近年、スマートフォンに搭載されるセンサの種類の増加や高精度化が進んでいます。そのセンシング性能 と ネットワーク接続機能 を活かす試みとしてクラウドセンシングがあります。
クラウドセンシングとは、群衆が持つスマートフォンなどの携帯端末に内蔵されたセンサを用いて低コストに大規模データを取得し、そこから実世界の様相を把握する方法論である。
クラウドセンシングにはセンサデータが欲しい依頼者とセンサデータを提供してくれる協力者がいます.依頼者は協力者が提供してくれたセンサデータをもとに現実の形相を把握できます.
クラウドセンシングの関連研究として、自動車利用者から加速度データや映像データを収集し路面状況を推定する研究や、歩行者から雑踏音や歩行動作をセンシングし混雑状況を推定する研究があります。
クラウドセンシングを利用した研究には依頼者、協力者それぞれに課題があります.
依頼者の課題として、研究ではなくデータを収集するためのクラウドセンシングシステムの開発に時間が取られてしまう、と言う点があります。
協力者の課題として、研究毎にアプリをインストールしなければならない手間や、センシングによるプライバシが侵害に対する不安があります。
これら依頼者の「専用システムの開発にコストがかかる」と言う課題をプラットフォームで、協力者の「不安や手間によるモチベーション減少」と言う課題ををインセンティブで解決した研究がいくつかあります。
Live Labsは協力者に直接金銭的な報酬を支払い、ParamoSenseはゲーム内でバッチや称号といった非金銭的な報酬を与え協力者のモチベーションを保ちます。
我々は協力者の持つ不安や手間など,そもそもクラウドセンシングに存在するディスインセンティブ要素に着目しました.
我々はクラウドセンシングプラットフォームを構築しクラウドセンシング利用の簡易化をするとともに、協力者の不安や手間といったディスインセンティブを軽減することで協力者のモチベーションを維持します。
そのために、指定した時間と空間を切り離す時空間フェンシングの概念を提案し、
ディスインセンティブ軽減に着目したクラウドセンシングプラットフォームを構築します.
時空間フェンシングとはジオフェンシングに時間要素を加えた新しいフェンシング手法です。
ジオフェンシングとはGPSやBLEの電波強度などの位置情報を利用し仮想的な境界を作成する手法です。時空間フェンシングはこのジオフェンシングに時間要素を加えたフェンシング手法です。
時空間フェンシングでは、例えば6時から12時の特定の教室などの指定が可能です。他にも開園時間中の遊園地や、避難訓練中のグラウンドのようなシチュエーションも指定できます。
我々は時空間フェンシングに基づくクラウドセンシングプラットフォーム「ラヴラス」を提案します。
依頼者は時空間や使用するセンサの情報を示すセンシングプロジェクトを作成し、依頼者はセンシングプロジェクトに沿ってセンシングします。
依頼者はセンシングプロジェクトを確認し、センシングに協力するかどうかを選びます。時空間に進入していてセンシングに承諾した協力者のみからセンシングします。
センサデータは自動的にアップロードされます。協力者の操作は本アプリのインストールとセンシングに協力するかどうかの選択のみとなります。
本研究の中で私が担当するのは、協力者の持つモバイルアプリの開発です。本アプリは協力者にとってディスインセンティブ要素が少ない必要があります。そして多くのセンサデータを集めるためにセンシングに協力してもらう必要があります。
例えば、センシングに協力するか否かを選択させる通知は最小限にする必要があります。通知が多いと協力者は煩わしく感じてしまいます。なので時空間に進入する可能性の高い協力者にのみ通知を発行する必要があります。
また、センシングは全て自動で行います。依頼に承諾していて時空間内にいる場合協力者の操作無しで自動的にセンシングを行う必要があります。また時空間内から退出した場合、自動的にセンシングが終了する必要があります。