植物ホルモンのケミカルバイオロジー
植物のほぼ全ての生理応答(生長・開花・防御・環境ストレス応答など)を担う重要な生理活性化合物である植物ホルモンは、それぞれのシグナル伝達の下流で多くの転写因子の活性を制御することで、1分子で多様な応答を引き起こす。この転写因子が、必要な時に必要な応答だけを誘導する調整役として機能していることが示唆されているが、その詳細なメカニズムはほとんど分かっていない。当研究室では、この植物ホルモン関連転写因子の活性を選択的に制御できる人工分子を、その三次元立体構造を基にして設計・開発し、転写因子間の活性調節機構の解明を目指している。将来的には、植物が元来もつ能力や、まだ明らかになっていない未知の能力を最大限引き出すことに繋がることが期待され、食料問題への貢献や、資源としての植物の利用を目指して研究を行っている。
呼吸鎖電子伝達酵素のケミカルバイオロジー
細胞のエネルギー代謝を支えるミトコンドリアには、「呼吸鎖複合体」や「ミトコンドリア膜輸送体」と呼ばれる酸化的リン酸化(ATP合成)に必須の膜タンパク質が数多く含まれている。エネルギー代謝を制御する生理活性化合物を独自の発想に基づいて設計・合成し、その挙動を酵素レベルで詳細に調べることによって、化合物が関与するエネルギー代謝のメカニズムを明らかにすることを目的に研究を行っている。一連のアプローチから得られた知見は、標的となるタンパク質の構造と機能を解明する一助となることは当然ながら、新しい医農薬の設計に資するところも大きい。