07. 朦朧
Artist: jeRRyGhostFish
「キャッシュカードを落とした」
07. 朦朧
Artist: jeRRyGhostFish
「キャッシュカードを落とした」
事件の詳細
待ち侘びた、M3の前日。
大荷物を迎えて東京へ。
友人たちと東京を闊歩し、カラオケで馬鹿みたいに歌い明かし、
明日がいかに楽しみかを語る。
だけれど気づく。口座からお金を、引き出せていない。
これではせっかくのM3で譜を買うことができない。
コンビニのATMに向かっても時刻は深夜。軒並み、時間外なのである。
明日も早い。間に合わない………。
そんな胸騒ぎを抱えながら迎える、M3の日の朝。
眠い目を擦りながら荷物をまとめ宿を出る。同行者と駅へ向かう。特急列車で優雅にコンビニの朝食をいただく。
こんなに美しい朝焼け。それでも不安はずっと付き纏うから。
道中でもATMを探しまわるが、やはり早朝。どれも使えない。
とうとう乗ってしまったモノレールの片隅。
硬い頭を捻らせて、わたしの脳裏にはある考えが浮かんだ。
では、流通センターのローソンで引き出そう。
そうすれば時間内だし、お金を引き出した後すぐに設営に向かうことができる。
わたしの行動は早かった。
流通センターに着いた瞬間、同行者に荷物を預ける。
そして一直線、ATMに手を伸ばす。………ああ、使えた!
恵みのようだった。救いのようだった。
陽の光を浴びながら、私は仲間たちのところへ戻る。
だがそれが、まずかった。
翌日。
疲れか、はたまたM3で貰ってきたのか、病に倒れたわたしは、喉の痛みと共に目を覚ます。
ふとスマートフォンに目をやると、銀行から不在着信が来ていることに気づいた。
不審に思い電話を折り返す。受付の者から届いた言葉で、わたしは我に帰った。
「お客様のキャッシュカードを拾ったと連絡が…」
突き刺さる言葉。速くなる鼓動。
慌てて財布を見てみる。そこにあるべきそのカードが、"確かにない"のだ。
なんとなく、嫌な予感がする。
その予感は考える間もなく的中してしまった。追い打ちをかけるように受付の者の言葉が発される。
「東京都内の交番に届けられているため、取りに来い」と。
………終わった。
焦燥感と動悸の中、意識を保とうとしたが、
わたしの意識は遠く霞んでゆく。
さながら、思い出と共に電車の車窓から消えてゆく東京の景色のように。
朦朧と動悸と共に、私は再び意識を闇の中へ落とした。
秋は終わりを迎え、北風は強くなる。
わたしの心を、きんと冷やすように。
……後日、キャッシュカードを迎えに再び思い出の地に足を運ぶのは、
また別のお話。
コメント
当コンピ開催において多分、すべての元凶です。
キャッシュカードをM3会場のローソンで使ってそのまま忘れてしまったんだと思います。
しかも東京から茨城に帰ってからそれが発覚したので、わざわざ交通費を払って東京まで回収にいく必要がありました。ウゲェ〜。
風邪でダウンしちゃったからすぐに取りにも行けないし。ウェーン。
何もせずに帰るのはアレだったんで、取りに行きがてら平和島駅の近くのラーメン屋に行ってきました。美味しかったなあ。
私の在住が茨城県だからギリギリ取りに行けたはいいけども、今回のM3には新幹線とか飛行機で来ていた人もいたので、ソレの人にならなくて本当に良かったと思います。
ンもう…………
曲は風邪で朦朧とする意識をテーマにしました。
風邪の治療とM3の疲労でキャッシュカードどころじゃなかったです、本当に。