空力構造複合トポロジー最適化開発により切り拓く気流協調型の革新航空機翼構造
近年,カーボンニュートラル実現に向けモーフィング航空機,また,国内任意の陸域・海域を詳細に観測できる高高度滞空型航空機などの実用化が期待されている.これらに搭載される翼構造は,飛行中に能動的にも受動的にも変形する(させられもする)という特徴がある.申請者はこれまで,このうちモーフィング翼の構造・機構を対象とする数理設計手法を開発してきた.そこでは,気流に抗い「変形させられないように」のみを考えると,構造の高コスト化や柔軟性の損失を招いてしまう問題があった.本研究では,「変形させられてもいいように」との発想から,気流と協調することで性能を発揮できる気流協調型次世代航空機翼構造を明らかにすることを目的とする.このために,空力弾性変形および気流の変動を考慮できる空力構造複合トポロジー最適化法を開発し,能動かつ受動的に変形する/させられる領域から,空力・構造の両性能を高められる次世代航空構造物を明らかにする.このような手法が確立できれば,気流を逆手にとり活用できる高機能柔軟航空構造物の設計法として,先導的な研究領域を切り拓ける可能性がある.
パス・アクティブな環境協調型革新航空構造の空力弾性最適設計により制する突風負荷
近年,カーボンニュートラル実現に向けたモーフィング航空機や,国内任意の陸海域を詳細に観測できる高高度滞空型航空機などの実用化が期待されている.これらに搭載される翼構造は,飛行中に能動的にも受動的にも(パス・アクティブ[Pass/Act-ive]に)変形するという特徴がある.申請者はこれまで,モーフィング翼の構造・機構を対象とし,静的な受動的変形を再現することで気流によって「変形させられても良いように」という設計思想に基づき,気流から受ける空気力と協調して性能を発揮できる次世代の航空機翼構造の数理設計手法を開発してきた.しかしながら,こうした相互作用を伴う柔軟翼構造には従来と比べてより一層,突風負荷による機体揺動などの動力学的な評価,すなわち,静的だけでなく動的な空力弾性に基づく性能および安全評価が必要不可欠である.本研究の目的は,構造および空気力学だけでなく,それらの動的な相互作用を考慮できる数理設計手法を開発し,パス・アクティブな空力弾性応答により,突風負荷に対する緩衝機能を有する革新航空機翼構造を明らかにすることである(図1).このような手法が確立できれば,広く航空構造物へ適用可能となる学術的知見を創出するものとなり,当該技術によって将来的には航空機事故軽減や航空ダイヤの維持に資するものとなる.