2021年1月某日、感染対策をしっかりとした上で直接お会いし、インタビューさせていただきました。10個の質問に対して答えていただきありがとうございました。
小國さん:そうですね…駒ヶ林のエリアでは、主にアーティストの活動支援をしています。
ただ単にアーティストの作品を展示するとかではなくて、駒ヶ林のエリアでも少子高齢化や空き地空き家問題、ゴミの不法投棄などの街の色んな問題、課題を、アート作品の制作であったりアーティストと一緒に駒ヶ林でのまちづくり活動を通じて、地域活性化するようなことをしてます。
小國さん:駒ヶ林に来る前はずっと大阪の方に住んでいて変わらずアート活動をしていたんですけど、地域やまちづくりに直接的に触れる活動をするより本来のアーティストの活動支援がメインでした。(他には)平面の作品や立体のオブジェの作品をアーティストに作ってもらってギャラリーや美術館で展示をしたり、その仲介する仕事をしていました。
小國さん:ギャラリーで展示する、その展示した作品を見に来る人がいる、見に来た人たちと交流を深めるルーティーンがあるんですけど、アートにコミットする人たちはその交流のエリアが狭いんです。その狭いアート業界の中でコミュニケーションをしても、社会に浸透しないというのが課題でした。だから、もっと社会にひらけたアートをしたい、アートに興味のない人も含めて色んな人たちとアートを通じて社会と対話したいとなって、ギャラリーなどではなく公共的な場所で展示をしたいと思いました。
そこで、長田のまちづくり会社に知り合いも誰もいないまま、『長田区の方で、アートイベントやアート展示とかさせてもらえるところってないですか』と問い合わせたら当時の担当の方が丸五市場というシャッター街の空き店舗のスペースで作品展示してもいいとなって丸五市場で展示をしました(2009年くらいの出来事)。そのあと、次はここで展示、次はそこで展示と繋がっていって、数珠繋ぎ的にアートイベントをするきっかけがあったんですよね。その流れで、この『角野邸』を紹介してもらって、この家でも展示したらどう?という話になり展示をしました。すると、角野邸の地権者の角野さんから若いアーティスト住み込んで長期的に使ってみてはどうですか?という投げかけがあったんですよ。だから、その流れでアーティスト数名とここに移り住んで一時的にシェアハウスみたいな形で活動をしています。
小國さん:結構色々ですね。(アーティストを)良いように思ってない人もいれば、めっちゃよく思ってる人もいます。でも、(駒ヶ林以外の)他地区で(アート活動を)やっていたら、いい反応や物凄い熱烈なエールもないし文句もないんですよ。長田でやってたら、『なんやねん!これ!』って文句言ってくる人もいるんですよね。そういった方に『こういう風なまちづくりに起用するようなアートプロジェクトなんです』って話をすると、『めっちゃええやんか』って言ってくれる人もいれば、『ふーん、あっそ』ってどうでもよさそうな人もいれば、それでも理解してくれない人もいたりするんですよね。だから、住民の方のアートに対してのレスポンスやコミュニケーションが速くて、アートを通じて他者の気持ちを知れる、対話ができるというのがこの街ならではだと思います。
小國さん:コアに活動するメンバーもいるんですけど、プロジェクト単位に活動するようにしてるんですよね。例えば、Aプロジェクトには〇〇さん、××さんとスタッフなど集めてそのプロジェクトが終わったら解散するようにしています。そっちの方が円滑に物事が運べるかなと思っているので。関わっているアーティストで言うと50人ちょっとくらいかな。
小國さん:駒ヶ林のまちづくり協議会の方々が、駒ヶ林の防潮堤にゴミの不法投棄が多いのでなんとかしたいよねってお話をされてたんですよ。協議会の中で壁画を描くという案が出て、アートといえばあの団体があるじゃないかとなって頼まれました。ざっくりとした要望として「ゴミの不法投棄を減らすためになにか壁画を描いて」と言われて、3年くらいビジョン見据えて少しずつ段階的に描くことになりました。絵を描いて瞬間的に終わるのではなくて…。額装がサブ、絵が主体っていうのが普通だと思うんですけど、逆に額装を先に描いて2年後3年後4年後に段階的に中の絵を描いていくというプロジェクトにしました。額装を先に描いて中が空洞である期間を設けることで、地域の方々含め皆さんが注目して、何が描かれていくのかなと興味を持ってくれるんです。合計100マス程度の額装を描いて、その中に地域の皆さんと一緒に段階的にワークショップで絵を描くという取り組みをやってます。
「コマハマギャラリー」の活動写真
「コマハマギャラリー」の作品
小國さん:駒ヶ林2丁目南部の場所にある街中防災空地です。災害時、地震が起きたときは一時的な避難所になるポケットパーク、日常的には地域のお子さんが憩えるスペースとなるような広場をデザインして成功しました。その街中防災空地はこの街に3箇所あります。単に空き地対策として平坦にするのではなく、私たちがデザインする街中防災空地については黒板塗装を施そうと決めたんですよね。地域の掲示板的な側面であったりとかお子さんが外でごっこ遊び出来るスペースであったりとか、色んな人たちがそこに行き交いして、空き地対策とはまた違う別の意味を持たせたいなと思って作りましたね。
舗装され黒板塗装されたまちなか防災空地
小國さん:下町芸術祭というアートイベントを今まで2015年、2017年、2019年とやってきて、そのイベントにお招きするアーティストの傾向にも共通するんですけど、すごく純粋に創作活動を楽しまれている方が多い印象です。作品って作ってから展示して受け手側にどう受け止められるか・場合によっては購入されるか。というプロセスがありますが、印象ですが駒ヶ林のアーティストは何よりもまず作品づくりに熱中していること・自分の作品の一番のファンが自分であることは共通しているように感じます。それって当たり前のように思うかもしれないですが、世界にはいろんな動機や理由で作品を作っているアーティストがいます。
小國さん:実はここ(角野邸)はほとんど何にもしてないんですよ。今時、物件を吹き抜けにして天井落としたりコンクリートの壁を剥き出しにしてデザインハウスにしたり、リノベーションっていうとお洒落に改築するイメージがあるかもしれないんですけど、この角野邸という場所は、ほぼ手を加えてないですね。ガスや水道管、トイレなどの必要最低限のインフラは整備したんですけど、それ以外は変えてないですね。アーティストが古民家を使う面での利点で言うと、業者を呼ばなくても自分たちで結構(リノベーション)出来ちゃうところはあると思います。業者さんも勿論必要最低限のところは呼ぶんですけど、例えばモルタルで壁に塗ってひび割れを舗装したり、木の歪みを矯正したり、そういった部分についてはむしろアーティストの方が「面白そうだからみんなでやろうよ」と興味を持って取り組むというのが一つの利点です。お金をかけずに済むというのももう一つの利点になるかなと思います。あとは、全員ではないですけど、アーティストさんは住居についてこだわらない人が多いような気がします。(こだわらないというのは)建物としての風合いが今時の無色透明なマンションではなくて歴史を感じるような場所の方がシンパシーを感じたり住みたいと思う傾向がありますよね。だから、古民家との相性がいいと思いますね。
小國さん:僕もアート活動していますが、アート活動をしている人が(駒ヶ林で)凄く多いかと言われると増加傾向にあるとは思いますが、実際そこまでではないんですよね。駒ヶ林には、色んな国籍の人が多いんです。だから、多文化が共生してる街なので、自分が社会的にはみ出したことをしても認められたり許してくれんじゃないかなと思えるんですよ。勝手な先入観なんですけど…本当に認めているかどうかは別として、ベトナムや韓国、アメリカやアフリカの人もいるし色んな背景を持っている人がいっぱいいるので、日本という視野でいうと”アート”という変わっている活動ではあるけれど、全世界的に見たら自分の活動はそんなに変わってないよな、(ある意味自由奔放で社会から完全に認められていない自分たちの”アート”活動を)許してくれるのではないかと思えてちょっと気楽に活動できるところですね。
兵庫県立兵庫高等学校
創造科学科5期生 創造基礎B3班