人類は再び月を目指し、将来的には火星探査も現実のものとなろうとしています。一方で、宇宙環境は骨量減少や筋萎縮、免疫機能の変化など、生体にさまざまな影響を及ぼします。長期宇宙滞在を実現するためには、生命が重力環境の変化にどのように応答するのかを理解することが不可欠です。
私たちは、メダカやマウスを用いて、骨・歯・血管・免疫系などの生体応答を分子・細胞・個体レベルで解析しています。これまで宇宙実験にも参画し、微小重力環境が骨代謝や組織リモデリングに及ぼす影響を明らかにしてきました。現在は、宇宙医科学と発生生物学、薬理学を融合し、重力応答の仕組みを解明するとともに、その成果を地上医学へ応用する研究を進めています。
宇宙研究は、宇宙飛行士の健康維持だけでなく、骨粗鬆症や加齢関連疾患など地上の医療課題の解決にもつながります。私たちは、「宇宙を知ることで生命を知り、生命を知ることで人々の健康に貢献する」を理念に、宇宙と地上の双方に貢献する研究を目指しています。
宇宙飛行士から「紙一枚がこんなに重かったのか」と聞いたことがあります。普段は意識しない重力ですが、その変化は生命に大きな影響を与えます。私たちは、宇宙という特別な環境を利用して生命の本質に迫り、その成果を未来の宇宙探査と地上医療へ還元したいと考えています。
茶谷 昌宏
宇宙医科学研究グループ
昭和医科大学 薬理科学研究センター