2018/9/6 北海道 胆振東部地震 検討結果

M 6.7 event, 6th September in Hokkaido collision zone

今回の地震で被災された皆様,お亡くなりになられ方々,心からお見舞い申し上げます.

検討結果要旨

  • 北海道南東部では火山列の南側がマイクロプレート化して西進し,衝突帯を形成(北海道島弧衝突帯).今回の地震の本震は,島弧衝突帯の中の分厚い下部地殻内(深さ32.5km,2018/10/7改訂)で発生.地震波の減衰が小さい領域で発生.
  • 既往研究による地震波トモグラフィーを根拠とした研究成果(Kita et al. 2012; 2014, Moriya et al. 1998; 森谷 1997)と比較すると,1970年M7.1浦河沖地震(森谷 1983; 多田 1987)と同様,石狩低地東縁断層帯付近の深さ10km-40kmで余震が発生.一連の地震は,石狩低地東縁断層帯の深部延長上で発生した可能性が考えられるが,今後も議論して行く必要がある.
  • 今回の地震は,北海道の内陸地震としては珍しくない深さで発生.この地域の地殻熱流量は低く(産総研データベース),内部の温度構造も局地的に低い地域であるため.しかし,日本の一般的な内陸地震の深さ下限(14km, Omuralieva et al. 2012)よりかなり深い.


※この地域の深部地下構造は,3次元不均質が強いです.今回の地震動に伴う停電の影響で,現時点では波形データ入手ができていない観測点があり,震源決定の際に使用する観測点数が少ない可能性があります.よって現時点で公的機関・大学・研究機関の発表する震源の位置や見解は,今後の復旧状況や詳細な解析結果により変わる可能性があります.

地震波3次元速度構造を用いた震源再決定結果/ relocation results by TomoFDD

  • 本震の深さ:32.5 km (2018/10/7改訂,1次元速度構造を仮定した気象庁一元化震源よりも浅い)
  • 20kmよりも深い震源は,数kmほど気象庁一元化震源よりも浅くなる.

図:(a) 2018年9月6日から8日に発生した60km以浅の地震を, Kita et al. [2012]による3次元構造を仮定して震源再決定した結果(赤丸).震源再決定時は,2015年1月以後の地震も含めて再決定しているが,図に入れていない.白丸は,初期震源として用いた気象庁一元化震源.黄色の星と,中抜きの黄色の星は,それぞれ再決定後の本震震源(深さ32.9km),気象庁一元化による本震震源(深さ37.0km)を示す.(b)東西方向の鉛直断面図.(c)南北方向の鉛直断面図.

北海道の地震テクトニクスと今回の地震/ Seismotectonics beneath Hokkaido

図:(a)北海道のテクトニクス.前弧スリバー運動(大陸性プレートのうち,火山列より南側部分が分裂し,移動する現象)により,日高山脈を中心とした北海道南東部では,地殻物質が異常に厚化した島弧衝突帯が形成されている.(b)北海道の地質境界(点線)と衝上断層(三角つき色付き太線)の分布.今回の地震は,石狩平野東縁断層は,緑色の三角付き太線で示す.(c)図(b)中の測線で作成した東西断面図の模式図.石狩平野東縁断層帯の位置は,黒色の逆三角で示す.

胆振東部地震および北海道下の地震波速度および減衰構造/ Seismic velocities and attenuation structures beneath Hokkaido and hypocenter of the M6.7 Iburi earthquake

図:(a) 北海道島弧会合部における過去50年に発生した大規模内陸地震の震源位置(☆印,森谷 1983; 森谷 1970)と今回の地震の震源(黄色◉,防災科研震源).図中測線は図(b)から(g)までの断面作成位置を示す.緑領域,赤紫領域は,それぞれ日高変成帯,神居古潭変成帯を示す.色付き太線,赤三角は,地質境界と火山をそれぞれ示す.黒点線は,海洋性プレート(太平洋プレート)の上に沈み込む,大陸性プレートの地殻物質が接する領域を示す.(b,c, d)(a)で示す測線における地震波減衰構造の鉛直断面図.カラースケールは減衰の度合いを示す(青いほど減衰が小さい領域.赤いほど減衰が大きい領域).図中白☆は,1982年浦河沖地震および今回の地震の震源を示す.(e, f) (a)で示す測線における地震波速度構造の鉛直断面図.カラースケールは地震波速度を示す(赤いほど程速度,青いほど高速度領域).図中☆は,び今回の地震の震源を示す.(g) 深さ40kmにおける地震波減衰構造.丸印が今回の地震の震源を示す.

森谷先生(元・北大)の論文(構造地質,1997; Tectonophysics, 1998)

※右側の鉛直断面図は,左側の平面図中の測線Z-Z'でのもの.

北海道中南部の地殻熱流量/ Heat flow around the Hokkaido collision zone

(北 佐枝子,東北大学博士論文 2009;Tanaka, 2004)

図:北海道東北日本における(a)地殻熱流量および(b)地温勾配の分布(Tanaka, 2004).地殻熱流量および地温勾配を図下部のカラースケールで示す.本研究によるプレート表面の答申線を黒実線および黒波線のコンターで示す.プレート境界地震の深さ下限を赤線で示す.