ムラサキインコ

Septifer virgatus (Wiegmann, 1837)

レア度:いつでも見られる

形態:全長3-4㎝程度のイガイ類。貝殻は細長く、上下方向に幅が広がらない傾向がある。縁辺部は濃紫色の固い殻皮に覆われており、それ以外の部位はサツマイモのような地色が露出している。本種の幼貝(<1.5㎝)は放射肋をもち、ヒメイガイにやや似るので注意。ただし、ヒメイガイは石の下に隠れている種であり、本種と混ざることはほとんどないと思われる。

生息域:北海道西部から九州に分布し、潮間帯の岩礁にイガイ床を形成する。一般的にはムラサキイガイとともに見られることが多いが、垂直分布でいえば本種の分布ほうがより上部に集中している (陸奥湾: Hoshiai 1964)。七重浜三堤でも同様の傾向を目にすることができるが、葛登支ではムラサキインコのみが生息している。葛登支では沖合の波砕帯に生息の中心がある。

生態:産卵期は気仙沼湾で8–9月であり、これは同地域のムラサキイガイより遅い (佐々木 1983)。紀伊半島では3–9月に (大垣 1996)、香港では周年にわたって生殖腺成熟が認められる (Morton 1995) など、本種の繁殖期は地理的変異が大きい。海中で受精したあとトロコフォア幼生期~ベリジャー幼生期を経て着底・変態するが、本種は卵栄養型発生を示すため幼生期に摂餌は不要である (佐々木 1983)。加入稚貝は成貝コロニーの内部に多く見られ、このため個体群は漸次的に更新されて安定的に維持される (大垣 1996)。初成熟は殻長15㎜ (= 2齢) に認められる (佐々木 1983)。

その他:本種が形成するイガイ床には、住みかとして(チリハギガイ)、または餌として(イボニシレイシガイなど)利用するさまざまな生物がみられる。

2020年8月 山上
2020年8月 山上とんでもないな
2020年8月 大友控えめなパッチもある
2020年8月 大友親子三世代くらいなサイズ感
2015年5月 りった
2016年8月@臼尻 大友やばい
2021年3月 大友
2022年8月5日@夏泊 とみよしここもなかなか

引用文献:

  1. Hoshiai, T. 1964. Synecological study on intertidal communities V. The interrelation between Septifer virgatus and Mytilus edulis. Bulletin of the Marine Biological Station of Asamushi, 12: 37–41.

  2. 佐々木良. 1984. 気仙沼湾におけるムラサキインコガイの初期生活史について. 水産増殖, 31: 214–219.

  3. Morton, B. 1995. The population dynamics and reproductive cycle of Septifer virgatus (Bivalvia: Mytilidae) on an exposed rocky shore in Hong Kong. Journal of Zoology, 235: 485–500.

  4. 大垣俊一. 1996. ヒバリガイモドキとムラサキインコガイの殻長組成, 生殖腺重量の季節的変化と分布変動. Venus, 55: 317–327.