次期学長に対する要望書

平成30年9月18日

筑波大学 学長 永田恭介様

筑波大学学長選考会議 委員の皆様

筑波大学教職員組合つくば

次期学長に考慮していただきたいこと

次期学長選考(再任審査)にあたって,9月5日付けで現学長より所信表明が示されました。今回は再任審査のため,教職員による意向調査は実施されないことから,一般の教職員の関心はあまり高くないのは否めません。また,所信表明は今後の大学運営の方向性を大所高所から語られたものだと思いますが,一般の教職員が普段から不安に感じていることに対して,次期学長としてどのように感じ,対応しようとするのか,といったことは所信表明からはなかなか読み取りにくいと言わざるを得ません。

そこで,わたしたちの組合では,下記の3点に焦点を絞って,組合員だけでなく,広く教職員の皆様からご意見,ご要望,次期学長に言いたいことなどを組合ホームページ等を活用しながら募ってまいりました(https://sites.google.com/view/kyoshokuinkumiai-tsukuba/)。なお,現役だけでなく,本学退職者からもご意見を頂戴しております。

次期学長および学長選考会議の皆様におかれましては,こうした現場の声に耳を傾けていただき,今後の大学運営に活かしていただきたくよう切に要望します。

1. 教員の人員および分野削減、人材流出について

5年間にわたり補充されない定年退職教員のポストとそれに伴う分野削減は深刻であり,退職不補充の分野では残された教員の授業の量が倍となるような労働強化も見られます。そして,先の見えない中で優秀な人材が他大学に流出する事態も多く見られます。人を大事にしない組織は,いずれ衰退するのではないでしょうか。

教員が生き生きと教育や研究に専念できる状態は,学生にも波及し,筑波大学で勉強して良かった,卒業して良かったと実感する学生が増え,研究者になりたいという学生を生むと思います。筑波大学で腰を落ち着けて教育や研究,学務に当たれる教職員が増えることは,ひいては大学の発展につながり,筑波大学の学内での位置づけや国際的な地位を高めることになります。さらには,米国等で一般的な「出身大学や勤務大学へ寄付したい」という卒業生や教職員の増加にも繋がると思います。学生や教職員に優しい組織作りが根本であり,学類から大学院に進み,そして研究者になりたいという学生を如何に増やせるか考えて大学運営に当たってもらいたいと思います。

本件に関しては,以下のような現場からの声をいただいております。

・急ピッチで多面的に大なわれる大学改革は,別の側面では教職員の労務負担を増幅させるものであり,教職員の人員削減が進む中で労災等にも直結することになる。人身に関わる問題が生じた場合の責任の所在を明らかにしてもらいたい。責任の所在が曖昧なままで進めることはあってはならない。(50代,准教授)

・新陳代謝のない一様減衰で研究の現場のやる気が目に見えて落ちている。中国の研究力向上と研究資金の増大を,ぼーっと横目で眺める状況。教員も事務も人員削減でミスが多い。筑波大学全体におりてきている資金総額は大きく変更がないと聞いているが,使い方に問題があるのではないか。(匿名)

2. 事務の人員削減、仕事負担の増加、減らない時間外勤務について

非常勤職員の雇い止め(いわゆる無期転換逃れ)による現場レベル(職員のみならず教員においても)での新たな負担増が顕著となっています。 また,特定の部署の事務職員の時間外勤務がなかなか減らないのは,個人の資質によるものというより職務分担由来の構造的な問題に起因するという認識が広がっています。私たちの組合でも,こうした問題への対応について現在,病院総務部との間で懇談を重ねてきているところです。

本件に関しては,以下のような現場からの声をいただいております。

・事務職員の負担増の実態は目を覆うばかりである。落ち着いて勤務できる環境を整えることに学長は注力してもらいたい。また,卒業生を正規事務職員に採用するということももっと考えて良いと思うし,軽微な事務仕事は在学生のアルバイト雇用で対応することもあって良いのではないだろうか。(50代,准教授)

3. 学位プログラム、入試改革の進め方について

現場での議論の積み重ねを取り入れる余地のないトップダウン型進行により各種の重要な大学教育改革が行われようとしていることに対して,多くの教員は不安を感じています。特に,入試改革については,事前の入念な市場調査(高校や予備校など)に基づいているとは言いがたく,他大学における先行事例の結末を見ても不安に感じる教員は多いと思います。

精査・吟味が不十分なままで導入することに関しては,導入を始めてから数年後のなるべく早い段階で効果を検証し,継続するべきかをオープンに検討することをお願いしたいと思います。

本件に関しては,以下のような現場からの声をいただいております。

・入試改革としての大くくり入試については,北大や九大をはじめ既に他大学にて行っているものであり,その先行事例の結果がどうだったかを精査した上で導入に足るものなのかを吟味するべきだったし,高校教員や予備校教員に対して高校生のニーズに足るものなのかのマーケティング調査を行い,それを踏まえて検討することも大事であった。そうしたことが不十分なままに進んでいる印象があり,導入に対して危惧するばかりである。(50代,准教授)

・学生の進学希望は就職先(含研究者としての就職)等の短期的な視点・利害に左右される面があり,特定の学問分野が学内偏差値的にも学生数確保の面でも苦戦を強いられてきたにもかかわらず,これらの分野の研究室,研究スタッフが削減されずにきたのは,これまでの大学運営が日本のアカデミーの基本的な構成を解体させてはならないという「理性」が働かせてきたのだと思います。次期学長,大学運営体制はこうした「理性」を覚醒させ、あるべき大学のあり方をじっくり語りながら対処するのが本来の姿なのでしょう。(60代,退職者)

(以上)