鈴木晴香 宇宙サロン番外編

宇宙とシルクロードの題材で詩を読む会

「短歌があれば、月に行けます。」

開催後記


あかあかやあかあかあかやあかあかやあかあかあかやあかあかや月  明恵上人


「短歌があれば、月に行けます。」というタイトルは嘘のようで本当だと、この歌なんかを見ていると思う。明恵上人は月に魅了される あまり、その明るさに取り込まれてしまっている。この歌を読む方も、「あ」と「か」のあ行の響きにすっかり酔っ払って月の世界に連れられてしまいそうだ。短歌の三十一文字は、ことばを縛るためのルールではなく、自由にするためのルールだということも教えてくれる一首である。


仲秋の名月を愛でるという習い(たぶん今でいうフェス)は、9世紀頃に唐から伝わったもので、それを日本では、何百年ものあいだ忘れることなく毎年続けてきた。平安貴族の戯れから、江戸時代には庶民へ広がり、今は、月見バーガーである。この長い間、人々はたくさんの月の歌を詠んできた。これから、月に旅行するような時代になってもきっと歌人は月の上で月を詠むだろう。


瓦斯燈を流砂のほとりに植えていき、そうだね、そこを街と呼ぼうか 

千種創一『砂丘律』


これは、シルクロードの中継地点であるヨルダンを詠んだ歌。砂漠の街が箱庭のように見えてくる。この短歌に出てくる、人間の手で作った街の風景は、いつか月に移住する人々が見る景色にどこか似ていないだろうか。ひとびとが太古の昔から歩いてきた砂漠の道と、これから宇宙に進んでゆく道が重なって見えてくる。


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当日は、月の満ち欠けに従って収穫や剪定をするというビオワインを楽しみながら、短歌の穴埋めや月を五感で表現するワークショップなども行いました。中秋の名月の少し前の、短歌の月見でした。


鈴木晴香

2020年9月25日(金)

宇宙サロン番外編 宇宙とシルクロードの題材で詩を読む会 

「短歌があれば、月に行けます。」

講師:鈴木晴香 会場:京都市上京区 ワインサロンyu-an