大学生まちづくりコンテスト2024
大学生まちづくりコンテスト2024
「黄色い小鳥」は大学生観光まちづくりコンテスト2024にて準グランプリを受賞しました。本ページではコンテストにて弊団体が提案した内容をご紹介しています。
2024年9月13日に富岡町文化交流センター「学びの森」にて本選発表会が開催されました
BS日テレ様に弊チームのフィールドワークからプラン作成、発表までをご取材いただきました
本プランは、福島県広野町に対する4つのプロジェクトにより構成されている。
まず1つ目のプロジェクトではメロディーロードを設置し、町の滞留人口を増加させる。町内では周遊型BBQと葉でつくるお茶の2つのプロジェクトを実施し、観光客の体験価値を向上させる。このプロジェクトの運営は学生をハブにした組織が行うため、町の課題であるキーパーソン同士の希薄なつながりを解決することにも繋がる。
童謡のまちのメロディーロード
県道391号の一部(左図、赤点線)に全長約1.5km(時速60km走行時90秒)のメロディーロードを設置し、車で走ると童謡(とんぼのめがね・汽車)が流れるようにすることを提案する。
メロディーロードとは道路に溝を切り込むことでタイヤとの摩擦で音を発生させる道路である。 約1.5kmの長さは日本一となるため集客効果は高く、また車社会の中で手軽に広野町に入ることが可能となる。加えて、県道391号に国道から入ってきた車は二ツ沼総合公園の手前まで国道に戻ることができず、広野町通過中は県道を通過することになるため滞留人口の増加が見込まれる。
懸念点として騒音問題があるが、設置検討地域は西側を防災緑地、東側を海に囲まれた高台にあり、植栽は騒音を低減することが予想される。
(1) 本プロジェクトで解決するまちが抱える課題
滞留人口(訪れる観光客)が少ない
音を使って童謡を知る場所が常設されていない(しかし多くの人は音として童謡を認識している)
(2) 潜在的なまちの強み
(隠れた観光資源である)広野町の県道391号(浜街道)
広野町内の県道391号は…
信号が少なく直線的な道路で周囲の景色が美しく相双地域の大部分を貫く広野小高線の起点
地域に根差した測量設計・建設会社の存在
観光客による周遊型バーベキュー
町を周遊し、町民との交流・収穫体験をする付加価値が加わった広野の食材を使ったBBQプランを提案する。
企画、運営にあたっては町のキーパーソンが参加する「周遊型BBQプロジェクト委員会(仮称)」を立ち上げ、プロジェクトに協力する意思を示した町民の畑をリスト化する。 BBQ場としては現在は有効活用されていない二ツ沼総合公園のBBQ場を利用する。
まず、現地を訪れた人はプロジェクト委員会のキーパーソンと共に、車でリスト化した町民の畑に立ち寄り、可能であれば畑を所有する町民の方に教えてもらいながら野菜を収穫する。これにより町民は直売所への運搬の手間を省くことにつながる。2、3軒かの畑を周遊した後(その過程でキーパーソンは町のポイントを紹介することもできる)、BBQ場に戻り野菜以外の食材を選択し実際にその場で調理する。
野菜以外の食材としては広野町に関係する5つの候補を用意する。
1.新妻有機農園のアヒルの肉を利用した燻製やソーセージ
2.二ツ沼総合公園のアルパカにちなんだアルパカの輸入肉
3.地域団体により美しく維持された浅見川の鮎
4.海岸部で採取可能なツブ貝やレイシガイ
5.町内の精肉店からの牛肉や豚肉、鶏肉
火起こしには広野町折木の石切場にある石炭層から採取した石炭を利用する。石炭を燃やすことは現代の暮らしの中ではほぼ体験せず、体験価値としては高い。
(1) 本プロジェクトで解決するまちが抱える課題
広野町内での観光面での地産地消は極めて限定的である
様々な理由(直売所への運搬の手間、野菜の形不揃い等による苦情への懸念など)により二ツ沼総合公園内の直売所を販売目的で利用しない町民がいる
(2) 潜在的なまちの強み
広野の知られざる食の宝庫
副業的ないしは自給的農家として野菜を栽培する町民が多い
町民のボランティアにより浅見川の環境が美しく維持され、鮎などの魚の資源が豊富
夕筋海岸付近の沿岸部ではツブ貝やレイシガイを採取可能
活用されていない天然資源
町内の石炭層から現在も少量の石炭を採取可能(新地鉱産の採石場)
ひろのの葉でつくるお茶 ー栽培残渣の利用ー
町内のみかん、バナナ(広野町振興公社)、松(奥州日の出の松に関連)の葉を加工し茶として商品化することを提案する。
加工に当たっては町のキーパーソンが参加するプロジェク ト委員会を立ち上げ、プロジェクトに協力する意思を示した町民からみかんの新芽、防災緑地にある松、広野町振興公社で栽培残渣として一部廃棄されるバナナの葉を回収し、町の加工場にて茶葉にする。加工した茶葉は、土休日にひろの未来館の屋上テラスにてカフェ形式で提供・販売する。加えて宿泊施設と連携し、ハタゴイン福島広野でのウェルカムドリンク、猫がいることでも知られる若松屋旅館で温泉と猫に心身を癒されながら嗜むお茶としての利活用を検討している。お茶の提供時の茶菓子は、町内で有機栽培されているもち米に皮ごと広野のみかんを入れたみかん餅(試作済)や加工が比較的容易なみかん飴を検討している。普段目にしない種類の多数の茶は、その色合いも多様であるために SNS栄えするお茶の飲み比べとして提供できる。
(1) 本プロジェクトで解決するまちが抱える課題
特産品をみかんとしているものの生産量は少なく活用しづらい。
町内で加工から販売まで確立している特産品がない。
町民(特に定年退職後の高齢者)の収入源が少ない。
SNSを意識した(例.インスタ映え)特産品が少ない。
(2) 潜在的なまちの強み
異なる視点から見た広野のみかん
町民の自宅にみかんの木がある(販売農家でないことが強み)
葉は安定してかつ手軽に供給可能(みかんの木の剪定が必要)
様々な種類の「葉」の存在
茶外茶にできる多くの種類の葉があり(みかん、バナナ、松) 、その多くが「葉」以外の要素で広野町にとって重要な意味を持つ(特産品、伝説)
キーパーソンが学生をハブに繋がる組織形成
上述の二つのプロジェクトの推進にはプロジェクト委員会の設置が欠かせないが、ヨソものの大学生が旗振り役となってまちづくりのキーパーソンのハブとなる組織づくりを行うことを提案する。この組織は単に前述のプロジェクトを推進するだけでなく、将来的にはまちづくり協議会のような組織として、町全体のプロジェクトや計画について議論する集団を目指している。
これが今回の観光まちづくりの「まちづくり」の観点で重要である。広野町には他地域と比べても、NPO法人をはじめとしたまちの発展に貢献する多くのキーパーソンがいる。その一方で今回のフィールドワークではキーパーソン同士のつながりが希薄であり、小さなコミュニティの中での互いのしがらみによりキーパーソン同士のつながりが困難になっている可能性も垣間見えた。これは多くのキーパーソンがいるという町の強みの効果を限定的にする大きな課題で、町全体に影響を与えるような規模の大きい企画の実現・継続は難しく、何より町全体の方向性にもばらつきが出てしまう。
ここで言うところのは「ヨソものの大学生」と若く熱意はあるが知識や経験が浅い広野町外の学生のことであり、それぞれのキーパーソンが学生に教え、助けることで学生をハブとして全てのキーパーソンが繋がることのできる組織づくりが可能になる。加えて、学生を旗振り役にすることで、旗振り役に過度に権力や発言力が集中してしまう従来の組織作りの課題を解決し、どのキーパーソンも学生に「教える」ことでよりフラットな組織を期待する。
また、学生は在籍年数が限られているという点から、継続性の観点に難しさがあるとされることある。しかしその一方で、学生には学生独自の縦のつながり(ゼミやサークルなど)が存在し、連続的かつ継続的に新しい「ヨソもの」を旗振り役として供給できるという強みがある。絶えず新しい学生が関わり続けることで、ヨソものであったはずの旗振り役の「ウチ化(キーパーソンの中に良い意味でも悪い意味でも溶け込んでしまうこと)」を防ぎ、持続的に組織を発展させることが可能になる。
(1) 本プロジェクトで解決するまちが抱える課題
キーパーソン同士のつながりが希薄であり、互いのしがらみがキーパーソン同士のつながりをより困難にしている可能性がある
(2) 潜在的なまちの強み
他地域と比較してもまちの発展に貢献する多くのキーパーソンの存在
提案プランの効果(KPI)