ここでは、学生を中心とする各主体による公開質問状およびその応答を掲載いたします。
※四学部: 工学部新入生歓迎実行委員会、文学部学友会委員会、農学部学生自治会常任委員会、理学部学生自治会評議会
京都大学職員組合学生部:総長候補への公開質問状
私たち「京都大学職員組合 学生部」は、TA・RA・OAを中心に、学生労働者の環境・待遇改善に向けて活動しております。
この度、次期総長候補となられた方々に、上記の学部自治会執行部と連名の上、下記の項目について質問状を作成いたしました。次期総⻑候補者の⽅々のご⾒解をぜひうかがわせていただきたく思います。
質問1【学生向け情報公開】
2016年2月まで、大学当局内の情報を学生に公開し、意見交換を行う場として、情報公開連絡会が毎月開催されていましたが、川添信介理事(当時)により中断されて以降、今に至るまで開催されていません。京大職組学生部としては、本学の基本理念である社会的な説明責任を果たすためにも、構成員たる学生に十分な情報公開の機会を設けることは重要であると考えます。
そうした中で、情報公開連絡会、ないしそれに準じた情報公開の機会を再開することについては、どのようにお考えですか。
質問2【対話に関する考え】
本学は基本理念として対話の重視を定めていますが、最近は学生を含む当事者との対話が十全ではない事例が散見されます。直近では、学部生向け授業料減免制度の新入生適用除外や、学生寄宿舎吉田寮の建て替え・跡地「有効活用」方針について、学生を含む当事者への意見聴取の機会すらなく発表されるという事案がありました。現在大学当局は、学生意見箱を通じた情報発信を対話の手段とみなしているようですが (※1)、これは全く直接的なコミュニケーション手段でなく、到底本質的な対話となりえません。
京大職組学生部としては、本学が抱える諸問題について、本学の基本理念に沿い、学生を含む当事者との直接的な対話を重視すべきと考えます。この点について、どのようにお考えですか。
※1 学生意見箱(2025.2.11)「学生と大学上層部との対話の再開に向けて」(https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/inline-files/A06043-2cb4cd5b2ecc6e6828e5913409098313.pdf)
質問3【院生向け経済支援】
仮に国際卓越研究大学に認定された場合、博士後期課程大学院生向けの経済支援(いわゆる「SPRINGプログラム」)が打ち切りないし大幅に縮小されるのではないかという懸念があります。現に東北大学では、博士後期課程の院生への経済支援が一律支給となったものの、支給額が月額10万円となっており、実質的な減額が生じています。本学における国際卓越研究大学下での院生への経済支援について、どのようにお考えですか。
質問4【雇用に関する問題】
TA・RA・OAなど、本学は学生・院生を様々な形態で雇用しており、とりわけ大学院生の生活を実質的に支える役割を果たしています。一方、国際卓越研究大に認定された場合、大学ファンドの運用益に基づき助成金が配分されるため、財源が現在より不安定化することとなります。そうした中で、どのような雇用の安定化策をお考えですか。
京都大学の福利厚生施設である吉田寮は、寮生全員で構成する吉田寮自治会が自治・自主管理による運営を行なってきました。吉田寮に関する重要なことがらは吉田寮自治会と京都大学執行部との対話を通じて決めてきたという長年の経緯も踏まえ、今回の京都大学総長選に際して、候補者各位のお考えを質問させていただきたいと思います。
【質問1】
吉田寮に関する決定は従来、京都大学の執行部や担当部署と吉田寮に住む当事者の間での合意形成を経て行われてきました。2018年に行われた話し合いを最後に、両者の間での話し合いが行われない状況が続いていますが、私たち当事者としては対話による問題解決が望ましいと考えています。
これについて、どのようにお考えでしょうか?
【質問2】
京都大学執行部は従来、副学長情報公開連絡会を通じて学内構成員である学生への情報共有と意見交換を行なってきました。2016年に開かれたのを最後に、副学長情報公開連絡会は廃止され、代替として学生意見箱が導入されましたが、学生意見箱は公開の場での逐次的なやり取りではなく、対話の場として十分に機能しているとは言えません。例えば、回答する側が回答対象の意見を恣意的に選別することも可能であり、また回答に対して再度意見を述べて議論を深めるのにも不向きであるといった問題があります。
私たちとしては、副学長情報公開連絡会、もしくはそれに相当するものを再開することが望ましいと考えますが、どのようにお考えでしょうか?
【質問3】
京都大学に通う学生の中には、様々な経済的困窮を抱えた人がいます。特に、近年の物価高により賃料や生活費が高騰し、学術研究活動に支障をきたす学生も実際に存在します。これまで、京都大学独自の授業料免除制度が運用されてきましたが、2026年度以降の入学者に対しては打ち切るという措置が、学生・教職員らの反対意見があったにもかかわらず取られました。
こうした状況で、学生が安心して学術研究活動に専念できるように、京都大学としてなすことのできる学生支援の拡充について、どのようにお考えでしょうか?
〇質問1:パレスチナ・ガザ地区の学生受入について
本会は2025年4月、「パレスチナ自治区ガザ地区の学生・傷病者にかかる京都大学法人への要請」を京都大学法人宛に提出し、京都大学が、ウクライナからの学生受入れと同様の措置を、ガザ地区からの学生に対して行うことを求めました[i]。ガザ地区をめぐるこの度の紛争では、国際刑事裁判所が軍事指導者に逮捕状を出す[ii]など、ウクライナ問題との類似性が見られます。また、ガザ地区では80%以上の学校施設が攻撃を受けた、あるいは破壊されたという国連専門家の報告があり[iii]、教育をめぐる事態は極めて深刻です。
京都大学は、日本の中でも相当高い教育・研究環境を提供できる大学であり、将来の国際関係構築を見据えた人材の受け入れが可能な環境にあります。一方、現総長のもとでは本要請に対する応答はありませんでした。
総長候補各位におかれましては、ウクライナからの学生受入れ[iv]と同様の措置をガザ地区の学生にも適用することを検討していただきたいと考えます。本問題について、現時点でお考えがございましたら、お聞かせいただきたく思います。
〇質問2:琉球等遺骨問題について
京都大学には、19世紀以降に北海道、サハリン、クリル諸島や琉球・沖縄、奄美、台湾、朝鮮半島、中国東北部、東南アジア等から地域コミュニティの許可なく持ち出した遺骨・副葬品が、現在でも収蔵されています[v]。
2023年9月の高裁判決では、琉球遺骨返還を求める原告団の訴えは退けられました。一方、当該判決文内においても、「遺骨は、ふるさとで静かに眠る権利があると信じる」「持ち出された先住民の遺骨は、ふるさとに帰すべきである」「日本人類学会から提出された、将来にわたり保存継承され研究に供されることを要望する書面に重きを置くことが相当とは思われない」との付言がありました。[vi][vii]
京大法人は2025年11月に遺骨返還手続きに関する公式ガイドラインを公表、同年5月に京都大学が保管していた今帰仁村の「百按司墓」の遺骨を教育委員会に移管したことも明らかにしました[viii]。ですが、今にいたるまで、琉球遺骨返還を求める原告団に対しても、アイヌや奄美の遺骨返還を求めてきた人びとに対しても、謝罪をしていないのはもちろん、面会して説明することすら拒否してきました[ix]。国際的にも先住民族の遺骨返還がスタンダートとなり(e.g. 米、豪)[x][xi]、国内の東京大や北海道大でも遺骨返還作業が進められている現状において[xii][xiii]、遺骨返還問題に臨む京都大学の姿勢は、研究倫理の面で著しく後れを取っていると言わざるを得ません。
本会としては、学問と植民地主義をめぐる問題として考えたときに、京都大学の対応は研究倫理を著しく損なうものであり、関係者に対する説明責任を果たすことが最低限必要であると考えております。本問題について、現時点でお考えがございましたら、お聞かせいただきたく思います。
<質問1 参考資料>
[i] 京都大学中東問題を考える有志学習会, 2025年「パレスチナ自治区ガザ地区の学生・傷病者にかかる京都大学法人への要請」(https://ku-midwest-study.jimdosite.com/).
[ii] International Criminal Court, 2024, Situation in the State of Palestine: ICC Pre-Trial Chamber I rejects the State of Israel’s challenges to jurisdiction and issues warrants of arrest for Benjamin Netanyahu and Yoav Gallant, (https://www.icc-cpi.int/news/situation-state-palestine-icc-pre-trial-chamber-i-rejects-state-israels-challenges).
[iii] UN Independent Human Rights Experts, 2024, UN experts deeply concerned over ‘scholasticide’ in Gaza, (https://www.ohchr.org/en/press-releases/2024/04/un-e xperts-deeply-concerned-over-scholasticide-gaza).
[iv] 京都大学, 2022年 「ウクライナ情勢に係る本学の方針」 (https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2022-03-08).
<質問2 参考資料>
[v] 京都大学新聞, 2020年11月16日「遺骨問題 「真相究明、返還を」 国内外の研究者ら 要望書」(https://www.kyoto-up.org/archives/3080).
[vi] 大阪高判令和5年9月22日(2023WLJPCA09229001).
[vii] 京都大学新聞, 2020年10月1日「琉球遺骨返還運動〈控訴審判決を受けて〉 訴訟の限界に挑む」(https://www.kyoto-up.org/archives/7015).
[viii] 京都大学新聞, 2025年6月16日「京大 琉球民族の遺骨を移管 子孫ら「墓への返還求める」」(https://www.kyoto-up.org/archives/11455).
[ix] 京都大学新聞, 2025年12月1日「京大 琉球遺骨移管協議に応じず 請求団体は抗議 再請求へ」(https://www.kyoto-up.org/archives/12209).
[x] 中村尚弘. (2017). アイヌ民族の遺骨返還の課題: アメリカ合衆国との比較を通じて. 北海道民族学= Hokkaido journal of ethnology, (13), 31-40.
[xi] Australian Government Department of Communications and the Arts , 2016 “Australian Government Policy on Indigenous Repatriation”(https://www.arts.gov.au/publications/australian-government-policy-indigenous-repatriation).
[xii] 東京大学, 2025年 「遺骨返還等タスクフォースの設置について」 (https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/z1304_00143.html).
[xiii] 北海道大学, 2019年「本学が保管するアイヌ遺骨に関する声明(2019年11月5日)」(https://www.hokudai.ac.jp/pr/johokokai/ainu/post-33.html).