研究のコツ?(独断と偏見の忘備録)
研究方法などを独断と偏見で述べました。下記はあくまで一例です。人によってベストな方法は色々あります。研究のアイデアが浮かんだら、研究の半分は終わりだと思います。あとはひたすら計算など手を動かして問題が発生したら人と議論を繰り返し、論文をまとめます。そして成果発表(口頭発表など)です。
研究アイデアはどうやって得る?
アイデアの浮かばせ方は私も知りたいです。情報のアンテナを外に広げることと、自分自身で何ができるか・何をすべきか整理することが必要だと思います。
人と議論(最重要)。 バカな話を含めた方がスケールが広がるので良いことも。
セミナー・研究会に出席して情報収集。(これも人と議論)
論文や参考書など文献を読む。
メディア(ネットなど)を見て実験状況、他分野などを広く(浅く)見る。
いろいろと上述のように、情報を得て試行錯誤していると、フッとアイデアが湧いて出るときがあります。やりたいけど短期間(数年以内)に出来なさそうなことは、人と議論して、共同研究者を探して頼りましょう。これまでの研究の続き(穴を埋める)を遂行できたり、他分野の知識や新しい分野を開拓できます。
論文の読み方
論文は 3~10回 は繰り返し読んでください。
論文の背景を含む内容の全体像、物理同士の繋がりをとらえるよう意識。計算するのなら後で良いです。
論文の「概要→結論→...→導入」 のように逆の順に読むと、骨子の流れや、物理の繋がりが分かりやすい時があります。
Review, lecture note などで基礎は調べる。
論文にある文献は基本的にすべてチェック。必要なものは読み込む。
参考文献でわからなければ、参考文献の参考文献を調べる(孫引き)。これを繰り返しても良いが、わき道にそれるのでこれくらいで一旦stop。
分からなければ、整理して具体的に教員に質問。とっかかりがわからず、整理が難しければ教員に相談。
単に「この式がわからない」ではなく、「文献の計算の過程を使って、これくらい努力したけど、この次のステップに進むため何を使うのか分からないので教えて。あるいは良い文献を教えて。」など具体的に。
次に「論文の作成」「トークファイルの作成」は以下を参考に計画しましょう。
論文の作成
研究したら必ず論文にまとめる必要があります。
論文も研究発表(トーク)も、基本は以下の構成になります。必要に応じて肉を付けます。
・ 導入
・ 本論を理解するための過去のアプローチ:数学的・物理的準備
・ 本論
・ まとめ
論文作成時には下記の「トークファイルの作成」も参考になります。論文とトークとの違いは、論文は計算や論理などの詳細が書けることです。言い換えると、論文は細かく書いても何度も読み直せるので、これを意識して論文を書いてください。
下記の1つ1つの項目を要約し、論理的な流れを構成して台本を作って(頭の中で)整理しましょう。
何についての研究か?
研究の主たる結果は何か?
研究の背景は何か?(目的や動機)
どのような手法で研究を行っているか?
動機と手法と結果に関する物理同士の論理的な繋がりはどうなっているか?
その繋がりから流れをどう作るか?
流れを受けてどのような章立てにするか?(そもそも章立てにするか?)
研究結果を受けて、業界はどのように進むか?(結果と展望)
上記の項目を、トークで実際にどのように話すか?(あるいはまとめるか?)→ 「トークファイルの作成」へ
通常の論文作成時にはさらに、以下を注意:
レフェリーとの想定問答 → 内容・章立て・構成に活かす。
発表トークファイルの作成
論文を描いたら研究発表をしなければいけません。そのためのトークファイルの作り方です。
論文と同様に、基本は以下の構成になります。必要に応じて肉を付けます。
・ 導入
・ 本論を理解するための過去のアプローチ:数学的・物理的準備
・ 本論
・ まとめ
それと同時に、以下を意識する必要があります。
聴衆は誰か?
台本作成 → 聞いて良かったと思わせる。
自己アピールの場
ファイル構成、流れ、大事なことは目立つよう、端的に書く。
これらを整理したうえで「何を話さないのか」を決めるのが大事です。
不要なものを削り、必要十分な範囲でトークをできるようになります。
聴衆は誰か?
聴衆によって「複雑な式を避けて、出来るだけ絵や言葉で説明」する程度を変えましょう。
1. 絵 2. 言葉 3. 式
の順に伝わりやすいです。
トーク内容は同じ素粒子論の人でもすぐにわかりませんし、特に自分の研究は世界で誰も知らないことに注意です。
つまり話し方を変える必要がありますが、大学内の発表は M1 程度を想定すると良いと思います。(量子場の理論は知っているイメージ。)外部で話すときは、プロ向けの詳細な式や文章を挟みながら、初心者向けの導入:平易な言葉や絵、まとめを心がけます。
トークの台本:論文の内容を簡単に整理。
「聴衆がなぜトークを聞く必要があるのか?」を考えましょう。
まず一言で要約:持って帰って覚えてほしい大事なメッセージ。
数行の箇条書きでまとめる:大事なポイントの幾つかを要約し、論理的な流れを作成。
この結果、比較的容易に聴衆が理解できて
未知のことを知る・理解する。→ 時間を割いてでも聞いて良かった。勉強になった。
のように、聴衆は納得します。このためには説得力を持つ必要があります。
例えば、1つの結果を上げたとしましょう。このとき、「納得のいく証明・証拠」「3つ以上の論理的理由を上げる」などが手法になります。
トークは【自己アピールの場】
きちんと最近の話をフォローしてたくさん勉強しています。出来る奴です。
をアピールする必要があります。例えば、研究の中で自分が貢献した独自性や独創性を見せる必要があります。
このためには、例えば「何を理解していないか」を整理することが大事です。研究内容とその周辺分野を自分で研究(勉強)し、業界の中と自分の中で、理解している部分とそうでない部分の境界をハッキリさせましょう。自分の理解と業界の理解に違いがあれば区別し、きちんと論拠をもって、自分の言葉で独自の理解を示しましょう。その理解が新しい研究に結びつくことを示しましょう。展望の部分で、研究内容で分かっていない部分は「何を知りたいか」具体的に述べると、自分よりも知識と経験のある聴衆から、答えやヒントが得られることがあります。新たな理解や研究が進みます。
これは「ファイル構成」を参考に、必要最小限で行いましょう。
良く勉強していたら「優秀な人がいるな」「聞いて良かった」となりますが、くどいと嫌われます。
トークファイルの構成
繰り返しますが、基本構成は以下になります。
・ 導入
・ 本論を理解するための過去のアプローチ(数学的・物理的準備)
・ 本論
・ まとめ
そのためには以下を含める必要があります。
背景と動機: 業界での問題意識
解決方法:研究内容を考える必要性、その自然な発想などの説明
研究アプローチ:簡単なモデル。内容を理解するため、数学的・物理的予備知識。
研究内容
まとめ:結果と展望・ファイルの文:「新聞の見出し」のように名詞、体言止め。長い文章は避ける。
1. 絵 2. 言葉 3. 式 の順に伝わりやすい。
大事なことは目立たせる:同じ1枚ファイルの最初(上)に書く。強調して目立つように書く。同じことを「数回」言う。
聴衆は基本的に「見たくない」「聞きたくない」スタンスに簡単に陥りますので、分かりやすく。嫌でも目に入るようにします。
*ファイルの流れ1:文を書くごとに 「なぜ」 「理由」 を考えると、自然に流れや構成が整ったファイルが書けます。
想定問答や、考えることで今後の研究ためにもなります。
・量子重力 → なぜ量子重力が必要?
・インフレーション→ なぜインフレーションが必要?
・高次対称性 → なぜ高次対称性が必要?
*ファイルの流れ2:異なるページは、前後ページのつながりを意識して書きましょう。
話の流れが自然にできるはずです。
*ファイルの流れ3:同じ1枚ページ中の流れを意識してください。
前の行、後の行でのつながりを意識して書きましょう。下の行ほど目立ちません=「大事ではない」と思われます。
大事なことを下の行に書かざるを得ないときは強調してください(赤色など)。