東京大学大学院講義シリーズ
- Cross-boundary Cancer Studies -
アジアでがんを生き延びる
X
学際シンポジウム - 地域でがんを生き延びる
LOCAL CANCER DAY 2024
東京大学大学院講義シリーズ
- Cross-boundary Cancer Studies -
アジアでがんを生き延びる
X
学際シンポジウム - 地域でがんを生き延びる
LOCAL CANCER DAY 2024
LOCAL CANCER DAY(LCD)は、2011年4月に東京大学で始まった学際連携プログラム「Cross-boundary Cancer Studies」から派生した学際シンポジウムです。一般社団法人アジアがんフォーラムの監修のもと開催され、後日、東京大学大学院講義・WEB開講講座 (1)地域文化研究特殊研究Ⅴ「アジアでがんを生き延びる」及び (2)地域文化研究特殊研究Ⅱ「Surviving Cancer in Asia 2024」の教材として提供されます。(開講期間:2024年10月〜2025年3月、全12回の講義シリーズ)
セッションの案内
東京大学において2011年から続いてきたCross-boundary Cancer Studiesは、がんを医学のみならず経済・文化・政治など、様々な領域から掘り下げる学際連携講座です。
がんという病には、遺伝的素因や生活習慣を含む、長い時間軸の中での人々の生活や文化が大きな影響を及ぼしています。赤座英之先生が2011年4月8日に行った初回授業「いのちの在り方をうつしだす鏡―アジアにおけるがん医療をめぐって」を皮切りに始まったこの連続講座に一貫して流れているテーマは、がんが単なる疾病に留まらず、その深刻な病態が社会に大きな負担を与えているという点です。そして、この疾患と向き合うためには、ゲノムに組み込まれた生物学的な解釈にとどまらず、社会の在り方そのものを見つめ直す必要があるという視点が重要であるとしています。
◆◇ 講演 ◆◇
13:00-13:20 岩﨑 甫 国立大学法人山梨大学・副学長、AMED 医薬品プロジェクト PD
河原 ノリエ 東京大学東洋文化研究所特任准教授
Cross-boundary Cancer Studiesがつないだもの
13:20-13:25 齊藤 延人 東京大学理事・副学長
【オープニングリマーク】学際研究において大学が果たす役割
13:25-13:30 吉見 俊哉 東京大学 名誉教授、國學院大學 観光まちづくり学部教授
越境する知
13:30-14:00 パネルディスカッション
パネリスト :河原 ノリエ、辻 哲夫、椙村 春彦、岩﨑 甫、服部 幸應
モデレータ :堀田 季何
がんに対処するためには、新しい形の協力が必要です。また、がんという社会課題をどのような枠組みで捉え、解決の道筋を見つけるかという成功するパートナーシップを設計し、実現するために、どのような要素が必要かを学び合うことが求められます。
一般社団法人アジアがんフォーラムは、英国NPO「The Partnering Initiative」の『Better Together: A guidebook for collaboration between non-profit organizations and business』の日本語訳を作成しています。民間企業との連携を社会インフラの一形態と捉え、新たな産業創出など、それぞれの専門性の視点から、がんという社会課題の解決に向けて議論を深めています。現代社会のアップデートを目指している企業や、UICCの理念を共有する専門家やステークホルダーに、それぞれの専門的な視点から語っていただきます。
◆◇ 講演 ◆◇
14:05-14:20 大割 慶一 KPMGヘルスケアジャパン株式会社 代表取締役
ヘルスケアが生み出す社会的価値
14:20-14:30 古井 祐司 東京大学未来ビジョン研究センター 特任教授
人的資本経営と健康経営
14:30-14:40 山崎 牧子 経済産業省 ヘルスケア産業課 課長補佐
働く女性の健康と健康経営
14:40-15:00 パネルディスカッション
パネリスト :大割 慶一、山崎 牧子、磯部 昌宏、岩﨑 甫
モデレーター :河原 ノリエ
少子高齢化で過疎地域がふえており、地域医療が疲弊していく一方、がん医療の高度化が進み、以前より確実に地域格差が拡大しています。
がん医療は「均てん化」という政策とられるなかでも、地方にいて、果たしてどれだけの最適な治療を受けられるのかということが、大きな課題であることは、前回のシンポジウム「LOCAL CANCER DAY2022」でも浮かび上がってきました。そのなかで、株式会社アルム坂野氏の医療DXに多くの関心があつまり、それを起点にはじまった新たながん医療DXの仕組みがはじまっています。希少がんや合併症、高難易度の症例に対して、DXオペレーションセンターを通じて、ナショナルセンター専門医による治療計画の最適化提案が地域医療に届けられるなど、今後は、地方創生の在り方として、数多くの自治体での採用も期待されています。
その一方、地域がん医療の持続性を高めるコミュニティオーガニゼーションという観点では、地域医療では、ステークホルダーが多様化し、意思決定が複雑化しているため、DXの実装には多くの障壁があることも分かってきました。
コミュニティエンパワーメントを高め、ステークホルダーのアクティベーションのためには、ヘルスデータプラットフォーマーによるデータ活用・共創が必要であり、こうした未来を実現させるための本質的な課題やアイデアについて、官民等の様々な立場から討議を行い、その重要成功要因を探ります。
◆◇ 講演 ◆◇
15:15-15:20 野田 哲生 UICC日本委員会委員長、がん研究会がん研究所所長
Close the Care Gap
15:20-15:25 Jeff Dunn AO UICC会長
UICCと日本
15:25-15:35 鶴田 真也 厚生労働省がん・疾病対策課長
日本のがん医療の地域格差
15:35-15:50 坂野 哲平 株式会社アルム代表取締役社長
生成AIとDX
15:50-16:00 松橋 延壽 岐阜大学医学部教授
デジタル田園都市構想と未来
16:00-16:45 パネルディスカッション
パネリスト :鶴田 真也、坂野 哲平、中釜 斉、松橋 延壽、岩﨑 甫
モデレータ :野田 哲生、河原 ノリエ
マレーシアでは、がん患者の60%以上が進行した状態で診断されており、がん検診の受診率向上と疾病理解の深化が急務です。
BEAUTY & Healthプログラムは、理髪店や美容院を拠点とした地域密着型のデジタル介入を通じて、がんや非感染性疾患に関する知識の普及とリスク低減を推進しています。このプログラムは、HRD Corpの認定を受け、100万人以上に影響を与えることを目指し、「サステナブル・ヘルス・リンク」の構築を進めています。本講義では、これらの取り組みを通じてがん医療の課題を解決し、持続可能な社会システムの戦略について議論し、サステナビリティの本質に迫ります。
がんという事象の考察は、単なる疾病を超え、UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の実現とウェルビーイングおよびサステナビリティの両立を模索するための手段となり得ます。この講義シリーズでは、この視点からがん医療を再評価し、社会全体の健康と福祉の向上に貢献するための学術的なフレームワークの構築を目指しています。がん対策は、単なる医療的介入に留まらず、地域社会や多様なステークホルダーとの協力を通じて、持続可能な発展に向けた包括的なアプローチを議論する場として位置づけています。
※セッション4の進行は英語で行われます。
◆◇ 講演 ◆◇
17:00-17:05 河原 ノリエ 東京大学東洋文化研究所特任准教授
BEAUTYプロジェクトとサステナビリティ
17:05-17:10 武見 敬三 厚生労働大臣
日本がアジアに対してできること
17:10-17:20 Jeff Dunn AO President, Union for International Cancer Control (UICC)
UICCとClose the Care GAP
17:20-17:40
17:40-18:25 パネルディスカッション
パネリスト :Muralli M.、岩﨑 甫、椙村 春彦
モデレータ :堀田 季何
18:25-18:30 岩﨑 甫 国立大学法人山梨大学・副学長、AMED 医薬品プロジェクト PD
【クロージング】富山宣言が映し出す未来
アジアがんフォーラム(以下、ACF)は、2004年のアジアハイテクネットワーク会議(三宅淳 産総研)との連携によるアジアがん情報ネットワークとして発足しました。
2007年の安倍・温家宝会談による日中医学構想への政策提言、中国・南京でのアジア癌情報ネットワーク会議(UICCアジア支局(UICC-ARO) 主催)開催に準備段階から参画しました。2014~2017年に独立行政法人国際協力機構草の根支援型事業として、中国ハルビン市で医療教育プログラムを実施し、現在のマレーシアでの活動につながっています。
2021年より、トヨタ財団国際助成プログラム「日本と中国の地域コミュニティにおける誰ひとり取り残さないがんと暮らしを問い直す学びあいの構想と実践」を、日本の原風景がある富山を拠点に活動を実施。アジアの地域コミュニティにおけるがん医療の在り方と求め方について、個人の価値観、地域コミュニティの疾病感、医療の供給、地方行政、民間事業者の取組など、地域格差是正に対する様々な課題について、アジアの共有課題として富山という地を拠点に活動しています。
◆◇ 講演 ◆◇
13:30-14:35 齋藤 滋 富山大学 学長
【オープニングリマーク】ローカルとグローバル
13:35-13:40 Jeff Dunn AO President, Union for International Cancer Control (UICC)
UICCとClose the Care GAP
13:40-13:45
13:45-13:50 野崎 慎仁郎 WHO西太平洋地域事務局コンプライアンス・リスクマネジメントオフィサー
アジアのUHC
13:50-13:55 宇野 晶子 北陸電力株式会社 社外取締役
女性が紡ぐアジアの未来
13:55-14:05 串田 淑子 メゾソプラノ歌手、富山県オペラ協会会長、東京二期会会員
※オペラ鑑賞
14:05-14:15 田島 和雄 洗心福祉会美杉クリニック 院長、UICC日本委員会 名誉会員、アジアがんフォーラム 顧問
民族疫学
14:15-14:25 浅沼 一成 前厚生労働省 医政局長、国立保健医療科学院 次長
南京会議
14:25-14:35 河原 ノリエ 東京大学東洋文化研究所特任准教授、アジアがんフォーラム代表理事、UICC日本委員会 広報委員長
鏡としてのがん
14:35-14:50 トークセッション
登壇者:浅沼 一成、田島 和雄、河原 ノリエ
少子高齢化のなか、治療技術の進歩により、死病ではなくなった「がん」を抱えて生きてゆく人たちが、病院の外側である地域コミュニティに急増しています。しかし地域社会は未だその状況に対応できておらず、患者や家族が多くの困難に直面しています。
がんは、暮らし全般と大きく関わっており、その土地特有の生活習慣、生活環境や遺伝的背景などの影響を色濃く受けるものであるため、医学的に捉えるだけでなく地域の暮らしの営みに寄り添った眼差しも求められています。
誰にでも起きうる病気として臆することなくがんであることを公言でき、地域コミュニティで支え合う社会を目指すことが、がんのユニバーサルヘルスカバレッジ(誰ひとり取り残さないがん医療)の実現のために必要ですが、感染症と異なりがんはこれまで個人の病とされ、地域で取り組む実践がなされなかった経緯があります。
私たちは、富山宣言をうけて、生老病死シリーズとして地域の寺院で生老病死という逃れられないものと、向き合いことについて地域で語りを重ねてきました。
古来、人間は自分を取り巻く自然に畏敬の念をもち、神や仏への人知を超えた繋がりと繋がることで、同じ畏敬の念を持つ隣人同士でむきあってきたといわれています。いまいちど、そうした人知をこえたつながりのなかで、このがんという病を地域で考えるという取り組みの意味を考えたい。またこの地域と学校に定期的にはいり、俳句という表現形態により、がんについて考える「がん俳句」の活動をACFはおこなっており、そのことについても討議を重ねていきます。
◆◇ 講演 ◆◇
15:00-15:05 垣添 忠生 (公財) 日本対がん協会 会長、(国研)国立がん研究センター 名誉総長
心の旅
15:05-15:15 (リラの木の家、活動報告動画)
石を磨く
15:15-15:45 トークセッション
登壇者:水林 慶子、堀田 季何、河原 ノリエ
ACFは、トヨタ財団の国際助成プログラムの一環として学校・職域・地域を含めた地域コミュニティにおいて喫緊の課題であるがんという病について学びあい、地域の連帯によって支え合う素地を作る住民主体のプログラムを共同で開発し、地域に根付かせるプロジェクトをすすめてきました。
職域については、前回のLOCAL CANCER DAY2022の調査結果などをもとに、地元のロータリークラブなど企業経営者と意見交換を重ねてきました。
全国的にも、高齢者のがんは大きな課題ではあるが、日本の地方では少子高齢化が進んでいるため、高齢者は地域社会の重要な働き手であり、がんになっても職場に戻って働いてもらいたい切実な環境となっています。従って、企業経営者にとって、従業員の早期発見早期治療は重要なテーマです。
これらのことを踏まえて、地域特性にあわせた、健康経営の在り方など、地域社会に対する影響が大きい従業員へのがん検診勧奨の在り方について議論する。そして、責任ある中小企業経営者として、わが国の地域社会のがん対策を担う素地を作り、地域を支えることを目指して語り合います。
◆◇ 講演 ◆◇
16:00-16:05 宮窪 大作 宮窪建設株式会社 代表、砺波市庄川町東山見地区自治振興会 会長
地域の活性化と就労
16:05-16:15 金子 恭大 経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 係長
健康経営が切りひらく地域
16:15-16:25 松井 泰治 全国健康保険協会 富山支部 前支部長
健康経営顕彰制度と富山
16:25-16:35 川合 洋平 日の出屋製菓産業株式会社 代表取締役社長
百年企業と地域
16:35-16:45 トークセッション
登壇者:河原 ノリエ、金子 恭大、松井 泰治、川合 洋平
がん対策推進基本計画では、全てのがん患者が、居住する地域に関係なく、公平で、安心かつ納得したがん医療や支援サービスを享受できる社会の創出を目指しており、地域におけるがん医療の充実が必要とされています。
しかしながら、医療人材の都市部への偏在化、医療アクセスの格差が顕在化しており、支援するシステムが必要である。併せて、医療の均てん化の維持するための「地域格差是正」と「人材確保・思考性等のリスク回避」は喫緊の課題となっており、現状の医療制度における目詰まりを調査・分析し、医療制度の健全化を図る政策立案が求められています。
理想的な姿としては、マイナポータルと連携したPHRアプリを用い、医療保険情報を健診施設・地域基幹病院や高度医療病院が連携することにより、地域が一体となったがん診療体制をつくることがあります。大学病院も医療ICTを用いて地域医療に介入することによって、病院間で情報共有を行うことにより、遠隔診断・遠隔手術支援・遠隔医療者教育による、がん診療の高度化を実現することができます。ナショナルセンターとも連携し、地域がん医療と連携した国内初のがん専門医師間の遠隔診療体制を構築。新興感染症等の発生に向けたPHRアプリを医師会・地域医療機関・薬局と連携し、DtoD遠隔診療・オンライン診療やオンライン服薬指導や処方情報連携に活用することにより、柔軟な診療体制を確保する。こうした自治体を超える広域的地域医療連携の実現することも可能です。科学技術を活かした地域がん医療のサスティナブルイノベーションについて語り合います。
◆◇ 講演 ◆◇
17:15-17:25 柴田 祥宏 庄川しばたクリニック 院長
治し支える地域医療
17:25-17:35 鷹羽 律紀 岐阜大学 地域共創型飛騨高山医療者教育学講座 特任助教
医療を目指すなら高山へー国際都市高山の挑戦
17:35-17:50 坂野 哲平 株式会社アルム 代表取締役社長
DXが変革する高齢者のがん医療
17:50-18:15 トークセッション
登壇者:河原 ノリエ、田島 和雄、坂野 哲平、柴田 祥宏、鷹羽 律紀
18:15-18:20 田島 和雄
クロージング:地方からアジアの未来が見える