池原 実 (教授) 高知大学 海洋コア国際研究所(日本地球掘削科学コンソーシアム・理事)
温暖期気候変動研究交流拠点の申請がJSPS研究拠点形成事業に採択され、2025年4月から5年間の計画で拠点事業を推進します。
2025/5/15:若手海外派遣スカラーシップの採択者(ウルビノ2名、ブレーメン5名)を決定
2025/4/30:若手海外派遣スカラーシップの受付を終了
2025/4/28:キックオフ国際シンポの日程(2025/10/22-24)を確定
2025/4/2:若手海外派遣スカラーシップの応募フォームを公開し募集を開始
2025/3/21:研究拠点ウェブサイト(暫定版)を先行公開
事業の概要(背景)
本研究拠点は、海洋底を掘削して回収した地質柱状試料「コア(Core)」を主な研究対象とする国際プログラムを土台として、地球史上の過去の温暖期における気候変動の実態解明に迫る国際研究交流拠点を構築し、若手人材交流と成果創出を目指します。56年の歴史をもつ深海掘削は、プレートテクトニクスの実証、白亜紀末の隕石衝突と生物絶滅・進化、新生代の気候変動、巨大地震発生メカニズム、海底下生命圏など様々な成果をもたらしてきました。掘削されたコアは3箇所のコアリポジトリ(米国・テキサスA&M大学、ドイツ・ブレーメン大学、日本・高知大学/JAMSTEC)に冷蔵保管され、試料キュレーションが運用されています。
目標
拠点機関である高知大学海洋コア国際研究所は、地球掘削科学国際研究拠点として関連コミュニティの研究教育活動を支援しています。その一環で日本地球掘削科学コンソーシアム(J-DESC)などコミュニティと連携してリポジトリコア再解析プログラム(ReCoRD)を2023年からスタートし、最新技術を活用したコアの再解析により新たな成果を創出するプログラムを行っていますが、海外旅費や研究費の支援はほとんどできていないのが現状です。
この課題を解決して国際交流を活性化するために、2025年に始まった日欧協働プログラム「国際海洋科学掘削計画(International Ocean Drilling Programme:IODP3)」を契機として、欧州諸国との連携体制を強化して温暖期気候変動研究交流拠点を実装することで地球掘削科学分野における国際共同研究と若手人材交流を促進し、特に過去の気候変動の実態解明に迫る研究の新展開を図ります。
「地球史に学ぶ」をコンセプトに、海洋科学掘削の中長期目標である「掘削科学2050サイエンスフレームワーク」で提示された「未来の気候変動解明」に資するユニークで持続的な研究交流拠点を形成します。
事業の概要(研究交流計画)
○全体の方針:
個人・グループで取り組んできた国際連携を活かした先端的成果を生む共同研究テーマを設定し、国際セミナー・ワークショップによる研究成果と若手人材の交流の活性化に加えて、各国のサマースクール等をシリーズ化することで実践的な若手人材育成と国際交流を促進します。
○共同研究:
国内拠点機関(高知大学)の持つ掘削コア保管とコア解析ファシリティを活かし、連携協定を結ぶ海洋研究開発機構高知コア研究所、東京大学大気海洋研究所、国立極地研究所を協力拠点とし、温暖期気候変動の解明に取り組みます。同様のコアリポジトリ拠点であるブレーメン大学(独)を始め、ウルビノ大学(イタリア)、グラーツ大学(オーストリア)、レスター大学(英国)等との間で共同研究を推進します。
テーマは次の3課題です。
R1:1−2℃温暖化していたスーパー間氷期の南大洋(南極海)の水温・海氷変動
R2:3−4℃温暖化していた中新世温暖期のインド洋中層水循環変動
R3:8℃程度温暖化していた始新世温暖期の炭素循環解明。
○国際セミナー:
共同研究テーマに沿う国際セミナー等を高知とグラーツなどで実施し、研究成果の報告と統合、若手交流による研究ネットワークの強化、次世代の国際共同研究への萌芽育成を行います。
○スクールを核とした若手人材交流・育成:
「若手海外派遣スカラーシップ」を制度化し、欧州で開催されているサマースクール等に計画的に若手研究者を派遣する仕組み、および、海外の拠点に長期滞在して共同研究を実践する仕組みを運用します。
高知大学では、掘削コアの観察法と最先端機器を利用したコア再解析法を実践的に学ぶための高知コアスクールを開催し、欧州諸国からの参加者と国内大学院生を交えたスクーリングを行うことで若手育成と国際交流を効果的に推進します。スカラーシップでは、国内拠点機関だけでなく地球掘削科学コミュニティからの参加者も募集することで、関連分野全体の底上げと裾野を広げることに貢献し、持続的な国際交流拠点機能を熟成します。
3−4℃温暖化していた中新世温暖期のインド洋中層水変動の復元(代表:黒田潤一郎@東大)
共同研究に関連する国際シンポジウム(セミナー等)を定期開催し、気候変動に関する共同研究を推進します。
○2025年度
キックオフ国際シンポジウムを高知で開催(日程:2025/10/22-24)Symposium website
リポジトリコア再解析プログラム(ReCoRD)のReC23-01プロジェクトのポストクルーズミーティングをグラーツ大で開催予定
ECORDサマースクールなどに参加する若手研究者への旅費支援制度(若手海外派遣スカラーシップ)を設置し、気候変動研究に関わる若手研究者の育成と国際交流を促進します。
2026年度と2028年度に、高知コアセンターにて(国際版)高知コアスクールを実施する予定です。
ECORDサマースクールなどとの連携を強化し、レクチャーやトレーニングプログラムのノウハウや知見の相互交流を促進することで高知コアスクールを成熟させ、国内コミュニティに還元します。
○問い合わせ先
高知大学海洋コア国際研究所 JSPS研究拠点事務局
〒783-8502 高知県南国市物部乙200
メール:kochi-c2c (at) kochi-u.ac.jp