservoir: evidence from stable isotope and fatty acid analyses
炭素・窒素安定同位体比と脂肪酸組成分析を用いてダム湖に放流されたメコンオオナマズの栄養ニッチを調べました。メコンオオナマズは、全長約 40 cm の個体と全長約 200 cm の個体で栄養段階が異なることが示唆されました。また、窒素安定同位体比の結果から、全長約 200 cm のメコンオオナマズの栄養段階は二次消費者以上と推定され、脂肪酸組成の特徴から動物プランクトンが餌候補の一つと考えられました。最後に、全長約 200 cm のメコンオオナマズは調査地のダム湖で特異な栄養ニッチを占める可能性が示されました。
Medo et al. (2024) Limnology https://doi.org/10.1007/s10201-024-00741-0
4) Trophic niche partitioning and intraspecific variation of food resource use in the genus Pangasianodon in a reservoir revealed by stable isotope analysis of multiple tissues
ダム湖に放流されたメコンオオナマズとカイヤンがともに定着できるメカニズムを探るため、炭素・窒素安定同位体比分析を用いて二種の栄養ニッチの重複度合いを調べました。また、複数組織安定同位体比分析手法により、種内変異(individual specialization index)の定量をおこない、種間で比較しました。メコンオオナマズとカイヤンは異なる栄養ニッチを占めており、餌資源分割が共存を促すことが示唆されました。メコンオオナマズは種内変異が小さく集団レベルである餌資源に特殊化している傾向が見られましたが、カイヤンは種内変異が大きく集団内で食いわけが起きている可能性が示されました。種内変異度合いの比較から、メコンオオナマズとカイヤンでダム湖での定着プロセスが異なると考えられました。
Medo et al. (2024) Journal of Fish Biology https://doi.org/10.1111/jfb.15842