植物体への侵入器官形成を制御する2つのセンサー経路の解析
Analyses of two sensing pathways that regulate infection structure formation for invasion into host plant
はじめに
はじめに
多くの植物病原糸状菌は “付着器” と呼ばれる特殊な器官を介して宿主植物に侵入することが知られています(図1)。これらの菌類は宿主葉の表面を ①疎水性という非生物的シグナルの認識、②宿主由来成分の認識、という2つのメカニズムによって感知し、付着器を形成すると考えられています。
私たちの研究室では植物病原糸状菌のモデルとして、トウモロコシごま葉枯病菌(Bipolaris maydis)を用い、付着器形成を制御する宿主表面の認識機構について明らかにするために関連遺伝子の解析を行っています。
図1.トウモロコシごま葉枯病菌によるプラスチック(疎水性表面)上での付着器形成
宿主由来成分を認識する因子の探索
宿主由来成分を認識する因子の探索
これまでに私たちは、Opy2 と呼ばれる遺伝子が疎水性表面の認識に重要な役割をもっていることを明らかにしました。
野生株は、宿主葉上だけでなくプラスチック上でも付着器を形成することができます。一方、Opy2 遺伝子破壊株(ΔOpy2 )は、宿主葉上では付着器を形成しますが、プラスチック上では付着器を形成しません。このことは、ΔOpy2 が疎水性表面の認識能を欠損しながらも、宿主由来成分を感知し付着器形成を制御できることを示唆しています。最近、その宿主由来成分の一つがペクチンであることが明らかにされました(図2)。
現在、私たちの研究室では宿主由来成分ペクチンが菌にどのように認識されているのかを研究しています。
図2.表面認識のモデル
関連発表:西尾ら,令和3年度日本植物病理学会大会,2021年 ほか